初めての練習試合。
日の坂高校高校野球部一同は試合に向けて優吾の指示の元練習に励んで行った。
そして迎える試合当日。
一同は電車に乗って遥々本日の対戦相手であるときめき青春高校を訪れていた。
「ここがときめき青春高校かー」
「なんというか……」
「荒れてるわね」
ときめき青春高校と言えば巷では爽やかな校名とは裏腹にヤンキーが集まる高校として有名である。
「ひえぇぇでやんす。凄い睨まれてるでやんすよー!」
校門を通った瞬間より浴びせられるときめき青春の生徒達による視線の嵐。
見た目からしてヤバさMAXなときせー生から睨まれてはビビリな矢部はひとたまりもない。
「大丈夫だって。俺たちは喧嘩売りに来たわけじゃなくて野球をやりに来たんだからさ」
「野球……? あっ、もしかして日の坂高校の人達ですかー?」
優吾の言葉を聞きつけ、ヤンキーの中から現れたのは明らかに周りの連中とは違うおっとりとした雰囲気の女の子。
「そうだけど、君は?」
「ミヨちゃんはときせー野球部のマネージャーですー。日の坂高校の人達が来たら案内するように言われてるのでついてきてくださいー」
「あ、うん。よろしく……えっと、ミヨちゃんさん?」
「ミヨちゃんはミヨちゃんですよー。面白い人ですねー」
にこにこと笑顔を浮かべながら変わらずマイペースに歩いて行くミヨちゃんについて行く日の坂高校の面々。
何故か強面のヤンキー連中がミヨちゃんを見ると血相を変えて道を開けているのだが、不思議に思いつつも何故か身の危険を感じるので優吾達はそのことについて深く考えないようにした。
「はーい、ここが野球部のグラウンドですよー」
案内されてやって来たのは荒れきった校舎とは似ても似つかない綺麗に整備されたグラウンド。
ところどころネットが破れていたりと不備はあるものの、そのどれもに人の手によって修理された跡がある。
そんなグラウンドを見た優吾は先ほどまで抱いていたときめき青春高校のイメージを改める。
少なくとも野球部に関しては真面目に活動しているようだ。
グラウンドではときせー野球部の部員と思われる面々がシートノックを受けている。
「小波くーん、日の坂高校の人達が来てくれましたよー」
ミヨちゃんの声に反応するのはバッターボックスに立ちノックを打っていた青年。
小波と呼ばれた彼は別の部員にノックを任せ、駆け足でグラウンドの外、優吾達の元へと向かって来た。
いや、駆け足なんてものではない。
「優吾ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ぐべっ!?」
全速力で走って来た彼はそのまま勢いを殺す事なく優吾の土手っ腹にタックルを仕掛ける。
それをまともに受けた優吾は変な声をあげながら仰向けに押し倒された。
「久しぶりだなぁ優吾ぉ! 元気にしてたかぁ!? お前が新設校に進学するって聞いた時はもう野球諦めちまったのかと思ったけどまたこうして会えて嬉しいぜ! いやー日の坂高校から練習試合の申し込みが来たって聞いた時には驚いたもんだよ! まさかこんなに早く優吾に再開できるとはなぁーそういやこの前猪狩にも会ってよぉ、なぁ優吾聞いてっか? 久しぶりに会ったんだからクール決め込んでないで語り合おうぜ! なぁ優吾、優吾ってばよぉ」
「あ、あのーでやんす」
「ん? おーどうしたメガネくん、なんか用か?」
「オイラはメガネくんじゃなくて矢部でやんす。じゃなくて、橘くん……気絶してるでやんすよ」
「へ?」
言われて優吾の顔を覗き込む小波。
小波の全力のタックルを受けた優吾は、仰向けのまま見事に泡を吹いて気絶していた。