三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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文字数が少なくてすみませんね。


SE修【天眼】那須隊③

 変化炸裂弾(トマホーク)によって発生した黒煙により修の姿を見失ってしまう那須隊。

 

 

「……自爆した?」

 

 

 流石にあのタイミングでどうにかできるとは到底思えないが、だからと言って変化炸裂弾(トマホーク)を地面に叩きつけるなど理解に苦しむ。自爆したと考えるのも無理はないだろう。

 

 

『いえ、まだレーダーに反応があります。三雲君は健在です』

 

 

 しかし、その考えを志岐が否定する。

 終始、戦闘中の全員の行動を見守っている志岐はレーダーによって健在か離脱したのか直ぐに判別できる。3対1でも厳しい条件なのに、オペレーターのサポート無しで戦うなど無謀もいいところだ。

 

 

「茜ちゃん。姿が見えたら、狙撃をお願い」

 

『はい、わかりました。……けど、いくら三雲君が凄くてもアレを受けたら戦い続けるのは難しいのでは?』

 

「油断は禁物。もし、三雲君がそっちに向かったら炸裂弾(メテオラ)を使うのよ」

 

「はいっ!」

 

 

 その時、足に違和感を覚える。ゆっくりと違和感を得た足元を見ると、自身のトリオン体に穴が開き、トリオンが漏れだしているじゃないか。

 

 

「こ、これは……?」

 

「い、何時の間に!?」

 

 

 熊谷からも驚愕の声が上がる。彼女も両足からも少量のトリオン量が漏れだしているじゃないか。

 

 

「小夜ちゃん!?」

 

『レーダーは動いていませんっ!! 三雲君はそこにいますっ!!』

 

 

 なら、どうして自分達は知らぬ間に被弾したのであろうか。考え、那須は一つの仮定に至った。

 

「(まさか……)」

 

 

 

 ――炸裂弾(メテオラ)

 

 

 

 黒煙から無数のトリオンキューブが放たれる。

 

 

「玲っ!!」

 

 

 

 ――変化弾(バイパー)

 

 

 

 熊谷の言葉に応じ、直ぐに迎撃の変化弾(バイパー)を放つ。

 けれど、それは悪手であった。那須の変化弾(バイパー)が修のトリオンキューブに触れると盛大に爆発し、彼女達の視界を奪う――と、同時に熊谷のトリオン供給機関に風穴があく。

 

 

「……ど、どうやって?」

 

 

 

 ――トリオン供給機関、破壊。熊谷、訓練停止。

 

 

 

 熊谷のトリオン体が戦場から強制的に退出させられる。今回は那須隊の訓練室で行っている故に、緊急脱出(ベイルアウト)は発動しないが、代わりに訓練室から強制的にテレポートされるようになっていた。

 

 

「くまちゃん!?」

 

 

 親友の退場に動揺を隠せずにいた。しかし、慌てふためく訳にはいかない。既に修から奇襲が放たれているのだから。

 

 

「(やはり、これは……)」

 

 

 知らぬ間に被弾した足。炸裂弾(メテオラ)を撃ち落とすと同時に風穴を穿かれた熊谷。その答えは一つしかない。視線を首から上に集め、本命の弾丸は下から飛んで来ている。

 

 

 

 ――変化弾(バイパー)

 

 

 

 背後に回り込んでいた修の変化弾(バイパー)が那須のトリオン機関目掛けて飛ぶ。

 寸前の所でシールドを張って事なきを得たが、修の変化弾(バイパー)はこれ一発だけではない。

 

 

「(やはり、この弾道軌道は、私の……)」

 

 

 地を這う変化弾(バイパー)(ブラック)トリガー、風刃を想像させる弾道軌道は那須が偶に使う攻撃手段の一つ。自分が修の戦い方を真似した様に、修も同じ様に那須の戦い方を真似したのである。

 放たれた弾丸の数は少ないが、四方から取り囲む弾道の軌道は那須の十八番である鳥籠に近しいものがある。

 

 

「(シールドで……。いや、三雲君ならっ!!)」

 

 

 シールドで防御する事を初めに考え付くのだが、直ぐに思い直す。過去の対戦ログを見たおかげで修が次に行う行動が少なからず分かっていたのだ。

 防御したら、スラスターで突貫してくる修の攻撃を受け止めきれない。ならば、リスクを承知でこの場から離れるのみ。

 だが、その選択肢は完全機能(パーフェクト・ファンクション)が補足していた。那須が跳んだ先には、グラスホッパーで急接近していた修の姿があったのである。

 

 

「えっ!?」

 

 

 予想の上回る行動に、那須の思考が一瞬だが止まる。そしてその思考停止はたとえコンマ数秒だとしても命とりだ。

 

 

通常弾(アステロイド)っ!!」

 

 

 射程を犠牲に威力と弾速に調整(チューニング)した通常弾(アステロイド)をぶっ放す。分割せずの一塊の通常弾(アステロイド)は那須のトリオン供給機関目掛けて一直線。

 

 

「っ!? 変化弾(バイパー)っ!!」

 

 

