IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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半年前 宇宙開発公団


「では行ってきます」


『じゃあいってくるぜ』


「道に迷うなよ、疾風」


「迷いませんって!束さんが作ったナビゲーションシステムがありますから」


「まあ、くれぐれも気を付けるんだぞ疾風くん、雷龍」

「はい、では一週間後に」

ペコリと頭を下げ歩き出す黒髪に公団制服に身を包んだ少年を不安そうに見送るのは宇宙開発公団総裁《大河幸太郎》、同所属テストパイロット《獅童燐》


彼らが見送ったのは宇宙開発公団所属《テラフォーミング》計画のスタッフ《竜崎疾風》


彼は中国の科学院航空星際部周辺に現れたバイオネットのメカの調査に向かった彼が出会うのは?





閑話 双龍と甲龍!!

深夜のIS学園、その女子寮から少しはなれた場所で一人の少女が星空を見上げているが、フウッと大きくため息をついた

 

「あたしなにやってんだろ…」

 

 

風に髪をなびかせながら呟くのは中国代表候補生《凰鈴音》…幼馴染みである一夏に会えたのは嬉しいが気になるのは中国で出会った少年のこと

 

(…色や形が違うけど特殊整備課の竜崎凍也と同じISと似てる…まさか)

 

 

日本に来る半年前、凰鈴音は荒れ狂う無数の竜巻を前にし逃げ遅れた街の人々を救助する緑と黄色のISと出会った日の事を思い出した

 

 

 

閑話 双龍と甲龍!!

 

半年前、あたし《凰鈴音》は第三世代専用機《甲龍》の最終調整をする為に中国科学院航空星際部に来てたんだけど、肝心の第三世代型空間圧搾兵装《龍咆》が完成してなくてしばらくの間暇をもて余してた

 

 

「ああ~暇ねぇ………」

 

 

施設から少し離れた場所にある芝生に倒れながら空を見上げる、真っ青な空に穏やかな陽光…なんか眠くなってくる

 

 

(…………一夏もみてるのかな…)

 

 

うとうとしながら眠気に誘われかけた時、頬に冷たいなにかが落ちる。拭うと同時に空が曇りだし風が音をあげ吹き荒れやがて大粒音雨が振り出し地面を叩いてく

 

 

「な、なんなのよいきなり!?」

 

 

あわてて航空星際所の中にはいるとしばらくして施設内に警報が鳴り響いた。これはただ事じゃない

 

 

―航空星際所所属IS部隊員は直ちに第一ブリーフィングルームへ集合されたし!繰り返す…―

 

 

アラートとアナウンスが響くなか、ブリーフィングルームへ足を運ぶと正面スクリーンには信じられない光景が広がっていた

 

「諸君も知っての通り、我が航空星際所周辺都市に無数の竜巻が同時発生している。なぜこのような事態になったかは原因は不明だ…現在、軍に救援を求める要請が周辺都市から来ている」

 

 

 

丸ぶち眼鏡から鋭い眼光を覗かせスクリーンを見るのはここを預かるヤン・ロンリー司令はあたしと所属隊員へ目を向けながら

 

 

「これより所属IS部隊員及び機甲隊は逃げ遅れた民間人の救助作業へ向かってくれ…凰鈴音国家代表候補生、君にも協力をしてもらいたい」

 

 

深く頭を下げた司令からは切迫した空気をかんじたあたしは敬礼して他の科学院航空星際所所属IS隊員と共にハンガーへ向かうと甲龍を身に纏い他のメンバーと共に空へと飛び立つ

 

『聞こえるか凰鈴音国家代表候補生』

 

 

「は、はい!?」

 

『現在、避難が完了してるのは東地区、南地区、北地区だ。君たちは機甲隊と連携をとりつつ西地区の救援へ向かってくれ』

 

 

「了解、直ちに西地区の救援へ向かいます」

 

 

通信を閉じあたしは随伴する隊員と共に西地区へ向かった…でも西地区についたあたし達はあまりの光景に言葉を失った

 

六つの巨大な竜巻が西地区の建造物を破壊しながら蹂躙している…

 

 

普通だったら、こんなのあり得ないじゃない!?

