三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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黒江の口調って難しいなぁ。

えーと、とりあえずこんな風になりました。
てか、魔光って本当になんだよ。原作に出ていないから使えなかった(苦笑

ダミービーコンは使っただろって? はて、何のことですかね。


SE修【天眼】攻撃手④VS黒江

 韋駄天。

 仏法の守護神と呼ばれており、俗説で足の速い神とされ、足の速い人のたとえにされている。初見で韋駄天に対処した者はいない。少なくとも使い手の一人、黒江双葉の記憶上ではそうであった。

 

 

「(……なのに)」

 

 

 韋駄天の力を借り受けて行った高速斬撃は修のレイガストによって阻まれる。既に十回も黒江の斬撃は防がれている。

 

 

「こ、のっ!!」

 

 

 力任せに修を突き飛ばし、距離が空いた瞬間に韋駄天を発動。雷の如くジグザグに高速移動した黒江の狙いは修の首であった。しかし、黒江が韋駄天を発動したと同時にまるで首を狙っていたのが分かっていたかの如くレイガストを前に突出し、自身の身体を回転する事で黒江の斬撃を殺して難を逃れたのである。

 前の奥寺・小荒井戦で只者ではないと思っていたが、これほどやり難い相手は久方振りであった。けれど、一つだけ分からない事があった。

 

 

「どうして、どうして反撃してこないんです!」

 

 

 韋駄天の発動終了後、レイガストをブレードモードにしてスラスターによる斬撃を放てば確実に当った場面が幾度かあった。だけど、修は一度も攻撃をしてこない。その理由が黒江には理解出来なかった。

 

 

 

***

 

 

 

 一連の修の動きを奇妙に感じたのは黒江だけではなかった。修と戦った攻撃手達も違和感を覚えたのだろう。

 

 

「三雲のやつ。徐々に動きが鈍くなって来ていないか?」

 

 

 初めに疑問を口にしたのは攻撃手№1の太刀川慶であった。

 

 

「そうっすね。メガネボーイ、反撃できるチャンスを悉く逃していますし、何よりさっきからテレポーターとグラスホッパーを使っていませんね。アイツの性格なら、韋駄天を使った瞬間に仕掛けると思うんですがね」

 

 

 米屋も同意した。初見の韋駄天を防ぎ切った技能は驚くべき点であるが、同じ攻撃を何度もさせるような修らしくない行動に疑問を抱かずにいられなかった。

 

 

「変だね。俺達の時はA級を彷彿させる動きだったのに、今では面影も見当たりません」

 

「だな。もしかしたら、連戦で少し疲れたんじゃないか?」

 

 

 黒江の前に戦った東隊の攻撃手、奥寺と小荒井も不思議そうに二人の戦いを見守る。

 この場にいる全員は修のサイドエフェクトの欠点を知らない。強化視覚【天眼】は連続で使いすぎると乗り物酔いの様に動きが鈍くなってしまう事に。

 

 

 

***

 

 

 

「(マズイな)」

 

 

 違和感は東隊の二人に勝利した直後に起こった。個人専用のブースに転移された修は次の対戦相手である黒江に挨拶しようと立ち上がった時、強烈な眩暈に襲われたのである。急に視界が黒く塗り替えられ、平衡感覚を失った修は勢いよく倒れたのだった。

 この現象は何度も体験済みであった。サイドエフェクト強化視覚である天眼の過剰使用による反動だ。この状態に陥ったら満足に体を動かすことも間々ならない。戦闘なんて以ての外だ。けれど、修はやめる訳にはいかなかった。

 迅から言い渡された訓練内容は天眼の反動が起こってからが本番なのだ。

 

 

『メガネくん。狙撃戦ではギリギリ何とかなったけど、あと1、2戦続いたらやばかったでしょ? 恐らく今回も途中で天眼の反動が来ると思うけど、それを乗り越えるのが今回の訓練メニューね。あ、もちろんだけど、他の人に言うのはなしね。それじゃあ、訓練の意味がないから』

 

 

