三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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とりあえず、那須隊のお話しはここまでにしましょう(ェ

てか、みなさん那須さんが好きすぎでしょ!(アクセス解析を見ながら)


SE修【天眼】那須隊④

「(やはり、完全機能(パーフェクト・ファンクション)では、限界があるか)」

 

 

 隊室に強制送還させられた修は、自身の浅はかな判断に今更ながら反省を始める。

 完全機能(パーフェクト・ファンクション)は諸刃の剣。それに加えてあの力に頼り切りになってしまうのは、今後の成長の大きな妨げになってしまう可能性がある。早々易々と使わないと決めていたのであるが、咄嗟に発動してしまっていた。

 

 

「(けど、あの状況で生き延びる手段などなかったしなぁ)」

 

 

 那須の鳥籠に襲われた時、修は変化炸裂弾(トマホーク)を地面に叩きつけた後、頭上から襲い掛かる変化弾(バイパー)のみ対象を絞り、通常弾(アステロイド)の弾幕で半分ほど防ぎ、残りの攻撃は片腕と片足に被弾させるように回避行動を行ったのである。

 空閑の俊敏性や緑川並の乱反射(ピンボール)が出来れば完全回避も可能であったかも知れないが、そんな芸当は修には不可能。故に取った行動は最小限のダメージでやり過ごす事に成功する。

 しかし、最後の最後で完全機能(パーフェクト・ファンクション)の稼働時間が過ぎてしまったのか、一瞬だけ意識が失われ、日浦の狙撃を受ける羽目になってしまったが。

 

 

「(那須先輩の変化弾(バイパー)の軌道、これだけでも戦った価値はあったな)」

 

 

 地面を這う変化弾(バイパー)と言う発想は那須と戦うまで考えもつかなかった。今回学習した弾道軌道と今までの戦い方を上手く融合させていけば、戦いの幅も広がる事は確実だ。この弾道軌道を学んだだけでも、戦ってよかったと感じる修であった。

 

 

「いやー、まいったよ三雲君。てか、本当にB級? あんな動きが出来るなら、直ぐにでもA級になれるんじゃない?」

 

 

 熊谷から賛辞の声を頂く。

 

 

「ありがとうございます。けど、まだまだです。最後の最後で日浦に一発貰ってしまったので」

 

「あー、あれね」

 

 

 思いだし、苦笑いを浮かべる。初めに戦線離脱した熊谷は最後の日浦と修戦を観戦出来たから分かる。相変わらず、慌てる癖が抜けていない日浦は折角用意した炸裂弾(メテオラ)の地雷原を用意したにも関わらず、それを上手く活用する事無くアイビスをぶっ放したのであった。あんな単発の攻撃など簡単に避けられるだろうな、と頭を抱えた熊谷であったが結果は被弾。これには熊谷だけではなく、横で見ていた志岐も「へ?」と目を丸くさせていた。

 ちなみに、志岐は修が戻ってくるなりに那須の背中に隠れている。プルプル小鹿の様に震えて怯える姿に居心地の悪さを覚える修であるが、無視する形でやり過ごす事にした。

 

 

「けど、最後の最後で油断したの? 三雲君なら、最後の一発は簡単に避けられると思うけど?」

 

 

 最もな疑問を那須が口にする。

 

 

「えっと、それなんですが……」

 

 

 言うが言うまいか迷っている最中、視界にノイズが走る。

 

 

「っ!?」

 

「……どうしたの、三雲君?」

 

 

 咄嗟に両目を抑える三雲に不思議と思ったのであろう。小首を傾げながら、近づいてくる那須を心配させまいと「だ、大丈夫です」と答えようとしたが、次の瞬間、那須たちの心配は更に加速させられる。

 修のトリオン体にひび割れが生じたのだ。

 まさかの異常事態に修を除いた全員の目が剝けられる。初めはトリオンの枯渇問題と察すが、直ぐにその考えを否定する。ランク戦ブースで戦ったのならその考えも否定しないが、今回使用した戦場は那須隊の訓練室である。戦い時にはトリオンの消費量で退場する様に設定したが、実際には修のトリオンは消費されていないはず。

 ならば、今回のこの現象は一体。と、考えている間に修のトリオン体は完全に砕かれる。

 

 

「み、三雲君っ!?」

 

 

 異常事態に那須が動く。

 どう考えても尋常ではなかった。トリオンを消費していないにも関わらず、トリオン体に異常が発生する。不測の事態に修へ駆け寄る那須だが、それが事件の発生させる切欠となる事を一同は知る由もなかった。

 後に熊谷は語る。

 

 

『マンガで言うラッキースケベは現実では絶対に起こるはずがないと思ったけど、その考えは間違っていたわ』

 

 

