仮面ライダーレーザー外伝 ~天地を駆る王者達~ 作:たんぺい
「ん~…2速!」
そう貴利矢が叫び、己のゲーマードライバーのマゼンタのレバーを、ガッチャーンと言う音声と共にぐいと操作して開く。
すると、どうだろう!
ゲーマードライバーの中から、元気良くレベルアップ!!と言う叫びが鳴り響き、こんな音声と共にレーザーのレベル1は己のタイヤを三輪車の様に押し付けて、ゲームソフトよろしく仮想空間を駆け回りながらこんな音声が次に響いてくる。
爆走!激走!!独走!!!暴走!!!!
爆走バァイクゥゥ!!!!!
そんな声と共に…レーザーのレベル1の外装は吹き飛び、その真の姿へと文字通り『変身』…否、最早『変形』するのであった。
その真の姿たるレーザーバイクゲーマーのレベル2、それは…バイクである。
比喩なく、黄色い細身のバイクに、ゲーマードライバーのベルトとライダーの顔面がついたハンドルがくっついていると言う、とんでもないシュールさだ。
そう、このレーザーと言うライダー、レースゲームの力を宿しただけに本当にピーキーな能力を誇る。
一応人型の体裁は整ったレベル1だと、初期症状のバグスターウイルスは兎も角も、分離し実体化したバグスターや他のライダーと比べてあまりにも力不足。
しかし、レベル2の力はと言うと…自走可能とは言え、操縦者ありきの設計の為か本来の馬力が出せない上に、バイクの為に直接戦闘力があまりに足りてない。
永夢の協力ありきでレベルアップする特殊すぎるレベル5は兎も角、貴利矢が自前で用意できるガシャットでもレベル3ならばその弱点も遠近隙がなくカバーが出来るが…まあ、今はそれは置いといて、レベル2の話に戻そう。
とまあ、レーザーのレベル2の能力はほぼ『スピード』の一点に集約される癖に、乗り手となる他のライダーが居ないと本来のスピードすら出せないと言う…あまりにも使いにくい能力である事は、貴利矢自身も良くわかっている話だったのであったが…しかし、レベル1はおろかレベル3ですら、あのモータスバグスターの変異体が駆け回る惨状にスピードで追い付く事は出来はしまい。
まあ、かつての変異する前のモータスバグスターですらレーザー単独で追いきれなかった苦い記憶は貴利矢には有るが、しかし、他に貴利矢の手持ちの手札であの金色の暴走バグスターに追尾する手段があった訳でもない。
貴利矢の知り合いで言えば、ジェットコンバットガシャットを駆り飛行能力の有るライダーのスナイプの様な手筋が有れば話は別だろうが…無い物ねだりが出来るわけでもなかった。
さて、そんなレーザーが…雑念を振り払うかの様に、ハンドルをひとりでにブルンブルンと捻ってエンジンをふかしギアを温める。
あのバグスターをライダー達の共通能力でもあるステージセレクトの結界に取り込める範囲内に近付くか、レベル3のクリティカルストライクで狙撃で狙える射程に回り込むために、さあ行こう!と気合いを入れた…まさに、その時であった。
「本能、覚醒!!」
そう、貴利矢の背後から若い声の男の叫びが響く。
バード!と言う海のように深い声の男の声がするなり、オーオー!オーオー!と言う閧の声と合わせて四角い金色の立方体が彼の身体を包み込み…その姿は、オレンジ色の鳥の様なマスクを被る戦士へと変化した。
思わずバグスターの事も一瞬で頭から抜けてしまった貴利矢が、彼に質問する。
お前さんは、なにもんだ?と。
そのオレンジ色の戦士は…迷わず、こう返した。
「俺は…天空の王者、ジュウオウバード!!」
ジュウオウバード…そう言えば、と貴利矢は思い出す。
デスガリアンと対峙しては平和維持の為に戦う戦士が居る、ジュウオウなんとかってチームだったハズだ。
いつか、TVで見たこと有るのと同じデザインだ、ならば敵ではないだろう、と。
そう考えた貴利矢は…ついつい、何時もな調子で、軽い口調で声をかけたのである。
「自分で自分を『王様』なんて言うなんて…アンタ、イケるノリしてるじゃん?良かったらさ、俺と相乗りしてくれねえか?なんか知らねえが、デスガリアンとかいう輩と戦うジュウオウなんとかって一人なんだろ?」
そう言って、気さくに声をかけた貴利矢に対して、ジュウオウバードと名乗る男はと言うと。
そんな貴利矢の気遣いを一蹴するかの様に、こう返したのであった。
「俺は、別にデスガリアンと戦ってる訳ではない…正式な仲間じゃ無いんだ、だからお前の期待には答えられない。第一、初対面の癖に、馴れ馴れしくて信用ならん。お前こそ、何者だ?」
そうジュウオウバードに言われて、貴利矢は…確かに、それはそうだ、と得心する。
信用する事の難しさ、信用される事の得難さを。
あの純粋なお人好しな永夢の協力を得るのにも、貴利矢風に言えば『悪ノリ』してしまったせいで、手近に結果を求めようとしてその信用を裏切った結果どれだけソレを取り戻すのに苦労したかわからない。
