なにがなんだかと言うままISでのクラス代表決定戦に参加することになった。けど俺も一夏もレアケースなので専用機が用意されたとかなんとか。
一夏より先んじて届いた専用機には便利機能がついていると山田先生(おっぱい)が胸を張って説明してくれた。メモ用紙より胸に視線がいって内容がなかなか入ってこなかった。
“ISが感知した音声を脳内に直接情報として伝える”
大雑把にいうとそんな、疑似聴覚的な機能らしい。なかなかありがたかった。いい加減に後ろの子に背中で実況してもらうのも申し訳なくなってきた頃なので大変助かる。
休み時間ということでさっそく使ってみようという話になった。意気揚々とアリーナへ向かう途中で一夏やその幼馴染みのサムライガールに遭遇、他のクラスメイトや後ろの席子さんにも遭遇。きび団子も渡してないのに大所帯になってアリーナへ到着。
“じゃあ、さっそくいってみましょうか!”
おっぱい(山田先生)の笑顔と胸とあらかじめ用意されてたであろうメモ用紙に促された。じゃあ起動しますかね。
特に問題なく起動装着した直後、音の嵐に襲われた。
『これが専用機か、カッコいいな!』『おー、やっぱりいいなぁ!』『羨ましい! でもクラス代表決定戦頑張ってね!』『機体だけはそこそこ良いもののようですわね』『明日の小テスト憂鬱だなー』『この頃ブラがまた合わなくなってきちゃって大変』『もげろ』『次の週末は駅前のカフェに行こうよ!』『あ、また体重増えてるぅぅぅ!?』『クンカクンカハスハス!』『今年の生徒は──特に一組に際ものが揃うのは何故だ』『──婚期が、婚期が……』『あ、日朝がゴルフで撮れてな──ッロス』『──つほ、退きなさい! 私は仕事よりかんちゃ──』『──ニトラって無理よ、あれは鉄壁過ぎるわよ!』『────ータム、ベッドにイキましょう?』
「ぬぁぁぁああああああ!?」
反射的にISを解除して背筋を仰け反らせながら地面を転がる。脳の回線が焼き切れるかと思った。
ISの感度そのままで拾える音声を全部拾って俺の頭に送ってこられたのか? 校内の声まで聞こえるとか不良品が過ぎるので、このISはお返ししますと丁寧におっぱ、山田先生に手渡す。
山田先生は不具合かとISを確認するも全て正常な状態とのこと。いやいや、そんなはずはないと、もっと確認してみてくださいと言っても異常はなし。あれ、なんかデジャヴ。
じゃあ音声を拾う範囲を狭めてくださいと伝えてもそんな機能はないし、元より広範囲を拾う設定はないはずとのこと。おやおやおや?
もしかしたら初めての着用なのでISが送ってくる情報量に酔っちゃったのかもしれません! って空間投影ディスプレイに書かれている。初回酔いはなくもないことらしく、二回目以降は大丈夫らしい。
…………じゃあ、信じますよ……?
IS起どっ、ISから、ISから音声が逆流する……! ギャァァァァァァァァァ!?
すかさず待機状態に戻したISを地面に叩きつけた。クラスメイトからの視線が痛いけど頭の方が痛いんですけど、頭痛が痛いって誤用も辞さないレベル。より痛い方しか気にすることができないってやつだ。
というかISは科学の最先端じゃないのか、尖りすぎた先端が俺に突き刺さってるんですけど。鼓膜どころか聴覚突き破って、次は脳みそかこの野郎。
なによりも俺ってISに乗ったことあるじゃん! 適性試験のときに乗ってたよ! 初回酔いも糞もないわ!
皆の視線が生温かいものに変わった。やめろよ、そんな目で見るなよ……。
放課後、疑似聴覚の機能によって情報過多になってしまったことが、あの頭痛の原因ではないかという推察がたてられた。それだけオフにして再度IS装着チャレンジすることに。
山田先生から“ごめんなさい! あと、あと一回だけですから! 専用機をそのまま送り返すのは色々厳しいんです、お願いします!”って言われた、もとい書かれたメモを見せられたのだ。
どうにも字面と表情が必死そうだったのであと一回だけ乗ることを決意。別に奥の織斑先生が無言の圧力を発してたとか怖かったとかそんな事実はない。
IS起……き、ど……あの頭痛をもう一回とか嫌だな。爪の隙間に針が刺さった痛みが脳に連続して送られる感覚、あれは我慢するとかいうレベルじゃなくて生理的に無理。
スパッとやって、それで駄目ならポイッと投げ捨ててやろう。ええい、IS──蒸着!
…………全く音が聞こえない以外には問題なかった。ISめ、意地でも俺の人生を強制ミュートにするつもりか。
おかしいな、俺のIS適性はAなんだけどな。聴覚だけZとかそういうオチかね。ハイパーセンサーを使えば織斑先生や山田先生の肌年齢だってわかるほど……あっ、ちょっ、装甲が悲鳴上げてるので離して織斑先生。若いですから、いつも料理してるとかいう一夏のお陰か肌年齢若いですから。
しかし、怒っているのかと先生を見ると微妙な面持ち。特に気落ちしている様子の山田先生には気にしないでほしいと伝えておく。先生は悪くない。強いて言えば強制IS適性試験を行った政府とISが悪い。
絶賛高校生な15歳、嫌いなものはISと政府!
▽▽▽▽
あだ名がほっちゃんになってた。人の呼び方の話題になってたもんでネタの一環として『耳が聞こえないし、耳なし芳一にちなんでホウイチって呼んでもいいぜ!』って言ったらウケなかった。何故か笑ってもらえない、ギャグが寒いと評判の一夏ですら笑ってくれない。そこまではいつも通りだった。
けど後ろの子が『なら、ほっちゃんですね』って背中に書くもんで、思わずほっちゃん……? と声に出したが最後。瞬く間にほっちゃんが広まった。別に“ホ”だけなら名前にもあるしいいけど、ちゃんってのは少し気恥ずかしい気もする。ま、聞こえないから気にしないけどな!
