1:小さな主のために
そこは一つのお城のような所。
玉座の前で、忙しない動きを見せているのは、王様である。
王家に伝わる真紅のマントを身に纏う王の忙しない動きにあきれた大臣が
“パパス王……、お気持ちはわかりますが、少し、落ち着かれては如何ですかな?シャノラ殿を見習ってはどうでしょう。”
と、苦笑しながら言うと彼は
“う、うむ……。そうだな……。”
パパスと呼ばれた彼は、自らと同じ境遇にある筈なのだが、一切動じずにじっと座り続ける騎士の隣に座り込む。
落ち着かず、そわそわしているパパスに
“落ち着けよ、パパス。焦ったって仕方ないんだ。男の俺達は待つことが仕事みたいなモンだからな。マーサが心配なのはわかってるが、おとなしく待とう。”
“シャラ……。……うん、そうだな。もう少し、もう少し待ってみるか”
「ありがとう」と親友に言い、漸く落ち着きを取り戻したパパスに兵士達や大臣はよかったよかったと安堵していた。
そんな彼等の元に足音が聞こえてくる。
玉座の裏にある階段から急いで降りてきたその人物は、小太りな男性、サンチョだった。
“パパス様!シャノラ殿!お産まれになりました!”
“そっ、そうか!産まれたか!”
“よかったな、パパス。さあ行こう。妻達が待ってる。”
“ああ!”
サンチョが降りてきた階段をパパスは駆け上がり、その後ろをシャノラは落ち着いた足取りで追いかけていった。
階段を上った先にいる使用人の女性が
“パパス様!おめでとうございます!本当にかわいい、たまのような女の子です!”
“うむっ”
“シャノラ様もおめでとうございます!パパス様のお子様にも負けない、かわいい女の子です!”
“ん、ありがとさん”
部屋に入ると、向かい合わせの位置に配置されたベッドの上にいるパパスの妻マーサと、シャノラの妻レティアが生まれたての赤ん坊と一緒のベッドにいる。
パパスとシャノラがベッドに近寄ると、二人の存在に気がついた彼女たちはこちらへ振り向き、笑顔を見せる。
“あなた……。”
“よくやったな、マーサ!おうおう、このように元気に泣いて……。”
パパスは年甲斐もなくはしゃいでいた。
“シャラ……。”
“ああ、よくやったよ。本当によく頑張ってくれたな、ティア。”
シャノラはレティアのベッドに腰掛け、妻から産まれた新たな生命のその頭を優しく撫でる。
“さて、早速だがこの子に名前をつけないといけないな。”
パパスは上機嫌に実は前から考えていた名前がある、とマーサに言った。
“……おい、パパス。まさか”
“トンヌラというのはどうだ、マーサ!”
シャノラは頭を抱えた。
息子にその名前をつけるのならまだしも、まさか娘にそんな名前をつけようとするとは思いもよらなかったからだ。
“まあ、すてきな名前!勇ましそうで、賢そうで……。”
マーサはパパスと子供とを交互に見てから笑顔で言った。
“でもね、あなた。私も考えていたんです。リュカ、というのはどうかしら?”
パパスは少し苦虫を噛み潰したような表情をする。
マーサが自らの考えた名前を否定するとは思わなかったのだ。
“リュカか……。ふむ、おまえが気に入っているなら、その名前にしよう!”
パパスはリュカを抱きかかえ、天に向かって突き出す。
“天より授かった我らの子よ、今日からおまえの名前はリュカだ!”
“まあ、あなたったら……。ふふ……。”
そんなパパスを見ていたレティアはシャノラに聞いていた。
“ねえ、シャラ。あなたは名前を考えてないの?”
“あるにはある……。笑わないなら、教えてやってもいい。”
“馬鹿ねぇ。私がシャラを一度でも笑ったことがあった?……教えて?”
妻の悲しそうな表情に耐えかねたのか、シャノラはその名前を口にした。
“アリシア。俺の故郷に伝わる、最古の妖精の名前を貰ったんだ。”
“アリシア……。うん、いいじゃないの!私は好きだなぁ、その名前。”
“そうか、気に入ってくれたか。なら、喜ばないとな。……今日からおまえはアリシアだ。”
アリシアという名前を受け入れてくれたレティアに、そして産まれてきてくれた我が子に、この名前を送る。
そんなとき、それは起こった。
“うっ……、ゴホッゴホッ……。”
“おい!どうした、大丈夫か!?”
“マーサ!?”
リュカとアリシアの泣き声と、マーサの名を呼ぶパパスとレティアの声が部屋に響いていた。
変な夢を見た見ました。たぶん、今よりももう少し幼い頃の夢。
ゆっくりと目を開けるとそこにはメイド服を着た白い髪の少女がいた。
「おはようございます、リュカ。少し魘されていた用ですが、大丈夫ですか?」
「……アリシア?あ、えっと、おはようっ?」
「はい、おはようございます。大丈夫ですか?少々汗をかいているみたいですが……。」
私と同じくらいの年齢で、同じ日に私とアリシアは産まれたそうです。
気がつけば、アリシアは私と自分のおでこをくっつけて私の熱を測っていた。
「……うん、熱は無いみたいですね。あれ?リュカ、どうしました?今度は顔が真っ赤ですが……。」
「えっ!?嘘っ!……何でも無い!何でも無いの!」
「あ!リュカ!?パパスさんがあなたを呼んでたんですよ!リュカー!」
私はアリシアから逃げるように部屋を飛び出し、呼んでいるお父さんのことを無視してまで、外に飛び出した。
リュカが部屋から飛び出して行ってしまったので、私は部屋の片付けをすることにしました。
リュカが使った髪留めなどの小物を整理したり、ベッドを使う前の状態に戻していると、パパスさんがいらっしゃいました。
「おお、アリシア。リュカは一体どうしたと言うのだ?わしの話を聞かずに外に行ってしまったぞ」
「それは私にもわからないのです。ただ……。」
私は先ほどリュカにしたことと同じことをパパスさんに行った。
するとパパスさんは大声で笑い出しました。
「はっはっは!なるほどな、そういうことか!」
「どういうことでしょうか?」
「ふふ……。いつか君も気づくことだろう。」
それだけ言ってパパスさんは部屋から出て行ってしまいました。
部屋から飛び出した私に、太陽の光が強く照りつけていました。
特にすることも見つからなかった私は、船長さんに挨拶をしようとおもい、船員さんに話を聞いていたとき、アリシアのお父さんのシャノラさんを見つけました。
「シャノラさん!おはようございます!」
「お、リュカ。おはよう、船長でも探してるのか?」
「はい!……あれ?なんでわかったんですか?」
「船員達が話してたからな。『かわいい女の子が船長を探してる』ってな。船長なら、このまま真っ直ぐ行った所にある左側の扉の先にいるぞ。」
「ありがとうございます!ではまた後で!」
「おう、じゃあな」
シャノラさんに言われた部屋に入れば確かに船長がいて、後もう少しで港に着くからお父さんに伝えてきなさいと言われました。ビスタの港に着けば、私の故郷・サンタローズまでは直ぐそこです。はやくサンタローズのみんなに会いたいなぁ。
今回はここまで。
オリ主やオリ主の父・母の詳細はそのうちというところで。
次回、港のイベントは無しで、サンタローズから。