三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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はい、BT戦です。風刃の描写が難しい。てか、三輪のキャラが掴みにくい。
やはり、攻撃手修だと攻撃手段が限られて難しいことがわかりました。

弧月ではなくスコーピオンにするべきだっただろうか。



SE修【天眼】VS三輪【BTver】

 風刃。形状は弧月に酷似しているが、その性能は現存のブレードトリガーを軽く凌駕している。弧月以上の斬れ味と耐久性を誇り、スコーピオンよりも軽い。それだけでも武器として魅力的であるが、風刃の真価は別の所にある。

 

 

「っ!?」

 

 

 地を這う様に斬撃が修に襲い掛かる。数は三つ。速度重視の通常弾(アステロイド)よりも飛来スピードが速く強化視覚で高めた視力でもやっとであった。

 

 

「(やっと、風刃を起動してきた。……ここからが本番だ)」

 

 

 出し惜しんでいた風刃の起動を確認した修は気を引き締め直す。何せ、相手は玄界(ミデン)に三本しかない(ブラック)トリガーの一つ、風刃だ。

 

 

「(風刃の性質は迅さんから聞いていたけど、やっぱり厄介だなこれは)」

 

 

 間髪入れる事無く更に三つの遠隔斬撃が襲い掛かってくる。

 風刃の真価はこれに合った。目に届く範囲ならば斬撃を物体に伝播させて攻撃を行う事が可能である。今の三輪はどこに居ようとも修に攻撃を当てられる事が可能である。

 

 

「望み通り、風刃を起動してやったぞ」

 

「はい、ありがとうございます。これで本気になって三輪先輩を倒せます」

 

「やれるものならやって見ろ」

 

 

 会話をしている間に斬撃用の帯をリロードし、再び修に向けて遠隔斬撃を放つのであった。

 

 

 

***

 

 

 

 三輪の風刃起動に一番驚愕したのは嵐山隊の二人であった。

 

 

「……は? なんで、三輪がアレを使っているんだ?」

 

 

 風刃を本部に返却した事は迅本人から聞かされていた事なので知ってはいたが、次の持主が三輪になって居たことは聞かされていない。当然の如く迅に詰め寄る嵐山であるが、彼の部下である時枝が止めにかかる。

 

 

「落ち着いてください、嵐山さん。恐らくはこれが戦いの目的なんでしょう。三雲君の実力を向上すると同時に、三輪先輩に風刃を慣れさせるためなんだと思います。違いますか、迅さん」

 

「さすがだな、時枝。その通りさ。まあ、俺の目的はもう一つある所なんだけどね」

 

 

 風刃は元々迅が使っていた(ブラック)トリガーであるが、横で観戦している空閑を玉狛に引き入れる為に取引材料として本部に譲っている。今後の未来の為に是非とも風刃の使い手を早めに決めたかった迅としては、これが良き未来へ向かうファクターとなる事を祈るばかりであった。

 

 

「……どうだ、迅」

 

 

 遠隔斬撃をテレポーターで避け続ける修を見つつも東から問われる。主語がない質問であったが、何をいいたいか知っている迅は「まだですね」と首を横に振った。

 

 

「(なんだ? いったい、何が足りないんだ。メガネくん)」

 

 

 今の天眼の能力も破格な性能であることは認めるが、それでもまだ足りない。決して三輪と戦う事が無駄とは言えないが、本来の目的は天眼の性能を更に高める事にある。けれど、一向にその兆しが見られない。迅のサイドエフェクトが合ってしても、その未来の要因を垣間見ることが出来ずにいた。

 

 

「落ち着け、迅。焦るのは分かるが、今は目の前の事に集中しよう」

 

 

 表情に出ていたのか、東が軽く肩を叩いて諭す。修の命に係わる事と知れば焦る気持ちも分からなくはないが、焦った所で事態が好転する訳ではない。珍しく苦虫を噛み潰している迅に「今は戦う三雲君の勇姿を見守ろう」と告げる東であった。

 

 

「……オサムの奴、随分と戦い難そうだな」

 

 

 終始、黙って修の戦いぶりを見守っていた空閑が初めて言葉にする。その感想に時枝が返す。

 

 

「仕方がないと思うよ。三雲君の戦いを見た事がありますが、彼は弾丸トリガーを駆使して闘うスタイルのはずです。彼がなんで攻撃手(アタッカー)構成のトリガーで戦っているのか分からないけど、あれでは三輪先輩の風刃を攻略するのは難しいんじゃないかな」

 

「確かにな。レイガストを使っていたが、あれはどちらかと言うと接近する為の盾であり、奇襲する為の槍のはず。その隙を突いて通常弾(アステロイド)を有効に活用するからこそ活かせた戦闘スタイルのはずなんだが」

 

 

