スガ   作:にく丸

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7局目

白糸台高校麻雀部の合宿も終了し、GWも残すところ二日。

あっと言う間に終わった合宿であったが、思い返すと合宿で一番頑張っていたのは、淡であろうか。

三日間での淡いの口癖は「う~ん」、「あ~、もう」、「うにゃ~」と言った擬音ばかり。

 

そんな淡の様子は、端から見ていると、常に頭から白い煙が昇っているようであった。

 

「う~、キョータロ~、頑張ったワタシを労って~」

 

合宿からの帰りのバスの中で、疲弊した淡からの京太郎へのお願い。

 

「アワイハ、ガンバッタ、ガンバッタ」

 

眠いこともあり、そのお願いに対して機械的に返事をする京太郎。

 

「う~、違うよキョータロ!そんな投げやりじゃなくて、もっとワタシを労わるんだよ~。あ、そうだ!明日はお休みだしデートしよ!デート!」

 

「デートって何するんだよ」

 

「キョータロとデート!なんでもいいの!明日の10時に、いつもの場所で待ち合わせね」

 

言うだけ言って「明日は楽しみだな~」と、淡は寝てしまった。

 

いつものことなので、特に追及することなく「まぁいいか」と思いつつ、自分も寝ようと思っていた京太郎であったが、聞き耳を立てていた照と咲が寝かせない。

 

「明日が淡ちゃんだったら、明後日は私達とデートだね、京ちゃん」と笑顔の咲。

 

「あ、あぁ、そうだな・・・」と押し切られる京太郎。

 

「楽しみだね、お姉ちゃん」

「そうだね、咲」

 

GWの残りの二日間の過ごし方が決まった瞬間であった。

 

 

翌日。

 

淡との待ち合わせは、10時に須賀家の玄関前。

折角に休みなのでゆっくり寝たかったが、約束は約束なので、しっかりと準備をし淡を待つ。

 

しかし約束の10時になっても、一向に淡が現れない。

 

「淡の奴は、また寝坊か」

 

その後、10分が経過したが、まだ淡いは現れない。

「まぁ昨日はやたら疲れていたし仕方ないか・・・」と呟きながら、仕方なく京太郎は大星家に淡を起こしに行く。

 

「あら京ちゃん、どうしたの?」

 

大星家の呼び鈴を鳴らすと、淡の母親が出迎えてくれた。

 

「10時に淡と約束しているですが」

 

「あらあら、ごめんなさいね京ちゃん。まだあの子ったら寝てる思うから、起こしてあげてくれる」

 

「分かりました」と答えつつ、京太郎はいつも通り2階に上がり、淡の部屋に向かう。

小さい頃から何度も出入りしている家なので、我が家のごとく迷う事はない。

 

「あの子ったら、折角京ちゃんが相手してくれるって言うのに・・・」

 

去り際に呟かれた淡の母親の言葉は、京太郎の耳には届かない。

 

「淡、入るぞ」

 

幼馴染ではあるが、礼儀としてノックは忘れない。

しかし、一向に淡からの返事がない為、京太郎は遠慮なく淡の部屋に入る。

 

普段の慌ただしい様子から一転して、綺麗に片付いている淡いの部屋。

洒落た小物なども置かれており、淡のセンスも伺える。

 

高校生の部屋と言うよりか、どちらかと言うと落ち着いた女子大生っぽい部屋だ。

女の子の部屋に初めて入る男子高校生ならドキドキであろうが、普段から入りなれている京太郎は、何も思うところなく淡の元へ向かった。

 

「起きろ淡、もう10時15分だぞ」

「うにゃ、キョータロ?あと5分寝かせて??」

 

寝ぼけた淡は、すんなり起きないことを京太郎は熟知している。

 

「起きないなら、今日は中止だ。早く起きろ!」

 

「きょう・・・ちゅうし・・・、うにゃ!!」

 

京太郎の脅し文句に反応し、淡は謎の掛け声と共に飛び起きた。

 

「キョータロ!オハヨ!今何時!!?」

 

「もう、10時半前だ。淡が待ち合わせに来ないから迎えに来たぞ」

 

「ゴメン、キョータロ!すぐに準備するから待ってて!!」と言いながら、淡は服を脱ぎ始める。

京太郎の前であることは、特に気にしていない。

 

「おい、淡。いつも言ってるが、人が見ている前で着替えるな」

 

「え?でもキョータロだよ?ワタシのセクシーな姿見られて、キョータロもうれしいでしょ??」

 

下着姿で慌ただしく着替える淡からは、セクシーさのかけらも感じられない。

 

「そういうセリフは、もっとおもちがでかくなってから言え。1階で待ってるから早く準備しろよ」

 

照や咲に比べてスタイルが良い事は、京太郎も認めている。

しかし、付き合いの長い淡にだからこそ、平然と言い放つ。

 

「む~」と言う淡の声が聞こえてきたが、京太郎は気にせず部屋から出ていった。

子供の頃からベッタリなので、初心な高校生のような恥じらいは二人の間にはない。

 

淡の母親が用意してくれたお茶を飲みながら、ニコニコ顔の淡の母親と雑談をしながら淡を待つ京太郎。

 

「京ちゃん達は今日は何処に行くのかしら?」

 

「特に決めてはないですが、淡のストレス解消に駅前にでも行こうかなと思っていますよ」

 

「あら、そうなの??それなら、淡の下着を選んであげて??また胸が大きくなったって言ってたから」

 

先ほどの会話が聞こえていたのだろうか、さりげなく娘のセクシーさをアピールする母親。

運動神経も良く頭も良い為、京太郎がモテるという事は、淡の母親も知っている。

幼馴染というアドバンテージはあるものの、幼馴染は照と咲もいる為、京太郎を射止めるのは容易ではないことも知っている。

 

それが故の娘へのアシスト。

 

「そういうのは、おばさんが選んで下さい」

 

いつものやり取りなので、京太郎は考える間もなくニコニコ顔で即答する。

淡の母親も京太郎の性格を知っているので、深追いはしない。

 

「ゴメーン、お待たせキョータロ!早くいこ!」

 

「早くってお前・・・。それじゃおばさん行ってきます」

 

京太郎の腕を引っ張っていく娘の姿を見送りながら、「頑張りなさいね淡」と呟く淡の母親であった。


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