仮面ライダーレーザー外伝 ~天地を駆る王者達~   作:たんぺい

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X速 盤外、番外!GM・ザ・クライシス…!!

(何故…ヤツは、何者だ!?)

 

ナリア…デスガリアンのオーナージニスの秘書であり、ブラッドゲームの調整者でもある彼女は、内心でこう呟いていたと言う。

目の前の、まるで理解の範疇を越えた様な、『死神』を前にして…

 

 

 

話は、貴利矢とバドの二人がモータスバグスターと共闘する、そのわずか1時間ほど前に遡る。

そう…貴利矢等の戦いとは別な場所で、また別な『仮面ライダーの戦い』があったのである。

やや本筋から離れた脱線ではあるが、これからの話に必要な『盤外』のこの一時間の内に起きた別な話を、少し挟ませていただこう。

 

エキデイン…チーム・アザルドに所属するブラッドゲームの『プレイヤー』の反応を、ナリアは丸々三日半、ブラッドゲーム再開を望むジニスの為に一睡もせずに探し回り…

ついにソレを見つけた時は、ゲンムコーポレーションが所有する数々の倉庫の一つの裏手の路地裏に、まるで錆びたドラム缶でも放棄するかの様に無造作に転がされている姿だったと言う。

 

漸く見つけた、何故か妙に反応がか細くなった為に探し出すのが大変だったエキデインに、嫌味の一つでも付けようかと思っていたナリアだったのであるが…ハムみたいに縛り付けられていた、その情けない姿以上の異常がエキデインには見受けられている。

そう、『ゲーム病』に感染した為に、その姿が薄いビニールの様に透明になってしまったのである。

 

 

「な、何が…!?」

 

ナリアは、目の前のプレイヤーのその異常に気が付き、つい狼狽えた様に反応を見せた途端、ハハハ…と、わざとらしい気持ちが籠らない笑い声が倉庫街に響き渡る。

ナリアは、その笑い声の主に向かい、思わずこう怒鳴り付けた。

 

「何が可笑しいのですか!?下等生物め…!居るなら、早く出てきなさい!!」

 

そう怒鳴り付けたなり、手持ちの銃を兼ねたヌンチャクを両手に構え威嚇すると、その声の主たる男は臆さずに現れる。

スーツ姿に、きっちりセットした黒髪の端正な青年…壇黎斗、それはゲンムコーポレーションの社長。

『仮面ライダー』達のゲームのGM(ゲーム・マスター)であり、倉庫街の管理責任者でもある男だった。

 

 

「倉庫の持ち主が、手持ちの土地に表れて可笑しい理屈は有るまい」

 

そうわざとらしい口調のままに告げる黎斗は、消えかけのエキデインの方向に目だけ向けながら、更にナリアに向かいこう続ける。

 

「『ブラッドゲーム』…中々、ゲーム会社の社長としたら面白いアプローチの話だ。侵略行為をゲームに見立てての戦い、ゲーム内容によっては、知人の言葉を借りれば『心が踊る』と言うモノだ。開発中の最新式ゲームである『Knock Out Fighter』と『Perfect Puzzle』も、元々は君達デスガリアンのゲームからインスパイアされたモノなのさ。そう言った部分に関しては、素直に礼を言うべきだろう」

 

そう言って、軽く会釈をして一拍置くなり…しかし、黎斗は、今度は『素』をさらけ出しながら、苛ついた語調を出してこう続けるのである。

 

「だが…『下等生物』は、取り消して貰おうか、エイリアン風情が!バグスターウイルスにかかった異星人のデータは『KAMEN RIDER CHRONICLE』完成の何かの役に立つかと期待していたが…疾患のスピードどころか、人間との身体の作りそのものすらゲノム単位で違うせいで、まるでデータは役に立たない!時間を無駄にしてしまったのだよ…!私からしたら、デスガリアンとはアメーバ以下の存在に過ぎないそれが、私に向かい偉そうな口を利くことは赦さない!」

 

 

そう、傲慢すぎる口を叩く黎斗に対して、ナリアは…あまりにもあまりな言に、唖然とするしかなかったが

しかし、直ぐにナリアは正気に立ち戻り、黎斗へと怒りをそのまま向けるかのごとき銃弾をヌンチャクから浴びせる。 

 

「お前こそ…力の差を思い知りましたか!!我等デスガリアンでも、ジニス様に見初められた私と、下等な現住生物との力の差を噛み締めながら…そこで果てなさい!」

 

そう、怒鳴り付けたナリアは、だめ押しとばかりに追撃の銃撃をガガガガッ!と連射する。

 

アルファルトで固められた大地は、まるでバターナイフでマーガリンの塊を抉るかの様に削られて。

周囲には、硝煙と火花により煙が充満している。

マシンガンの攻撃をした直後の様な無惨な跡を見たナリアは、自分の攻撃を以て、黎斗はまるでぼろ雑巾の様になったのであろうと思い立ち去ろうとする。

大人げないとも自分で感じたナリアだったが、あの傲岸不遜な下等生物の顔を見なくても良いと判断したからであろう。

 

そして…バグスター・ウイルス、要するに、現地の死病にかかったプレイヤーの処遇をどうすべきかジニスに相談しようと連絡を入れようとする。

サジタリアークに回収して治療するか、何処か空気のきれいな星にでも隔離するか、或いは…役立たずになったプレイヤーを『処分する』か。

 

恐らくは、面白くも無くなった玩具の末路なぞ最後の選択肢なのだろうとはナリア自身も思いつつ…しかし、あくまでも秘書たるナリアではジニスの意向の全てなんかわからない為、彼女自身だけでは判断は出来ない。

そう考えるナリアは、通信機に手をかけた瞬間…パンッ!と言う、一発の銃声が、ナリアに向かい響く。

  