 時枝と嵐山は同時に迅の方向へ視線をやる。二人の中では既に答えを得ていたのであろう。どうせ、この暗躍エリート様が修に何かしら施したのであろうと。

 

 

「はいはい。俺が原因ですよ。だから、二人してそんな目で見ないでくれないかな」

 

「迅、お前なあ」

 

「悪手も良いところですよ。どんな理由でこうなったのか知りませんが、使い慣れていないトリガーで勝てる程、三輪先輩は甘くありません」

 

 

 事実、今の修は攻めあぐねていた。テレポーターで奇襲をかけて弧月を振るっても、気配を察知して即座に対処される。それだけならノーマルトリガーの時と一緒であるが、刃を交えた時に修の弧月の刃が欠けたのだ。このまま刃を交え続ければいずれ壊されてしまう。それを嫌った修はグラスホッパーで後方に跳ぶと同時に旋空弧月で牽制を図るのだが、風刃の一撃によって両断されてしまう。

 

 

「厳しいな。幾ら(ブラック)トリガーは他のトリガーを使う事が出来ないとはいえ、あれでは歯が立たないぞ、迅」

 

「分かっている。けど、メガネ君はこの程度の壁など乗り越えて貰わないと困るんだよ」

 

 

 自分がどれだけ無謀な事をしているか、そんな事は迅自身が一番自覚していることだ。けれど、運命の瞬間まで出来るだけの手段は講じておく必要がある。その為には修に恨まれようとやらなくてはいけないと考えている迅であった。

 

 

 

***

 

 

 

 圧倒的な戦力差に修は未だにダメージを与える事が出来なかった。それだけならまだしも、最初に刃を交えてからと言うもの、三輪の一メートル範囲に近づく事すら困難になってきている。

 

 

「(……マズい。このままいくと)」

 

 

 今のトリガー構成では練れる戦略も多くはない。テレポーターを主軸とした奇襲戦も決定的なダメージを与える事が出来ずにいた。だからと言って、遠距離戦に強みがある風刃とやり合えるような手札は修にはない。変化弾(バイパー)炸裂弾(メテオラ)などがあればやりようがあったはずだが、今はないものねだりをしている場合でもない。

 

 

「(チャンスは風の帯を再装填する瞬間だけど、僕の弧月だと――)」

 

 

 トリオン量によって遠隔斬撃を連続で行える回数が決められていると迅から聞かされている。戦いの様子を見ている限り、三輪が連続で放てる回数は六発であると推測出来る。

 襲撃を掛けるならば、再装填をしている間にやるのが良策であるが、接近戦に持ち込んでも風刃の斬れ味の前に歯が立たない始末だ。

 

 

「どうした、三雲。本気で俺を倒すんではなかったのか?」

 

 

 防戦一方の修に挑発を投げる。あれほど強気な発言をしたのだ。何かしら風刃の対処法があると思っていたのだが、その気配を一向に見せない。言葉を返さない修に三輪は言葉を続ける。

 

 

「お前たちが何を狙っているのか俺の知った所ではないが、正直に言って時間の無駄だ。風刃の使い方も分かってきたところだし、そろそろ仕留めるぞ」

 

 

 五条の風の帯が斬撃となって扇状に拡散される。この短い間に風刃の特性を把握したのだろう。

 

 

「っ!!」

 

 

 自身に襲い掛かる遠隔斬撃を躱そうと目論むが――。

 

 

「(安全地帯がない)」

 

 

 風刃の斬撃軌道から危険地帯を算出してテレポーターで躱すつもりが、扇状に散ばられた遠隔斬撃によって安全地帯が三輪の後ろしか確認出来なかった。ならば三輪の後ろに転移すればいい話だが、放たれた斬撃は五つ。まだ全ての斬撃を開放していない。三輪の背後に瞬間移動したら間違いなく最後の一撃を叩き込まれるはずだ。

 

 

「(だったら――)」

 

 

 逃げる選択肢がないならば逃げなければいい。

 弧月の剣先を三輪に合わせ、襲い掛かる風刃の斬撃に挑む様に地面を蹴る。

 

 

「(向かって来るか)」

 

 

 第三の選択を取った修の動きに合わせて、三輪も風刃を振り上げる。もしも、修が風刃の斬撃を嫌って自身の背後に回って転移したならば、その直後に風刃の遠隔斬撃を叩き込むつもりであった。扇状に解き放った遠隔斬撃はあくまで修の動きを制限させるための陽動であったのだ。

 一直線に向かって来る修の動きをにらみつつ、最後の一撃がいつでも放てるように準備する。恐らく修は自分へ飛来する斬撃を躱して、その勢いのまま攻撃をするつもりだ。ならば、攻撃の機は躱した直後。例え致命傷を与える事が出来なくてもダメージを与える事は出来る筈だ。

 

 

「(東さんが見ているんだ。格好悪い姿は見せられない。それに――)」

 

