三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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本編?


偶には戦闘以外も書きたかったんだ。ほ、ほら。流石にネタが尽きかけてきたし。


SE修【天眼】上層部も出番が欲しい

 とある日、修は上層部から招集命令を受けて本部に足を運んでいた。

 

 

「(ここに来るのも久々だな)」

 

 

 過去に数回ほど、修は会議室に足を運んだことがある。あまりいい思い出ではない故に召集命令が下された時は憂鬱な気分にさせられたが、自分が所属している玉狛支支部長の林道から「説教とかそう言った類じゃないから心配するな」と言われている。

 

 

「(なら、何で呼ばれたんだろう?)」

 

 

 自分が上層部から呼び出される理由が分からずにいた。空閑やレプリカ絡みの話し以外で呼び出される理由が想像もつかないのだ。

 林道からそれとなく聞いてみたが、彼は「まあ、行ってみれば分かるさ」とだけ言って詳しい事を話してはくれなかった。

 心配した玉狛の先輩達が同行を申し出てくれたが、自分の為に貴重な時間を潰すのが申し訳なくて丁寧に断っている。空閑や千佳も同行しようと考えていたが、指定された日時はどちらも合同訓練が入っている。一秒でも早く修と同じB級に上がる為にも合同訓練をサボる訳にもいかないので、二人は申し訳なさそうに謝罪した時は苦笑いをせずにいられなかった。

 

 

「(この程度でみんなに心配される訳にはいかないよな、やっぱ。もっとしっかりとしないと)」

 

 

 自分の頼りなさに改めて痛感させられた修は今後も精進を忘れない様に誓うのであった。

 ゆっくりと深呼吸をして、修は上層部の方々が待つ会議室に入室する。

 

 

「――失礼します。玉狛支部所属、三雲修。招集命令に応じて参上いたしました」

 

 

 入るなり、全員の視線が集まるのを肌身で感じる。

 

 

「来たか。かけたまえ、三雲隊員」

 

 

 初めに声を掛けたのは、界境防衛機関(ボーダー)の最高責任者である城戸正宗であった。

 

 

「はい、失礼します」

 

 

 城戸の言葉に従い、近くの席に座った修を見計らい「それでは始めるとしよう」と会議を始めるのであった。

 

 

「すまんね、三雲君。急に招集されて驚いただろう」

 

 

 会議の進行役は本部長の忍田真史に任されているのだろうか。彼は緊張した表情で耳を傾ける修に話しかける。

 

 

「は、はい。その……。どうして僕が緊急招集なんてされたのか分からなくて。あの――」

 

「――今回、招集した理由はお前の副作用(サイドエフェクト)についてだ」

 

 

 話しを遮ったのは開発部門を担う鬼怒田本吉であった。

 

 

「僕の副作用(サイドエフェクト)ですか?」

 

「そうだ。三雲君の副作用(サイドエフェクト)、強化視覚。周りからは天眼と呼ばれているんだってね」

 

「は、はい。あの、それが何か……」

 

 

 忍田の質問に頷き、話しを続けようとするのであったが、今度は城戸によって遮られてしまう。

 

 

「林藤から報告書を見たが、ここに記載してある事は事実か?」

 

「報告書、ですか? あの、僕はその報告書の中身を知らないのでお答えのしようが――」

 

 

 修の返答を予測していたのだろう。城戸は忍田に視線を向け、忍田は小さく頷くと後ろで控えていた沢村響子に指示を出す。

 

 

「はい、三雲君。これがその報告書ね」

 

 

 沢村から件の報告書を受け取り、内容に視線を走らせる。

 

 

 

 

 三雲修の副作用(サイドエフェクト)の性能報告書

 

 概要

 本報告書は玉狛支部所属B級隊員の三雲修が所持していた副作用(サイドエフェクト)の性能について記されたものである。

 

 プロフィール

 氏名 :三雲修 15歳

 生年月日 :5月25日

 身長 :168㎝

 血液型 :A型

 星座 :うさぎ座

 

 過去に母校がトリオン兵に強襲され、C級隊員でありながら規約を破って戦場に立った経歴を持つ。また、近界(ネイバーフット)から来た空閑遊真と最初に接触した人物であり、玉狛支部に引き入れた第一人者。

 入隊試験を受けるものの、トリオン量が圧倒的に欠如しており結果は不合格。迅悠一の口添えによって特別枠で界境防衛機関《ボーダー》に入隊する。

 C級に入ってから特質したものは見られなかったが、近界民(ネイバー)の空閑遊真と共にイレギュラーゲートの件の解決を導き、その功績が認められてB級に昇格する。

 トリオン量、戦闘技術、戦闘経験、そのすべてにおいて未熟と言わざるを得ないが、ある日にトリガーの不調で眼鏡が換装されなかった事で副作用(サイドエフェクト)が備わっている事を認知する事になる。

 副作用(サイドエフェクト)の詳しい報告は以下に記す。

 

 

 

 副作用(サイドエフェクト)

 

 正式名称 :強化視覚

 

