白の狐は何を見る   作:橘 聖

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キャピキャピリン
どうも、橘聖です

投稿が遅れてすいません
今回はOKI10様の『旅行』とコラボいたしました

きっかけはUA数10000超えのツイートをしたときに「コラボでもしようかなぁ…でもこんな作品とコラボしてくださる人なんて…」と書いたところ、OKI10様がコラボをしてくださることになりました

OKI10様、今回はコラボしていただき本当にありがとうございます

『白の狐は何を見る』と『旅行』の世界が交わった、一話限りのお話をお楽しみください


番外編
コラボ回『旅行』


今日は何もなければいいなぁ

数分前、そんなことを静かな自分の家の中で思っていた

 

それが引き金になったのか、竹林の中から音がした

まだ朝とは言えど薄暗い

こんな時間に好き好んで竹林の中に入る妖怪もいないだろう

もちろん、竹林の中に住んでいる人妖はまだ活動時間ではないはず

 

竹林で何かが起こっているのだろうか

そんな焦燥感が頭をよぎる

俺の家にまで何かあったら大変だ

 

というわけで、少し急ぎつつ、音のした方へ向かう

 

 

 

「…なんだこれ」

 

急いで来てみると、そこには小さな人形があった

この人形が大きな音を出すとは思えないが、周りには長く伸びた竹があるだけ

何か人形に仕掛けがあるのかと思い、じっと見てみる

 

傷がところどころに入り、少し煤がついている

ここだけ見るとただの古びた人形だが、それとは少し違った

なにせその人形から声が聞こえるのだ

注意しつつ、その声に耳を傾ける

 

「…美しいところにいきたい」

 

なんと、喋ったではないか

見た感じでは妖力や神力ではない何かがこの人形には宿っているみたいだが…

 

「俺の声が聞こえるか?」

 

「はい、聞こえますよ」

 

同じことを繰り返しで言うようなカラクリだと勘ぐってみたが、どうやら違うらしい

この感じだと敵意はなさそうだからこの人形の言う『美しいところ』に連れていってもいいかもしれない

…だが万が一のこともあるかもしれない

仕方ない、あいつでも呼ぶか

 

「ゆかりーん」

 

…なぬ、反応がない

いつもはすぐ出てくるはずなのになぜだ

まあ、用心棒程度だしいてもいなくても関係ないか

 

「…朝早くに呼び起こされて悪口叩かれてるんですけど」

 

背後から聞き慣れた声が聞こえる

どうやらただの寝坊だったらしい

 

「寝坊じゃないわよ。霜月のように朝早くには起きられないだけよ」

 

「…今気づいたけど勝手に心読むなよ」

 

「私をこんな時間に起こした罰よ。で、何の用なの?」

 

「いや、この人形が美しいところに行きたいって言うからさ。連れに紫はどうかなーと思ってな」

 

「…その報酬に見合うものがないわねぇ?」

 

説明したらこんなことを言い出すわがままな紫

…紫のことだからあれだろうなぁ

 

右手の人差し指を伸ばす

紫は首を横に振る

 

さらに中指を伸ばす

だが紫は横に振る

 

薬指も伸ばす

だが紫は頷かない

 

小指も伸ばす

が、紫はまだ見合わないと目で訴える

 

右手の全ての指と左手の人差し指と中指を伸ばす

紫は少し硬直したが首を横に振る

 

さらに左手の薬指と小指を伸ばす…と見せかけて左手を降ろす

その瞬間、紫は頷く

 

「五本だな」

 

「…だましたわね」

 

その時の俺の顔はどれだけ笑顔だったのだろうか

しかし、結局紫の思い通りになっていると気づいたのは家に帰ってきてからであった

 

 

 

「美しいところってどこだろうな」

 

「それはたくさんあるわよ。霧の湖に白玉楼、妖怪の山に無縁塚とか」

 

「どこも良さそうだがいまいちパッとするところがないなぁ…」

 

