へんなゆめをみまちた。
「のぅ『理』の! 面白いものを考えついたぞ!!」
「よし、両手を頭につけてゆっくり跪け。おかしな動きはするなよ?」
「ひどッ!? まだ何もしとらんじゃろ!!」
「何かするのは確定じゃねぇか」
おとこのひととおんなのこがいっちょにいるゆめです。
「『命』のが触手ものを書きたいから資料が欲しいって言うんでの! タコとイカとナマコとナメクジと人間の性欲とオークの繁殖力を悪魔合体させた、名付けて『マーラ君四十八手』じゃ! どーれ、早速うちの部署で死んだ目しとる連中に持っていってやるか!!」
「……………………」
なんだかとてもおおきなうにょうにょちたぬるぬるがいまちた。
「お? なんじゃ『理』の? 急にワシを抱きかかえて? いやん♥ そういうことは二人っきりでムードたっぷりベッドの上で」
「そぉいっ!!!」
なげました。
「むぎゃぁああああああああああ!!! ちょっ、マーラ君!? あん、らめぇええええええええええええええええ!!!」
「あ、おーいエリスー! この部屋百年くらい封印しとくから立入禁止なー! あと俺『魂』のんとこの部署の仕事手伝ってくるから。うちんとこ任したぞー」
「はーい」
ぎんぱつのねーちゃがえがおでおへんじをしてまちた。おとこのひとはしんだめをしていまちた。
へんなゆめをみまちた。
「センパーイ。やっぱ
「……お前、前もそう言って創ったばかりの宇宙を虫食いだらけにして廃棄したよな?」
「だって、イマイチ創作意欲が沸かなかったっていうか、いじってる途中で飽きちゃったっていうかー」
おとこのひととおんなのひとがいました。
「却下だど阿呆。自分の宇宙でオモチャでもいじっとれ!」
「ちぇー。じゃぁいいっすよ。帰ってダーリンとイチャイチャするっす」
「あっ、お前仕事……ッ! あー、あの少年が生きてる間はつかいもんにならんな……」
おんなのひとがでていくと、おとこのひとはあたまをかかえちぇいまちた。
「あ、お父さん。『物質』様が百年間の休暇願いを出していったんですけど……」
「百年で済んだらいいんだがなぁ。彼氏を人体改造しないでくれよぉぉ」
おとこのひとはないてまちた。
へんなゆめをみまちた。
「なぁ弟よ。地球はいいぞ?」
「……お前もとうとう人間の素晴らしさが理解できたか!」
おとこのひととおねいさんがいました。
「いや、コミケだ」
「……………は?」
「人間などどうでもいいがその文化は素晴らしい。我はパソコンというものに出会った瞬間に無限の可能性を得た」
「あの、もしもし?」
「いんたーねっとで描いた絵をうp?したのだがアクセス数が凄くてな。今度コミケとやらで薄い本を出そうと思う。あとペンタブが欲しい」
「お前最近仕事してるんだろうな!?」
「ぬぅ、神ですら苦しめる締切と白い原稿……腐腐腐、なかなかやるではないかオタク文化……これぞ戦場の風よ!」
「おーいエリスー!! ちょっと『命』の職場見てこい! なに!? 死屍累々!? 修羅場!? 天界が地獄ってどいうことだ!?」
「というわけで弟よ。お前の部署のアシスタントを貸してはもらえぬか?」
「俺の可愛い部下を地獄に引きずり込むな!!!」
よくみるとほおがこけたおねいさんをおとこのひとがしばきたおしちぇいまちた。
さいきんこんなゆめばかりみまちゅ!