 視覚能力を極限まで高める事が可能。使用者のトリオンを消費する事で能力を維持しており、一定時間を超えると頭痛と吐き気を催してしまう。連続使用時間は調査中。

 現在、5つの効果を備わっている事が判明されている。

 

 効果 :千里眼・浄天眼・複眼・強化視覚・鷹の眼

 

 千里眼

 常人が不可能な距離の視覚を鮮明に読み取る事が出来る。具体的な可能距離は不明であるが、1㎞以内は可能である事は確認済みである。

 

 浄天眼

 透視・洞観に特化した性能。

 隠密トリガーのカメレオンの性能を見破った実績を持つ。また、本人が望めば障害物に隠れた死角の情報も読み取る事が可能。

 

 複眼

 視覚情報を全方面、視認する事が出来る。

 

 強化視覚

 体感時間を引き伸ばす事が可能。具体的な時間の延長は不明であるが、同支部所属のA級隊員、烏丸京介のガイスト【機動力特化】モードの動きを見極められた実績を持つ。

 

 鷹の眼

 弾丸の弾道を視覚化させる事が可能。

 赤い射線が伸びてから、弾丸が着弾するまで2秒であると判明。

 この効果は全ての弾丸トリガーに通じる。

 

 備考

 本部の隊員の力添えもあって、天眼の効果の出力調整が可能となった。それ故に、上記の内容が大きく異なる事もあり得る。

 迅悠一の副作用(サイドエフェクト)によると、他に二つほど備わっているようだが、その効果・発動条件は不明。

 

 

 

 

「改めて訊こう。その報告書に不備はないかね?」

 

「……副作用(サイドエフェクト)については本当です」

 

 

 ここで修は自身が呼ばれた理由が副作用(サイドエフェクト)絡みである事を察する。

 

 

「しかし、些か信じられませんな。自身のトリオンを消費する事で発揮する副作用(サイドエフェクト)。正直に言って異質じゃないのですか?」

 

「わしもそう思いますな。そもそも、それなら何故に今の今まで判明しなかったのか、という疑問が残るわい」

 

 

 根付と鬼怒田から疑問の声が上がる。それはある意味当然かも知れない。未だに判明されていない副作用(サイドエフェクト)であるが、判明している事も少なからずある。

 副作用(サイドエフェクト)を顕現した者達は、トリオン量が優れている者達ばかり。けれど、修の副作用(サイドエフェクト)はそのトリオン量を消費する事で発動する副作用(サイドエフェクト)の共通点から逸脱している。これを認めてしまうと、開発室からしてみると、自分達の考えが間違えである事を認めてしまうのと同じなのだ。

 

 

「お二人が訝しむのも仕方がないけど、修はこの力を用いて並み居る強豪から善戦している。それはお二人も既に見ていた事と記憶しているが?」

 

 

 林藤の指摘により、二人は口を閉ざしてしまう。修が会議室に来る前に上層部のお歴々は過去の模擬戦に目を通していたのだ。

 

 

「しかし、凄いな三雲君。この力は我々界境防衛機関(ボーダー)にとって有益な力だ。その力、大切に育てて欲しい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 忍田からの賛辞の言葉に嬉しく思いつつも、城戸からの言葉で姿勢を正しくさせられる。

 

 

「そこでだ、三雲隊員。我々は三雲隊員の副作用(サイドエフェクト)について詳しく把握するべきと考慮した」

 

「僕の副作用(サイドエフェクト)をですか?」

 

「そうだ。視覚をフルに使える副作用(サイドエフェクト)は我々界境防衛機関(ボーダー)にとって有益な力になる事は忍田本部長の意見と同じだ。そこで、どれほどの性能が備わっているのか、具体的な数字を知る事が急務と考えた」

 

「は、はぁ……」

 

 

 いまいち、城戸が言いたい事が理解出来ないでいた。そんな修の心情を察してか、忍田が補足説明をする。

 

 

「つまりだ。キミの目がどれほどの可能性を秘めているのか知りたいと言う事だ。防衛戦やその他諸々、三雲君の目があれば今まで不可能であったことが可能になるかも知れないと考えたのだ」

 

「な、なるほど」

 

 

 納得の声を上げたものの、上層部のお歴々が自身の副作用(サイドエフェクト)を高く評価した理由が分からずにいた。自身の副作用(サイドエフェクト)は戦闘向きとはいいがたい。応用次第では戦いを有利に運ぶことも出来るが、トリオン量を常に消費してしまうと言うデメリットがある。そんな使いにくい駒に利用価値を見出した理由が考え付かなかったのだ。

 しかし、それはあくまで修本人の考え。視る事に特化した副作用(サイドエフェクト)はどんな場面でも充分に真価を発揮してくれると上層部は踏んでいる。

 未開の地に遠征した時、大規模侵攻が発生した時、一番重要なのは情報だ。人が情報を得る最も多く占めている器官は視覚。それに特化した副作用(サイドエフェクト)を持つ人物が現れたと分かれば、有効活用するべきと考えるのは自然の道理である。

 

 

「三雲隊員には、千里眼。浄天眼と各種の効力を我々の監視の下で試験を受けてもらう。今後の進行役は鬼怒田室長に任せてある」

 

