ラスト・ザク 暗礁空域の暴霊 ~機動戦士ガンダム サイドストーリー~ 作:legna1113
その日、俺はいつも通りに出勤して新型機の 開発に勤しんでいた。
だが、休憩所のモニターから流れたその重大 ニュースは拘りのブレンドしたコーヒーの味 を忘れさせるほど強烈だった。
『今、私達は歴史的瞬間に立ち会っていま す。本日、宇宙世紀0079 12月31日、この グラナダで連邦政府とジオン共和国の間に終 戦協定が結ばれました。…戦争は終わったの です!』
興奮気味に話すキャスター。ここは軍事施設 として重要な拠点だけに、軍の高官が度々来 ていた。 政府の公式発表とは違う、戦争の実情に関す る情報も断片的に入ってきていた。 口にする者は少なかったが、皆この結果をど こかでは感じてはいた。考えないようにはし ていたが。
いざ、現実となるとなかなかに衝撃的だ。 周りもざわついている。当然だ、終戦したの はいいが、ジオンは負けたのだ。連邦軍が戦 後処理の為に乗り込んでくるのは明白、ス タッフは拘束されて尋問だってあるだろう。 組織も解体か、転属。何より、この新型が接 収されるのは面白くない。 いっそ、こいつを退職金代わりに頂いて逃げ 出したいところだ。
『クーパー主任、至急、第三会議室まできて ください。中佐がお呼びです。』
「俺を中佐が?」
中佐というのは、ここによく出入りしている 技術士官だ。元々、ジオニックのテストパイ ロットだったらしいが、MS工学にもあかる く、中佐待遇で開発部に入った経歴の持ち 主。 エリオット・レム技術士官と呼ぶのが正式な のだろうが、敬意と親しみを込めて、俺たち は”中佐”と呼んでいる。
俺は会議室へと急いで向かいながら、何故呼 ばれたのか考えた。 実際、まともに話したこともない中佐に名指 しで呼ばれる理由など全く思い当たらない。
部屋の前に付くと身嗜みと息を整え、ドアを ノックする。
「ミハエル・クーパーです、お呼びでしょう か?」
「来たか。入りたまえ。」
ドアを開けて入ると、そこには中佐が一人で 座っていた。
「急に呼び立ててすまないな、主任。」
中佐は一言そういうと、黙ってこちらを見つ めている。
「あの、中佐?」
その意図がわからない俺は困惑した表情で話 しかけた。
「おぉ、すまないな。実は折り入って話が あったのだ。」
そう言うと、用件について話し出した。 「三日後に連邦軍の技術士官達が視察にく る。組織は再編もしくは解体、君の扱ってい る新型機も接収されるのは間違いあるまい。 」
「残念な事です。戦場での勇姿を見られない ばかりか、敵にとられるとは。」
こちらの表情を見ながら、何かを伺っている 様子の中佐に言葉を選びながら話した。
「私もそう思う、最後の仕事に一緒に試験場 でその勇姿を見てみないかね?」
「今から、ですか?」
「そう、今からだ。奴らの来る前にここをた つ。」
中佐の急な申し入れに、困惑はしたものの 願ってもないチャンスなので、行くことにし た。
「是非、お願いします!」
俺は二つ返事で話をすすめた。
「そうか、予定は一週間ほどだ。旅の出来る 支度をしておいてくれ。」
なんだか気になる言い回しだったが、俺はそ のまま部屋を後にした。 ここでの最後の仕事、やり遂げられるだけ光 栄だと思わなくては。
三時間後に出発とのことだったが、元々俺は あまり持ち物は持たない主義だし、大して問 題はなかった。