タグを御覧いただければおわかりでしょうが、この作品は真・恋姫†無双と特攻の拓のクロス作品です。で、タイトルやタグを見ればこれまたおわかりでしょうが、出てくる拓の人物はあの三人です。
ですので、元ネタがわからない方にはあまりお勧めしません。元ネタがわかって、尚且つ楽しめるかな? と思った方だけ読むことをお勧めします。
三話程度の短編になる予定です。御要望や需要が多ければ、もう一つぐらいオマケで投稿するかな? 程度に考えてます。
長々と失礼しました。短いお付き合いになりますが、どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。
かつて、三柱の神を背負った男たちがいた。彼らは時には互い同士で争い、時には互いで協力し合って、一言では表せない複雑な関係を築いていた。
そんな彼らだったが、心の奥底ではお互いを認め合っていた。そして、そのうちの一人が言ったのだ。
俺らは兄弟(ブロウ)だ、と。
彼以外の二人も中々口には出したがらなかったが、それは同じ想いだった。
彼ら三人が揃えば向かうところ敵はなく、気持ち良いぐらいに勝ち続けていった。そして、そんな日々はずっと続くものだと漠然とだが三人とも思っていた。
しかし、運命は皮肉だった。
彼らのうちの一人が交通事故により、あまりにもあっけなくその若すぎる生涯を終えてしまった。残された二人は慟哭し、その理不尽さにこれ以上ないほど憤った。
だが、時間は戻らない。死が覆ることはない。いくら認めたくない事柄でも、現実に起こってしまえば認めざるを得ないのだ。時間は止まることがないのだから。
そして残された二人は今日も生きる。失った兄弟のためにも…
「チッ、もう終わりかよ」
つまらなそうに一人の男が呟くと、その手を放した。拘束から解放されたモノがどうと音を立てて地面に倒れこんだ。
倒れこんだそれは、いかついガタイをした男である。その身に特攻服を着ている、いわゆる族という連中だった。そしてその顔面は男にしこたま殴られたのか、酷く腫れ上がって流血していた。
そして呟いた男は、風神の刺繍をしてある特攻服を背負っていた。
「拍子抜けもいいとこだぜ…」
その傍らにはもう一人の男。その周囲には同じように小刻みに痙攣している族の連中が転がっていた。そしてその転がっている連中は一人の例外なく、グシャグシャになっている。
つまんなそうというか、不完全燃焼といった表情で懐からタバコを取り出すと、それに徐に火をつけて男は紫煙をくゆらせた。
こちらは、雷神の刺繍の特攻服だった。
「キヨシ、火」
「あぁ!?」
風神の男が雷神の男に手を向けた。
「…ったく、しょーがねーな」
雷神…キヨシが懐からライターを出すとそれを風神に放った。風神はそれをキャッチすると同じくタバコに火をつけて咥える。そして彼自身の愛車であるZⅡにその身を預けて軽くふかした。
「よぉ、ヒロシ、これからどうするよ?」
「あ!?」
風神…ヒロシから、渡したときと同じように放って返されたライターをキャッチすると、キヨシは尋ねた。
「そーだなー…」
トントンと灰を落すと、ヒロシが腕組みをして考える。
「こんなんじゃ前座にもなりゃしねえ。ストレス溜まるだけだぜ」
「全くだ」
二人してイラついた表情になって唾を吐いた。そんな彼らの周囲には、十人前後の特攻服の男たちが一人の例外もなく血達磨になって転がっていた。
何故こんなことになっているかというと大した話ではない。いつものように二ケツで走っていたらこの連中に難癖を付けられ、喧嘩を売られたのだ。もともと喧嘩っ早くて血の気の多い二人。しかも最近暴れていなかったこともあってか、ワクワクしながら売られた喧嘩を買ったものの、連中は拍子抜けするぐらい弱くてあっという間に片がついてしまい、今のこの状態というわけだ。
だが、それは仕方のないことである。何せこの二人は獏羅天の特攻一番機なのだ。並の族では満足に相手をすることも出来ない。要は彼らが強すぎたのである。
が、だからといってそれに納得するこの二人ではない。
「あー、クソッ!」
ヒロシが一番近くに転がっている族の腹に容赦なく蹴りを入れた。
「テメーらから売ってきてこれかよ!? ふざけんなよ、このどチンピラがぁ!」
当り散らすようなヒロシにおいおいと思ったキヨシだがその気持ちはよくわかった。何せ自分だって同じ気持ちなのだ。同じように八つ当たりしてもいいのだが、そんな真似をしても腹が減るだけなので止めた。
八つ当たりしているヒロシを尻目に、キヨシはタバコをふかして何の気なしに周囲に目を走らせる。と、不意にあるものに目が止まった。
