「みずき……もう一度聞くけど、なんでお前がここに?」
休日だというのに祖父が理事長を務める聖タチバナ学園の制服を身に纏い、玄関先に立っている義理の妹に優吾は再度訪ねた。
「決まってるでしょ。一人暮らしで寂しい思いをしているであろうお兄ちゃんの為にわざわざ休日返上して遊びに来てあげたのよ」
「大きなお世話だ! だいたいそれならなんで制服なんか着てるんだよ」
「お兄ちゃんその方が萌えるかと思って」
「アホか。そりゃもちろん女の子の制服姿は嫌いじゃないが、妹相手じゃ何も感じねぇよ」
「お兄ちゃん今世の中のシスコン野郎共を敵に回したわよ」
「お前のその物言いも充分敵視の対象だと思うけどな。とにかく、俺は別に寂しくないので帰ってください」
「いやいやいや、せっかく来たのにいくらなんでもそれはないでしょ。あ、もしかしてベッドの下とかに私に見つかったらまずいものでも隠してたり?」
「んなもん隠してねぇよ。あー、なんだ、遊びに来てくれたのは嬉しいんだけど今日はちょっと……」
そう、内心優吾はかなり焦っていた。
なぜなら今この家の風呂場では翠がシャワーを浴びているのだ。
優吾本人に決してやましい気持ちがないとはいえ義理の父、つまりみずきの父親が借りてくれている家に女の子を連れ込んでいるなどということがバレれば優吾の一人暮らし生活に支障をきたすことは必至。
そもそもこのおてんばガールにそんなことが知られればしばらく冷やかしのネタになってしまうだろう。
「とにかく今日は帰ってください! 遊びに来たいのであればそれ相応のおもてなしの準備をして後日改めてご招待いたしますので!」
「なんで敬語!? お兄ちゃんいくらなんでも怪し過ぎるよ? 一体何を隠してるのよ!?」
明らかにおかしい優吾の態度。
それならばとみずきは強引に部屋に押し入ろうとする。
流石はあかつき中学で正捕手を務めていた優吾、部屋に入ろうとするみずきをことごとくブロックする……が、流石の怪物捕手も背後からの資格にはなす術がなかった。
「橘くん、シャワーありがとう。空いたから橘くんも……あれ?」
優吾の必死の抵抗も叶わず、シャワーを済ませてしまった翠と玄関先でご対面。
「……えっと、どちらさま?」
「あ、えっと、川奈翠……です。橘くんと同じ日の坂高校に通ってます」
「あ、これはどうもご丁寧に。私は妹の橘みずきです」
咄嗟のことに頭が回らずそんな的外れな会話を交わしてしまう二人。
しかしそんなぎこちない会話もつかの間、状況を整理し一つの仮説を立てたみずきはニッコリ笑顔を作って再度優吾に向き直った。尚、その笑顔は盛大に引きつっている。
「どういうことかなお兄ちゃん?」
「誤解なんです……」