『理』のアルマ…攻撃も魔法もこなせる賢者から転職した勇者タイプ。しかし運の良さが壊滅的。
『命』のアルマ…攻撃力、HPがぶっぱしたバトルマスタータイプ。
『魂』のアルマ…魔法、特技が壊れ性能の頭の悪い精霊使いタイプ。
『物質』のアルマ…ステータスは基本(神様として)だけど壊れ性能の神器で固めている。合体ロボが起動したらどんな逆境でも逆転できるオヤクソク仕様装備である。
拝啓、地球のお母様。カズマです。
こちらの世界に転生し、そこそこの月日が経ちました。そちらでは家に引き篭ってばかりな僕でしたが、こちらの世界ではアグレッシブにお外で活動しています。
思えば、家族の皆様にはご迷惑と心配ばかりかけていたと思います。そんな僕も、今では大勢の仲間と協力し困難に立ち向かう生活を送り、貴方の僕への心配りの意味を深く知り感謝しています。
ですので、どうか……、
「やめ、やめやめやめ、やめてえええええええええ!!! 誰なの!? なんで突然現れて私の魔方陣を壊そうとするの!? なんでこんな小さな体に神気が溢れてるの!? やめて、近づかないでください!! 側に寄られただけで消えちゃう! 私成仏させられちゃううううう!!!」
「うっさい! 黙りなさいアンデッド!! どうせこの怪しげな魔方陣でよからぬことを企んでいるんでしょう!? なによこんなもの! こんなもの!!」
「お前なにアンデッドになんてなってんの? リッチーになんて堕ちてんの?? なんなの? 喧嘩売ってんの? 人間辞めてまで俺に喧嘩売りたかったのか。そーかそーか、買ってやるから歯ぁ食いしばれやこのアマァッ!!!」
このチンピラ女神達に絡まれてる、可哀想なアンデッドさんをお助けください。
アンデッドを見つけた直後、アクアとアルマ様はその黒いローブを着たアンデッドらしき女性を締めあげ、足元に輝く魔方陣を破壊しようと試みていた。
やっていることは悪しきアンデッドの企を防ぐ女神の行いなのに絵面が酷い。酷すぎる。はた目から見れば、気の弱い女性にいちゃもんつけるヤンキーの図である。
超大物モンスターであるアンデッドのリッチー?が、ぐりぐりと魔方陣を踏み付けるアクアの腰にすがりついている。その目は涙目で、とてもアンデッドの王とは思えない。
ではアルマ様は?
「…………チッ! チッ! チッ!」
足元の魔方陣を見ながら何度も舌打ちをしていらっしゃる。その手はリッチーの後頭部をアイアンクローでがっちりと掴んでおり、その触れた部分から蒸気が上がっている。
なんというゴールデンフィンガー。触っただけでリッチーを昇天させてしまうとはまさに神業ッ!
「あの、アルマの手が黄金の魔力で光っているんですが?」
「しかも周りの取り巻きアンデッドが余波で次々と成仏していく……」
ちなみに、アクアの魔力は水色で今もゴッドブローを繰り出そうと拳をその色に光らせている。
というか、アレは本当にリッチーなんだろうか? アクアが言うのなら怪しいが、アルマ様が言うのならそうなんだろうとは思うけど、全然そうは見えない。これが神々とアンデッドの、光と闇の戦い、か。
「やめてー! やめてー! この魔方陣は未だ成仏できない迷える魂を天に還してあげるためための物です! ほら、沢山の魂達が魔方陣から空に昇って……って、予想以上に成仏している!? それに私も消えかかってる!? 熱い! 頭があつーい!!」
ひょっとしてこれはあれだろうか? 魔方陣に葬送の効果があるのはマジで、アルマ様がそれを強化している?
「おい、リッチー」
「痛い熱い痛い熱い!! ヘェッ!? な、なんですか!? というか離してくださーい!!」
ドスの効いた低い声がアルマ様の口から響く。呼ばれたリッチーは開放してくれと嘆きながらも返事をする。
それを見て俺達はドン引きした。めぐみんは俺の後ろに隠れるし、ダグネスは羨ましそうにリッチーを見ている。アクアはノリノリだ。
「お前なに自然の摂
「そーよそーよ! アンデッドは……アレ? ……アルマちゃん? ……アル、マさ……え?」
あ。アルマ様ー! アクア! アクア! めっちゃ凝視してますよ! 正体バレますよ!!
