ボクのMod付きマイクラ日誌   作:のーばでぃ

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知らない景色を目指して

「――やあっっと落ち着いたねぇ」

 

羊毛と木材でニソラさんのベッドを作って、家も小物も完成しました。

レシピを探していたら木材で作る家具なんかが解放されていたので、それでテーブルや椅子もきちんと用意。

なんのModなのか判らなかった事を考えると、この世界はボクが知る以外のMod要素も追加されていると言う事になります。

それがまた、ワクワクしてきました。

さすがにお茶はなかったので木のボウルに入れた水で乾杯の真似事をすると、ボクたちはやっと一息入れました。

ちょっと遅めの昼食です。

採れたての小麦から作ったパンに、木材伐採の時に採取したリンゴ。これにお砂糖をつけた内容でした。

 

「本当に1日……いえ、半日ですね。それでこれだけの家を作ってしまうんですから、ほんとにもう色々規格外ですよタクミさんは。私の部屋とベッド、気を使って頂いて有難うございます」

「持ちつ持たれつ、だよ。実際、ジョウロの骨粉や採取の手伝いはすっっごく助かりました。ボク一人だったらここ迄するのに多分3~4日掛かっていただろうしね」

「フツーは3~4日でも無理ですからね?」

 

それ以前、ボク一人だったら3~4日経ってもあの豆腐拠点を続けたままだったろうなぁ……

 

「ちゃんとした拠点と生活基盤ができた所で、これからの予定を話しておくね。……まず白状するけど、これから行こうとしている世界。ニソラさんが溶岩だまりを見つけた時点で実はもう行く手段が確立しちゃいました。多分ニソラさん、火打石持ってるでしょ?」

「ええっ!?……持ってます!持ってますっ!!」

「けれど、本当に悪いけど絶対前準備はさせて貰うのでまだ行きません。……入念に前準備をしてなお、どんな予想外の事があるかボクにもちょっと予想がつかないんだ」

 

真剣な目をしたボクを見て、よっぽどだと悟ったのでしょう。

こくこくとニソラさんが頷きました。

 

「向かおうとしている世界は、ネザーと呼ばれる場所なんだ。火が付けばずっと燃え続ける赤い岩石に覆われた、溶岩がそこら中から垂れ下がる灼熱の世界。油断をすると即座に命を落とす難所だと思って欲しい」

「ネザー……あの、伝説の!?」

「伝説になってるの!?」

 

予想外の反応にびっくりです。

 

「ええと……灼熱の地獄だと聞いた事があります。マグマが噴き出て強力なモンスターが闊歩する所だと。

そこにはウィザーと言う魔王が赤いレンガ造りの城で待ち構えているんです。魔界に囚われたお姫様を救出するために、青色に輝く武器防具で身を固めた勇者様が、精霊の作った黒曜石の扉を渡ってネザーに乗り込むんです!魔王ウィザーは三つ首のドラゴンで、空を飛んだり力を吸い取る生首を撃ち出して勇者様を翻弄するんですけど、死闘の末ついに勇者様は魔王ウィザーの胸に聖なる剣を突き立てるんです!断末魔を上げて消滅していく魔王ウィザーの消えた後には、怪しく輝くクリスタルが残ったそうです」

「……それ、何かの物語?」

「えへへ……ちっちゃい頃に聞いた勇者様の冒険譚です」

 

ところどころ心当たりが有りすぎるお話でした。

 

「あとはえーっと、人の魂が染み込んだ歩く度に断末魔を上げる砂漠とか、赤子の鳴き声を上げながら火の玉を吐いて襲い掛かってくるモンスターとか……そうそう、火も何もないのに常に光を放ち続ける黄金のクリスタルとか!」

 

ニソラさんがだんだんノってきました。

話している内容がそこまで間違って無いのが凄いです。

「大体合ってるかな」と相槌を打つと、「実話だったんですか!?スゴい!!」と大はしゃぎでした。

 

