「よし、それじゃあこれでテストは終了! みんな集まってくれ!」
友沢に打ち取られ悔しがる様子もなく、部員達をバッターボックス付近に集める優吾。
「みんなお疲れ様! これでテストは終了だ」
「けっこう疲れたけど楽しかったでやんす!」
「そうねー、久しぶりに生きた球打てて気持ち良かったわ」
口々に感想をこぼす部員たち。
優吾はそれを一度収めると改まったように切り出した。
「えー、まだ確定ってわけじゃないけどテストの結果を元にみんなのポジションと打順を決めてみた。発表するから聞いてくれ」
いつの間にやら取り出していたメモ帳を片手に部員たちを見回す優吾。
テストの最中細かくメモを取っていたようでこの辺りのマメさは長年捕手をやってきて身についたもののようだ。
「そんじゃ行くぞー
1番セカンド速水!」
「え、あたしが一番? いいの?」
「速水は打ってからのスピードが速いし選球眼もある。俺たちの中ではトップバッターに一番適任だと思うんだ。頼めるか?」
「そうまで言われちゃ仕方ないなー。あたしに任せなさーい」
飄々とした態度をとってはいるが、少々表示がにやけている雪歩である。
「んで、二番はセンター矢部くんな」
「トップバッターじゃないのは残念でやんすが上位打線でやんす! 橘くんは見る目があるでやんす!」
「お、おう、期待してるよ」
自身満々な矢部に対しては若干引き気味な優吾。
現状バッティングでは雪歩に劣るものの走塁技術においては天賦の才を持つ矢部。これほど塁に出したくない選手も中々いないだろう。
「んじゃ続き一気に行くぞー
三番サード巻風
四番ショート友沢
五番キャッチャー俺
六番ファースト田辺
七番ライト横山
八番レフト坂本
九番ピッチャー川奈
以上! なんか意見あるやついるかー?」
揃って首輪横に振る部員一同。
四番に名前を呼ばれた友沢は心なしか笑みが溢れているような気もする。
「あとみんなに紹介したい人がいるんだ。先生ー!」
優吾の呼びかけに応えグラウンドの隅から現れたのはスーツを着た20代半ばほどの女性。
赤いピアスが印象的なその女性は優吾によって部員たちの前に押しやられた。
「むむ、誰かと思えば国語のみゆき先生じゃないでやんすか!?」
「お、矢部くんは知ってたのか?」
「もちろんでやんす! 日の坂高校の美人教師と名高いみゆき先生をこのおいらが知らないわけがないでやんすよ!」
「あ、そういう理由ね」
雪歩が矢部に対して冷ややかな視線を向けている。
若干翠も引き気味に見えるのは気のせいではないだろう。
「まぁ知ってる人もいるだろうけど矢部くんの言った通り、国語教師の田中深雪先生だ。うちのクラスの担任なんだけど野球部の顧問を引き受けてくれることになった」
瞬間、部員一同から歓声が上がる。
「野球のことはあまりよく知らないんだけど、甲子園目指して頑張るみんなを応援していきたいと思っています。みんなこれからよろしくね」
「よろしくでやんすー!!」
「矢部うるさい! よろしくお願いしますみゆき先生ー」
「よろしくお願いするぞー」
ワイワイと盛り上がる野球部の面々。
日の坂高校野球部は着々と前に進んでいく。高校球児達の夢の舞台、甲子園を目指して。