「んー…なら太陽の畑はどうかしら」

 

「それだ。あのひまわりは絶景だったからな」

 

「それじゃあ行きましょ」

 

「…スキマは?」

 

「歩いた方が運動になるでしょ」

 

「これだからおまえの腹まわりには無駄な―――」

 

「わーわーわー!!」

 

そう、紫は霜月の尻尾の上でもふもふしているだけなのだ

歩いているのは霜月だけ

なので紫の重みを霜月は受け(スキマオクリニサレマシタ)

 

 

 

「人形はどこから来たんだ?」

 

流れで太陽の畑まで行くことが決まったが、喋る人形がなぜここにあるのかという疑問がふと頭をよぎったのだ

 

「…わかりません。気づけばここにいました」

 

「幻想入りしたってことなのかねぇ」

 

「それなら私がスキマで元の世界に戻しましょうか?」

 

「いや、どこかから来たんだろうけども、自分で歩きそうにないんだよ」

 

「…つまり?」

 

「送り返したところでこの人形は何もすることができないだろうから、うちにでも置いておこうと考えてるんだが」

 

「まあ…霜月がそれでいいって言うのならそうしても構わないんだけど…」

 

霜月の手元で人形が何か言っていたが、周りの鳥類のさえずりによりそれが霜月と紫の耳に届くことはなかった

 

 

 

「もうすぐ着くからな」

 

竹林を抜け、丘の中腹(ちゅうふく)辺りで人形に言葉をかける

 

しかし人形の反応がない

人形に意識を向けると、やっと声が聞こえてくる

 

「ありがとうございます」

 

「別にいいんだよ。俺も幽香…俺の友だちと顔を合わせたかったし」

 

知らない名前を言われてもわからないだろうと思い、言いなおした

別に他意はない

 

 

 

「やはり何度見てもすごいな」

 

丘を越えると、そこには黄金の海が広がっていた

見渡せるほどとは言わないが、十分な広さの平地に所狭しとひまわりが咲いている

 

「紫、ついたぞー」

 

いつの間にか寝ていた紫を尻尾を消して起こす

地面に落ちた紫が短い悲鳴をあげたがいつものことなのでスルー

 

「霜月からの愛が重い」

 

「バカなこと言ってないで行くぞ、ほら」

 

紫を起こし、歩かせる

宴会後に手入れしたのにまた涎をつけられるのは遠慮したい

 

「それで、幽香はどこにいるのか」

 

「いつもの小屋じゃないの?」

 

「確かに昼時だから小屋にいるか。幽香のことだから時間とか気にせずに花の世話してそうだと思ったが考えすぎか」

 

「それもありうるけど小屋にいなかったらその時に考えればいいじゃない」

 

「それもそうか。それじゃあ行こう…と言いたいとこだが人形の頼みでここに来たからな。この景色に満足してから行こうか」

 

頭に乗せていた人形を手に置き、反応を見る

 

「…確かに美しい場所です。わざわざここまでありがとうございます」

 

人形の気に召したようで安心する

人形と俺らの感覚は同じようだ

 

「…人形はこれからどうするんだ?」

 

「えっと、迎えに来る鳥がいるんですが、こちらに来たときから姿が見えなくてですね…」

 

「どうすることもできない、と。人形がよかったらこの花畑の管理者にでも会ってみるか?」

 

少しの間があったが頷く人形

 

「よし、それじゃああの小屋に行こうと思うがいいか?」

 

再び頷く人形

人形の合意が出たので、背丈くらいある花の道を通りつつ小屋へ向かう

 

「幽香、いるか?」

 

ドアを叩き、居るか確認をとる

 

「この声は霜月ね、いるわよ」

 

間も無く返事をしてくる

…何気にすぐ俺だと気づくって怖い

 

「遊びに来たんだが、入っていいか?」

 

「いいわよ、お昼ご飯をたかりに来たのかと思ったわ」

 