 トリオン体が砕かれ、生身の修が現れる。意識を失っているらしく、力なく膝から崩れ落ち、那須が駆け寄ってきた方へと倒れる。

 自分に向かって倒れる修を受け止める那須であったが、彼女も戦闘後にトリオン体を解いている。つまり、生身の状態で修を受け止めようとしたのである。だが、生身の那須の力では受け止めきれず、そのまま一緒に倒れる形となってしまった。

 その一部始終を見守っていた熊谷は我に返り、二人の安否を気遣うのだが……。取った行動は那須に手を伸ばすことではなく、愛機スマートフォンの装着であった。

 カメラモード起動。連写機能展開。画質を最高度に設定。これより熊谷友子は現状を鮮明に記憶する為に写真を撮り始める。

 

 

「はぅ。ただい……ま?」

 

 

 少しばかり遅れて戦場から戻ってきた日浦は、現場のカオス状態に困惑するしかなかった。

 

 

「く、くまちゃん!? そんな事していないで、助けてよっ!!」

 

「そ、そそそうです熊谷先輩!! は、はは早くしないと、那須隊長が大人の階段を……」

 

「小夜ちゃんは慌て過ぎよっ!! ちょっ!? くまちゃん、くまちゃんさん! 助けて」

 

 

 狼狽する志岐。写真を撮り続ける熊谷。

 そして、那須を押し倒している修の姿に、日浦の思考は強制離脱(ベイルアウト)せずにはいられなかった。

 

 

 

 数分後。

 

 

 

「す、すみませんでした!」

 

 

 完全機能(パーフェクト・ファンクション)の反動から意識を手放していた修は、

我に返るなり現状を把握。滝の様に冷や汗を流しながら那須から離れると、それは見事の土下座を敢行したのであった。15年生きて来た中で初めての土下座であったが、社畜ヒーローに劣らぬ見事な土下座振りであった。

 

 

「こ、これは決して他意があってやった訳では……」

 

 

 と、言った直後に後悔する。素直に反省の意を示せば多少は許してくれる可能性もあると言うのに、こんな言い訳染みた言葉を発してしまえば那須も激昂する事であろう。もはや何もかもが手遅れ。ここは素直に平手の一発や二発、素直に受けるべきと判断し、未だに那須から何の反応もない事に疑問を覚える。

 

 

「な、那須先輩?」

 

「…………」

 

 

 那須玲。

 突然のラブコメイベントに思考が強制離脱(ベイルアウト)

 その横で清々しい笑みを浮かべてサムズアップする熊谷に胸中で悪態つかずにいられなかった。

 

 

「やるね、三雲君。戦いだけではなく、そう言う事も奇襲、不意打ちが得意なんだ」

 

 

 ニタニタと。楽しくて仕方がないと言いたげに笑みを零しつつ、意識を手放した那須を介抱しながら修をおちょくる。

 ちなみに、会話に入って来ていない志岐と日浦は那須より先に意識を強制離脱(ベイルアウト)させていたりする。ある意味、修は那須隊を壊滅状態に陥れたのである。

 

 

「ち、違いますって。あれは……。その」

 

 

 一度開いて口を閉ざす。

 修の完全機能(パーフェクト・ファンクション)の反動を知る者は少ない。世話になっている玉狛支部の人間も使用すれば一日ほどトリオン体になれないとしか伝えていない為、視覚障害や意識が朦朧とすると言った話しをした事がないのであった。

 

 

「あれは?」

 

 

 そんな修の気持ちも知る由もなく、熊谷は話しを促す。彼女からしてみれば、いったいどんな言い訳をしてくれるのであろうと楽しみで仕方がなかった。

 

 

「あれは……」

 

 

 数十秒ほど思案し、誤魔化し切れないと諦めて素直に話す。

 

 

「あれは、天眼の使い過ぎから来る反動なんです」

 

 

 

 ***

 

 

 

「そう。……あの動きにはそんな理由があったのね」

 

 

 熊谷に詳細を説明している最中、どうにか回復した一同は自分達の対戦ログを観戦しながら、お茶会を始めていた。三人が回復したのを見計らい修は退散しようとするのだが、那須と日浦、そして熊谷によって阻まれてしまったのである。

 

 

「2秒先の未来を予測し、視覚の情報としてシミュレーションする。……なによそれ。反則もいい所じゃない」

 

 

 熊谷が悪態つくのも無理はないだろう。もし、そんな事が可能ならば無敵も同義。何せ相手は自分の行動を文字通り視覚として捉えているのだ。

 

 

「じゃあ、じゃあ。あの時、私が狙撃した時も」

 

「あれは鷹の眼の効力がデカいかな。相手の弾道を視認し、解析する力だから」

 

 

 あっさりと告げられた言葉に日浦は席から転げ落ちそうになる。それも仕方がない話し。そんな事が可能ならばいくら不意を突いた狙撃を行った所で、直ぐに対応されてしまう。狙撃殺しと言っても過言ではない。

 

 

「……あ、けど」

 

 

 ふと、疑問が過る。ならば、最後の最後でどうして自身は修のトリオン体を射抜く事に成功したのであろう。

 

