翌日、優吾と翠は一日も早く日の坂高校に野球部を立ち上げるべく朝一から校門で部員の勧誘を行っていた。
「野球部でーす。よろしくお願いしまーす」
「お願いしまーす」
昨日みずきが帰った後、まだ早い時間だったためどうしようかと優吾が悩んでいると翠が部員勧誘の為のビラを作ろうと提案してきた。
よって今日は昨日二人で作って朝一コンビニで大量コピーしてきた部員勧誘の為のビラを片手に部員勧誘に精を出しているというわけだ。
「朝から頑張ってるな」
「あ、巻風!」
友沢との対決の後、正式に野球部のメンバーとなった巻風、その後ろには友沢もいる。
「お前らも手伝ってくれよ。部員集まらないと試合もできないんだしさ」
「それは構わないが、そろそろ切り上げないと遅刻するぞ?」
「え、もうそんな時間なのか? んじゃ続きは放課後だな。川奈、ビラは預かっとくから先行ってていいぞ」
「う、うん。橘くんも遅刻しないようにね」
「おう、またな」
翠を遅刻させるわけにはいかないからと先に校舎に向かわせる優吾。
巻風と友沢の二人はそんな二人の様子を暖かい目で見守っている。
「入学して間も無いというのにすっかり川奈と打ち解けているようだな。好きなのか?」
「はぁ? バッテリーなんだから当然だろ。友沢は川奈が嫌いなのか?」
「いや、そういう意味ではなかったんだが……まぁいい。放課後の部員勧誘は俺も手伝おう。授業が終わったら連絡してくれ」
「お、おう。なんか友沢が手伝ってくれるのはすげぇ意外だわ」
「友沢はこう見えて単純なやつなんだよ」
巻風が二人の会話を聞きながらくすくすと笑う。
確かに部員の勧誘など普段クールな友沢には似つかわしくないように思えるが、理由は単純。友沢も早くチームを作って試合がしたいのだ。
もちろん巻風も同じ、みんな名門でスタメンを貼っていた実力者達も、いや実力者だからこそ、根っこはただの野球バカだってことなんだ。
ーーーーーー
放課後、優吾からの呼び出しで野球部の四人は優吾の教室に集まっていた。
「さて、四月も半ばに差し掛かってるわけだが、困ったことにまだ野球部の部員は俺たち四人だけ。最低9人いないと野球は出来ないし、大会を勝ち抜こうと思ったら投手を川奈一人に任せるわけにもいかないから10人は欲しいところだよな。このままビラ配りしてるだけじゃデカい効果は望めないし、なんかいい方法とかないか?」
「あ、あの、実は先生にお願いして今年入学した生徒の名簿を貰ってきたんだけど……」
「おお! でかした川奈! もしかしたら俺たち以外にも野球経験者が入学してるかもしれないし早速見てみようぜ!」
四人それぞれが名簿を手に取り、自分の中学時代の記憶を頼りに経験者を探す。
その結果、五人の野球経験者を探し出すことに成功した。
「よし、じゃあ明日はそれぞれ分かれてこの五人に直接交渉してみようぜ。うまくいけば部の正式な設立はもちろん試合ができるようになるかもしれねぇ!」
「上手くいけば……な。俺はこいつのところに行こう。一度試合したことがあるから一応知り合いだ」
「じゃあ俺はこいつだな」
「おっけー。じゃあ川奈はこの子をよろしく頼む。俺は残りの二人のとこ行ってみる。んじゃそういうわけで今日は解散! 明日には野球部設立できるようみんなで頑張ろうぜ!」
「お、おー!」
「…………」
「……ぷっ、くすくす」
「川奈以外ノリ悪いな! 巻風は笑ってんじゃねー!」
どうにもまとまらない日の坂野球部の面々。
けれど野球がしたいと思う気持ちは皆同じ。明日の部員ゲット作戦に向けて、本日は和やかなムードで解散となった。