「アルマちゃんその夢を今すぐ忘れよう! 覚えてちゃダメ!!!」
クリスです。アルマちゃんからとてもひどい話を聞かされました。というかそれ、思い出したくもない実話です。
あたしのお父さんこと、『理』の神、アルマ様は天界一の堅物で最後の良心です。つまり、同格の三柱の方々は控えめに言っても碌でなしばかりということになります。
仕事はしない、不祥事ばかり起こす、後片付けはしないと周りに迷惑ばかりかけてその尻拭いを全部お父さんに押し付けていました。
でも、お父さんは真面目すぎるくらい真面目な御方なので悪態を付きながらもきちんとお仕事をするのです。……他の方々の分の後始末も。
アルマちゃんが思い出したのはそんな一部の出来事。そう、恐ろしいことに一部です。お父さんは『理』の神。叡智を司る神でもありますので記憶を忘却することはありません。忘れたくても忘れられないのです。
なんだろう、お父さんはこのまま幼女の姿の方が幸せになれるんじゃないだろうか? そう思えてきたよ。
「おーい、クリスにアルマ! 今日はもう帰るぞ!!」
「はーい! ダクねーちゃ!」
今日はこれでお仕事は終わり。クエストを一つ片付けて、皆でギルドに戻ります。
「アクアねーちゃ、だいじょぶ?」
「檻の中……こここそが私の世界の全て……出るのは嫌ぁ……」
大丈夫じゃないみたい。
今日はアクアさんが主体となってのクエスト。というより、アクアさん一人でのお仕事だった。何故かというと、これは彼女の借金を返すための資金作りが目的のクエストだったから。
クエストの内容は『水質の悪くなった湖を綺麗にしてください』というもの。これはアクセルの街の水源である湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住み着いたからなんとかして欲しいという依頼。
これに威勢良く名乗りを上げたアクアさんは賞金は欲しいけど危険は犯したくないと駄々をこねた。それを解決する妥協案として、新人くんがまた面白いことを考えついたんだ。
「アクアねーちゃ、でがらし! でがらし!」
「この子は意味を分かっていっているんでしょうか?」
「だとしたら末恐ろしいな……」
アクアさんの職業はアークプリースト。水を浄化させることにかけては正にうってつけの職業であり、なんとアクアさんは触れただけで水を浄化できるという。
うん? 触れただけで水を浄化って……それって……いやいや、まさか。
まぁその素晴らしい体質のおかげで、新人くんはある方法を思いついた。それが、アクアさんを鋼鉄の檻に閉じ込めて湖の淵に浸けておくこと。こうすればブルータルアリゲーターに襲われても檻がアクアさんを守ってくれるから安心して水の浄化もできる。
え? 非人道的? そうだね。でも、何故かアクアさんを見ていると職場の先輩を思い出すから止める気がしないんだよな~。
で、その結果。約半日程かけて湖は浄化され。ブルータルアリゲーターは去っていった。途中、何度もアクアさんが入った檻を集団でガシガシ噛んでいたから檻の形は変形してるけど問題ない。アクアさんがその恐怖で心に深い傷を負っているけど問題ない。
「これでアクアさんのレベル上がってくれたかなぁ」
「ク、クリスがなかなかえぐいこと言ってますよ」
「あぁ、今のアクアの状態を見てそんなこと言えるとかマジないわー」
めぐみんと新人くんが何か失礼なことを言っているけどそんなことは気にならない。
だって、
「アクアねーちゃ、れべるあがったらまほうせいこうする?」
「うん、きっとね」
アクアさんの《セイクリッド・ブレイクスペル》は失敗したんだよね。
原因は、スキルの熟練度と魔力不足だった。
スキルはただ覚えただけでは極めたことにはならない。
例えば、新米プリーストと熟練のプリーストが《
スキルは何度も何度も使うことでコツを掴み、熟練度をあげることで効果を向上することができる。極端な話、《初級魔法》で《上級魔法》並みの威力だって出せるようになれるんだ。
……ちなみにお父さんは、「これは《インフェルノ》ではない、《ティンダー》だ!」なんてノリノリでやります。真面目なのに変なところで遊んじゃうところがあの方々と同類なんだなぁ、と思わずにはいられません。
アクアさんが入ったままの檻を荷車に乗せて、アクセルの街をギルドに向けて進みます。中でドナドナを歌っているアクアさんが悲壮感を漂わせ、あたし達がまるで人攫いか奴隷商人の集まりみたいに見えるので正直やめて欲しい……。
あれ? ドナドナって地球の歌だよね? なんでアクアさんが知ってるの??
「どなどなどーなアクアどーなー」
「こらアルマ様! そんな風に歌っちゃいけません!」
「びぇっ!」
「カズマ! 子供に怒鳴りつけるな!!」
アクアさんの姿にあんまりな歌を歌うアルマちゃんに新人くんが叱りました。涙目になったアルマちゃんがあたしに抱きついてきます。ダクネスはそんな姿を見て新人くんを逆に叱りつけますが、彼は悪くありません、むしろ、今のお父さんの方がおかしいんだよ。
「め、女神様ッ!? 女神様じゃないですかッ!! 何をしているのですかそんな所で!?」
子供の教育方針で争う夫婦のように口論する新人くんとダクネスを眺めていると、そんな叫びが聞こえてきた。なにさ?
