三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

45 / 60
お久しぶりです。
まあ、色々とあって今まで放置しておりました。


SE修【天眼】VS二宮

『三雲ダウン』

 

 

 これで何度目になるであろうか。

 修は容赦なく襲い掛かる弾丸の嵐を避けつつ、自分の不甲斐なさに悔恨を感じずにいられなかった。

 

 

「その程度か、貴様の実力は。避けてばかりじゃ勝てる戦いも勝てないぞ」

 

 

 防戦一方の修に更なる通常弾(アステロイド)を放つのは、なぜか戦闘体をスーツ姿に設定している二宮隊を率いる二宮匡貴である。

 二宮が放った通常弾(アステロイド)は速度重視の弾丸である。二宮程のトリオン量と技術があれば、並大抵の隊員は彼の弾丸を反応する事なくぶち抜かれる事であろう。

 しかし、修には弾丸の軌道を可視化する事が出来る鷹の眼がある。二宮の通常弾(アステロイド)が真直ぐ自身の四肢を狙い定めていた。

 弾丸の軌道が分かれば躱す事は容易い――と、思いきや襲い掛かる二宮の通常弾(アステロイド)は早すぎた。どうにかレイガストで防ぐ事は出来たが、防御するだけで精一杯である。

 

 

射手(シューター)は発射前に弾丸をある程度浮かしたり、散らしたりすることが可能だ。それを使い熟せば――」

 

 

 

 ――通常弾(アステロイド)

 

 

 

 更なる通常弾(アステロイド)を周囲にばら撒かせて、通常弾(アステロイド)を発動させる。今度は先の通常弾(アステロイド)と違い、多角的に放出されている。全てイーブンに設定された弾丸はダメージを受ければ修にとって致命傷だ。しかし、躱そうにもこれほど雨の様に物量戦で来られたら避ける事など不可能に近い。

 

 

「くっ!」

 

 

 回避の選択が無理なら、残されているのは防御のみ。レイガストを前に突き出して、弾丸を防ごうと動く修のレイガストに炸裂弾(メテオラ)が命中する。

 

 

『三雲ダウン』

 

「強化視覚と言うサイドエフェクトがあると言うのに余裕がなさ過ぎる。圧倒的な物量戦で来られただけで困惑している程度じゃ、この先やった所で時間の無駄だ」

 

「……もう一戦、お願いします」

 

「なら、守り一辺倒ではなく少しは攻撃に転じて見ろ。次、こんな不甲斐ない戦いぶりを見せたら終わりにするからな」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 

 負傷したトリオン体が回復したのを確認し、修は再びレイガストを生み出す。

 

 

 

***

 

 

 

 出水との訓練の後、修は過去の模擬戦を確認しながら反省点を洗い出す。

 

 

「……やはり、これと言った武器がないのがいけないんでしょうか」

 

「天眼以外と言う意味ではそうかもしれないな。けど、修の真価はチーム戦にある。そこまで深く考える必要はないと思うがな」

 

 

 隣で見ていた烏丸が応える。

 一方的に蹂躙された事に気落ちしている弟子を気にしてか、空気を読まない先輩を蹴り飛ばして一緒に過去の戦いを見ていたのであった。

 

 

「……いえ。ランク戦は常に空閑や千佳と一緒とは限りません。特に合流する前に遭遇してしまったら、負ける確率が高いと言えます。……僕に空閑や千佳の様な武器があればいいんですが」

 

 

 チームメイトになってくれる空閑と雨取は他の隊員には真似できない武器がある。

 空閑は機動力と今まで培った戦闘経験がある。並大抵の隊員に後れを取る事など想像すら難しい。

 雨取は圧倒的なトリオン量がある。アイビスから放たれる一撃は砲撃と呼ばれる程の威力を誇る。

 二人とも単独でも生き残るだけの武器が備わっている。それに加えて修の能力は索敵に特化された力である。使い方次第では多大な恩恵を与えてくれるが、そのデメリットとして自身のトリオンを注ぎ続けなければならない。そのせいで他の隊員と比べてやれる事が少ない。今までは初見と言う事もあってどうにかなったかも知れないが、これからは相手も自身を調べつくすことであろう。そうなってしまえば、修程度の実力で生き残る事は難しくなる。

 

 

「けど、修には圧倒的な回避能力があるじゃない。それに加えて射手(シューター)の戦術を確立させれば、問題ないと思うわよ」

 

 

 思考が後ろ向きになりつつある修にフォローをいれたのは小南であった。

 彼女が言った言葉は本心である。確かに修にとっての強みは単独にないかもしれないが、それは“今の修”と言う意味だ。

 修はまだ若い。色んな意味で成長が楽しみな逸材だ。今すぐに結果を求める必要はないと考えている。

 

 

「小南先輩の言うとおりだ。……もし、何か変化を付けたいのなら、いっそのことレイガストを外したらどうだ?」

 

「レイガストを、ですか?」

 

「そうだ。これまでの戦いに必ずと言っていいほどレイガストを入れていたのは修なりに考えがあったのだろうが、レイガストは修の戦いに不向きなトリガーだと俺は思う。確かにスラスターを併用した戦術は騙し討ちに向いているかも知れないが、それならばスコーピオンやらオプショントリガーを併用して戦った方が修には適していると思う」

 

 

 仮にレイガストとスラスターを抜けば、烏丸としてはスコーピオンとテレポーターかカメレオンを勧めた事だろう。

 トリオン量の問題はあるが、それでもやり方次第では戦い方に変化を与える事が出来る。メテオラで姿を眩ませてカメレオンなんて戦い方も可能だろう。

 

 

「けど、それじゃあ射手(シューター)じゃなくって、どっちかと言うと万能手(オールラウンダー)になるんじゃないの?」

 