「わ、私は……ッ」
「いや、いいか。この墓地の浄化を行なってくれた礼だ。
リッチーが顔を青ざめさせる。有無を言わさない言葉に俺たちは息をのんだ。
「ゴッドォォ!!」
「ひっ、ひぃいいいいいいいいいいいい!!」
アルマ様が拳を振りかざし、黄金の魔力は輝きを更に増していった。
あ、これ不味い。駄目だ止まれ、止められない、制御出来ない!!?
アルマです。
しくじりました。
まさかこの体、魔力の放出に耐えられないとは想定外でした。
思えば、今まではは殆ど魔力を使わない肉弾戦ばかりだったのが幸いだったというか、不幸だったというか……。
うん? では何か? これも私の幸運の低さが招いたというのか? いや、違う。これはどちらかというと作為的な……『魂』のの罠か!?
今の私は神とはいえ肉体は人間。それも幼子だ。身体が出来上がってもいない状態で
三輪車にロケットエンジンをくくりつけたような状態。それが今の私だ。最大出力でぶっぱなせばこうもなろう。
それに加えて、私の魂に刻まれた『幼児化』の呪い。これのせいで思考まで子供っぽくなっており演算も鈍くなっている。
これは不味い。つまり、魔力の制御ができず暴走状態ということだ。
「ちょっ!? アルマ! 魔力が溢れ出しています!! 今すぐとめてください!!」
魔法の扱いに長けたアークウィザードにして紅魔族のめぐみんが、私の状態に気づいて叫ぶ。しかし遅い。私自身もどうしようもない。
何故なら、今こうしている間にも『幼児化』、『弱体化』の呪いが私を侵食しているのだ。
私は『魂』のにかけられた呪いにも似た強大な制約を解除するために日頃から『解析』に魔力を割いていたのだが、同時にこれ以上の侵食を抑えるために『抵抗』も行なっていた。
だからこそのこの姿。もしも本当に『幼児化』していたらもっと幼い姿、精神であっただろう。
だが、その均衡は今崩れた。
しかし、これは当然の結果だったのかもしれない。私がアンデッドや悪魔に出逢えば必ず同じ行動をとっていただろう。必ずだ。私は人間に仇なす存在を決して許さないのだから。
つまり、だ。
「(お前の思惑通りかこのロリババァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!)」
あ、駄目だ。魔力の放出が制御できない。飲まれる、考えがまとまらにゃい……あたちもうねむいからねんねするー…。
おやちゅみなちゃい。
クリスです。
あれから一週間が過ぎました。そう、あれから、です。
今、あたしの腕の中には。
「くりすねーちゃ! くりすねーちゃ!」
身も心も幼児化したお父さんがいます。
「どうしてこんなことに……」
恨みますよ『魂』様。ほんっとに恨みます!!
お父さんは身長が百センチ未満まで縮み、言葉も覚束ず、思考も完全に子供になってしまいました。
「ごめんなクリス。俺たちも何がなんだが……」
「新人くんは悪くないよ」
あの日の夜、新人くんこと転生者の佐藤和真さんが幼児化したお父さんを抱えてきたときには本当に驚いたよ。……本当に、ね。
詳しいことは濁されて教えてくれないんだけど、どうやらお父さんは魔力を使いすぎて『魂』様の『幼児化』の魔法を抑えきれなくなったみたい。
でも、この状態から元に戻るのは実は簡単なんだ。
……お父さんがもう一度、『幼児化』の魔法に『魔法抵抗』を行えばいいんだ。だけど、それができない。
「ねーちゃ! あそぼ! あそぼ!」
「じゃぁ何して遊ぼっか」
魔法の構築式を解明し、抵抗する。そんな発想が精神も幼児になった状態で出来るはずがない。最悪、自分が神様だったことまで忘却してるんじゃないかと心配になる。
覚えているよね?
