『理』と『物質』が性別反転見た目お兄ちゃんと妹。
『魂』と『命』が同じ褐色肌でロリータとお姉さん。
『理』と『命』は姉弟って認識があるのに、他はそのへん薄いらしいよ。
神の視点、というものがある。
現代では衛生カメラが発達したことにより、遥か頭上、宇宙から地上の光景を見ることができるその視点。
それすらを上回る神の全てを見通す目。
しかし、違いといえば建物を透過して見ることができ声すら聞こえるという程度。
漫画やアニメでネタバレを知っている読者の視点、という意味は除くが。
ともあれ、科学の発展は目覚しいモノがある。
話がそれた。
私は『理』の神アルマ。娘を一人持ち、全人類を愛する天界の責任者の一人だ。
そう、あくまで、責任者の、一人、だ。
私の他にも責任者は三人いる。いるのに、いるはずなのに、何故か私一人が責任者であり代表者のような振る舞いを求められている。
今更な話だ。なにせ、その三人は生来の遊び人だからだ。
まるで、四人に別れた際に『責任感』というものを全て自分に押し付けて生まれてきたような……そんな絶望感すらある。まさか、な?
現に。
一人は別の宇宙で彼氏とデートをしている。仕事は勿論貯まっている。
一人は部屋に篭って恐ろしい禁書を作成している。仕事を貯めるどころか、複数人の優秀な天使が犠牲になっている。
そして、もう一人は。
「のぅ『理』の~。遊んどくれんかのぉ~」
「やかましい。私は貴様が貯めた書類の山を片付けるのに忙しいんだ」
何故か私の背中に張り付いて我儘をこねていた。実に鬱陶しい。
背中に張り付いて、というが。正確に言うならば私の首に腕を回し、背中側にぶら下がっている、と表現すべきか。椅子に座って机に向かい、誰かさんの仕事を片付けてやっているというのに……。
「ぬしは働きすぎじゃないかの。息抜きも必要じゃぞ?」
「お前は休みすぎだろう。仕事の邪魔をするなら出て行けド阿呆」
「阿呆とはなんじゃ! 謝れ! 愛しい『魂』様にごめんないって謝れ!!」
「………頼むから耳元でわめかないでくれババア……」
重力など知らぬわ! という態度で、ぷかぷかと浮いている『魂』のが耳元でギャーギャーと騒がしい。これが長く続くと私の首を軸にしてぐるぐる回り始めるわ、膝に乗って腹に抱きついてくるわで邪魔ばかりしてくる。
まるで猫だ。それもかまってやれば手のひらを返してくるところが実に面倒くさい。
「休憩じゃ! もう休憩にせんか! ほれ、布団を敷いてやるから昼寝でもせんか? な、なんならそのままシッポリとご休憩でもええぞ……?」
「…………はぁ?(心底可哀想なものを見る目)」
「心折れるわ!!」
何がしたいんだこの万年発情期ロリババァは? もう子守唄を欲しがる歳でもなかろうに。あぁ、そういえばエリスやアクアは餓鬼の頃なぞなかったな。創った時から今の姿だから人の子のようにあやして寝かせるというようなことはなかった。
子供といえば。下界で活動している子機、『アルマ』の様子が最近どうにもおかしい。私の記憶と人格をコピーして送り出し、見聞きした情報を共有していたはずが最近途絶えた。『物質』のは肉体に不備はないというし、『命』のはアレはもう一個の命という。
ならば、不調の原因はもう……。
「お前か『魂』の」
「え、アイラビュー?」
「………、お前、下界の『アルマ』に何をした?」
「ス、ルーッ! 別にー? ちょっとアレの魂を創る時に当たり前のコトを加えただけじゃしー?」
や は り か !
お前また何してくれてんの? え? えー? マジか、そうか、そうか……はぁぁぁぁ、あーあ。
「お前ら、休憩な」
「「「はい」」」
「おぅ? そうじゃ休憩じゃ! ほれほれ! さっさと仕事なんぞ止めて遊び惚けんか! 飲めや歌えや騒ごうぞ!!」
天使達を全て下がらせる。私の部下たちは皆心得ているのですぐに察して動く有能な者ばかりだ。
察しが悪い阿呆は相も変わらず、私にへばりついているが。
「お前は今から説教な」
「何故じゃ!?」
何故も案山子もねぇよ。頼むから仕事の邪魔すんなよ……あぁ、胃が痛い。
ぬぅ、『理』のめ。今日も説教が長い。相も変わらず頭の固い奴よのぉ。
『理』のはワシが邪魔ばかりしとると言うが、ちゃんと意味あってやっとることなんじゃぞ?