 

「凰代表候補生、アレを!」

 

 

隊員の声に我に帰ったあたしが見たのはビルの屋上…逃げ遅れた人たち。そして巨大な竜巻

 

「っ!」

 

 

声を出すより体が動く…でもここからじゃ間に合わな…そんな考えを振り払うようにスラスターを全開にするけど竜巻から生まれた突風が遮る

 

 

ダメ…間に合わない!!

 

「はあああ!ティガオ4!!!」

 

 

叫び声が風が鳴るなか響いた瞬間、新たな竜巻が緑色のISアーマーがミキサータンクから生まれぶつかり競り合ってる、なんなのいったい!?

 

『おい、嬢ちゃん!なにぼさってしてんだよ?風龍が防いでる間に要救助者を速くつれてけっ…っとティガオ3!オラオラオラ!!』

 

 

黄色い稲妻があたしの前に降り注いだ瞬間、竜巻に飛ばされた自動車が弾けとんだ。稲妻が飛んできた方向には黄色いロボットが太極拳見たいな構えで立ち見てる

 

 

「雷龍、初対面の人に失礼だ…すいません、弟が大変失礼なことを」

 

 

 

竜巻を防ぎながら謝るコイツを見て沸き起こった怒りが収まってく。まあ確かにこの黄色のいう通りね

 

「わかったわよ。でも後であんたたちの事を聞かせてもらうわよ!!」

 

 

「いいですよ、ですが今は要救助者をお願いします!」

 

言い切るや否や竜巻を押し返していく…なんか頼もしく見えるわね

 

「よし、ティガオ4!!」

 

胸にあるダイヤルを回すとさらに威力を増した竜巻をぶつけやがてひとつが消えた

 

『やったな風龍!要救助者の移動完了まであと少しだぜ!!』

 

「わかった、残りあと五つか…」

 

うなずく緑色…確か風龍?っての声から判断すると歳はあたしと同じぐらいかしら

 

「しっかりつかまりなさい」

 

 

そんなことを考えながら要救助者を運んでた時、風が強くなる…ハイパーセンサーが接近する五つの竜巻を知らせた

 

 

「くっ!速く避難を!!」

 

『不味いぜ、竜巻が一気に来やがった……おい、嬢ちゃんまだ終わんないのか!?』

 

 

「あと二人運んだら終わるわよ!それよりなんなのこの竜巻は?普通じゃあり得ないわよ!!」

 

「(確かに普通じゃない……周囲半径50キロ圏内の天候異常は認められない……まさかバイオネットか!)…雷龍、この竜巻の上空へ向かってくれ」

 

『わかった!ティガオ1、デンジャンホー!!』

 

あたしの前で荷台に乗り瞬く間に空へ消える黄色……雷龍

 

でもすぐに戻ってきた

 

『風龍、お前の読み通りだぜ!』

 

「やはりか……」

 

 

「ち、ちょっとなに話してるのよ!あたしにもよくわかりように説明しなさいよ」

 

「…この竜巻は人工的に産み出されてます。雷龍、彼女にライブ映像を」

 

 

『あいよ!見て驚くなよ』

 

いきなりデータ転送されたのを見たあたしは思わず目を疑った、だって空の上に巨大な十字架を模した全長50メートルの巨体が浮かんでてその下にあるユニットから竜巻を発生させている

 

「つまり、この機械が竜巻を生み出してるわけね。だったら壊…」

 

 

「待ってください、今の地点で破壊すると破片がこのまま街へ落下。二次、三次被害が拡大します…………………雷龍、アレをやるしかないようだな」

 

 

『お、おい!アレってまさか!?』

 

「…そのまさかだ……貴女は今すぐここからIS部隊員、避難した方々を連れ撤退してください」

 

 

「なにいってるの?まさかアンタたちだけでアレをどうこうしょうという訳?絶対に無理!無理に決まってるわよ」

 

 

「『……憲章第5条、125項。我々ID5、ID5隊員は何時如何なる状況に陥ろうとも《絶対》に諦めてはならない』」

 

 

「例え力が及ばなくとも」

 

『俺たちは絶対に諦めない!!』

 