「……んじゃ、三雲。まずは千里眼とやらの試験を受けてもらう。先ずは……飛べ」

 

「………………はい?」

 

 

 鬼怒田の言葉に修は目を丸くさせるしかなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 一時間後。

 なぜか、三雲はヘリコプターに乗せされ、空の旅路に連行されていた。

 

 

『説明した通り、わしが指差した文字と色を当てて見せろ』

 

「き、鬼怒田室長っ!! い、いくらなんでもこれは……」

 

 

 内部通信で連絡を取り合う三雲の身体に風圧が衝撃波となって襲い掛かる。足に力を集中させて何とかバランスを保っている三雲であるが、正直に言って危なかしい。

 

 

『お前の千里眼は、1㎞は軽く視認出来るんだろうが。なら、手始めに五キロから始めるぞ!!』

 

「右から赤のキ、黒のヌ、緑のタ、黄色でひらながのは、白のハ、金のゲですっ!」

 

『おい、待て! わしはまだどこも指差してって寺島っ!! 誰が禿だっ! 誰が!!』

 

『スゲーな、オイ。米粒に書いた文字をあんな距離から読み取りやがった』

 

 

 

 ***

 

 

 

「次は浄天眼の試験を開始する。この中にトリオンキューブを複数ほど隠して来た。欲しければくれてやる! 探せ! この空間に全て――」

 

「……写真? 誰かのご家族の写真のようだが」

 

「そ、それは!? 無くしたと思った家族の……。返せっ! それは俺の魂だっ!!」

 

 

 鬼怒田、最後に撮った家族の写真をゲットだぜ。

 

 

 

 ***

 

 

 

「つ、次は複眼の試験をか、開始する。前後左右上下、あらゆる方向からトリオンキューブを射出するから、それに記載した文字を読み取れ」

 

「えっと……。わたしこと、さわむらきょうこは、しのだ――」

 

「――だ、誰ですかっ!? こんな文章を作った人はっ!!」

 

 

 沢村響子のローキックが火を噴くぜ。

 

 

 

 ***

 

 

 

「つ、次は――」

 

「鬼怒田室長、大丈夫ですか?」

 

「こ、これぐらい問題ない」

 

「(沢村さんの強烈なローキックで泡を吹いていたのに?)」

 

「次は――」

 

「強化視覚の体感速度を見極めるぞ、三雲君」

 

「し、忍田本部長? 何故に、トリオン体になって弧月を……まさかっ!?」

 

「その通りっ! この私の旋空弧月が見極めてもらおう」

 

「無理ですっ!!」

 

 

 なんだかんだ言って、五割近くの忍田の斬撃を躱す事に成功。そのせいで童心に火がついた忍田と一戦を交える事となる。

 

 

 

 ***

 

 

 

「最後は鷹の眼だ、修」

 

「あ、あの林藤支部長。これって、どこかで見た事があるような……」

 

「おう。インスパゲフンゲフン。……パクってみた。予測線を予測して、あの人形に触れてみろ」

 

「言い直していないですからね、それっ!? あなた達、何気に僕で遊んでいませんか? そうでしょっ!? きっとそうに違いません」

 

 

 弾丸は予測できた。けど、さりげなく変化弾(バイパー)を織り交ぜて来たのは意地悪もいいところだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 なんやかんやで全ての実験が終了し、城戸は沢村から受け取った報告書に目を通し、精も根も尽きかけている修に一瞥する。

 

 

「ご苦労であった、三雲隊員。これで試験は終了だ。後日、もう一度招集すると思ってくれたまえ。下がってよし」

 

「は、はい……。し、失礼します」

 

 

 退散の許可が下りるなり、修は重たい腰を上げて深々と頭を下げて退室する。

 会議室のドアが再び閉ざされたのを見守った一同は、手元の書類に視線を戻す。

 

 

 

 三雲修、副作用(サイドエフェクト)の結果報告

 

 千里眼

 5㎞からの米粒に書かれた文字すらも正確に読み取れる。

 読唇術を覚えさせたらマジやばくねby寺島

 

 浄天眼

 どれほどの細工を施しても、課題のトリオンキューブを全て探し当てた。

 また、無くしたはずの鬼怒田の家族写真も偶然であろうが発見する事が出来た。

 

 複眼

 360度全ての視覚情報を得る事が可能。

 

 強化視覚

 忍田本部長の全力旋空弧月を5回とはいえ、完全に避けきって見せた。

 その後、本部長の大人気ない五月雨旋空弧月によって細切れになってしまったが。

 

 鷹の眼

 林藤支部長が極秘裏に開発した予測君を用いて、射線を掻い潜りながら敵に近づく競技を行う。

 敵に触れようとした瞬間に両変化弾(フルアタック・バイパー)は鬼畜もいい所であろう。その不意打ちにも対処した三雲修は化け物か!?

 けど、レイガストを使用したので失格と言う形になってしまったが。

 

 

「……何をしているのかね、お前らは」

 

 

 報告書の内容を見て、頭痛を覚える城戸であった。




真面目な話にしようとしたのに、なぜこうなってしまった?

上層部がボケキャラとかダメでしょ、やっぱ(ェ

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