ぬしが仕事ばかりで息抜きをせんからこうしてワシが身体を張って気晴らしを与えてやってるんじゃというのに、全く!
ちょっとはワシに構ってくれる時間も作れるというだろうに、何時も仕事仕事とゆとりのない生活をしおってからに。ワシは『命』ののように喧嘩を売れるような強さはないし、『物質』ののように妹のような後輩のような下の者の放つ面倒みてくださいオーラは出せんというのに。
これも年長、『最初のひとり』としてのジレンマよ。
ワシは他の三人の上に立つ者。『始祖』が四つに別れたのか、三つを創ったのかは自分たちも覚えてはおらぬが。『魂』であるワシが最初に『個』を得たのは覚えておる。他の三つが自分であり他人であると知覚したとき、何故『理』のが
まぁ、あやつの言葉を借りるなら『理屈』ではないということよな。
ひと目見て気に入った。一緒に過ごすうちに気になるようになった。気づけば何時も目で追っていた。側にいなければ落ち着かなくなり。くっついていれば安心する。
自分の分身であり、どうしようもなく他人な家族。
だから、ワシはどうしても欲しいモノがあった。
アクアでは初めてじゃった故、ちと勝手がわからんかったが今度こそ……。
「(産まれたばかりの魂に個性が芽吹くようにする……子供に与えるには当たり前のことじゃろう?)」
今度こそ、ワシら二人の子供が欲しいものよのぉ。
あ、でもアクアも大事じゃからな! 天界に帰ってきたら一緒に食べる新作お菓子もちゃんと用意しておるから! はよ魔王倒して帰ってこんか!
「息子さんが帰って来ないんです! もうお昼ご飯の時間になるのに!」
「それで家出と?」
「それしか考えられません!!」
いや、もっと他にも考えようはあると思いますよ?
カズマです。なんと、アルマ様がギルドに家出中年の捜索依頼を俺たちに持ってきました。
子供が迷子のペット探しを冒険者ギルドに依頼を出すことなら稀にあるけど、子供の姿をした神様が家出したイイ年のオッサンの搜索依頼を出すのって。
「とりあえず冷静になりましょう。本当に家出したかどうかもですが、このような依頼、ギルドに申請して受理されるかもわかりませんし」
めぐみんがそう言うが。
「お金ならあります!」
ドン! とテーブルの上に大きな金貨袋が叩きつけられる。軽く百万エリスは詰まっていた。
「なんなりとお申し付けください」
「この依頼、私達に任せなさい!!」
「困っている人を助けるのは当然じゃないですか」
「………お前たちなぁ」
ダクネスが呆れた声を上げるが、そんなこと言っている余裕は俺たちにはない!
借金を返すのに纏まった金が必要なんだよ!! 仕事選んでる余裕なんてねぇ!
「では出発! 手当り次第、心当たりを探します! 着いてきてください!!」
「「「了解ですご主人様!!」」」
そうして、俺達はアルマ様の跨る一撃熊のダックスが引く荷車に乗って、アクセルの街の内外を走り回った。
アクセルの街も一撃熊の引く荷車では狭く、広大な畑の広がる草原は広かった。
街には居なかった。
森にも居なかった。
山にも居なかった。
滝にも居なかった。
川にも居なかった。
「いや、なんでこんな場所!?」
「お爺さんが教えてくれた農家修行の場です!」
「なるほどそうですか!」
もうやけくそです。
そうしてアクセルの周辺を探し回っていると、手掛かりは意外なところから見つかった。
「息子殿なら確かにウチに寄ったぞ」
「本当ですかケンさん!!」
牛舎の立ち並ぶ酪農牧場で、息子さんの目撃情報があった。それを聞き、アルマ様の表情に安堵が浮かぶ。余程心配だったようだ。
……あれ、この農場主さん、すっごい見覚えがあるんですけど。これはツッこんではダメなんだろうか?