 

完全機能(パーフェクト・ファンクション)は、僕の最大の切札。しかし、無理やり副作用(サイドエフェクト)を全開にするせいか、反動が強いんです」

 

「それで、茜ちゃんの狙撃を躱す事が出来なかったのね」

 

「はい。情けない事に、日浦へ向かう途中で天眼に誤作動が発生し、元に戻った時には日浦の狙撃を受けていました」

 

 

 ぜんぜんダメでしたね、と苦笑いする。

 

 

「けど、大丈夫なの? その完全機能って奴を使ったらトリオン体に換装出来ないんでしょ?」

 

「熊谷先輩の言うとおり、回復するまでムリみたいです。一度睡眠を取れば回復出来るようですが、まだまだ未知数なところが多いですね」

 

 

 未知数。そう言う意味では自分は天眼の事をよくは理解していないな、と改めて思わされる。そもそも副作用(サイドエフェクト)を持続する為に自身のトリオンを消費し続けるなんて修が初めてである。それに加えて能力が複数も兼ね備えられていると言う点もおかしな話しだ。視力と言う共通点があるせいで疑問に思った事はなかったが、自身の副作用(サイドエフェクト)は他の副作用(サイドエフェクト)と違いが多すぎる。

 

 

「(もしかすると、それが天眼を理解する近道なのかもしれないな)」

 

 

 弱すぎる自身を支えてくれた力。初めは何の疑問も感じずに使っていたが、今後はもう少し天眼と向き合う必要があると感じさせられた修であった。

 

 

「三雲君」

 

 

 自分の考えに浸っている最中、那須から声が掛けられる。

 

 

「はい、何でしょう。那須先輩」

 

「その完全機能(パーフェクト・ファンクション)は、今後、使うべきではないわ」

 

 

 突然の那須の言葉に目を丸くする。

 

 

「……どうして、ですか?」

 

「分からないかしら。確かに2秒先の未来をシミュレートする力は絶大と思う。けど、その代償が大きすぎるわ」

 

 

 那須の指摘は最もな話しだ。

 修は反論する事無く、黙って話しを聞き続ける。

 

 

「トリオンを消費しない訓練にも関わらず、貴方のトリオン体は崩壊。更にトリオン障害の様に今は換装も出来ない。ランク戦とかならまだしも、これが実践になったらどうなるか。……もしかしたら、強制離脱(ベイルアウト)も発動出来ず、生身で戦場に残されるかも知れないわ」

 

「それは……」

 

 

 まだ確認していないが、その可能性も否定できない。ただでさえ相手は強大にも関わらず、生身で相対する事になれば待っているのは抗えない絶望。考えただけでゾッとしてしまう。

 

 

「そうなってしまったら、貴方の大切な人達を悲しませてしまうわ。だから、完全機能(パーフェクト・ファンクション)は使わないで」

 

「……それは出来ません」

 

 

 心配してくれているからこその忠告。その気持ちは有り難いし嬉しくもある。

 しかし、しかしだ。だからと言って、完全機能(パーフェクト・ファンクション)を使うな、と言われても無理な話しである。

 

 

「仲間と約束したんです。大切な人達を救おうって。必要なとき、僕は躊躇なくこの力を使うと思います」

 

「け、けど! それで三雲君が怪我でもしたら本末転倒じゃないかな?」

 

「日浦の言う通りかもしれない。使い方を間違えたら、ただじゃすまないだろう。だから、この力の使い方を磨いていくしかない。それが僕のやるべきことだと信じているから」

 

 

 千佳と空閑の二人は物凄い勢いで実力をつけてきている。二人の仲間として、置いて行かれる訳にはいかない。その為にも天眼の機能を自在に使い熟さなくてはいけない。

 

 

「……聞いていいかしら、三雲君」

 

「はい、何でしょう。那須先輩」

 

「どうして、そこまで決意する事が出来たの?」

 

「決意、ですか。そんな大層なものではないですよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

 一度、大きく深呼吸して、はっきりと告げる。

 

「ぼくがそうするべきだと、心の奥底から思っているからです」




だれだ、こいつは!? OSAMUはいつからTo Loveるの主人公みたいになったんだ。

ちょっと、どなたかアイビスを貸して! メテオラでもいいよ。

……さて、冗談はともかく。この後、どうしましょ(マテ
普通ならば、大規模侵攻に行くんですけど……。書きたい話しがない訳じゃないんですよねぇ。

ちょっと、冒頭だけ書いてみるか(ェ


「頼む、三雲君!! 君の力がどうしても必要なんだ」
「ちょっ!? 頭を上げてください、若村先輩」
 会うなり、土下座する勢いで頭を下げられた修は困惑するしかなかった。
 若村麓朗。香取隊の一員で、ガンナーのメガネと言われている彼は頭を下げたまま、修に懇願する。
「あのバカをこてんぱんにのしてくれ、この通り!」

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