カズマです。今俺はとてもめんどくさそうな奴に絡まれています。
「ハァッ!? アクア様を檻に閉じ込めて湖に浸けこんだ!? 君は何を考えているんだ!!」
人の襟首を掴んでぎゃーぎゃー騒ぐこの男は御剣響夜というどこの主人公だっていう感じのイケメンだった。名前から分かるとおり、俺と同じ地球から転生してきた日本人らしい。しかも、転生させたのはこれまた俺と同じアクアだったらしく、余りにも落ちぶれた女神の姿に仰天しているというわけだ。
まぁ、確かに。世話になった美しい女神が不当な扱いを受けていれば誰だって憤るだろう。俺だってそうする。かもしれない。
しかし。
俺はこのアクアが駄女神ということを知っているし、こいつが落ちぶれたのも自分が作った借金のせいだ。俺が責められる理由など一つもない。むしろ、返済のために協力してやってるだけ感謝して欲しいくらいだ。
なのにこいつ。
やれアクア様に大してこの扱いはなんだ! とか言ってアクアの入った檻を壊すし。
やれ馬小屋生活なんて信じられん! とか言って駆け出し冒険者をディするし。
やれ最弱職に上級職のパーティメンバーなんて勿体ない! とか言って俺のこと見下すし。見下すし!
随分と偉そうなことを、自分勝手に、好き勝手言ってくれやがる。小さい子供もいるんで、教育に悪いから止めてくれませんかねぇ? ダクネスも怒りがたまってるし、めぐみんなんか爆烈魔法の詠唱始めちゃってるし、アクアはオロオロと慌ててるだけで役に立ちそうにないし、クリスは……目を見開いて固まってるし。なんで?
にしてもこいつ、かなり調子に乗ってんな。装備も豪華で、転生特典のチート装備の魔剣なんか持ってるし? それでレベルが37で仲間に美少女が二人いてハーレムですか。
あ、俺こいつ嫌いだわ。なんていうかもう、存在が。俺が苦労して苦労して、神様を怒らせないように毎日をビビりながら過ごしているのに俺TUEEEEしながら楽しく冒険してたんだろ? もうその時点でないわー。うん、ない。
「君達、今まで苦労したんだね。これからは僕のパーティーに来るといいよ。僕なら君たちに馬小屋で寝かせるなんて苦労はさせないし、装備だって高級品を買ってあげるよ!」
こいつは何を言っているんだろう? めぐみんやダクネスはおろか、当のアクアだってドン引きしているのにまったく気付かずに話を進めている。しかも勧誘しているのは上級職のめぐみんやダクネスにアクアで、冒険者の俺や盗賊のクリスは含まれてないらしい。
「ちょっとカズマ、この人痛い人よ。関わらずにギルドに行きましょ?」
「このスカしたエリート顔に爆裂魔法を撃ってもいいですか? いいですよね?」
「なぁカズマ。この男、何故だか無性に腹が立つ。殴りたくて仕方がないのだが」
「アクアさんを女神様って……あの人どう見ても神器所有者……まさか、え?」
ミツルギさんよ。うちのメンバーはとても不評のようなんですが。空気を読んで帰ってくれませんかね?
その場の全員が苛立っている中、一人だけいつもと変わらずにいた人がいた。
「こら! めッ!」
アルマ様だった。
「なんだい、この小さな子は?」
今まで眼中になかったのか、初めてアルマ様に気付いたと言わんばかりの様子を見せるミツルギ。そんな奴にアルマ様はというと。
「ちょうしにのったらだめでちょ! えらそうにちない!!」
ミツルギの前に仁王立ちして、説教を始めていた。自分の腰よりも低い身長の幼女に怒られている、という状況がまだ飲み込めないのか、ミツルギは狼狽えていた。
「お嬢ちゃん、僕たちは大事な話をしているんだ。下がっていてくれないかな?」
「じぶんのわがままでひとにめいわくをかけることがだいじなはなち?」
「いや、それは……」
子供は残酷なことをストレートで言うから怖い。我儘、の一言でミツルギが言葉につまる。
「にーちゃもねーちゃたちも、いまのままでいいの! よけいなおせわ!」
「だがッ! 僕はアクア様を! こんな扱いを黙って見ているわけにはいかない!!」
おいおい子供相手にムキになるなよ。
止めるか? そうダクネスの目が言っていた。俺たちだけでなく、ミツルギの仲間の女の子たちも不安そうに見ている。まあ、いくら慕っていると言っても小さな女の子相手に口を荒らげる男の姿は見たくないだろう。
だけど俺は知っている。目の前の幼女は、神様なんです。
「じぶんのつごうをおしつけるにゃ!!」
「「「うっ!」」」
その言葉に、全員が圧倒された。一瞬、アルマ様から後光が輝いて見えたが、夕日の光がそう見えたのだろうか?
