だって二回三回あるかもしれないじゃないか(オイ
感想にあった対三雲会議や他の人間のやり取りを入れても面白そうかなぁと思って入れてみました。そろそろこれで日常編は終わらせないと永遠と続きそうだな(滝汗
目が覚めたら見知らぬ天井だった。
「ここは……」
掛けられていた掛布団を押し退けて上半身を置き上がらせて周囲を確認する。何やらドア越しから大勢の声が聞こえて来るが、いま自分がいる場所は見当がつかなかった。
「僕はどうして」
ふと、自身の記憶を思い返して――思い出す。
「そうだ。僕は迅さんと戦ってそれから……。っ!」
惨敗した記憶が蘇る。結局のところ、修は迅と真面に戦う事が出来なかった。迅に与えた攻撃は苦し紛れの頭突きのみ。幾ら天眼酔いで動きが鈍くなっていたとは言え、今回の結果は酷過ぎた。
この場に誰かしらがいたら「そんな事はないぞ」と慰めてくれるかもしれないが、そんなものは気休めにしかならない。修自身が今回の迅戦は納得が言っていないのだ。
「(天眼を持っていたからと言って、有頂天になりすぎたかな)」
修自身はそんな考えなど微塵も抱いた事はないが、無意識の内に“天眼を持つ僕なら迅さんとも対等に渡り合える”なんて幻想を抱いてしまったのかもしれない。それが間違いであった。修が目指す戦い方は実戦に通用する戦い方である。天眼酔いになってもそれなりに戦えなくては意味がない。そう言う意味だと今回の自己評価は赤点もいい所だ。
「(もっと、強くならないと。こんなんでは麟児さんの約束も守れない)」
家庭教師であり兄的存在であった麟児から「千佳を頼む」と託されている。彼女を護る為にボーダーに入ったまではいいが、修自身はボーダーとして最弱の最弱もいい所であった。唯一、天眼なんて特殊な力があって戦闘員として見出すことが出来たが、それでも自身が弱いのは変わりない。
たかがサイドエフェクトを持っているとはいえ、慢心なんかしていい訳ではないのだ。
「そのためにはもっと天眼を扱えるようにならないと」
迅の戦いで学ぶ事が出来た特性の操作。今は意識して行わないと難しいが、最終的には反射的に特性の強弱を切り替えられるまで持って行かなくてはならない。それに加えて他にも出来る事があるかもしれない。頭痛や吐き気が嫌で使う事を控えていたが、これからは積極的に使う事を決意する。
「――おっ。起きたか、オサム」
修がある決意を抱いていると様子窺いに来た空閑が入室して来た。
「空閑? ここはどこなんだ。どうして、僕は――」
「ここは東隊の隊室だって。オサムはてんがんの使い過ぎで倒れたんだよ。で、そんなオサムを介抱する為にここへ連れて来たんだ」
「……そうか。みんなに色々と迷惑かけたみたいだね。すまない、空閑」
「俺は大丈夫。これもオサムが決めた事だろ。チカを護る為に」
けど、と続けて。
「他のみんなにはお礼を言った方が良いと思うけど、今はやめた方がいいかな」
自分が入ってきたドアを指差し、こちらへ来るように言って来る。
いったい何があるんだろうと思って近寄ると、空閑は静かにドアを開け――なぜか知らないがほんの少しだけ――様子を窺うように言ったのだ。
修は疑問を抱きながらも中の様子を窺う。
「だからぁ! メガネボーイは
「いーや! メガネくんは
なぜか知らぬが、模擬戦をしてくれた米屋と出水の二人が口論していた。引けぬ案件らしく両者の間に激しい火花のエフェクトが見えてしまう。
「……なに、あれ」
後ろ首に両手を回して、口を3の字にしている空閑に訊ねると「オサムの今後のこと」と簡潔に答えてくれた。しかし、その真意を察せなかった修は更に「僕の事?」と首を傾げながら訊ね返す。
「オサムは絶対に
正確には迅から色々と聞きだした太刀川が最初に言いだした事であった。
『三雲のトリオン量ならば
とのことだ。その言葉に同意したのが米屋である。彼もトリオン量は他の隊員と比べて低い方であるが、持ち前の運動神経でA級まで上り詰めている。自身がそうなのだから、メガネボーイだってその方が良いと主張したのだ。それに当然の如く反対したのが出水である。
「メガネくんの天眼は生命線だ。索敵能力と危機回避能力に特化した力を最前線で出すのは愚策もいい所だ。司令塔として配置させた方が良いに決まっている」
「そうか? 俺としては電撃戦――速攻時にアイツの能力が生かせると踏んでいるぜ。瞬時に敵の位置を割り出して、射線も即座に見破れる。それならば部隊として機能される前に単体で落とす方が効率いいはずだ。よって、
「た、太刀川さんが論理的に話す事に驚きだけど、俺としてはメガネくんの好きにさせてあげたいかなぁ……って。ほ、ほら。メガネくんってレイガストとスラスターを基本として戦術を組んでいる節があるし、そう言う意味では
「え!? 俺としては
「何を迷っているの駿。三雲先輩は
「あらら、双葉は随分と三雲くんにお熱なのね。けどね、数少ない
「そうですね。加古さんの言うとおり、今後の防衛戦も考慮しますと
本人を差し置いて好き勝手言っている者達――なぜか面識もない人たちもいたが――の言葉に修は大量の冷や汗を流さずにいられなかった。