「あ」
そして、思わず一言呟いた。
「あぁん!?」
何も反応のないサンドバッグを蹴ることに飽きたのか、ヒロシがキヨシに視線を向けた。
「どーしたよ?」
「あれだ、あれ」
「あ?」
尋ねるヒロシにキヨシはタバコである方向を指した。ヒロシがそっちを見ると、そこには聞いたこともないバンドのCDのジャケットの看板があった。
そんなものに何故キヨシが反応したかというと、そこに書いてある絵だった。そこには、猛々しい龍の絵が書いてあったからだ。
「チッ…」
それを見て思うところがあったのだろう、ヒロシが再びタバコを咥える。
「そういやぁ、もうすぐ一年か…。時貞のバカヤローが逝っちまってから」
「ああ」
呟いたヒロシにキヨシが頷いた。
「はえーもんだよ」
「フン、止めとけ止めとけ」
「あ?」
ヒロシが何を言ってるかわからず、キヨシが眉をしかめた。そんなキヨシに、ヒロシはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「筋肉ゴリラのおめーが感傷に浸るなんざ似合わねーよ。明日雪になるぜ?」
「んだとぉ!?」
キヨシも黙っちゃいない。
「てめーが言えた義理かコラ! 頭の悪さはどっこいどっこいだろうが、このボケ!」
「あぁん!?」
お互いのこめかみに青筋が浮かび、互いに相手の特攻服の胸座を掴んだ。
「んだこら!」
「やんのかテメー!」
お互い本気でガンを飛ばしあう。まさに一触即発な状況であった。が、
ぐううううっ…
まるでタイミングを見計らったかのように、どちらからともなく二人の腹の虫が鳴った。
『……チッ!』
そのことに毒気を抜かれた二人は、掴んでいたお互いの特攻服から手を放した。
「とりあえずメシにしようぜ」
「そーだな」
二人は頷くと、すぐ近くにあったファミレスへと単車を走らせたのだった。
「ありがとうございましたー!」
店員に見送られ、ヒロシとキヨシはファミレスから出た。その口には、互いに楊枝を咥えている。そしてお互い満足いくまで食べたのだろうか、入る前の険悪な雰囲気は綺麗サッパリなくなり、いつもの状態に戻っていた。
「ふぅ…さて…これからどうするよ、キヨシ」
楊枝で口の中をシーシーとやりながら、ヒロシが尋ねた。そして脇に顔を向ける。
しかし、そこにいるべきキヨシの姿はなかった。
「あん?」
何処へいったのかと辺りをキョロキョロ見回す。と、少し離れたコンビニに入っていくキヨシの姿があった。
「あのヤロー、まだ食い足りねえのかよ…」
流石に呆れた表情になって愛車のZⅡのところでタバコを吸いながら待つヒロシ。暫く食後の一服を楽しんでいると、ようやくキヨシがビニール袋を下げてコンビニから出てきた。
「ったく…」
ピンとタバコを弾くと、吸殻を足で潰す。
「何やってやがんだよ、てめー!」
当然の如くヒロシが詰問した。
「わりーわりー、ちょっとこいつをな」
「あ?」
キヨシが軽くビニール袋を持ち上げた。ヒロシがその中を覗くと、そこにはタバコが数箱と、缶ビールが数本入っていた。
「ふん、今夜飲るやつか?」
「ちげーよ」
「あ?」
キヨシの返答にヒロシが訝しがる。そんなヒロシにキヨシがニヤリと笑うと、
「これから時貞んとこに行こーぜ」
と、返したのだった。
「おいおい、マジかよ…」
ヒロシが額を押さえる。
「いーじゃねーか。どうせ楽しませてくれる奴らなんか会わねえだろうし、さっきみたいなどチンピラ相手じゃストレス溜まるだけだし、それにおめーも言ってただろ? もうすぐ一周忌だぜ」
「おめー、いつからそんな信心深くなったんだよ」
ヒロシが呆れた表情になった。
「んなわけねーだろ。それに、おめーもちょっと難しく考えすぎなんだよ」
「あ?」
キヨシの言ったことの意味がわからず、ヒロシが眉を顰めた。
「“兄弟”に会いにいくのに、理由なんかいらねーだろ? 拓ちゃんに会いにいくのに、理由がいるか?」
「…フン、ま、そりゃそうか」
ようやく納得したのか、ヒロシが単車に跨った。いや本当は、ただ表に出すのが下手なだけで、とっくに納得していたのかもしれない。
(ホント素直じゃねーよな、オメーも時貞もよ)
内心でニヤつきながらシートの後ろ部分にキヨシも跨った。
「出るぜ!」
「ああ!」
愛機のZⅡに火を入れ、風神と雷神は恐ろしい速さでファミレスを後にしたのだった。
「…ったく、俺らがこんな真似するなんてな」
「全くだ。時貞のヤロー、あの世でひっくり返ってんじゃねえか?」
「ハハハ、違えねえ」