「別に射手(シューター)に固執する理由はないと思います、小南先輩。修は狙撃トリガーだって使えるんですから、何ならレイジさんみたいに完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)を目指すのもありかと思います」

 

「そうね。修の天眼があれば――」

 

「――いや、それではダメだ」

 

 

 烏丸の考察に納得しそうになった小南の言葉を遮ったのは、今の今まで静観を決めていた木崎レイジであった。

 

 

「レイジさん?」

 

「珍しいわね、レイジさんが意見を挟むなんて」

 

「本当ならば静観を決め込むつもりだったんだがな……。京介、修を少し借りるぞ」

 

 

 突然のレイジの誘いに修の眼が点になる。

 

 

「それは構いませんが、何をするんです?」

 

「レイガストの使い方を少し教えるだけだ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 ――通常弾(アステロイド)

 

 

 

 様子見の意味で二宮は通常弾(アステロイド)を解き放つ。射程を犠牲にした速度と破壊力を重視した通常弾(アステロイド)だ。

 しかし、弾丸の軌道は前の戦いと同じ様に単純な軌道だ。躱す事は容易であろう。けれど、二宮の狙いはその後だ。大きく回避行動を取った後に――追尾弾(ハウンド)を放って敵の動きを封じるつもりなのだ。

 修の天眼の一つ、鷹の眼もそれは捉えている。普通ならば回避行動か防御の二択しかないのだが、修は第三の選択を選ぶ。

 

 

 

 ――スラスター・オン

 

 

 

 一閃。

 弾丸の軌道にレイガストの斬撃の軌道が交差するタイミングを合わせて、被弾するであろう通常弾(アステロイド)を全て切り捨てる。

 

 

「ほぉ」

 

 

 

 ――通常弾(アステロイド)

 

 

 

 お返しと言わんばかりに修も通常弾(アステロイド)を解き放つ。

 設定を全く加えていない、いたって普通の通常弾(アステロイド)だ。

 

 

通常弾(アステロイド)!」

 

 

 修の通常弾(アステロイド)に自身の通常弾(アステロイド)をぶち当てる。

 シールドを使って防御する事も可能であったが、修の弾丸の軌道は天眼がなくても見極める事は容易。

 トリオン量で勝っている二宮の弾幕に修の通常弾(アステロイド)は全て撃ち落とされてしまう。

 が、修の弾丸が二宮の弾丸に触れた瞬間、小規模の爆音と爆風が発生したのであった。

 

 

「(炸裂弾(メテオラ)か。通常弾(アステロイド)と言ったのはブラフか。なら、次にする行動は――)」

 

 

 

 ――スラスター・オン

 

 

 

 煙幕を突き破る飛来物が二宮を襲う。

 

 

「(やはり、レイガストか)」

 

 

 過去の戦いから修がレイガストを投擲する癖は研究済みであった。姿を眩まし、強襲するにはスラスターを利用したレイガストの投擲は修の攻撃の中で最速の攻撃手段である。

 

 

 

 ――シールド×2

 

 

 

 敵の攻撃手段が分かっているならば慌てる必要はない。

 いくら速度の高い攻撃と言っても軌道は容易に見切る事が出来る。二宮程のトリオン量ならばシールドの面積を限りなく小さくしてフルガードをすれば、レイガストの攻撃であっても容易く防ぐことが可能だ。

 事実、修のレイガストは二宮のシールドに阻まれて明後日の方角に跳ね返され――爆発する。

 

 

「っ!?」

 

 

 予想もしなかった現象に二宮は顔を初めて表情を崩すことになる。

 

 

「(レイガストに炸裂弾(メテオラ)を付着して飛ばして来たのか?)」

 

 

 その予想は正しかった。修はレイガストを投擲する前に炸裂弾(メテオラ)を使用し、爆発する飛槍をぶっ放したのである。

 

 

変化弾(バイパー)+炸裂弾(メテオラ)

 

 

 二宮がレイガストに意識を奪われている間に、修は必殺の一撃を造り出す。

 相手がB級一位の部隊である隊長であろうとこの一撃を真面に受ければタダでは済まないはず。

 レイガストによる強襲はこの一撃を生み出すための布石にしか過ぎなかった。

 

 

 

 ――変化炸裂弾(トマホーク)

 

 

 

 修の最大火力が解き放たれる。四方に散開した変化炸裂弾(トマホーク)は狙い澄ましたように、全弾が二宮がいる方角へ軌道を変え一斉に襲い掛かる。

 

 

「ちっ!」

 

 

 

 ――追尾弾(ハウンド)×2

 

 

 

 最大火力には最大火力。

 二宮も出遅れながらも追尾弾(ハウンド)によるフルアタックで変化炸裂弾(トマホーク)を撃ち落としにかかる。

 けれど、八割方は無力化する事は出来たが、それでも数発は迎撃する事が出来なかった。

 

 

 

 ――シールド

 

 

 

 だからと言って、慌てる必要はない。数が減った弾丸など冷静に対処すれば何の問題もない。

 シールドで丁寧に受け止めた二宮は次の一手を打つ――前に修がトリオンキューブを握りしめながら突貫してくるじゃないか。

 

 

「(バカの一つ覚えだ)」

 

 

 強襲の一手としては悪くない。けれど、それを可能にするには上位攻撃手(アタッカー)並の身体能力が必要となる。

 故に修の吶喊など――。

 

 ――通常弾(アステロイド)

 

 冷静に対処すれば簡単に無力化出来る。

 

 

『三雲、ダウン』




実は射手(シューター)が一番戦いの表現が難しい、と言うことに気づきました。
弾丸を飛ぶ表現って難しいですよね。

特に修みたいなトリオン量が少ない射手(シューター)は、一工夫しないと真面に戦えないわけですから。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。