「く、空閑。これは――」
「だから、第一回三雲修の適性ポジションを考えよう会だって」
「それ今考えただろ。絶対に」
「そ、そんな事はないよ」
「ウソを言っている。空閑はつまらないウソを言っている!」
「オサム。そんな大声で言ったらばれるぞ。音量を下げて下げて」
「うっ……。すまない」
謝る必要はないのだが、反射的に空閑へ謝罪していた。空閑は満足気に「うんうん」と頷き、想像したら恐ろしい事を言って来る。
「迅さんが「オサムが目覚めた事を知られるな」って言っていたからな。当分の間、狸寝入りしていろって言っていたし」
「迅さんが?」
恐らく未来視のサイドエフェクトで自身が目覚めた事にいち早く気付いたのだが、なぜ自分が目覚めた事を知られてはいけないかまでは察する事が出来なかった。
もっとも、いま目の前で繰り広げられている「三雲修の適性ポジションを考えよう会」なんてものに参加したくないので、ここは迅の行為に甘える事にする。
***
「まぁまぁ、お前達の意見はもっともだが、最終的に決めるのは三雲くん自身だ。自分の考えを押し付けるのは良くないんじゃないか?」
場がヒートアップしている中、東の鶴の一声によって静まりかえる。誰しもこの場の年長者に反射的に反論する事など出来る訳がなかった。
「けど、東さん。三雲は
と思いきや、太刀川が観戦している先の戦いを指差しながら同意を求めて来たのだ。
「そう言えば、東さんってメガネくんと組んで狙撃戦に参加したんですよね。どうだったんですか? 視覚共有をしたって言っていましたが」
隊長太刀川の言葉に続いて、思い出したように言葉を紡ぐ出水。彼は狙撃戦を観戦していた為に東が修とタッグを組んで模擬戦をした事を知っている。
「どんな感じと言われてもな。まぁ……なんて言うんだ? 口では上手く説明出来ない異様な体験をさせてもらったって感じだな。相手の裏をかく発想力はいいと思う。あれでまだ15歳なのだから恐れ入るな。もっと戦術を学んだらいい戦闘員になるんじゃないかと思う」
一度、修の天眼を共有した事がある東は自身が感じた感想を口にするが、中々みんなに伝わらなかったようだ。
「はいはい、質問っ! さっき迅さんが三雲先輩は相手の射線を目視できるって言ってたけど、それって本当ですか?」
「あぁ、その通りだ緑川。あれは中々体験出来ない事だったな。自身に伸びる赤い帯状の光が伸びて来たと思うと実際に弾丸が飛んで来たんだから驚きだったな」
東は視覚共有で体験した事を思い出す。修の天眼の能力の一つである鷹の眼は破格の能力であった。相手の射線を目視出来る事は考えている以上に便利な能力である。不意を突かれたとしても先に鷹の眼が射線を教えてくれる。弾丸の軌道が分かれば対処する方法などいくらでもある。
それを聞いて、当然反応したのは
「なんだよそれ。めちゃくちゃ便利な能力じゃないか。……なぁ、迅。三雲をうちの隊にくれ」
「……は? 太刀川さん、いきなり何を言っているの?」
「だって、三雲がいれば不意打を受ける必要もないし、隠れている相手も見つける事が出来るだろ。敵の位置をいち早く知る事が出来れば、うちの出水が狙い撃ちする事も可能だ。三雲はうちの隊こそ相応しい」
「ダメダメっ! ちょっと太刀川さん何言っているの。うちの人間を引き抜こうとしないでよ。それにメガネくんはもう隊を組む人間を決めているの。既に売約済みなのっ!」
流石にそれはシャレにならない。確かに修が太刀川隊に入ればいい事尽くめかもしれないが、そうなったらそうなったで色々と未来に問題が生じてしまう。本部と玉狛支部の全面戦争が起こりかねない。
「ふん、くだらない。あんな素人に何を熱くなっている」
唯一冷めた目で話の成り行きを見守っていた二宮が初めて言葉を挟む。
「奴の過去の模擬戦を見せてもらったが全然ダメだ。たかが反射神経が良くても、それ以降の対処がなっていない。そもそもなんだ、あの
二宮のダメ出しを扉越しから聞いていた修は胸にスコーピオンを刺されたような痛みを感じてならなかった。彼の言うとおり、修はゼロ距離射撃の
「あんなへっぽこ弾を使うなど俺が許さない。
――はい?
まさかの二宮の発言に、その場にいた全員が素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっ! 待って二宮さん。メガネくんは最初に俺が目を付けたんですよ。アイツの師匠になるのは俺ですからっ!」
「ふん。お前の様な感覚派が真面に弟子を育てられるはずがないだろう。教えを乞うた俺が言うのだから間違いない」
かつて二宮は
「そうね。出水君じゃ三雲君を指導するのは難しいかもね。彼の闘い方は
「けど、加古さんは主に使っているのって
ここにきて、まさかの
それを覗き見ていた修は全身冷や汗を掻きながら呟くのだった。
「……なに。このカオス状態は」
「モテモテだな、オサム」
それから一時間ほど、修は
***
ちなみに終始会話に入ってこなかった東隊
人が多すぎて失敗したよ(泣
けど、このやり取りをさせるには必要不可欠だからなぁ。
ちょっと拙すぎましたがご了承願います(マテマテ