 未だに迅が何をさせたいのか理解出来なかったが、意味もない事をさせる様な人間ではない事は知っている。何より、自分の為に時間を割いてくれた人達に「これ以上、戦う事が出来ません」と軽々しく伝える事なんて出来ない。

 けど、修の動きが鈍くなっている事は隠し通す事は出来ない。そのせいで、目の前で自身を睨み付ける少女、黒江に大変不評を買ってしまったようだ。

 

 

「どうして、どうして反撃して来ないんですか!」

 

「無理言わないで欲しいな。黒江の動きを捉えるのがやっとなんだよ」

 

「ウソです。前の戦いの様にテレポーターを使えば易々と躱す事が出来たはず」

 

「それは……」

 

 

 黒江の言う通りであった。瞬間移動トリガー、テレポーターを使えば黒江の韋駄天の軌道から難なく避ける事も可能なはず。けど、修はそれをしなかった。正確には出来なかったと言った方が正しいかも知れない。

 

 

「(いま、テレポーターが使えないとバレる訳にはいかない)」

 

 

 先の戦いでテレポーターを乱発しすぎたのがいけなかった。修がいま使っているランク戦は訓練ブースと違ってトリオンが消費されてしまう。二度目の韋駄天が発動した際にテレポーターでやり過ごして一撃で仕留めんと計画していたのだが、発動させようとしてもテレポーターは発動する事が出来ずにいた。

 けれどそれは仕方がないかも知れない。全ての相手が自分よりも各上であった。トリオンを温存するなんて事は出来る訳がない。何より、それでは訓練にならないのだ。

 

 

「……分かりました。私では全力で相手をするほどじゃないとお思いなんですね」

 

「ちがっ! そんなんじゃ――」

 

 

 修の沈黙に何を勘違いしたのか分からないが、黒江は自分では勝負の相手にならないと思い至ってしまった様子。修が言い訳する間もなく韋駄天を発動させていた。

 

 

「っ!」

 

 

 天眼は黒江の韋駄天の道筋も赤い閃光となって視覚化させる事が出来ていた。黒江の狙いは今までと変わっていなかった。彼女はどうしても自身の首を真二つにせんと気が済まないようであった。

 再び進行方向にレイガストを突き出して、黒江の突撃に備えようとする。が、強烈な頭痛に襲われて、防御をするのが僅かながら遅れてしまった。

 

 

 

 ――斬

 

 

 

 黒江の斬撃が修の首を捉える。手応えはあった。完全に殺した、と思ったのだが修のトリオン体は未だに健在であった。

 

 

「(浅かったか)」

 

 

 一撃で仕留められなかった自身の未熟さに苛立つ黒江であったが、考えようによってはこれでよかったかも知れないと考え直す。これで自身の首に手を当ててトリオン漏れを防ぐ修が本気になってくれるなら御の字だと。

 しかし、修は先の戦いで見せた様な動きをする気配がなかった。レイガストを突き出した状態のまま、まるで自分が突っ込むのを待つような構えを見せる。

 その姿勢が黒江の怒り募らせる結果となってしまう。

 

 

「(この人は――っ!!)」

 

 

 修の事情など知らない黒江にとって、完全に自分は舐められていると思ってしまった。お前では相手にならない、お前など認めないと言われている気がして腹立たしかった。

 確かに黒江は最年少のA級隊員であるが、実力に年齢など関係ない。強い者は強く弱い者は弱い。それが答えであり真実だ。

 けれど、そんな分かり切った事すら分からない者がいる。人間は嫉妬をする生き物だ。当然、最年少の黒江がA級隊員になっている事を面白く思わない者もいる。

 

 

「(この人もその連中の一人なら、認めさせてやる)」

 

 

 黒江は他の有象無象の様に嫉妬に駆られて突っ掛って来た者達を自慢の弧月で薙ぎ払ってきた。修もその有象無象の一人なら、己の実力で正さないといけない。

 最速を誇る韋駄天による斬撃を防ぐ事は出来ても自身を捉える事は不可能。ならば黒江がやる事は一つのみ。

 

 

「(そのレイガスト、叩き切ってやる)」

 

 

 

