IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
三年前 御鷹道場
早朝の静かな空気を切る音が響く、道場には二つの影。一つは燐、もう一つは白髪の青年《御鷹蓮(ゴオウレン)》
「…………………!」
「…………………!」
互いに抜き手を繰り出すも紙一重でかわし蓮は足払いを仕掛けるも燐は寸前で跳躍すると同時に回転し回し蹴りを放つ
だがパシッと受け止めその足を掴み床へ叩きつける…が寸前で体を捻り両手を床に添え反動を利用し反転し立ち上がり様迷わず踏み込み拳を胴へめがけ叩き込む
(はいった!)
燐は身体へ打撃が届いたことを確信する…が蓮は涼しい顔をしながらたつている
「まだまだですね、最後まで気を…」
「うわっ?」
グルリと視界が反転、固い床へ叩きつけられ肺からすべての空気が抜け呼吸が止まる
「…抜かないように」
「…カハッ…ハァッ、ハァッ……今日こそ先生から一本取れると思ったんだけどな」
「私に勝てるようになるまでまだまだですよ。さて呼吸を整えなさい」
倒れた燐に手を差しのべたたせると深く深呼吸する二人…この一年で燐は氣を全身へ循環させ生み出す呼吸法を八割方マスターした。
だがコレを無意識状態で続ける為には蓮との血の滲むような修練の日々があったからだ
そしてもう一つ……
―燐、お疲れ様―
「ああ、ありがとオリエ」
白髪に胴着姿の少女《御鷹オリエ》の力もあったからだ
(…本来十年かかる《氣》の流れを感じる鍛練を燐は習得することができました……)
「い、いいから?汗ぐらい自分で拭けるから」
―だめ…燐はいつもそういって、そのままにするから―
「は、はい」
(これもオリエの力があったからでしょうね……………………他者の心の闇をみて怯えてたオリエが自分から他人へ近づくとは……燐にナニかを感じたからでしょうか?)
「く、くすぐったいからやめてよ」
―じっとして―
穏やかな三人だけの日常は永遠に続くものだとオレは思っていた
「ふう、やっと帰ってこれた…」
「まさか食堂にあんなにクラスの子達がいるなんて…あれ燐ナニやってるの?」
「いや、喉乾いたんじゃないかなって…シャルルも飲むか?」
「じ、じゃいただこうかな」
沸かしたお湯を少し冷まし茶葉を適量急須へ入れお湯を注ぐ…時間をおき用意した湯飲みへ注いでシャルルへ手渡す
「日本茶…グリーンティーって飲むのはじめてだよ…すごくいい香りだね…アツッ」
「慌てて飲むなって…少しかして」
舌を軽くやけどしたシャルルから湯飲みをとりフウフウと少しいきをかけ冷まし手渡したんだけど何か顔が赤いし、じっと湯飲みを見てる
「どうした?まだ熱かったか?」
「う、ううん!ぜ、全然熱くないからね!?」
言い終わると一気に飲み干すシャルル…こうしてると普通の人間と変わんないなと思いながらお茶を飲んだ
第十二話 クラスメイトの正体(後編)
雲型ゾンダーを倒してから数日後、俺とシャルルは同室になった。理由はシャルルのゾンダーISから人とISコアを分離する力《浄解》能力を疎ましく思ったバイオネットのエージェントが狙う可能性があった。本来なら霧也が適任だけど今はIS学園最強の生徒会長《更識楯無》と妹《更識簪》の護衛、バイオネットの動向を探るために動けない
護衛兼ルームメイトになるよう千冬さんに頼み込んで急遽同室になったお陰で色々とシャルルの事を知ることができた
…あまり人に肌を見せたたがらないのとかなりの恥ずかしがり屋だと言うこと…まあオレもあんまし身体を見られたくないって気持ちはわかるけど…たまに風呂上がりのシャルルと会うたびにドキってすることがある
まあこんな感じであっという間に日は過ぎて土曜日、一般生徒に全解放されたアリーナで一夏くん、箒さん、セシリアさん、凰さん、シャルル、解析担当の凍矢と共に簡単な模擬戦をしていた…一夏くんの動きは以前に比べてするどくなってる
「…はあっ、はあっ~疲れた」
「ま、負けたあ~っていうか龍咆をかわすなんて反則よ…自信なくしちゃうわよ」
「お疲れ様、鈴さん、一夏くん…何か前より動きがよくなってたな」
「まあ燐や箒の特訓のお陰かな…でもさ遠距離からの攻撃されるとダメだな……」
「白式って後付装備(イコライザ)ってないの?」
「ああ、全部《零落白夜》に回されてるんだって凍矢が説明してくれたんだよ」
「はい、パススロット全てが埋まってます…」
カタカタと素早くキーを叩きモニターを見るのは特殊整備課スーパーバイザーとして招かれた凍矢、いつもと同じオレンジの繋ぎ姿で先程のモーションデータをまとめている
「ですが他のIS操縦者から使用許諾を承認されれば使うことは可能です」
「ほんとか凍矢!」
「…ただしハイパーセンサーの補助を抜いて目視射撃になりますが」
凍矢の言葉にガックリする一夏くん。ここ最近の特訓は接近戦主体に進めつつ氣の鍛練ばかりをしていたし…でも千冬さんの戦い方を目指していたのになぜ銃器を使いたいんだろうか?
