仮面ライダーレーザー外伝 ~天地を駆る王者達~ 作:たんぺい
ふぅ…と、溜め息を吐いて、街の公園へと佇む怪しい青年が居た。
十二月の寒風吹き荒ぶ東京の街。
そこに、あまりにも場違いな格好をしている、良い歳をしてるだろう男だ。
赤い革のロングジャケット…は、まだ良い。
カジュアルなパンツも、まあ許される類いだろう。
彼の締まった身体と端正な整った容姿もあいまり、それだけならば『爽やか』で済まされる。
だが、この寒空の下でアロハシャツに丸眼鏡型のサングラスと言うのはどうだろう。
途端に、不審者としか言えない雰囲気が漂ってくる。
平日のまっ昼間から公園に彷徨いてたら…通報されても可笑しくはない。
怪しいキャッチセールスかマルチ商法かの勧誘か。
或いは、ヤクザの下っ端か。
AVか何かのプロデューサーか。
はたまた、単なる無職の浮浪者か…知らぬ人には、そう見えてもおかしくはない。
だが、彼はどれとも違う。
立派なカタギの仕事をこなす、医師免許を取得した青年であり、『監察医』と言う役職をこなす現役の医師である。
彼は『九条貴利矢』。
バグスターウイルス…ゲーム病と呼ばれる、感染者の身体を蝕むどころか喰い荒らす様に乗っとることで患者を死に至らしめる病のウイルス、その謎や感染源を追い求める探求者である。
そして、そのバグスターウイルスの対抗手段を持つゲーマードライバーの適合手術を受けた、バグスターを滅ぼせる可能性を持つ男の一人…だった。
その彼が、何故気を緩めているかと言うと…簡単な話、こんな事情があったからだ。
かつて起きたパンデミック『ゼロ・デイ』の悲劇に巻き込まれた友人の死に報いようと、バグスターウイルスの謎を探す中で、彼は『宝生永夢』と言う、一人の小児科医に出会う。
宝生永夢、彼は天才ゲーマーとして数々のゲームのタイトルを総ナメにした『M』と言う顔を持ち、更に詳しく言うと『エグゼイド』と言う仮面ライダー…偶発的にバグスターウイルスへの対抗手段としての能力を得た若い研修医だった。
そんな永夢の事を…まあ、貴利矢は、バグスターウイルスの謎を探す為に利用しようとした。
あまり悪気がなかった部分はあったのとトラウマに踏み込んで欲しくなかった部分があった事も有り…貴利矢は、永夢に対して『真実』を『嘘』と告げた事が発端となり、もう一人のエグゼイドである『黒いエグゼイド』に対しての言の信頼を失うトリックが幾度も重なってしまう結果、自業自得な話も多分にあったとは言え『嘘つきで信用なら無い屑』のレッテルを張られてしまう。
そのレッテルを、檀黎斗…黒いエグゼイドこと『仮面ライダーゲンム』の正体を暴き、漸く取り除けた。
それは、貴利矢が自分自身にすらつき続ける嘘をもうつかなくて良いと言うことですらあった。
それだけでなく、貴利矢自身が無意識に気をかけていた永夢を若さ故の青臭さと優しすぎる性格、そして彼自身も知らない身体の謎についての事を心配していた永夢の信頼を取り戻せた事への安堵ですらあったのだろう。
…勿論、それだけで貴利矢の仕事は終わった訳ではない。
貴利矢の仕事は、あくまでもバグスターウイルスの殲滅の為の…二度と、ゼロ・デイの様な悲劇は繰り返さない為の謎を解明すること。
ジュンゴ、ゲーム病に苦しみ暴走して交通事故に逢った貴利矢の親友だった男の死に報いることが、貴利矢の本当の使命なのだ。
止まっている時間は無い。
光線の様に、彼は走り続けなければならない。
それは、本当に自分を信じ始めてくれた永夢ならず、バグスターウイルスの脅威に立ち向かう医師達への義理返しでもあった。
とは言え、肩の荷が下りた状況だったのも、事実ではある。
多少は一服しても許されるだろう。
彼自身もそう考えて…公園の自販機で買ったオロナミンCを片手にベンチで一休みしながら、何気なしにぼんやりとしている、丁度そんな時だった。
ドカーンと、火薬の弾ける様な轟音が、近くの道路の方向から響いてくる。
「な…なんだぁ!?」
間抜けな悲鳴をあげて貴利矢が思わず飛び起きるが…またか、と貴利矢は状況を整理して、あっさりと結論を脳内で片付ける。