思わず、その銃声がする方向に顔を向けたナリアは…更なる銃撃に、吹き飛ばされて膝を地につける。

何事かとナリアは改めて銃声がする方向を確認すると…そこには、紫のゲームパッドの様な銃、『ガシャコンバグヴァイザー』を持ちながらナリアを攻撃して来る黎斗の姿が、硝煙が晴れた先から無傷で在ったと言うのである。

 

 

「く…!しぶとい下等生物が!?」

 

止めは刺せないどころか反撃まで許したナリアは、その事に恥と怒りを同時に見せながら、通信機から手を離して再び攻撃しようとする。   

 

一方の黎斗はと言うと、淡白な表情のままに冷淡過ぎる視線を以てナリアを見ながらも、淡々と持論を、何事もなかったかの様に続けるのである。

 

「…何より、私が君達デスガリアンを気に入らない理由は、『ブラッドゲーム』こそ最高のゲームだと思い込んでいることだ。気に入らない、最高のゲームを産み出せるのは、この私だけなのだ!実際、そうだろう?もし、本当に君達が最高のゲームをするプレイヤーならば…例えば、今だったとて、さっきの攻撃で私を肉塊にできるだろうに」

 

そう挑発する黎斗に、額に青筋を浮かばせながらナリアはなんですってと反論しようとするが…当の黎斗は、淡々とした口調のままに、いきなり手持ちの武器だったガシャコンバグヴァイザーを腰に充てながら、こう締めたのであった。

 

「最高のゲームとは、例えばこう言うゲームの事を言う。『テストプレイ』には丁度良い、レベルⅩの新型ゲームさ…変身!!」

 

そう言って、黎斗は白いライダーガシャットを、パチッとスイッチを押しながら水平に構える。

デンジャァラス・ゾンビィィ…!!と、まるで唸り声のような叫びを響かせたガシャットを、腰に充てたヴァイザーのスロットに斜め下に向け一直線に挿す。  

 

デンジャァァア!

デンジャァァア…!!

デス・ザ・クライシス!!!

 

そう、地獄の亡者の様な叫びが、黎斗の腰から響くなり…黒と赤に染まったヴィジョンから、ガラスを突き破る様に現れた白い死神か亡者の化身の様なライダーが姿を顕した。

 

 

「な…貴様は、一体…!?」

 

ナリアは、目の前の異様なライダーに驚き、まぬけな声を見せるが、当の黎斗は気にしない。

黎斗は、変身してくぐもった声をしながら、こう告げた。

 

「私は、仮面ライダーゲンム、ゾンビゲーマーレベルⅩ(テン)…!『デンジャラスゾンビ』とは、無数の倒しても倒しても甦る亡者達が蔓延るゾンビの街から逃げ惑う、死のゲームだ。光栄に思え、他のライダーすら知らない新作ゲームの、最初の目撃者になれることを…!!」

 

そうして、ゾンビゲーマーへと変身した黎斗は語り終えるや否や、いきなりナリアに殴りかかり彼女を吹き飛ばす。

其れに怒ったナリアは、ゾンビゲーマーを、文字通りに亡者にしようと攻撃を再開する。

…そして、二人の戦いは、一時間以上にも及んだと言う。

 

 

そして、話は、ナリアの冒頭の内心描写へと立ち戻る。

 

ナリアの計算ならば、既に、あのゾンビなんちゃらと言う亡者は死体になっている筈だ。

それだけの弾を、打撃を、打ち込んだ。

あの悪の天才でありナリアが唯一心服しているジニスや通称通りに不死身のアザルドならばともかく、何度も邪魔してきた憎きジュウオウジャーですらただでは済まない筈の攻撃を黎斗に浴びせている。

 

だが…そんな、死ぬ筈だった致命傷を受ける度、黎斗はぐねぐね気持ち悪い動きを見せながら、本当にゾンビの様に意に介さず立ち塞がってくる。

 

…これは、もしかしなくても分が悪い。そう、ナリアは目の前の敵へと判断を向ける。

戦闘技量ならば、百戦錬磨なナリアと黎斗はそう変わらないだろうが、或いは…アザルド以上に不死身な能力の有る敵へと対処するのは困難だろう。

 

「…ちっ!一旦、サジタリアークに退却するべきですか、不本意ですが…!」

 

舌打ちしつつ、ナリアはそうぼやくなり…何時ものように、メダルの様なエネルギーでワープしようとした瞬間に、それは起きた。

 

 

「ぐ…苦し……ミギャァァァアアアアアア!!!?」

 

先程から弱っていたエキデインが、断末魔の絶叫を上げながら、突如として苦しみを訴えるかの様にもがきだす。

何事か…!と、ナリアはおろか、黎斗ですら一瞬驚き、そちらの方に顔を向けたなり、その『異常』の正体が判明する。

 

ゲーム病の末期症状、それはつまり、この世界からの文字通りの『消滅』。

 

そう、黎斗によって大量のバグスター・ウイルスを散布されゲーム病に犯されたエキデインは、黎斗の予想以上のスピードでゲーム病は進行し…遂に、ゲーム病の最終stageに到達して『死』に至ったのである。

 

 

「ふむ、データとしては役立たずのプレイヤーの末路はデリート、か…まあ、花程度は添えてやるか、その辺の雑草で花束にして」

 

そう言って、黎斗はエキデインが居た場所に目を向けながら、ポツリと呟く。

一方のナリアは、目の前の異常事態に呆気に取られながらも、一人ではどうしようもないと判断して、捨て台詞すら吐かずにジニスとアザルドに『プレイヤーの病死』の事実を伝えるためにサジタリアークに帰艦する。

 

 

その事は、丁度…貴利矢とバドが、モータスバグスターを異空間に転送した直後のことだったのであった…


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