 僅かながら対応が遅れた那須も変化弾(バイパー)で対抗する。半分を通常弾(アステロイド)に、もう半分を修目掛けて弾道の軌道を描く。

 咄嗟の弾道軌道であったが、那須の変化弾(バイパー)は修の通常弾(アステロイド)を全て受け止める。狙いが素直であった故に、容易に止める事が出来たのだ。

 対して、自身に向かって飛んで来る那須の変化弾(バイパー)を止める手立てはない。今の修は那須の鳥籠によって所々に弾丸を受けた形跡が見受けられる。トリオン漏れの様子から見て、後数発ほどでも被弾すれば墜ちる可能性が大。

 

 

「(あの攻撃を最小限のダメージで防ぎ切った? どうやって……)」

 

 

 疑問は当然の問題であるが、戦闘中にする事ではない。ある意味、思考の聖域(ゾーン)に入っている修は那須を撃墜させる為に、次なる一手を画策していた。

 修の身体が急激に降下する。グラスホッパーで自身を無理矢理下へ飛ばし、那須の変化弾(バイパー)から逃れたのだ。

 この動きも那須は視た事がある。劣化版とはいえ、A級の緑川が得意とするグラスホッパーの連続技の乱反射(ピンボール)の動きに近い。

 

 

「(この子は……)」

 

 

 過去の対戦ログ以上の実力を持っていた。過去の対戦相手の動きを真似(トレース)して、自身の動きへと昇華させようとしている。

 

 

「(だからと言って!!)」

 

 

 ボーダーの先輩として、射手(シューター)の先輩としても後輩にそう易々と勝利を譲る訳にはいかない。

 直ぐに変化弾(バイパー)の弾道を描いて修へ射出せんと行動に移すが、上空から降り立つ変化弾(バイパー)が那須のトリオン体を穿つ。

 

 

「バ、変化弾(バイパー)っ!? いつ、どうやって……」

 

「すみません。那須先輩の弾道を真似(トレース)させていただきました」

 

 

 地を這う変化弾(バイパー)が解き放たれた時、修は同時に大きく弧を描く投下爆撃の弾丸も用意していたのであった。地と空の同時放出に弾道を調整する事で、時間差を加えた偽鳥籠。初見で防ぎ切る事はなかなか難しい鬼畜技も良い所である。

 那須のトリオン体が戦場から消え去る。

 

 

「あとはっ!!」

 

 

 完全機能(パーフェクト・ファンクション)の持続時間は残りわずか。日浦のいる場所にどうあがいた所で時間内に到達する事は不可能であるが、諦める選択肢など三雲修には毛頭ない。

 那須と熊谷の撃沈。その情報は日浦の思考を絶望に陥れる。

 

 

「(どど、どうする? どうすればいいの!?)」

 

 

 自身の狙撃の腕ではレイガストのスラスターとグラスホッパーを連続使用して急接近してくる修を当てる事は難しいと判断する。

 

 

「(べ、緊急脱出(ベイルアウト)? 逃げる? 逃げた方が良いよね?)」

 

 

 その選択は決して間違いではない。逃げる事も戦略の一つ。しかし、逃げた所でその先の選択肢は皆無。どんな奇策妙策があった所で、結局のところは実力が伴わなければ意味をなさない。

 

 

『落ち着いて、茜。相手は一人。いま、三雲君の動きを予測する。前もって用意した炸裂弾(メテオラ)を上手く使って、まずは足を止める事です』

 

 

 混乱しそうになった日浦にフォローを入れる志岐。その言葉が効いたのであろうか。

 日浦はアイビスのスコープに目をやり、修の挙動を捕捉する。

 

 

「(そ、そうよ。わたしだって、わたしだって――)」

 

 

 引鉄を絞る手に力が入る。それでは奈良坂に「当たる狙撃も当らない」と窘められてしまうだろう。

 思考が徐々にヒートアップする。相手は自分と同い年。加えて射程と言うアドバンテージを受けている身だ。例え勝てなくても一矢報わなければ、この先やってなどいけない。

 

 

「(よく狙って、よく狙ってっ!!)」

 

 

 まだ、距離は充分ある。ここは様子見しつつ、既に用意した炸裂弾(メテオラ)の地雷を有効活動すれば有利に戦闘を運ぶ事も出来たであろう。

 しかし、高揚している日浦の頭からそんな考えは消え失せていた。狙撃手にあるまじき失敗だ。

 

 

「(狙ってっ!!)」

 

 

 引鉄を絞り、アイビスの銃口からトリオンが放出される。

 工夫も何もない狙撃など、修の天眼を前にしては何の脅威にもならない。特に完全機能(パーフェクト・ファンクション)状態のチートモードでは、日浦のアイビスはただの流れ弾にも等しい。だが、日浦のアイビスの一撃は修の脳天を見事に撃抜いたのだ。

 

 

「……はぇ?」

 

 

 まさかの的中に、一番信じられないと驚愕したのは日浦自身であった。




誰だ!? アイビスでヘッドショットを食らわせろ、なんて言った奴は!?
本当になってしまったじゃないですかっ!!爆笑

OSAMUも完全機能なんて無茶な真似をしなければ、日浦からヘッドショットなんかされなかっただろうに……。

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