農場でジャイアントトードの群れを倒した翌日。
私は三人パーティーで一撃熊の討伐に来ています。ようやく、高ランクモンスターの討伐クエストです!
ということで、アクセルの街を離れて森の中。クマさん出てこいブッ●してやんよ!
が、ですね。
なんだか、パーティーメンバーからの視線が痛いです。
………私、何かしましたでしょうか? ちょっと思い出してみましょう。
「おはようございますルナさん!」
「おはようアルマちゃん。今日も早いわね」
冒険者ギルドが開いた朝一番に駆け込んでルナさんに挨拶。今日はモンスター討伐を堂々と行える記念すべき日。気合を入れて頑張ろうー。
そういうわけで、クエスト掲示板に手頃な仕事がないか確認へ。
…………うーん、相変わらず微っ妙ー。
商隊の護衛……ソロじゃなー。
迷子のペット探しています……見かけたら捕まえておこう。
ダンジョンに潜るので盗賊職の方募集中……およびじゃないですねすいません。
パーティー募集中。条件、上級職の方のみ……これはまた豪気な……。
畑を荒らす一撃熊の討伐……おぉ! いいじゃないか!!
一撃熊。確かデカイ熊だよな? そこそこ強いらしいから駆け出しのソロだと荷が重く、数人のパーティーで取り囲んでようやく倒せるレベルだったか。まぁ中級魔法が使える魔法職が一人いれば余裕とも聞くし、試しに受けてみるか。
あ、そうそう。魔法と言えばね? この度カエル討伐で経験値が入ったのでレベルが上がりました。スキルポイントも貯まったので早速初級魔法を覚えましたよハッハッハ。
……はぁー。この世の『理』を統べる私が初級魔法を、か。まぁしょうがなし。そもそも私自前の魔法とか使えるようになるまでスキルポイント貯めるのに何百年かかるかわからないし。
いや、それはそれで良しとしよう。この世界の調査をするのに過度な威力の魔法はバランス崩壊の元だろう。
大げさなこと言ってると思う? ならばチラッと冒険者カードを見せてあげようか? 面白いスキルが並んでるぞ?
『りゅうせい』……1000000000sp
『たいよう』 ……1000000000sp
『くろきあな』……1000000000sp
『ことわり』 ……無限sp
……覚える必要ないわこれー。効果と威力はお察しで。一つでも使えば文明が滅びる魔法とかいらんいらん。
あ、でもまた姉貴と喧嘩するときにないと困るんだよなー。どうしよ?
っと、いかん。話がそれた。
クエストを受けに来たんだったな。
さて、ルナさーん! このクエスト受けまーす! クマー!
しかし、一撃熊討伐のクエスト用紙を掲示板から剥がして受付に持っていった私は、そこで予想外の言葉を聞いたのだ。
「アルマちゃん。ご指名ですよ!」
「はい?」
「君がアルマか? 私はダグネス。クルセイダーを生業にしているものだ」
「あたしはクリス。と、盗賊です…………えー」
「え? えー………初めまして! アルマです!」
私の名はダグネス。本名はダスティネス・フォード・ララティーナ。故あって冒険者などをやっているがこの国の貴族だ。
一緒にいるのはクリス。盗賊職についている冒険者で私の友人だ。今日は彼女と二人で……アルマという少女の素性を調べるため共にクエストを受けれるよう彼女を指名したのだ。
ことの始まりはアクセルの街で広まった噂だ。
最近、アクセルの街に金髪碧眼の少女が冒険者として現れた。
新人冒険者がアクセルの街に現れるのは珍しいことではない。しかし、気になったのはその容姿にだ。
金髪碧眼。それは貴族の証だ。別に平民にそういう特徴の者が居ないわけではない。だが、貴族のそれは見るからに輝きが違うのだ。
更に貴族のステータスは一般冒険者のそれを遥かに上回る。王族などは勇者の血を何代に渡って取り込み続けている影響か特に顕著だ。
……なぜならこの国の国王と王子が最前線で魔王軍と戦っているしな。他国からも脳筋王家とか言われてるし……。
いや、よそう。今はそれはどうでもいい。
問題というのはそのアルマという冒険者なのだが……その、だ。登録して一週間ほどでギルドの者から我がダスティネス家に問い合わせがあったのだ。
―『アルマ』という少女はどこぞの名家から家出した貴族令嬢ではないですか?