「――ボクの目的は、その黄金のクリスタル…グロウストーンって言ってね。ある魔法の道具を作る為に是が非でも手に入れたいんだ。さらに可能であれば、今の話には出てこなかったけど……ネザークォーツと言う水晶も多めに確保したい。その為に、黒曜石を使ってネザーへのゲートを作る」

「タクミさんは精霊様だったんですね!」

「確かに常識からズレて欲しかったけどそのズレ方はちがーう!」

 

ちょっとボクへの認識がシフトアップしすぎでした。

 

「……ともかく。その目的は、一度行っただけで達成されるとは考えていないんだ。だから最初の一回は偵察の目的が強い。最低限のグロウストーン、ネザークォーツを確保したらそのままここに帰ってくる――そういうつもりでいる」

 

まずはネザーがボクの知っている場所とどれだけ剥離しているか、もしくはボクが知っている要素をどれだけ含んでいるか。それを探るのが急務です。

さすがに冒険譚に出てきたような青に輝く武具――おそらくはダイヤツールの事なんでしょうが、そこまで準備するつもりはないですけども。

でも最低限、鉄、もしくはそれと同格の防具一式と、対ガスト用の弓を用意したいです。

……あー、弓はニソラさんが持ってましたねそう言えば。羊毛取りに行く前、一時的にカバンから出した荷物の中に、使い込まれた弓と矢筒がありました。

 

「伝説のネザーは、結構簡単に行き来できるんです?」

「ボクの知っている限りではね」

「ほえぇぇ~……」

 

ネザーポータルを壊される事はありますが、火打ち石さえ持っていれば復元も容易です。

ちなみに、ほとんどの人がネザーポータルを丸石などで囲って保護するプレイングをしてますが、ボクは大抵野ざらしにして「壊されたらまた火をつければ良いや」のスタンスでいます。ポータル周辺を開発する予定があれば話は別ですけども。

この世界では、むしろポータルは通過したら一度塞ぐようにする予定です。

危険なネザーのモンスターをこの世界に大量召喚するような真似は自重せねばなりません。

 

「そんな訳で、まずは武器防具作成のための資材集めです。条件が揃うまで当面は地下で採掘ですね。ここの地下で何がとれるかはまだ把握できていませんが、鉄鉱石が出てきたのは確認できましたので。地下100mをブランチマイニングしつつ、鉄を探しながら銅、錫、金、レッドストーンにダイヤを狙います。まあ、取れたらラッキー程度ですけど」

 

ゲームではそもそも地下100mなんて掘れませんでした。良いとこ60m程で岩盤に到達します。

マインクラフトでの岩盤は、「採掘できる限界点」を指します。そこから下は奈落が広がるだけです。ゲームですからそういう制約はついて回ります。

しかしこの世界ではおそらく、奈落なんてものは存在しないでしょう。普通に岩石の下にはマントルが流れているものと考えています。

正確には覚えていませんが、マントルは地表から云100キロ単位の深さに位置している筈なので、地下100m程度では掠りもしないでしょう。

その程度の深さの採掘でダイヤが出てくるかも正直メチャクチャ怪しいと思っています。が、長い梯子を上り下りするのは100mも十分つらいです。現実的にもこの階層が限界です。

……ゲームでは地下との行き来を短縮するために、水クッションとボートエレベーターを使っていました。

マインクラフトでは高所から飛び降りても着地点が水であれば、たとえそれが1mしか水深が無くても無傷が保証されているという仕様でした。

だから、着地点に水を敷いてそのまま云10mを飛び降りていたのです。

……リアルで試す気にもなりません。

ボートエレベーターは、もっと非現実的です。

ボートの近く(大体半径3mほど)でボートに乗るような操作をすると、プレイヤーの座標がボートの位置に瞬間移動する仕様を利用して、垂直に設置したボートを次々に乗り継いで行くと言うものです。

……できる筈がありません。きっと4回「できる筈がない」と言ったって無理でしょう。

 