「……なあ、セシリア。遠距離からの攻撃対策の特訓したいから付き合ってくれないか?」
「かまいませんわ…では参り…」
「オルコットさん、このモーションデータをインストールしていただけますか」
「これは?」
「ブルーティアーズの精密射撃補正、およびオルコットさんの現段階での反応速度に合わせたサポートプログラムです……あ、もちろんイギリス政府から許可はいただいてます」
「いいんですの?竜崎さんは日本政府に籍を」
「いえ宇宙開発公団に所属している技術者としての協力をしているだけです」
まっすぐセシリアさんの目を見ながらブルーティアーズにデータをインストールしながら話す凍矢…何か久しぶりにキラキラ輝いてる、セシリアさんも何か顔赤いし
「……インストール完了。ではご武運を」
「は、はい……ではいって参りますわ!」
意気揚々と一夏くんが待つアリーナへ飛ぶセシリアさん…まさか凍矢のこと好きなのかな?
「そういえば燐のガオファーも射撃装備はないね?」
「ああ、オレのガオファーは宇宙開発用として作られてるから武装は無いんだ…でもデブリ破砕用ファントムクローしかないし」
部分展開しファントムクローを見せる…と同時にシャルルからプライベートチャンネルが繋がる
(ガオファイガーには武器がついてるけど)
(……ガオファイガーは《あるIS》を基にして作ってあるから武器がついてるんだ)
あるISを基にしてガオファイガーは産み出された…アレは怒り、悲しみ、憎しみ、自分に夢を与え共に歩もうと手を差しのべた人たちを無慈悲に奪ったバイオネットに対する束さんの復讐心が込められた破壊神…《G-IS-00G》
あれを使う事がないようにしたい……絶対に
(燐?どうしたの)
(い、いや何でもない…とりあえずさ一夏くんとセシリアさんの模擬戦見ようか)
(……………………………………そうだね……)
あれ?何か機嫌が悪くなった気が…一緒の部屋になってから珠にこうなる、特に束さんとガオファーの出力調整に関してや休みに買い物にいかない?って話してる時にだけど
「ねえ、アレってドイツの第三世代型だ」
「まだトライアル段階だって聞いたけど」
セシリアさんと一夏くんとの模擬戦が終わりに近づいたとき辺りが騒がしくなる、つられて見ると黒いIS…確かシュヴァルツェア・レーゲンだったかな
「…………………」
ただ無言で一夏くんとセシリアさんが戦うのをじっと見る目…その奥には黒い炎、いや身体全体からも見えた次の瞬間。ゆっくりと右肩リボルバーカノンを展開し砲口は一夏くんとセシリアさんがいる方向に向けられている…………………不味い!
咄嗟にガオファーを展開し二人が模擬戦を行う場、ウルテクスラスター全開で向かい射線状にはいりリングジェネレータ部シャッターを開きリングを形成し構えた次の瞬間
「ぐううう!?」
プロテクトリングが軋み間接が悲鳴をあげる…ドイツの第三世代型の装備は実験的なのが多いって聞いてたけど
「ぬ、ぬうああああ!!」
弾速エネルギーをプロテクトリングで相殺し弾き返す…でも体勢が崩れバランスを崩したオレを一夏くんとセシリアさんが支えてくれた。ボーデヴィッヒさんは黒い炎が宿った瞳でただ見下ろしている
「いきなりなにするんだ!危ないじゃないか!!」
「…生ぬるいやり方では訓練ではならないから手助けしてやったのだが余計な邪魔が入ったようだ…」
「だからといって警告も無しに撃つのはいけませんわよ!」
「……………」
「おい、俺に何か恨みでもあるのかよ!なんとかいえよ!!」
荒く声をあげる一夏くんにボーデヴィッヒさんは目を向け口を開いた
「……貴様さえいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえたはずだ……貴様の存在を私は認めない……絶対にな」
興が冷めたといわんばかりにリボルバーカノンを納め立ち去って行くのをただ見送るだけしかできなかった
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「なんなのですの?あの方は…警告も無しに」
「まったくだわ!あたしたちと同じ代表候補生だなんて思うと気が滅入っちゃうわよ」
寮へ向け歩きながら口にするのは先程のボーデヴィッヒさんの行動、確かにアレはやりすぎだと思う
それにあの時に見えた《黒い嫌なもの》…師匠と《レグルス》さんが言ってたのに近い感じの氣を一夏くんも感じとったみたいだ
ボーデヴィッヒさんの一夏くんに対するあの態度は二年前の第二回モンドグロッソ時に起きたバイオネットによる一夏くんの誘拐事件が端を発してる
(………このままだと学年別トーナメントで一夏くんがボーデヴィッヒさんとあたったら何かが起こる気がす……)
そこまで考えたときガオファーが震え、皆に気づかれないよう網膜へ暗号通信を流す、狼の紋章が浮かびやがて文字の羅列へ変わる
―バイオネットに新たな動きあり。新式粒子加速実験施設《イゾルデ》および《学年別トーナメント》開催時に要注意されたし―