まして、こんな難くなそうなジュウオウバードを名乗る男の信用を得るには…貴利矢からしたら苦手なことではあるが、嘘は吐いてはいけない、そう直感が告げていた。
幾度も監察医として調査に出向いていた際の、経験則でもあったのである。
とは言え、因縁深い相手が現在進行形で暴走している現状、いちいち事細かに自分の素性を明かす時間はない。
故に、かいつまんで語る事にした。
「あそこで爆走しながら暴れている怪物はバグスターって言う…まあ、悪い病気の塊で、自分はソレを退治する専門の医者の一人って感じだ。こんな姿でわりいが…自分の名前は、仮面ライダーレーザーって言うん…だぁあ!?」
そう言って、敵と己の正体を真面目にジュウオウバードへとただただ説明していただけだと言うのに、いきなりそれは質問した張本人からの攻撃により中断させられてしまった。
イーグライザー…大空の王者と天空の王者にのみ所持を許されし、蛇腹型に伸縮可能な鞭と剣の二つの顔を持つジュウオウバードの必殺武器。
その一撃が、何も悪いことをしていない貴利矢に向かって、鞭の様にピシャリと飛んできたのである。
「あっぶねえ…いきなり、何しやがる!?」
思わずごろごろと、貴利矢はレーザーのゲーマードライバーを器用に閉じて、ガッシューン…と言う音声と共にレベルダウンして緊急回避する。
しかし、狼藉を働いた側のジュウオウバードは、臆面もなくこう告げたのだ。
黙れ、嘘つきめ!と。
『嘘つき』と言われて…思うところの多い貴利矢はカッとなり反論しようとするが、対するジュウオウバードは貴利矢に構わずこう続けるのであった。
「仮面ライダー…大和、ああ、貴様に言ってもわからないかも知れないが、知り合いからその姿を聞いた事がある。パーカーを被った戦士で、丸い玉を使って変身する背の高く足の長い、蹴りが似合う戦士だ、と。似てもにつかないじゃないか、貴様の全てが。貴様の何処が『仮面ライダー』なんだ?答えてみろ!」
…そう、ジュウオウバードは『仮面ライダー』と言うモノを知っている。
だが、ソレが故に、恐ろしくややこしいことへとなっていたのであった。
ジュウオウバードに大和と言われた男、ジュウオウイーグル及びゴリラやホエールの変身者でもある風切大和は、たまたま仮面ライダーと共闘した事があり…ジュウオウバードに変身する男へと数年ぶりに再会した際、彼にもソレを伝えた事がある。
しかし、その仮面ライダーは…まあ、色々とレーザー達の言う仮面ライダーとは根本的に似付かないシステムにより変身する、目的自体が根本的に違うライダーだったのだ。
おかげで、その大和の説明を鵜呑みにしたジュウオウバードの中の仮面ライダー像と、貴利矢の言う仮面ライダー像がまるで噛み合わず、齟齬が互いに発生する事になっていた。
或いは、レベルアップに関係無く人型のエグゼイドやブレイブやスナイプならば、ジュウオウバードも仮面ライダーに対する齟齬のギャップも『大和の勘違い』や『説明に無いシステムのライダーが世界に存在する』、と納得できたのかも知れないが…よりによって、レベル2がバイクと言う、骨格がどうしたらそうなるかわからない狂った変形をこなすレーザーが相手だったのが不味かった。
ゆるキャラからバイクが出てきて『俺も仮面ライダーです』と言われて、納得できるヤツを探す方が難しいだろう。
まだ、『デスガリアンがジュウオウバードを騙そうとライダーの名前を騙っている』と思考する方が、完全に建設的だろう。
ソレが故に、ジュウオウバードの脳内では、貴利矢が『仮面ライダーを騙る悪い偽物』としか思えずに、ひどい行き違いから威嚇ぎみに攻撃する事になっていた。
とは言え…貴利矢の方からしてみたら、ジュウオウバードの思考なんてわかるわけがない。
いきなり、トラウマの様な言葉でもある『嘘つき』と罵られた挙げ句、親友ジュンゴの仇を討てるかも知れない自分に残されたギリギリの誇りでもある『仮面ライダー』の名前すら否定されたのだ。
ソレを許して置けるほど、貴利矢は老いては居ない。
青臭いと言うか面倒臭いとは、貴利矢自身も思うが…ジュウオウバードと名乗り自分を否定する目の前の男へは、貴利矢自身の怒りを抑える事は出来なかった。
「言わせて置けば…アンタ、俺とはノリが合わねえみてえだな!」
そう言って、貴利矢は自身のガシャットのホルダーから、己の最強兵力である『ギリギリチャンバラ』のガシャットを、爆走バイクが差さっていない空いたスロットへ差し込むなり、こう告げるのである。
仮面ライダーレーザーの戦闘形態であるレベル3の姿へと変身する為の、切り札を呼ぶ掛け声を。
「行くぜぇ…3速!!」
そう言って、爆走バイクのガシャットとギリギリチャンバラのガシャットを2本差ししたゲーマードライバーのレバーを、再びガシャーンと鳴るベルトと共にぐいと操作するのであった…