「それじゃぁクリス。俺たち行くけど、本当にアルマちゃん連れてっていいのか?」
「うん。いろんなところに連れてってあげて。その方が思い出すことも多いかもしれないし」
どうすればお父さんが自分を取り戻してくれるか、それを考えた結果。思いついたのが冒険させること。ただ何もせずに部屋で子供をあやしているよりもいいという、あても何もないことだけどしないよりはいいと思う。
今アクセルの街にはろくなクエストもないしね。
実はというと、アクセルの街は小さく、そして大きな危機に見舞われている。
魔王軍の幹部が、街の近くに引っ越してきたのだ。
そのせいで、弱いモンスターは遠くに逃げ出した。残っているのは駆け出し冒険者の手には余る手強いモンスターのみ。
そのせいでダグネスや新人くんが受けれそうな簡単なクエストがなくなって皆困っている。
しかも、
「カズマさ~ん! 借金が! 借金が~!! お金貸して~~!!」
「うるさいわこの駄女神ガッ!! 子供の教育に悪いからあっちいけ!!!」
あのアクア先輩によく似たアークプリーストの女の子が借金を作ったらしく、その返済のための資金作りにも困っているらしい。
「あーあ。いっそアンデッドでも来てお父さんに喧嘩売ってくれないかな~」
そうしたら、絶対にお父さんはブチ切れる。アンデッドを消滅させる為に自分を取り戻すはずだ。
「こういう時、神頼みができないから女神はつらいよ……」
女神は誰に祈ればいいのかな?
あの後、リッチーのお姉さん、ウィズには丁重にお帰り願った。
突然、更なる幼児と化したアルマ様にその場の全員が驚愕し、混乱した。あのアクアでさえアンデッドの浄化そっちのけで狼狽したほどだ。
で、やっぱりあの墓所に仕掛けられた魔方陣は悪いものじゃなかった。聞くに、アクセルの街のプリーストは墓地でさまよう魂たちの浄化をしないらしい。して欲しければ金を出せ、まずはそれからだ。という奴らが多く、アクアもその口だ。
そのことを指摘され、アクアは嫌嫌ながらも折れた。リッチーを見逃し、更には墓地の浄化も無償で行うことを約束した。
その代わりといってはなんだが、ウィズに今度リッチーが持つ強力なスキルを教えてもらうことを約束した。驚いたことに彼女はこのアクセルの街で魔道具店を経営しているらしい。
神様とアンデッドの王が暮らす駆け出しの冒険者の街とはなんというカオス。
それで俺はというと。
アルマ様を連れてめぐみんと街の外に爆裂魔法を撃ちに来ています。
ちょっと何言ってるのか自分でもわからないです。
事の始まりはこうである。
「カズマ! 依頼が全然ないわ!? どうすんのよ! どうしよう!!! これじゃぁ借金が返せないじゃないのよ~!!」
知らん。と言ってしまいたいが仕事がないのは正直辛い。
アクアが自分でこさえた借金は別として、自分たちだって仕事がなければ働いて稼げない。どうにも、魔王軍の幹部とやらが引っ越してきたせいで弱い魔物が辺りから逃げ出して、手頃な討伐系の依頼がなくなったらしい。
なので、アクアはせかせかと内職や工事現場で働いている。ダグネスは一度実家に帰った。俺はめぐみんに付き合い、こうして一日一回、爆裂魔法の特訓という名の破壊活動に勤しんでいる。
アルマ様が一緒なのはクリスのアイディアだ。魔法を見たり聞いたり、色んな場所で知らないものと接することで何か思い出すきっかけになればいいと言ってくれたのだ。
「もうその辺でいいんじゃないか? アルマちゃんもいるんだし、あまり街の遠くまで離れたくないぞ」
「う……しかしもう守衛さんにうるさいと怒られたくないのです」
「おい、今『もう』って言ったか? 既に怒られたのか?」
「めぐみんわるいこー?」
「ち、違うのですよアルマ?!」
さしもの頭のおかしい爆裂娘も、小さな子供の純粋な目で見られれば動揺するらしい。いいぞ、もっとやってください。
爆裂魔法をこよなく愛するめぐみんは、一日一回爆裂魔法を撃たないと気が済まないらしく。こうして毎日街の外まで出向いて適当な場所で無差別テロ並みの爆発を起こしているらしい。
「今日はアレにしましょう」
そうして街の外をぶらぶら歩いて見つけたのがそのアレである。
遠く離れた丘の上。そこには廃墟となった城。廃城があった。
「薄気味悪いなぁ……お化けでも住んでそうな……」
「おばけ? ……アンデッドか」
え? アルマ様?!