「ごめん一夏くん。オレ少し用事ができたから先に戻っててくれないかな?」
「ん?ああ別に構わないぜ…でも夕食までには戻ってくるんだろ?」
「まあね、じゃシャルルも先に部屋戻っといてくれ……あ、シャワー先に使ってていいからな」
「う、うん…」
そう言い残しオレは皆と別れた
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「最近、燐って用事が多いな…って箒、どうした?」
「別に…」
別にって言うわりにムスってしてるんだけど…多分さっきのドイツ代表候補生ボーデヴィッヒとの件かも。と考えながら箒を見ると首元になにか赤い光…楕円状の宝石が輝いてる。
「な、何を見てる一夏?」
「い、いや…その赤い宝石どうしたんだ?箒ってそういうの嫌いじゃなかったっけ?」
「………この前実家に戻ったときに雪子叔母さんにもらったのだ…《白翼の舞》の担い手である巫女は代々受け継ぐものだと」
少しうつむきながら話してくれた箒…確か《白翼の舞》ってなにも言わずに赤い宝石を残し消えた《白き翼の剣士》への想いを《赤き巫女》が舞いに込めたモノだって聞いてる
白き翼の剣士…赤い宝石…白き…翼…J…Jジュエル…
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―行くのですか義父上―
―ああ、私には果たさなければならない役目がある……シノノ、アルマを、娘を頼む―
神聖な空気が流れる社を前に立ち一礼する長身の男性、それを見送る宮司姿の青年に近づきナニかを握らせ、青年は手を開くと赤く輝く宝石が見える
―もし帰ってこずとも、この……………を渡してくれ……去らばだ、我が義息子よ―
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(い、今のは一体なんだ?)
「い、一夏?どうした顔色が悪いぞ?」
「な、なんでもない……多分疲れたのかな…」
「少しやすんだ方がいい…最近の朝練で頑張ってたから疲れたんだ…ほら肩を貸してやる」
「サンキュー箒」
「ああ~熱いわね」
「ほんとうですわね」
ってセシリアと鈴の声を耳にしながら箒に肩を借り寮へと歩いていく
でもさっきのアレはなんなんだろう
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アリーナの裏にある木々が立ち並ぶ茂み、オレはその中で大きな樹にもたれ掛かる、しばらくして気配が現れた
「………久しぶりですね燐」
「ああ、こうやって直に話すのはな霧也。んで秘匿通信じゃ話せない用ってなんなんだ?」
「……二、三日前に次世代環境機関NEOより試作段階で封印された《ガイゴー》が何者かに盗み出されました」
「な、ガイゴーが!まさかバイオネットか!?」
「おそらく間違いないでしょう。ただ目的については皆目見当がつきません」
「だとしてもGSライドは取り外してあるガイゴーを何に使う気だ?」
「………わかりません。燐、奪われたガイゴーに関してはロシアおよび日本政府諜報機関との連携で調べを進めてみます……わかり次第連絡をします。では」
風がなると同時に気配が消えたのを感じ幹から離れる…バイオネット、ガイゴーを何に使う気だ?
(とりあえずは霧也からの連絡待ちか……ん、着いたか)
考えながら歩くうちに自室の前に来ていたことに気付きロックを開き部屋にはいるとシャワーの音が耳にはいる。ハンガーへ制服の上着をかけた時あることを思い出した
(そういやボディソープ切れてたんだ…無いとシャルル困るよな)
バスルームの入り口の洗面所の下にあるボディソープを取ったオレの耳にガチャっと音が響いた、多分ボディソープが無いことに気づいたシャルルか
「ちょうどよかった、ボディソープ切れ…て…………………」
「り、燐?なんで………」
「う、ウェイ?」
な、なんで裸の女の子がいるの…驚くオレ以上に女の子も驚きの表情を浮かべ見てる。いや待て、この顔と声、金髪にアメジストの瞳、胸にある豊かな膨らみ。まさか……シャルルは女の子なのか!?
「あれ?シャルルは男の子で女の子?いやだってシャルルって名前は男の子で胸なんかついてないし!でも胸はついてるし!?アメジストの瞳てすごくきれいな金髪できれいな肌で、すごく、すごくかわいくて……か、かわい……くて………あれ?!?」
グラリと視界が歪み固い何かを感じる…床に倒れてるんだオレ……アツイ、アツイ…アツイ………アツイ
「り、燐?しっかりして熱っ!!そうだ!あのコートを…しっ…かりし…て…燐…燐!?」
途切れ途切れの言葉を最後にオレは意識を失った
第十二話 クラスメイトの正体(後編)
了
君達に最新情報を公開しよう
シャルルの正体を知った燐…だが男装していた理由とは?
新式粒子加速実験施設《イゾルデ》との連絡が途絶え調査へ向かったGGGが見たものは?
IS《インフィニット・ストラトス》―白き翼と勇気ある者
第十三話 バイオネットの影
次回もファイナル・フュージョン承認!
―シルバームーン―
これが勝利の鍵だ!