バグスターウイルスの脅威はまだまだ終わっていない、あのゲンムこと、バグスターに荷担している黎斗が語っていたではないか。
バグスターウイルスが分離して、暴れているのかも知れない。
或いは…ここ最近、我が物顔で地球を荒らし回っているデスガリアンと言うクソッタレな野郎の可能性もある。
もしかしたら、貴利矢すら知らぬ未知の地球の脅威が顕れたのかも知れないだろう。
最悪、変なテロリストかも知れないだろうし 水道管かガス菅でも爆発した単なる事故…と言う可能性もあるが。
まあ、最後に関しては警察か会社の仕事ではあるだろうが、まあ…なんにせよ。
市政の人間の悲鳴がキャーキャー上がっている現状、監察医とは言え医者である彼が動かない理由も無い。
慌てて、貴利矢が現場に駆け付けたら、その場に居たのは…貴利矢の予想通りの惨状だった。
かつて、『名人』と永夢を呼んでいた頃に一度倒したことがある、金色のバイクのバグスター…モータスバグスターと言う、自分にとっては非常に因縁深いバグスターが、異形の進化を遂げて再び貴利矢の目の前に姿を現していたのであった。
上半身は、かつてとまるで変わらないが、下半身があまりにもおかしくなっている。
かつては普通に跨がっていたバイクが、癒着する様な形で上半身と繋がって一体化している。
そのバイクのホイールがあるべき部分からは車輪ではなく、太い脚が四本、馬のように芋虫の様にぐにぐに動きながら生えており…その脚で、かつてはバイクだった頃よりも道路を速く疾走していた。
その脚が地ならしする様に地を駆ける度に、周囲には無差別に衝撃波が広がっている。
ガラス張りだったろうショーケースのある店も、周囲にあるガードレールも、衝撃波で粉々になっており…車かバイクだったのであろう、破壊された車輪が転がっている先に、嫌な匂いを充満させながら炎上する鉄の塊が道路を幾つも転がっていた。
貴利矢が聞いた爆発音も、恐らくそれだったのであろう。
「…自分が見てるってのに、悪のりし過ぎだぜ、バグスターさんよ!!」
現場に着いた貴利矢は、無差別に破壊を撒き散らしながら、道路を滅茶苦茶に走り回る…ある意味で、己の分身とも言えるバグスターに対して、怒りを見せる。
そして、貴利矢自身が持つバグスターへの対抗手段…ゲーマードライバーを何処からか手に取るなり、己の腰に巻き、そして、怒りを鎮めるように冷静に思考しながら、対策を立てる。
「…いきなり3速じゃ追い付けねえし、永夢もアイツらも居ねえから5速なんて無茶言えねえよなぁ…しょうがねえ、永夢が居ねえから馬力が出ねえから不安だが、射程に突っ込むまでは2速で行くぜ!!」
そう言って、貴利矢は己のドライバーに『爆走バイク』と言うゲームソフト…否、仮面ライダーの力が宿った『ライダーガシャット』と言うソフトをドライバーに突き刺して、ぐるりと回りながら虚空を蹴りながらこう叫ぶ。
「変身!!」
貴利矢の叫びに、まるで答えるかの様にゲーマードライバーはこう叫ぶ!
レッツゲーム!
メッチャゲーム!!
ムッチャゲーム!!!
ワッチャネーム!!!?
I 'm a KamenRider !!!!!
そして、テンション高く叫ぶドライバーに呼応する様にそこに顕れたのは…
…白くて玉子型の、なんかゆるキャラみたいな物体である。
なんか、やる気無い様な玉子型のデザインのこの貴利矢の姿。
これは、これこそがバグスターへの対抗手段である仮面ライダーの一人、『仮面ライダーレーザー』、その姿の一つ『レベル1』の姿である。
そう、この姿はあくまでも『レベル1』。
人からバグスターを分離させる最適の力ではあるが…戦闘力は最弱の形態だ。
パワーは高いが、リーチも短いし、足回りもそんなに速くない…特に、足回りに関しては、レーザーは特に顕著と言えるだろう。
バグスターへの絶対の力になりうるのはその次のレベルである形態…
「ん~…2速!!」
そう言って、貴利矢は己の姿を2速…仮面ライダーレーザーの本来の力を存分に振るえるだろう、『レベル2』へと進化させようとする。
「…なんだ、アレは?」
そして、そんな貴利矢の行動を…白亜の髪をしたオールバックの民族服の様な男が、眼光鋭く物陰から訝しげに覗いていた…