強い眼差しと気迫が込められた声…なぜかわからないけど胸が熱い、それに信じてみたいって気持ちが溢れてくる

 

 

「わかったわよ、あたしはアンタたちを信じる…でも約束しなさい、必ず帰ってきなさい!!」

 

 

「『了解!』」

 

 

力強い声を聞いたあたしはそのまま背を向けると救助した人たちを連れてその場から離れた……しっかりやりなさいよ風龍、雷龍

 

 

―――――――――

――――――――

 

 

「よし、要救助者の避難確認。雷龍、ぶっつけ本番だがいけるか?」

 

 

『ああ、やってやら!』

 

 

「ならいくぞ雷龍」

 

 

『おうよ!』

 

 

「『シンメトリカル・ドッキング!!』」

 

 

無数の竜巻が迫るなか迷わず空へ飛翔する風龍、雷龍の身体からISアーマーがパージされ黒く長い髪が特徴の少年の左に黄色、右に緑のアーマーが左右対称に並びゆっくり近づいてくる

 

 

「『うおおおおお』」

 

 

だが後僅かというところでアーマーから放電現象、あまりの突然のことに風龍、雷龍は余波に巻き込まれながら地面へと落ちた

 

 

「く、やはりシンメトリカル・ドッキングは私たちには無理なのか」

 

 

『く、凍矢と炎竜はシンメトリカル・ドッキングが出来るのに何故俺達はできないんだ!』

 

同じ双子で先に起動したIS氷竜、炎竜。そしてシンメトリカル・ドッキングする事で生まれるG‐IS‐03S《超竜神》。自分たちも同型、装備が違うだけだから出来る筈なのに何故できないとふらふら立ち上がりながら二人は考えたがなにも浮かばない

 

 

「ん?反応!?」

 

その時、ハイパーセンサーがなにか影を捉え風龍は感知した方へ目を向ける

 

 

「な、何故彼女がまだここにいるんだ!?」

 

 

『風龍!アイツの手を見ろ』

 

先程別れた筈の鈴が手に抱えてるのは一人の子供、その背後からは竜巻が迫り徐々に距離を積めていく

 

 

「いけない!雷龍!!」

『わかった!』

 

痛む身体を押しながら再び飛翔する風龍、雷龍…このままだと二人がいる場所へは間に合わない

 

それでもスラスターを全開で向かう二人の脳裏にはある光景が浮かぶ

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

―竜崎教授、あなたにはもう我輩にとっての利用価値はすでにありませ~ん…

ですがチャンスをあげま~しょう…二人があなたの手を五時間つかみ続ければ助けてあげましょう―

 

 

 

―おかあさん!僕と疾風の手を離さないで!!―

 

 

―……凍矢、疾風………あなたたち…―

 

 

崩れ落ちる研究所の床にへばりつき必死に階下にぶら下がる母親の手をつかむ双子…だがゆっくりと手が滑り抜けていく…七歳の双子の力では大人一人を支えきれない

 

 

―凍矢、疾風………あなたたちは…―――――――――――…―

―え?おかあさん?―

 

 

次の瞬間、なにかを呟き二人の手から自分の手を離した彼女。特殊エネルギー工学の権威にして世界十大頭脳の一人《竜崎乙女》は笑みを浮かべながら闇へ吸い込まれるように落ち微かに鈍い音が響き二人の耳に入った

 

―あ、あう……おかあさあああああん!―

 

―――――――――――

――――――――――

 

 

( 「もう、もう目の前で…」)

 

(『…命を手放したりは…』)

 

 

 

呟いた頃、宇宙開発公団にある無人の三段飛行甲板空母内にあるシンパレート値(超AIとIS操縦者の心の同調律をいう)測定システムが起動、モニターに風龍、雷龍のアイコンの横にある数値が80、90、95と上がっていき100%を突破。シンメトリカルドッキング・プログラムが遂に起動する!