ZⅡを走らせながら、ヒロシとキヨシはそんな会話を交わしていた。
二人はまず、彼らの兄弟…ブロウである龍神…天羽時貞が眠る墓所へと向かった。そこにタバコとビールを供えると、軽く二言三言言葉をかけて後にする。
そしてその後、どちらからともなく事故現場にも行こうということになったのだ。今はそこに向かう途上なのだが、自分たちのあまりにありえない行動に自分たち自身でも信じられず、笑いが止まらなかった。
「俺らも丸くなったのかねぇ…」
「バカ言ってんじゃねーよ。丸くなったヤローが、向こうから売ってきたとはいえ喧嘩の相手を血達磨にするかよ」
「それを言うなよキヨシちゃん」
軽快に口を滑らせながら、これまた軽快にZⅡを走らせるヒロシ。そしてもうすぐ事故現場の横浜ベイブリッジに差し掛かろうかという、とある見晴らしの良くない交差点でそれは起こってしまった。
青信号のため当然そこを通ろうとしたZⅡの横っ腹から、赤信号であるにもかかわらずダンプが突っ込んできたのである。
『なっ!?』
驚いて見上げるヒロシとキヨシ。運転席の運転手が舟を漕いでいるのが、彼らのこの世で見た最後の光景になってしまった。
獏羅天の風神雷神が事故死したという事実は、翌日には周辺の不良たちの誰もが知ることとなった。その報に喜ぶ者もいれば哀しむ者もいた。やりきれない思いを抱える者も、怒りで暴れる者もいた。しかし、誰が何をしようが起こってしまった事実は覆らない。こうして又一つ、不良少年たちの伝説が増えたのだった。
そして死んだ風神と雷神も、再びこの世に生まれるために輪廻の輪に加わる…はずだった。だが何の因果か、それは許されなかった。…いや、確かにその生命は終わりを迎えたのだ。しかし、まるでそんなことがなかったかのように二人はある舞台へとその存在を移したのだった。
見渡す限りの荒野に、この光景には実に不揃いな三人の少女がいた。彼女たちは一目散にあるところをめがけて走ってくる。
「あやー……変なのがいるよー?」
「男の人だね。私と同じぐらいの歳かなぁ?」
「二人とも離れて。まだこの者が何者か分かっていないのですから」
目的地に着いた三人が対象者を少し遠巻きに見ながら口々に好き勝手な感想を漏らす。そこに伏していたのは、風神。
「こ奴……何処から現れたんじゃ?」
「さっきは居なかった。だけど気がついたら居た。……さっきの光に関連づけるのが妥当でしょうね」
夜、岩だらけの荒野で褐色の女性二人が話している。その視線の先には言葉通り、先程まではその場に居なかった存在があった。
「光と共に現れた、か。……管路の占いの通りということか?」
「占い通り、ねぇ。……ということは、この人が天の御遣いって奴かな?」
その背中には、雷神を背負っていた。
生を終え、死を迎えたはずの風神と雷神は何の因果か悪戯か、こうして場所も時代も歴史さえも違うこの世界…外史で再び生を得ることとなった。
そして……
陳留。
そこにある王城で、一人の少女が肩を怒らせながら歩いている。猫耳のフードを被り、身の丈は小さいのだが顔は赤く、表情も憤怒に塗れ、怒りに燃えているのが誰の目からも明らかに見て取れた。
「! ちょっと、そこのあんたたち!」
少女は少し先に居た兵士の一団に、まるで怒鳴るかのように声をかけた。
「! こ、これは荀彧様!」
兵士の一人が緊張気味に答えた。残りの連中もその剣幕に圧されたのだろうか、ビシッと姿勢を正す。
「あの男、何処にいるか知ってる!?」
単刀直入に彼女…荀彧が尋ねた。
「あの男…ひょっとして、御遣い様のことですか?」
兵士の一人がおずおずと口を開く。
「あんた知ってんの!? 何処に言ったか答えなさい!」
返事をした兵士に食って掛かるように荀彧が睨んだ。
「そ、その、天気が良いから外で昼寝でもしてくると…」
「…何ですって?」
兵士の返答を聞いた荀彧がワナワナと身体を震わせながらゆっくりと俯いた。
「じゅ、荀彧様?」
おずおずと兵士の一人が声をかける。と、
「ふ、ふ、ふ、ふざけんじゃないわよーーーっ!!!」
彼女…荀彧は突如顔を上げて爆発した。そして兵士達は全員耳が暫く使い物にならなくなるという被害を被ったのだった。
「Wow…」
王城の屋根の上でお日様にあたりながら気持ちよさそうに昼寝をしていた男が目を開けて上体を起こした。
「相変わらず小うるさいTinyだぜ…」
男は大きく欠伸をすると、うーんと伸びをする。そして身体を解すためだろうか首を左右に捻った。
銀髪に褐色の肌。そして紅い瞳の、見るからに先程の荀彧や兵士達とは異質な風体をした彼の背中に宿っていたもの。
それは、龍神だった。