「ダイヤに金……ですか。あれってちゃんとした鉱山で取るイメージがありますから、取れるかどうかは凄く怪しい気がします」

「その点についてはボクも同感。だから、鉄を集めつつ採れたら採る、と言ったイメージでいるんだ。正直あんまり期待していない。……ただ、金はどうとでもなるけどダイヤはどうしても最低一つ確保したい。これはネザー行った後でも良いんだけどね」

「……買っちゃダメなんですか?まあ確かに、宝石商の人がいそうな町はこの辺にはないですけれど」

 

この世界の人ならではの意見でした。

確かに、取引でアイテム入手ができるならそれに越した事はありません。

しかし。

 

「地理に明るくないのでそのあたりニソラさんに頼る事になるけど……それにしても先立つものが、ねぇ」

「あのお化けジョウロ作って売っちゃえば良いじゃないですか。ダイヤ一つと交換なら宝石商の人飛びつきますよ、多分」

 

……。

 

「……その発想はなかった……」

 

確かに、仮にあれがバニラに出てきてダイヤ一つと交換ならボクだって支払います。

それに取引方面で考えるなら、おそらくグロウストーンも中々いい値段で売れるでしょう。

もしかしたらネザーラックだって行けるかもしれない。

「火をつけたら永遠に燃え続ける石」なんて、普通に永久機関です。むしろそちらのほうが価値が高いかもしれません。

リアルだったらノーコストで光る石よりもノーコストで燃え続ける石の方が絶対利用価値が高いですし。

 

「となると、あとは黒曜石とレッドストーンか。――黒曜石は溶岩を水で冷やせば作れるけれど、その方法だと石や鉄のピッケルじゃ採取ができないんだ。ネザーポータルだけならその方法で作る事はできるんだけど、ボクは採取して加工がしたい。……何か方法思いつく?」

「……うーん?黒曜石ってそんなに固いんですか?ここから見える山脈ってアレ、休火山なんですけど…そこの火口にあまり質は良くないですが黒曜石を含んだ地相がありまして、黒曜石の採掘場として産業になっているんですよ。採掘現場を見たことは流石にないですけど、行けば手に入るんじゃないですかね?」

 

最高ですニソラさん!

これでダイヤピッケルなしでも、黒曜石を入手できる可能性が出てきました。

 

「では、レッドストーンは!?後はそれさえ目途が立てば魔法のアイテムが作れる!」

「おお、テンション上がってきましたねタクミさん!……とは言え、すみません。私そのレッドストーンって言うモノを聞いた事が無くて……どういった素材なんでしょうか?」

 

ああ、そうか。名前が違うってことも十分ありうるんですよね。

 

「ええと、そうだなぁ……もしかしたら「石」じゃなくてそれを粉末にした「粉」としての方がポピュラーかもしれない。赤く輝く石で、ある種の動力を宿してるんだ。ボクならそれを使ってピストンとか、動力回路に使うトーチやリピーターなんか作れるけれど、巷でどう利用されているのかは不透明かな」

 

「輝く……赤い……動力……」と口の中で呟きながらニソラさんが首をひねり、

 

「赤動体の事かもしれません」

「その話詳しく」

 

思わず肩を掴んで詰め寄ってしまいました。

 

「はわわ……え、ええとですね?専門じゃないのであまり詳しくないですし間違ってる所あるかもなので期待されすぎても困るのですが……

「赤力」と呼ばれる信号を伝達する性質を持つ石があるとかなんとか。それをある種の素材と混ぜて合金にすると、その合金は赤力を受けて大きく変形するようになるから、それを利用したピストンやエンジンが作られています。ただ、どうしても大掛かりなものになってしまう上に出力されるトルクやスピードがそこまで大きくないから、使える場所は限定されているみたいですけど。

――で、ある程度の熱と圧力を使って圧縮すると際限なく一定の赤力を出し続ける石になるので、燃料の必要ない動力として一部で重用されていますね。その圧縮した石の事を赤動体って言います。……圧縮する前はなんて言うんですかね……?」

 

――間違いありません。

レッドストーンブロックの事で決まりでしょう。

 

