ゆゆこさまといっしょ   作:儚夢想

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数年に渡って執筆を放棄した愚かな物書きの小説


ゆゆこさまとゆきがっせん

「最近雪ばかりですね」

 

 雪が降る空を見上げながら呟いた。

 

「冥界なのに四季があるのってホントに不思議ですよね」

 

 この場所に来てからずっと思っていたことだ。冥界──それは死後の世界、あの世とも言える。そんな世界だというのに、何故か四季という概念がある。てっきり何もないと思い込んでいたから初めて来た時は衝撃を受けた。幻想郷では常識に囚われてはいけない──という言葉があるけれど、正にその通りだと思った。

 

「死んだとしても四季くらいは楽しみたい……貴方はそう思わない?」

 

 隣に座る幽々子さんが問いかけてきた。

 

「……そうですね、冥界は静かなので四季を楽しむには良いと思います」

 

「でしょう?私も具体的なことはよく分からないけれど、幽霊たちが成仏や転生まで退屈しないように、冥界にも四季が存在する……そう解釈しているわ」

 

「なるほど……良い考え方だと思います」

 

「でしょう?」

 

 幽々子さんの解釈を肯定すると、こちらを向いて微笑んだ。彼女の笑顔は何度も見たが、余りの美しさと愛らしさに思わず目を逸らしてしまう。

 

「じゃあ、この冥界の冬を楽しみましょう!」

 

「冷たっ!?」

 

 と、こちらが目を離した隙に何か冷たいものが頬に直撃した。幽々子さんの方を見ると、その手には野球ボール程度の大きさの雪玉が握られていた。

 

「ウフフ、雪合戦~♪」

 

 と、無邪気に笑って再びこちら目掛けて雪玉を投げてきた。幽々子さんの投げる球はそれほど速くないため、見てからでも避けることができた。

 

「俺も本気でいきますよ!」

 

 幽々子さんが雪玉を作っているうちに、こちらも雪玉を作り、力を込めて投げる。すると幽々子さんは避けられずに当たってしまった。

 

「私が作ってる間に当てるなんてずるいわ!」

 

 雪玉を当てられてプンスカ怒る幽々子さん。ムキになって雪玉を投げてくるも、やはりそれほど速くはない。

 

「もう!大人しく当たりなさい!」

 

「不意打ちで当てましたよね!?」

 

 不意打ちで当てておいてそんなことを言うのか……と思いながら雪玉を作り、再び投げる。一度当てられて警戒したのか、これは避けられた。

 

「私も本気でいくわ!」

 

 幽々子さんがそう言って、宙に浮いた。確かに飛び回っていれば走るより速いし、思うように狙えない。というか、これでは飛べない僕は余りにも不利では?

 

「ほら飛んでいればこういうこともできるのよ!」

 

 と、得意げな幽々子さん。瞬間、脳天に冷たい衝撃が走る。

 

「真上は流石にズルくないですか?」

 

「真上から当てちゃダメ、なんてルールは無いわ。だからズルじゃないわ」

 

「飛ばれたら流石に勝てないですよ……」

 

 幽々子さんは強大な力を持った亡霊。対する自分はこれといった能力の無い普通の人間。この間のは越えられない差がある。死んでも彼女を超えることはできないだろう。

 

「──いいのよ、貴方は普通で。寧ろ普通でいなさい」

 

「へ?」

 

 唐突に、幽々子さんの柔和な表情はそのままに纏う雰囲気が張り詰めたものに変わった。何故だか分からないけど、幽々子さんがこういうことを言うときは決まって自分が考えていることを見透かしている。

 

「貴方が普通だからこそ私は惹かれたの。普通じゃないところがあるとするなら、偶然にも幻想郷に迷い込んで死なない程度の運、かしらね」

 

 自分が幻想郷に迷い込んだ時にいた場所──無縁塚。沢山の無縁者──その殆どが外の世界の人間──が土に眠り、紫色の桜が咲き誇る奇怪な地。あそこには外から迷い込んだ人を狙う人食い妖怪がいて、見つかったら食われて死ぬということが少なくないらしい。偶然にも冥界に近い位置に迷い込み、偶然にも通りかかった幽々子さんに拾われたため死なずに済んだ。無縁塚にいたのはものの数分だっただろうけど、体感的には数時間だと錯覚する程に生きた心地がしなかった。

 

「私ね、普通の人の恋に憧れてたの」

 

 幽々子さんは頬を赤く染めて、こちらに語り掛ける。彼女にしては珍しい、恥ずかしげな態度だった。

 

「貴方と一緒に過ごして、好きになって、とても幸せ」

 

 間近で見るその笑顔はとても愛らしく、輝かしい。死者とはとても思えない程の眩しいその表情に、思わず顔が熱くなるのが分かった。

 

「俺もとても幸せです。幻想郷に来て最初に会ったのが、好きになったのが幽々子さんで良かったって、心の底から思います」

 

「フフ、嬉しい……」

 

 そう言って、幽々子さんは自分の頬に手を当てる。

 

「貴方はいつだって温かい……ずっと一緒にいてね」

 

 幽々子さんの手は自分とは逆で、雪のように冷たい。でも、今の燃えるように熱い僕の顔にとってはいつまでも感じていたいと思える心地の良い冷たさだった──。




 どうも、儚夢想です。
 気がつけば最後の投稿から二年半以上が経っていて時の流れの早さ戦慄しています。一応書きかけの話が幾つかあって、どれも時期的に遅れて放置してます(書け)。今回の話も頑張って2月中に投稿しようと思ってどうにかこうにかできました。頑張りました。因みに次はいつ投稿するか未定です。できれば夏までに投稿したいと思います(フラグ)。
 今回はこの辺で。楽しんで頂ければ幸いです。
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