「どーちた、おにーちゃ」
あれ? 気のせいかな?
でもまぁ。確かに人の住んでなさそうな廃城だ。あれなら爆裂魔法を撃っても問題ないだろう。
「よし、じゃぁあれに一発撃って帰ろうぜ」
「……なんかくちゃい」
「じゃぁ行きますよ!!」
心地よい風が吹く丘の上。
のどかな雰囲気には場違いな、爆裂魔法の詠唱が始まった。
めぐみんが爆裂魔法の詠唱を初めて数十秒。その魔法は紡がれた。
「《エクスプロージョン》!!!」
一つの魔方陣が空中に展開し、それが弾けた。吹き荒れる暴風、爆発に包まれる廃城。それらの光景を包む閃光。めぐみんの放った爆裂魔法は今日も強烈だった。
そして。
「くきゅ~~~~」
「おつかれ」
一日一発。それだけで体内の魔力の全てを消費しためぐみんは、今日も何時もどおり倒れる。こうなるともう動けない。だから、俺のような回収のための同行者が必要なのだ。
今日はこれで帰るだけだった。
だけだったんだ。
「やっぱりくちゃい!!」
「アルマちゃん?」
「どうしたのですアルマ?」
俺が倒れているめぐみんを抱き起こそうと身をかがめると、手を繋いでいたアルマ様が走り出した。
「あたちもやる!」
そう言うと、アルマ様が懐から取り出したのは冒険者カードだ。それを持つ手が黄金色に輝き、指で操作していく。
何をしているのか分からなかったが、それが終わると人差し指を廃城に向け、唱えた。
「《えくちゅぷろーじょん》!!!」
は?
四つの魔方陣が廃城を取り囲む。四方から中心である廃城に向けて魔力が収束していき、弾けた。
めぐみん以上の、破壊力で。
「「はぁああああああああああああああああああああああ!??」」
「まだくちゃい!!」
ちょっと、
「《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》《えくちゅぷろーじょん》ッッッ!!!!!!!!」
いやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
めぐみんとアルマ様を抱えて俺は駆け出した。
連続する大爆発。空気が振動し、大地が揺れ響く。耳が馬鹿になりそうな状況で走るのも大変だった。しかし、俺は一度も廃城を振り返ることなく走りきった。
だって、見るのも怖いし。
その後、その廃城が更地になっていたと冒険者の間で噂になった。
ギルドに駆け込み、クリスに相談すると。
「り、理性がとんでスキルポイントを書き換えた!?」
ヨくワカラナイコトヲ言っていた。
なんか知ってんだろ。
説明しろ。
『魂』 「よっしゃぁ! ようやくかかったなダアホォめ!!」
『物質』「これには流石の僕もドン引きです」
『魂』 「年下の坊やの分際でいつもワシのことをロリだのババアだの言ってるからじゃばーかばーか!」
『物質』「ロリもババァも本当のことじゃないですか……でもいいんですか?」
『魂』 「なにがじゃ? なーに、あやつがワシに泣いて謝ればすぐに元に戻して」
『物質』「いや、無理でしょ」
『魂』 「へ?」
『物質』「あれじゃこちらに連絡もとれないし、謝るなんて不可能ですよ?」
『魂』 「あ」
『物質』「あと、『理』先輩の加護がなくなったって、先輩の部署で働いている天使たちが涙目で仕事してましたけど、どうするんですか?」
『魂』 「え? いや、その」
『物質』「ど・う・す・る・ん・で・す・か・?」
『魂』はアクアの親。