実況パワフルプロ野球〜あの夏を目指して〜   作:北条恋

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第10話

ーー友沢との勝負から三日が経ち、高校生活が始まってから初めての休日が訪れた。

優吾は日課である早朝ランニングの最中。

 

(友沢が入ってくれたのは良かったけど、なかなか部員って集まらないもんだな……)

 

友沢との一打席勝負、その翌日、翌々日も優吾と翠は勧誘活動を続けていたが、成果が出る気配はない。

 

(とりあえずあと一人集まれば部の申請ができる。そしたらビラとか作って大体的に勧誘ができるようになるから効率はよくなると思うんだけど……あ、部の設立には顧問の先生も必要なんだっけ。そっちもなんとかしないとなぁ……)

 

そんなことを考えながら走っていたせいか、前を見ていなかった優吾は前方から走ってきた人と勢いよくぶつかってしまった。

 

「きゃっ!?」

「うわっ! ……いてて、すみません! 大丈夫ですか!? ………………って川奈じゃないか」

「え? 橘……くん?」

 

優吾とぶつかった相手はいつもの制服……ではなく、ピンクのジャージを着た川奈翠だった。

 

「もしかして川奈も自主トレか?」

「うん、川奈もってことは……橘くんも?」

「ああ、日課なんだ。川奈は家この近くなのか?」

「うん、あっちの方」

 

そう言って翠が指差したのは優吾が走ってきた方向とは逆の方角だが、優吾のランニングコースにも入っている見慣れた街の風景だった。

 

「あっちはいつも走りに行ってる方角だよ。もしかしたら俺たち高校入る前にもどっかですれ違ってたかもしれないな」

「そ、そうだね……」

「……? なんか顔赤くないか?」

「え!? あ、えと、大丈夫だよ!」

「そっか、これから気温上がってくると思うし、ちゃんと水分取れよ?」

「うん、ありがと……あ、あの、橘くんはまだ走るの?」

「おう、あの街のちっちゃい商店街あるだろ? あそこの果物屋の叔母さんが顔なじみでさ、毎朝そこまで走ってりんご買って帰るのが日課なんだ」

「そう……なんだ。あの、私も一緒に走ったら迷惑かな?」

「迷惑なんてあるわけないだろ。一緒に行こうぜ」

「うんっ!」

 

二人並んで馴染みの商店街目指して走り出す。

鍛え上げている優吾はともかく、翠は女の子の中でも小柄な方。とてもスタミナがあるようには見えない。

案の定半分を過ぎた辺りで翠の息が上がってくる。

それを見た優吾は、何も言わずにペースを落とした。

 

(橘くん……気を使ってくれてるのかな。やっぱり優しいな)

 

特に会話をすることもなく、性別も体格も全く違うでこぼこバッテリーはペースを合わせながら一歩一歩確実に進んでいった。

これからもきっと、この二人はそうやって肩を並べて歩いて行くのだろう。

 

(いつか、本当の意味で橘くんと肩を並べて走れるようになりたいな)

 

それから十分ほど走ったところで、ランニングの折り返し地点、目的地である果物屋【星野フルーツ】に到着した。

 

「おばさーん! いるー?」

 

店内に向かって声をかける優吾。

しばらくしてから店の奥の扉が開き、奥から40代前半くらいの女性が出て来た。

 

「優ちゃんおはよう! 今日も朝から元気だねぇ」

「もう子供じゃないんだから優ちゃんはやめてよおばさん……」

「あたしから見りゃまだまだ子供さ! 今日もりんごでいいのかい?」

「おう!」

「ほんと昔っからりんごが好きだよねぇ。うちの雅人とよく取り合いしてたっけね」

「昔の話は恥ずかしいからやめてくれよ」

「あはははっ、ごめんよ。ところで、後ろの子は優ちゃんの彼女かい?」

「かっ、かの!?」

 

後ろで待機していた翠の顔が真っ赤に染まる。

相変わらずこの手の冗談は苦手なようだ。

 

「そんなんじゃないって。川奈にも悪いから変な冗談はやめてくれ」

「そうかい? おばさんにはお互い満更でもないように見えるんだけどねぇ」

「おばさん!」

「あはははっ、ごめんごめん。はいよ、りんご二つ。連れの子の分はサービスしといてあげるよ」

「ありがとうおばさん!」

「あ、ありがとうございます」

 

後ろで控えていた翠も頭を下げる。

 

「いいのよ。優ちゃんのこと、よろしくね」

「あ、はい。こちらこそ」

 

おばさんに手を振ってから、優吾はランニングの続きを開始する。

翠もぺこりと一礼してから慌ててその後を追っていった。

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