「いや、さすがにそこまで無礼ではないさ」

 

度々(たびたび)、俺の家に泊まりに来るどこかの誰かさんへ

しかし当の本人はどこ食わぬ顔で幽香の家に入ろうとしていた

 

「ねぇ紫、この頃戦ってなくて動きが心配なのよ。相手になってくれない?」

 

「なんで!? さっき入っていいって言ってたわよね?」

 

「私は霜月に許可を出したわよ、あなたには言ってないわ」

 

「ひどくないかしら…」

 

「まあまあ、今日は俺から付き添いに誘ったから、許してやってくれ」

 

「霜月がそう言うならしょうがないわね。特別よ、入っていいわ」

 

「…私への扱いがひどい気がするのだけれど、気のせいかしら」

 

気のせいじゃないだろう

かくいう俺も『今日は』と限定的に言っている

いつもは知らないがどうせ紫のことだ、勝手に何かやっているのだろう

 

「じゃあ失礼するぞ」

 

幽香と紫と一緒に幽香の家に入る

この間入ったときとあまり変わらない雰囲気

違うとすれば鉢に植えられている花が変わったことであろうか

 

「メディもいたのか、とその鳥は?」

 

「あ、霜月さん、こんにちは。この鳥はさっき疲れた様子でここに来たので療養してるところです」

 

その鳥を見ると、人形から声が聞こえる

 

「あの鳥です。あの鳥が私を運んでくれています」

 

「あの鳥って…鳩じゃないのか?」

 

幻想郷ではあまり見ないが、本で見たことがある

体に比べて頭が小さく、胸骨、胸筋が発達してずんぐりとした体型であるから間違いはないだろう

その鳩も、人形を見つけるや否や二鳴きする

 

「向こうも人形を見つけて一安心したのか」

 

「霜月さん…でしたか、今回はありがとうございます。あなたと出会わなければどうなっていたことか」

 

「いや、いいんだよ。こっちとしてもいい運動になったよ、誰かの」

 

ちらっと紫を見るが気づいていない様子

 

「そうですか。それでは私はこれで失礼します」

 

「もう行くのか、もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

「いえ、もう十分にお世話になりました。これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんので」

 

「別にかかってないが…これ以上言っても無駄か」

 

「はい、では今回は本当にありがとうございました」

 

そのお礼を言い終えると同時に、メディに触られていた鳩が人形を掴んでホバリングをする

その意志をくみ取り、俺は玄関のドアを開ける

すると、鳩は開けた玄関から飛んでいく

 

「体は大事にしろよー」

 

飛んでいく鳩と人形にその声が聞こえたのかはわからない

だが、人形が手を振った、そんな気がした

 

 

 

 

 

「そういえば、どうやって幻想郷から抜けていくんだろうか」

 

そんな疑問を持ったが、帰ってこなかったので抜けることができたのだろう




今回は、大半が私の執筆の遅さ等でコラボ回の投稿が遅くなりました
OKI10様、本当に申し訳ありませんでした

初めてのコラボ回、いかがだったでしょうか
初めての試みということもあり、コラボ相手の方のキャラの特徴や話し方などを変えないようにしながら書くことの大変さを知りました

OKI10様の『旅行』のページはこちらからどうぞ
https://novel.syosetu.org/115146/

今回はここまで
これからはコラボしてくださる方がいらっしゃいましたら随時…とは言えませんが、Twitterかこちらで募集させていただきます
もちろん相手がいなくて本編更新になるでしょうが

それではまた次回お会いしましょう、さようなら





霜月「…あ、人形の名前聞いてなかった」
紫「別にいいじゃない。縁があればまた会えるわよ」
霜月「…そうだな、その時には聞こう」
紫「でも幽香が怖い」
霜月「それはお前のせいだろうが」
紫「なんで。別にお酒飲んだり花を摘むくらいいいじゃないの」
霜月「それだよ、バカ」
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