と。
まさか、と思った。しかし、担当した受付嬢が言うには容姿が整いすぎている上に見事な金髪碧眼の美少女だという。仕草にもしっかりとした教育が施されているように見え、庶子にしては粗暴な面が見受けられない。
受ける依頼も依頼主には礼儀正しく応対し、街を歩けば老人から子供まで困っている人たちに笑顔で手を差しのべる。
もしも彼女が貴族だとしたら、ノブレス・オブリージュ、まさに社会の模範となるべき振る舞いを持った貴族と言えるだろう。
だが、ギルドの話ではアルマという少女のステータスは一般的冒険者とさほど変わらない平凡なものらしい。
つまり由緒ある貴族の家の者ではない、もしくは容姿が優れているだけの庶子である。ということになる。もしも彼女が貴族だったとしても、ステータスの低さはそのまま家の生活レベルの低さを表すことから彼女の生家は裕福なものではない、小さな権力しかないということだ。最悪、とり潰しになった貴族の者という線もある。
それならばなんの問題はない。
貴族崩れがその高いステータスを頼りに生活のため冒険者になるのは珍しいことではないからだ。
だが、しかし。しかしだ。
先日、彼女が大量のジャイアントトードを屠ってきた、という知らせがギルドから届いたのだ。それもかなりの血相を変えて。
その知らせを聞かされたとき「は?」と我が耳を疑ったものだ。
ギルドカードの記されていたステータスが間違っていたか、それとも何らかの手段で誤魔化されていたのか。十二歳の少女が大人でも持ち上げられるのに数人がかりでやっとという大剣を片手で振り回していたと。それで十数匹の巨大ガエルを食材として売りに来たのだと聞かされた時は……嫌な汗が背筋を伝った。
もしや、いや、まさか。
その時私には、ひとつだけ。とても大きな不安材料があった。
金髪碧眼。貴族。十二歳。
この条件が揃う貴族に、一人だけ心当たりがあったのだ。
まぁ、その心当たりは貴族は貴族でも『王族』という、とんでもない存在だったのだが……。まさか城を抜け出して? 護衛はいないのか? シンフォニア家のクレアから連絡はないぞ? と、どれだけ混乱したものか。
だからこそ。早急な確認を行う必要があった。知らせがあったその日の早朝から、ギルドが開くと同時に駆け込むように押し入り、受付で名指しで指名して同じクエストを受けれるよう取り計らった。
結果はというと。
ギルドで初めてその、『アルマ』という少女を見た私は心底……安堵した。
「良かった……アイリス様ではない……」
アルマはベルゼルク王国の第一王女、アイリス姫ではなかった。それが確認できただけでどれだけ私の心労が和らいだ事か……って、ん?
「どうしたクリス?」
「…え!? なにがだい!?!?」
事情を説明したら快く協力を申し出てくれた友人、盗賊職の冒険者のクリスを横目で見ると初めて見るほどの狼狽を見せていた。私が声をかけるまで口を半開きにさせて固まっていたほどだ。
「(……なぁ、まさか彼女に心当たりがあるのか? やはりどこかの家の……?)」
「(……いや、ないないない!! 貴族じゃないよ! 見たこともないさ!!)」
むぅ? 明らかになにか怪しいんだが……? 貴族では無いと言っているが心当たりがあるんじゃないのか?
「今日はよろしくお願いしますね!」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
「あは、あははは……」
噂通りとても良い娘みたいだな。……私としてはもっと腹にドス黒い欲望を隠しているくらいのほうが好みなのだが。
後は彼女の素性をハッキリと見極めねばな! 一撃熊が相手というのも素晴らしい! うむ、今日は良き日だ!
うん? だからどうしたクリス? さっきから何を頭を抱えて……おーい、聞いているか?
えー、そういうわけでして。
私を指名してまでクエストについてきた二人なんですが……なんでしょうねぇ? めっちゃ見られてます。
ダグネスさんとは色々世間話を交えながら歩いていますが、内容が時々変です。貴族しか知らないような話題……使用人の教育とか買い付ける調度品のセンスとか、答えられる範囲で答えましたが何故にそのチョイス? というか貴方、実は貴族でしょう? なんで冒険者やってるんです?
そしてもう一人。
えーと……おい。
おいおいおいおいおいおいおいッ!!!
なんでお前までいるんだ!
『魂』 「お父さんが少女になっていた件」
『物質』「これには女神も涙目です」
『命』 「年頃の娘ならグレるわ」
アクアを創ったの…『魂』
エリスを創ったの…『理』
子は親に似る。特に娘はお父さんに似るという?