「どうやらその赤動体がボクの探していた物みたいだよ。……ちなみに、それってどこで手に入るかな?」

「赤動体の有名な産地は、この近くではコラン国ですかねー。近いって言ってもあくまで相対的にですからメチャクチャ遠いですが。

ただ、コブシより小さいぐらいの大きさでよければ、ちょっと発展した街に行けば動力に使うためのアタッチメント付きの物が手に入ります。それなりのお値段しますけどね。……件の黒曜石の街ですが、そこから列車が出ています」

 

ボクの頭の中で、素材入手のルートと予定が瞬く間に組み代わって行きます。

採掘ルートではなく、行商ルート。例えばそう……ネザー進出はあくまでグロウストーンを最優先目的にしていたけれど、ちょっと欲をかいてネザーウォートやブレイズロッドを手に入れる事が出来れば、ポーションを作って商品にだってできます。

ニソラさんが言ったように、スケルトンの骨と鉄さえあれば例のジョウロだって作れます。

他にも売れそうな商品はいくつかあります。例えば動力に使用しているというレッドストーンブロック。この「赤力」を出力する事が出来る「レバー」を、ボクなら丸石と棒でクラフトする事が出来ます。

レッドストーンブロックが動力として良い値段で取引されているなら、同じ効果をON/OFFできるこのレバーは一体いくらで売れるんでしょう……?

 

「……タクミさんは……」

 

ぽつり、とニソラさんが呟きました。

 

「タクミさんはきっと、別の世界からいらしたんですよね……?それも多分、昨日から」

「ああー……やっぱ判っちゃう?」

 

それは紅の教団やケーキの契約を知っていた事への説明が出来ていない、少し無理やり感あふれる推理ではありますが。

それに行き着くほどにボクの事が浮世離れして見えたのでしょう。

聞かれたら素直に答えるつもりだったボクはあっさりそれを肯定しました。

 

「タクミさんが作ろうとされている魔法の道具は、もしかしたら元の世界に帰る為の道具なのですか……?」

 

少し寂しそうな顔をしてくれるニソラさんです。

 

「いや、ぜんぜん違うよ?」

「――アレ?」

 

なんかこう、別れの予感を感じられていた模様。

出会って2日にしてそれを不安がってくれるというのも嬉しいですね。

何か覚悟をしようとしていただろうニソラさんに軽く笑いかけます。

そもそも、元の世界に帰るのはほぼ無理だと諦めています。だってこれ、テンプレですので。

もしできたとしてもなんかこう、世界を滅ぼす魔王を倒すとかそういう、何かすっごい大きなフラグを成し遂げるまで無理でしょう。

そして、マインクラフターには最終目標なんて小賢しいものはありません。

 

「ジョウロあったよね」

「?……はい?」

「あれの反則度をさらに5段階ぐらいすっ飛んだようなアイテムを作ろうとしてますね。これがあれば、ボクは資材に困ることも生活に困ることもあり得なくなるから」

「え?……ええ!?」

 

本当に何をしようとしているのか判らなくなった様で、オーバーフローを起こしています。

それがなんだかおかしくで、ボクはくつくつと笑いました。

 

「そんなわけでまぁ……覚悟しててくださいね?ニソラさんとの契約、終了条件が明確になってなかったけど……当面の間は、ニソラさんの興味を惹き続ける自信があるからさ。契約切れのお別れはまだまだずっと先にしてみせるよ」

 

何を言われているのか判らなくなったのか、一瞬ぽけっとするニソラさん。

そしてボクが「当面は離しません」と言っている事に気づいたのか、満面の笑みで「はいっ!」と返してくれました。

世間知らずのクラフターと、世界を旅して来たメイド妖精。

ボクたちはきっとボクたちが思うよりも、ずっといいパートナーになれると思うのです。

 

「――あ、でも。私たちのお別れはずっと先でも、この家とのお別れは実は結構近いんじゃあ……」

「ああ……そこ、気づいちゃう?」

 

元は採掘でここから発展させる予定だったのに、旅立つフラグ立っちゃいましたからねぇ……

 