 

 理由はどうあれ三輪は高性能のトリガー、(ブラック)トリガーを使用しているのだ。それに加えて修はB級隊員。圧倒的な戦力差で負けてしまったら自分自身を許せなくなってしまう。

 

 

「(――こいつ程度で苦戦するようでは、近界民(ネイバー)を殺すなど到底不可能だ!)」

 

 

 第一次大規模侵攻時に三輪は最愛の姉を失っている。あの時、自分にもっと力があれば姉を護る事も出来たはずだ。だからこそ、この戦いは負けられない。負ける事は許されない。目の前に迫りつつある修程度、軽く捻らなければ復讐など出来る筈がない。

 修が一条の遠隔斬撃と接触しようとしている。必ず修は何らかの方法で斬撃を躱して、攻めに転じる筈だ。

 

 

「(さぁ躱して見せろ。その時こそ、お前の……なに?)」

 

 

 次の瞬間、修の右腕が宙を舞う。最小限の犠牲を払ったまま突貫する事も予想はしていたが、まさか攻撃の要であるはずの弧月を掴んでいた腕を犠牲にさせるとは思ってもみなかった。

 だが、三輪は知らない。本来の修が使うブレードトリガーは弧月に在らず。

 

 

「レイガストっ!!」

 

 

 左腕にレイガストが展開される。

 

 

「スラスター・オンっ!!」

 

 

 被弾した直後にスラスターを起動して急加速。三輪の一瞬の思考停止を狙って真向からの強襲を図ったのだ。

 

 

「っ!? な、舐めるなぁっ!!」

 

 

 最後の遠隔斬撃を解き放つ。

 

 

 

***

 

 

 

「……今日は悪かったな、秀次」

 

 

 修との闘いを終えた秀次に向かって、迅は謝罪と礼を述べる。

 

 

「勘違いするな。城戸指令から、風刃を慣らす為に訓練をしろと言われたまでだ。今回はたまたま、貴様の利害と一致しただけだ」

 

「それでもいいさ。俺が望んだ結果にはならなかったが、今回でお前が風刃に慣れてくれればいいさ」

 

「……三雲修。アイツは何なんだ。最後のあれは正気の沙汰じゃなかったぞ」

 

「はは。お前もそう思う? いやー、見ていた俺も驚いたよ。まさか、両腕を犠牲にしてお前に詰め寄ろうとするなんてさ。やっぱ、慣れないトリガーでお前と闘わそうとしたのは間違っていたかな」

 

 

 あの時、修のレイガストによる突貫は三輪に届かなかった。三輪の攻撃の方が少しばかし早く、レイガストを掴んでいた方の左腕も風刃によって切り裂かれてしまったのだ。

 本来ならばこの時点で勝負は決まっていたが、信じられない事に二人の間に弧月が飛び込んできたのだ。

 

 

「まさか、左腕が斬られた瞬間にグラスホッパーを起動して、飛んでしまった弧月を呼び戻すとか無茶苦茶もいい所だよな。あんな使い方を思いつくのなんて天眼持ちのメガネくんぐらいだろうさ」

 

 

 グラスホッパーの本来の使い方はジャンプ台だ。自身の足元に展開して跳躍し、空中軌道を可能にするための補助トリガーである。しかし、修は宙に舞った弧月の行く先にグラスホッパーを展開して、自身に舞い戻ってくるように作動させたのである。天眼があるからこそ出来た離れ業もいい所であった。

 

 

「だが、馬鹿げている。弧月を口にくわえて振るおうとするなど無謀もいい所だ」

 

「あ、あははは。あれには参った、本当に。きっと、玉狛に戻ったらみんなからお説教が待っているだろうね」

 

 

 三輪戦に関しての全容は既に全員へ送っている。アレを見て、何も思わない仲間達ではないはず。きっと、小南を先頭に全員からお説教される事は間違いないだろう。

 

 

「……三雲修に伝えろ」

 

「はい?」

 

「お前の考えを正しいと思うならば、次は全力で俺に向かって来いとな」

 

「しゅ、秀次がツンデレたっ!?」

 

 

 盛大に驚きの声を上げた迅に風刃を突き出したのは言う間でもなかった。

 




本当ならば、鞘を使った飛○御○流とかもやらせてみたかったが、自分のお頭では無理でした、はい。

なんか、色々と中途半端な気がしますが、これにて攻撃手編は終了です。
……さて、いよいよ射手編ですかね。

どうしましょう?(マテ

ちなみに案としてはいくつかあったりするんですよね。

案1:みんなで修をいじめよう (VS射手全員)
案2:指導と言う名のしごき  (一人ずつ)
案3:攻撃手陣の逆襲から守れ (射手対攻撃手の連戦)
案4:修の師は譲らないぞ   (射手VS射手)

などなど。
……GW中に投下できればいいなぁ。

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