「確かに奴は拳に迷いがあったようだ。アレでは農家とはいえん、唯の冒険者崩れのようだったな」
「農家とは一体」
「ダメよカズマ。気にしちゃ負けよ」
農家の良し悪しを拳で見定めるこの人たちが怖い! ホントなんなのこの世界! ザケンな!!
「だが安心するがいいアルマよ」
「それはどういう……?」
どっかで見たようなマッチョな農場主が遠くを見つめてアルマ様に語りかける。
「息子殿は一人前の農家になるために己を鍛えようとしているようだった。ならば、あの場所が相応しいと思ったのだ」
「え、ちょっと待ってください。貴方、息子さんをどこへ連れてったんですか!?」
「ちょうどこの時期は新兵訓練の最中。それに混ざれば身も心も生まれ変わるだろう……」
「まさっ!? ちょっ!!!!」
農場主さんの言葉にアルマ様が驚愕しっぱなしなんですけど。言葉も出ない様子なんですけど。
「なぁダクネス。この街って兵隊とかいたっけ?」
「いや………あ。ま、まさか……あそこか!?」
「? どうしましたダクネス? なにか心当たりでもあるのですか?」
明らかに狼狽え始めたダクネスをめぐみんが不思議そうに見ている。俺やアクアもそうだが、アルマ様はさらに酷い。目が死んでいた。
「豚王軍の新兵訓練合宿に息子殿を参加させた」
「なんてことをーーーーーー!!!!」
豚王軍ってなに!?
で、ほんと何ここ?
アルマ様に案内され、俺たちがやって来た場所はまさに世紀末だった。
ユアーがショックしそうなモヒカンたちが肩パッドしながらヒャッハーと家畜の世話をするカオスな光景。
知る人ぞ知る、アクセルの街に豚肉を卸す最大の養豚場。
別名、豚王軍前線基地である。
「頭おかしいんじゃねぇの!?」
「滅多なことを言うな! ここはアクセルの街で食す豚肉を全て賄う生命線であり、凶悪なモンスターを追い払う要塞なんだぞ!!」
「怖いんですけど! 明らかに見た目が荒くれな人ばっかりなんですけど!? 大丈夫!? 本当に私達ここに入って大丈夫なの!?」
「紅魔族のセンスでもここはちょっとないです。これならさっきの牛舎の農場主さんの方がまだマシでした」
俺達はもう、なんていうかドン引きだった。なんでこんなことになってんの? これアレだろ。明らかに日本からの転生者が関わってるだろ。誰かが『北斗の○』とかの知識を広めたんだろ。
でなきゃここまで酷いことになんねーよ!!
「すいません。ウチの息子さん来ませんでした? 熊みたいな大きい人です」
なんて、俺たちがビビっているのを余所にアルマ様が普通に肩パッドに話しかけていた。
「……皆さん、どうやら息子さんはコロシアムにいるそうです」
「なんでそんなものがあるの!」
豚王コロシアム。
そこは、優れた雄豚を交配用の種豚に選ぶ為に、豚同士を戦わせることを目的とした決闘上であった。
「その時点でもうおかしいからな」
「今更ですよカズマ」
広い円形上の闘技場。そこを囲むように観客席があり、その中心にひときわ大きな豚と……熊がいた。
否。
「! 息子さん!? それに!!」
「あれはまさか、アルダープ!?」
豚王軍のコロシアムで。
熊のような体格の農家の息子と。
豚のように太った熊みたいな元領主が。
ファイティングポーズを構えて向かい合っていた。
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
ファィッ!
『理』 「仕事の手が回らん……補佐が欲しい……」
エリスが生まれました。
『魂』 「『理』のが構ってくれん……そうじゃ! 『理』のそっくりな子供を創ろう!」
アクアが生まれました。
エリス→仕事を真面目にするいい子に育つ。
アクア→『魂』のがべったり可愛がりすぎて自分そっくりなダメな子に育つ。
『魂』 「何故じゃぁああああああああああ!!!」
天使s’ 「「そりゃねぇぇ」」