……なお、その日のうちに十分な量の鉄鉱石と銅と錫を採掘でき、ついでに「ケルタスクォーツ」と言う別のModの鉱石も手に入れたボク達は、この家とのお別れがさらに近くなってしまった事を悟りました。

だってここまで来たら後はネザー採掘だけなんだもん……

 

 

@ @ @

 

 

工業系と呼ばれるModは、大抵機械を揃える為に恐ろしい量の鉄を要求します。木で出来た機械では工業っぽく無いってことなのでしょう。

恐らくそれによるゲームバランスの調整の為なのだと思います。

工業系のModには、大抵鉱石の量を増やす手段が存在していたりします。

「ケルタスクォーツ」が出てきた事によってその要素が明らかになったMod「Applied Energistics」は、ゲーム時代に大変お世話になりました。

その本領は、ありとあらゆるアイテムをデータ化して保存する事ができるSFのようなModです。

大容量の倉庫としてとても重宝するのですが、序盤は「グラインドストーン」と言う石臼みたいなアイテムが低コストで作れると言う点でも有名なModです。

簡単に言うと、これで鉄鉱石を挽いて粉にしまして。その粉を精錬すると1つの鉄鉱石から2つの鉄インゴットが出来てしまうと言う優れもの。

鉱石を粉にして量を倍に増やすのは、工業系Modの常識なのです。

――質量保存の法則?今、休暇取ってベガスに行ってますよ。

まあそんな訳で、グラインドストーンの登場で鉄インゴットを1スタック(64個)強集めることが出来たボクは、晴れて目的だった鉄の防具一式……ではなく、同じく倍化した銅と錫からブロンズの防具一式を作成しました。

鉄とブロンズは性能が同じなので、用途の多い鉄は温存してしまう……工業系Modクラフターの悲しい習性です。

 

「タクミさん……鎧姿似合いませんねぇ……」

 

ほっといてくださいニソラさん。こんなもん着たの初めてなんです。

幸い、動けないほどの不便を感じない所マイクラ成分が発揮されているのでしょう。

ニソラさんの分も用意しようとしたんですが、動きが鈍るのでと辞退されました。

彼女は彼女で革と鉄で出来た軽装を持っているのだそうです。

左手に小手、胴に胸当てをつけて弓矢を背負い山刀を携えるその姿は、メイドとはなんぞやと言う哲学的な疑問を想起させます。

ボクの武器は変わらず無銘刀「木偶」です。

防具より武器の方を用意した方が良かったのでは?と心配されましたが、コレより上の抜刀剣は金がなければ作れないので仕方ありません。

 

溶岩をネザーポータルの形にした「型」に流し込み、水をかけて黒曜石に変じさせます。ダイヤピッケルなしでネザーポータルを作るテクニックです。

ただの鉄バケツで溶岩を扱うのはかなり怖いものがありましたが、シンボル化を意識して何とか乗り切りました。

リアルのバケツの状態を作らない事がコツです。

「ちょっとナニ言ってるか判らないですね」とはニソラさんの言。

はい、ボクもそう思います。

 

「火打ち石を」

 

ニソラさんから火打ち石を借りてポータルに火をつけると、紫色の炎が広がり黒曜石の門の中心に歪んだ渦を作りました。

 

「凄い……コレが、精霊の門……」

 

感極まったようにニソラさんが呟きます。

……思えば、スポーンしてからここまで3日経っていません。

しかもダイヤピッケル無しです。

こんなプレイングは今までやった事はありませんでした。

リアルのネザーはどれ程なのか……それを思うと緊張で歯の根が小さく鳴るのを自覚します。

それを食い縛って誤魔化して、ニソラさんに問いかけました。

 

「――準備は、良いですか?」

「……無論です!」

 

気のせいでしょうか。

ニソラさんのその笑みは、まるで獲物を前にした獰猛な物にも見えました。

頼もしすぎる相棒でした。

 

「行きましょう」

 

ネザーポータルに足を踏み入れます。

視界が歪み、体が浮き上がり――ボク達は灼熱の世界に転移しました。


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