 ――韋駄天

 

 

 

 自慢のトリガー、韋駄天を起動。修が反撃をしないならば、着地した瞬間に再び韋駄天を起動させて連続攻撃をするのみだ。それで自分の勝利をもぎ取る。修が何を考えてどうやって勝利をしようと企んでいるか知らないが、そんな事をさせる前に勝てばいい話だ。

 しかし、黒江は既に大きなミスをしていた。幾ら自慢のトリガーであっても連発で使用すれば対応する事は容易い。

 

 

 

 ――スラスター・オン

 

 

 

 現に残り少ないトリオンを絞った修はレイガストのオプショントリガーであるスラスターを起動させて、韋駄天の軌道上に解き放ったのだった。

 

 

「しまっ――」

 

 

 韋駄天は一度移動行路設定すると変更する事は出来ない仕様だ。韋駄天の道筋に障害物があれば衝突事故から免れる事は不可能である。しかも、今回はブレードモードのレイガストだ。黒江の身体はレイガストに触れた瞬間に上半身と下半身が両断され、一瞬にして緊急脱出が発動してしまう。

 

 

「(くそ。くそ、くそぉぉぉ)」

 

 

 悔しかった。

 自分が舐められたまま、真面目に戦って貰えなかった事に苛立ちを覚えずにいられなかった。

 

 

「くっ」

 

「(へ?)」

 

 

 けど、緊急脱出で戦場から離脱する瞬間、黒江は視てしまった。

 苦悶の表情を浮かべた修が片膝を突いている所を。右手で自身の頭を掴み、何かに絶える姿はまるで――。

 

 

「(まさか、どこか――)」

 

 

 そう思った直後、黒江のトリオン体は消失する。

 黒江戦は修の辛勝で終わる。

 

 

 

***

 

 

 

「……遊真先輩。三雲先輩の様子がおかしいんだけど」

 

「マズイですな。恐らく――」

 

 

 流石の緑川も修の異変に気付いたのか、隣で観戦していた空閑に訊ねたのだった。

 同じ支部に所属している空閑なら修の今の状態について何か知っているはずだ。

 当然、修の異変の原因を知っている空閑は緑川にその事を伝えようとするのだが、自身の目の前にぼんち揚げの袋が飛出してきて言うに言えずにいた。

 

 

「遊真。ぼんち揚げ、食べる?」

 

「……ジンさん?」

 

「メガネくんも随分と頑張っているじゃないか、感心感心。……どれ、そろそろ始めるとしますか」

 

「待って、ジンさん。今のオサムは――」

 

「分かってるって。けど、これが今のメガネくんの訓練なんだ。悪いけど、邪魔しないでね」

 

 

 空閑は相手がウソを言っているか言っていないか、判別する事が出来るサイドエフェクトを有している。そのサイドエフェクトによると迅が言った言葉は嘘ではなかった。

 本来ならば今の修をこれ以上闘わせるのは愚の骨頂とも言えるが、迅は未来を視るサイドエフェクトの持ち主だ。彼が何の理由もなく修を酷使するはずがない事を知っている。

 

 

「……オサムの為なんだね?」

 

「その通りさ。全てはメガネくんの為だ。……メガネくーん! 次は俺が相手をするから覚悟してね」

 

 

 語尾に音符でも付きそうなほど弾んだ声でこの場にいる全員が驚愕する宣言を行ったのである。

 迅悠一。風刃を上層部に譲った事で現在の地位はA級個人隊員だ。

 太刀川と風間に個人攻撃手1位を目指すと言いながら、一度もランク戦に復帰した記録はない。

 予想だにしなかった迅のランク戦の復帰に文句を言う者は誰もいなかった。

 

 

「じぃぃぃいいん! その後、俺とやろうぜぇぇええっ!!」

 

「太刀川さん、黙ってて。しまらないから」




ついに黒幕をお仕置きするチャンスが……って、できるのか? 今の修さんに。

実力派エリート迅に出てくるエスクード、便利ですよね。
「砕け、大地の咆哮――」って厨二的なことを迅が言ったらひくかな、やはり。

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