「だれかをすくいちゃい! それはけっこう! でも、あいてのことをかんがえないのはどくぜんでありぼうりょくといっしょ!!」
あかん! 何これ!? なんか足が震えてきたんですけど!!
「たいわができるのなら話しあえ! じぶんの意見をいうだけでなく相手のはなしをきけ!」
アルマ様が一言喋るたびに空気が震えて声が響く。それが耳を通して頭に入ると目眩がして立っていられなくなる。
「自己を押し通すだけなら獣と同じぞ! 人間は言の葉を交わす口と耳と理があるであろう!!」
もうダメ……脳が蕩けてきた……他の皆は……クリスとアクアが跪いてる……ダクネスは半泣きで天に祈ってるし、めぐみんは……爆裂魔法を撃ったあとみたいに倒れ込んでる。
で、アルマ様の説教を直に受けたミツルギはというと、
「申し訳ありません……僕が浅はかでした……」
号泣しながら土下座していた。お前、やっぱ日本人だわ。取り巻きの女の子達は泣き崩れてるけど大丈夫か?
あれ? そういや俺、もうなんともない?
急に体調が良くなったというか、身体が元通りに戻った。ガクガクだった足腰も治ったので普通に立ち上がってみる。見れば、他の奴らもフラついてはいるが立ち上がっている。
「よかった! じゃぁもういいよー」
にかーッ、と笑うアルマちゃんがそこにいた。アルマ様でなく、アルマちゃんで。
この人怒らせたらダメだと本気で思い知らされました。
「佐藤和真、だったね。さっきはすまなかった」
「いいよもう。お前もこっちに来て今まで必死だったんだろ?」
アルマ様の『お説教』が終わり、俺達は連れ立って冒険者ギルドにやってきていた。
そこで、ギルドからのレンタル品だった檻をミツルギに壊されたことで賠償金が発生していたり、それをアクアがミツルギ払わせたりとしたが、当初ほどの険悪な空気はなくなっていた。
ただ、
「なぁ佐藤和真。あの女の子は何者なんだい?」
それだよなぁ。
ミツルギはあれ以来、アルマ様のことを滅茶苦茶ビビってる。目があったら引きつった顔で目をそらすし、微妙に距離をとっている。
こいつも転生者だし、話してもいいかな?
口止めはされてるけど、このままなのも不味い。現に、避けられていることでアルマ様は半泣きだ。ギルド内の冒険者もそのことで殺気立っている。何気にアルマちゃん大好きな冒険者はいっぱいいるのだ。
「そうだな。詳しいことは話せないが、これだけは教えておく」
「あ、あぁ」
「あの人はアルマ様だ。神と思って逆らうな。オーケイ?」
「なん、だって……!?」
他の冒険者たちも頷いていた気がするが、このくらいならいいだろ。俺は何も喋ってない。だから大丈夫。……だよな?
「《セイクリッド・ブレイクスペル》ーーーー!!!」
「だがまりょくがたりない!」
「なんでよーーーー!! レベルも上がったのにーー!!」
「アクア先輩……私達、女神ですから、ステータスは変わりませんから……というか、やっぱりアクア先輩なんだ……ハハ…」
アクアはレベルが上がったからか、早速呪いの解呪に挑戦している。なんでかやる気になっているみたいだけどなんでなろう?
とにかく、早いとこアルマ様の呪いを解かなきゃなー。
「神、アルマ様……まさか神絵師あるまん先生!?」
「どうしたのキョウヤ!?」
「絵師? 先生ってなんのこと?!」
「新刊が欲しいーーーーーッ!!!!」
ミツルギは魔王を倒し、そのご褒美で新作の薄い本を手に入れることを固く心に誓った!!
『魂』 「アクアーーーッ! もっと頑張らんかい!!」
『物質』「頑張るって…一番いう資格ない人が言ってるし…いろんな意味で」
『魂』 「やかましい! アレ? そういや『命』は? 最近みとらんぞ?」
『物質』「部屋にこもって修羅場中です」
『魂』 「あー。じゃぁもう呼んでも出てこんの」
『物質』「なので、ビデオカメラ渡されました」
『魂』 「撮れと?」
マツルギさんはあるまん先生の大ファンです。