実況パワフルプロ野球〜あの夏を目指して〜   作:北条恋

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第20話

詳しく話を聞いてみれば、巻風の能力は別に予知能力などといった超常的な物ではなく、ひとえに彼の目の良さに起因するものだ。

一般的に視力と呼ばれるものについてもそうだが、巻風はことスポーツをする上で必要な視力、スポーツビジョンと呼ばれるものについて圧倒的なまでの才能を持っている。

それは主に動体視力と呼ばれるものだが、スポーツビジョンは細かく分類すればその種類は二桁を越える。

巻風は中でもその内の二つ、『瞬間視』『目と手の協応動作』と呼ばれる能力に秀でている。

瞬間視とは簡単に言えば瞬時に目標を見極め状況を把握する能力。

目と手の協応動作とは目で見た物に素早く反応する能力、一般的に反射神経などと呼ばれているものだ。

つまり巻風は投手が投げたボールを視界に捉えた瞬間に投げ込まれるコースを把握し、反射に限りなく近い速度でそれに反応することができる。

そんな自分の才能を生かす為に彼が身につけたのがあの神主打法で、努力を重ねた結果投手の手からボールが離れた瞬間にコースに応じてほぼ反射的に左足が動くまでになった。

 

(……と、ここまでが今しがた友沢に聞いた話なわけだけど、説明を受けてもちょっと信じ難い話だよなぁ)

 

友沢との会話を終えてホームベースに戻ってきた優吾。

130㎞オーバーのストレートを引っ張って弾丸のようなスピードでフェンスに突き刺したのだ。

巻風の打撃テストはもう充分だと判断して次の打者を呼び、テストを進めていく。

 

続く矢部は最初の打席で友沢のストレートを前に空振りの三振に倒れるものの、与えられた二打席目のチャンスで外角のストレートを綺麗に流打ち、一二塁間を抜けるヒットを放って見せた。

 

(やっぱり矢部くんバッティングも悪くはないんだよなぁ。見た目よりもスイングスピードはあるし、ミート力を鍛えれば充分三割を打てる打者に成長しそうだ。ただ一番を任せるには思ったより選球眼が良くないのが難点だな……)

 

続く田辺は三打席目でセンター前ヒットを放つも、その後の横山と坂本は三打席をすべて三振と凡打で終えてしまった。

 

(まぁ高校上がりたてで130㎞オーバーのストレートはなかなか打てるもんじゃないよなぁ)

 

入部仕立てだということを考えれば全力でないとはいえ友沢のストレートはそうやすやすと打てるものではない。

むしろ一打席目から快音を奏でる巻風の方がおかしい部類なのだ。

 

(横山と坂本の二人にはなんとかストレートだけでも打てるように練習してもらうとして、次は……)

 

捕手を務めている為順番を後に回している優吾を除けば次が最後のバッター。

 

「お手柔らかによろしくね、橘くん」

 

日の坂高校野球分二人目の女子部員である速水雪歩。

 

「自己紹介の時から思ってたんだけどさ、俺たち前に何処かで会ったことないか?」

「なになに? もしかして私今ナンパされちゃってる?」

「ばっ! そんなんじゃねぇよ! ただなんとなく速水に見覚えがあるなぁと……」

「あははっ、冗談だよじょーだん! まぁ見覚えがあるのも当然だと思うよ。私橘くんと同じ中学校に通ってたから」

「え……? マジ?」

「まじまじ、あかつき中学出身でーす。あかつきの野球部は女子禁制だったから野球は地元のシニアリーグでやってたし、私のこと覚えてなくても仕方ないと思うけどね。でもでも私は橘くんのこと知ってるよー。校内じゃあ大スターだったしねー」

 

思わぬところで同じ中学校出身の生徒に出会った優吾。

あかつき中野球部の面々が日の坂高校にいないことは確認済みであったが、部活に所属していない野球経験者までは確認していなかった。

現に部員候補を発掘する際雪歩を見つけたのもたまたまシニアリーグの試合を見たことがあった巻風だったのだ。

無論同じリトルリーグのチームに入っていたという翠も気づいてはいたのだろうが。

 

「まぁまぁ積もる話はまた後でするとしてちゃっちゃと打撃テストやっちゃおーよ。私順番最後だったからずっと早く打ちたくてうずうずしてたんだから!」

「あー、そうだな。とりあえず始めっか」

 

そう言って腰を落とす優吾とバッターボックスに入る雪歩。

雪歩はマウンドに立つ友沢を一瞥してからバットで一度自らのヘルメットをコツンと叩き、構えに入った。

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