音が一切聞こえないまま専用機と過ごした一週間を振り返れば、特にイベントもなかった。疑似聴覚機能を勝手にアンインストールして山田先生に泣かれたくらいなので割愛。
ほっちゃんが浸透したころ、一夏の専用機も届いた。俺の専用機が届いてからだいぶん経ったものの、しっかりと届いてよかったよかった。例え今が試合開始数分前でもよかったと思うよ、うん。
名前は白式、自前の専用機が大雑把な情報を表示してくれるのでそれだけはわかった。……言うほど白くないな、白式。色彩的に灰式。
って感想を口にすると一夏以外からもれなく微妙な視線を向けられた。しまった、余計なことを言ったか。一夏は納得してた、お前だけが味方だよ。
まぁ、そんなこんなは置いておき、初期設定すらままならないままアリーナへ飛翔した一夏に敬礼。無事に帰ってきたら、また一緒に遊ぼうな……なんてフラグ立てといた。一夏にまで微妙な顔された。
ビットに備え付けられた大画面では一夏はレーザーに撃たれまくってるものの、音声が聞こえないために見世物としては物足りない。例によってクラスの後ろの子はアリーナで見てるから実況者もいないのだ。
──しかしその実況のせいでセシリア・オルコットの語尾が『ですわ! ですの!』で定着してしまったのはどうなんだろうか。
漫画でテンプレみたいな語尾が果たしてあるものだろうか、いやあるはずがない。如何にお嬢様っぽくとも精々ですます口調、そんな“日本の少女漫画で語学を学んだら変な日本語になっちゃった”留学生みたいに面白いことがあってたまるか。そう後ろの子に伝えると微妙な笑み、略して微笑を浮かべられるんですけど何故?
ミサイルで一夏が撃墜されたと思いきや機体が真っ白になって爆炎のなかから出てきた。
クラス代表決定戦(仮)に出るわけでもないのに何故かピットにいる、一夏の幼馴染みな篠ノ之箒や白式運搬をしてくれた山田先生が盛り上がってるけど、やっぱり何言ってるのかわからない。なんなの、ミサイルじゃなくて漂白剤だったの?
そろそろ実況が恋しくなってきた。
画面の一夏はキメ顔で何か言ってるけど白式が綺麗になったな、としか……あ、ライトセイバー! 一夏の持っていた刀の刃が蒼い光刃になった。あれの効果音がブォンブォンいってるであろうことだけはわかるぞ!
面持ちを驚愕に染めたセシリア・オルコットも恐らく『まさか、フォースの使い手!?』みたいなこと言ってるんだろう。
フォースに目覚めた一夏が先ほどまでの苦戦を感じさせぬ動きを見せる。レーザーを掻い潜りビットを4機全て撃破。そしてライトセイバーを振りかぶり──
なんか一夏が負けた。戻ってきた一夏も顔を見れば事態を把握できてないのがよくわかった。その後、織斑先生からの説明があったけどカット、読唇術使っても母音しかわからないんですもん。
まぁ、一夏はフォースの使い手でもないしな、知ってた。お疲れさまって肩を叩くと感動された、なんで?
次は俺とセシリア・オルコットの試合。ピットで専用機を装着。一夏がスケッチブックに頑張れよ! って書いて見せてくれる。応、と短く答えてアムロかアポロかの如く飛翔。
相対するセシリア・オルコットの口上は例によってミュートされてたのでまたもカット。というか途中で気づいた彼女自身が気まずそうに止めた。お気を遣わせて申し訳ないね。
そして試合開始のブザーが──ブザーも聞こえないじゃん! ヘッドショットが直撃したことで始まったって気づいたよね。
ISからの警告音も当然のように聞こえないし、右下に出たCAUTION!!って画面が出てたけど頼むから日本語でもっと見やすく出てほしい。警告って日本語訳する前にカウチオンってローマ字読みしてたから。その間に撃たれてたから。
レーザーにこう表現するのが正しいかわからないけど、次弾が放たれると警告画面が再度表示される。
──それはもうデカデカと視界のど真ん中に、日本語で警告と。うん、俺の意思を汲んでくれたのは嬉しいけどさ。ほら、これじゃ前見えないじゃん? アイタァ!?
二発目のレーザーも見事にヘッドショットが決まった。0になったら負けるというシールドエネルギーは残量1割弱。さっきの一夏との落差が激しいのかセシリア・オルコットの雰囲気が戸惑いに満ちてる。
試合中にも関わらずISの設定をポチポチ弄るもアンインストールしたはずの疑似聴覚機能が出てきた。なんでサルベージしちゃってるの、自己修復機能とか知らないし聞いてないから。早く武装一覧とか出せよ、ほらもう狙われてるだろ!
とんだ事故修復機能だよ、このポンコツ!
そう叫んだそのとき、勝手に疑似聴覚機能がONになった。ちょ、おまっあああああああああ!? 頭痛が痛いぃぃぃあああ!?
その直後、空中でエビ反りしてた俺に三度目のヘッドショットが決まって綺麗に負けましたとさ。はいはいクソゲークソゲー。
チクショウ、この専用機嫌いだッ!
ここまで読んでくださった方に感謝を。
ちょくちょく周りが筆談なしに会話するのはイジメではないです。彼が聞こえなくても割りと平然としてるから周りも割りと忘れがちなだけ。続きは考えてません。
どうでもいいんですが彼の名前の頭文字にホの文字はないです。