 

『「絶対に喪ってたまるかあああああ!」』

 

 

叫んだ次の瞬間、緑と黄色の光が辺りに溢れだした

 

「『シンメトリカル!ドッキングッ!!』」

 

 

急上昇する二人…再び各部アーマーが分離、黄色と緑の左右対称(シンメトリー)なパーツが構成され疾風の身体へ吸い寄せられるようドッキング。右腕にミキサータンク、左腕に電磁架台デンジャンホーが接続、金色の頭部アーマーが装着と同時に胸部装甲《レイドゥーン》が付くと降り立つと大きく叫んだ

 

「『撃ッ龍ゥウ神ッツ!!』」

 

 

そのまま鈴の背後に回り右腕…ミキサータンクを向けると凄まじいまでの超竜巻を発生させ防ぐと同時に相殺し打ち消す

 

「『大丈夫か嬢ちゃん!』」

 

「え、ま、まさか風龍、いや雷龍なの!?」

 

 

うなずくと撃龍神は空へ視線を向け背部ウルテクスラスターに光が点る

 

「『嬢ちゃんはその子を連れて早く避難するんだ!今からド派手な技であのデカ物を跡形もなくぶっ潰す!!』」

 

 

「え?ちょ…ああ~もういっちゃったし…でも」

 

口にでかかった言葉《大丈夫よね》を飲み込む…だってあたしの腕の中にいる子が不安そうな面持ちでみてる

 

「お姉ちゃん、あの人大丈夫かな」

 

「大丈夫よ、アイツを信じなさい……」

 

「うん」

 

 

小さな声でうなずいたのを見ながらあたしは光の点になったアイツを見送ると皆がいる場所へ向かった

……あたしもアンタを信じてるから

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

「『うおおおおお!あれかああ!!』」

 

 

分厚い雲を抜け現れた撃龍神の目にはバイオネットが開発した巨大な十字架を模した気象兵器《テンペスト》、接近するのに気がついたのか無数のミサイルが放たれ迫るのを超圧縮空気弾《フォンダオダン》で撃ち落としかわしきれないのを電磁架台デンジャンホーで防ぐも爆炎に包まれる。が立ち込める煙を突き抜け撃龍神が太陽を背に構える

 

「『気象兵器…俺達の母さんのテラフォーミング技術を応用してるのか、バイオネットめ!………唸れ疾風!轟け雷光!!』」

 

大きく構えた右腕に凄まじいまでの風のエネルギーが渦巻き、右腕電磁架台デンジャンホーに稲妻が迸り極限までに出力が高まる

 

 

「『―双頭龍―シャン・トウ・ロン!!』」

 

 

大きく構えた腕から風と雷のエネルギー…いや風のと雷の龍が現れ再び放たれたミサイルを飲み込み気象兵器の体躯を貫き穿ちながら気象兵器の構成素材を《雷の龍》が電磁エネルギーで物質を脆くし《風の龍》が細かく砕く

 

 

「『うおおおおお!最大出力…………マキシマアアムムッ!トゥロオオオンッ!!』」

 

撃龍神の声に答えるようにGSライドが最大稼働、威力をましたシャントウロン、いやマキシマム・トウロンが縦横無尽に気象兵器表面と内部をバラバラに分解、やがて光に包まれ爆発するも原子レベルまで粉砕された気象兵器は風と共に消え去り同時に竜巻は消え空をおおっていた雲が晴れ暖かな陽光が街へふりそそいだ

 

 

「『………気象兵器の完全破砕完了…』」

 

 

ウルテクスラスターで滞空しながら眼下に広がる崩れたビル郡を見てギリッと拳を握りしめる

 

(…バイオネットが動き出せば、こんなことになるのはわかってた…わかってた筈…日本へ戻らなければ…)

 

ミキサータンクから風をデンジャンホーから電磁エネルギーを放出、水と土砂に熱エネルギーを与え乾かすと風で洗い流すように瓦礫を浮かし撤去していきやがて作業を終えた撃龍神はウルテクスラスターでその場から飛び去っていく

 

 

「アンタ待ちなさい!待ちなさいったら…………いきなり現れていきなり消えるなんて…まるで《廬山の龍神様》じゃない………………」

 

 

呼び止めるも遥か彼方へ去ったアイツを見てるしか出来なかったあたしはこの事を帰還してすぐにヤン司令に報告したんだけど

 

 

「凰鈴音代表候補生、今の件は他言無用で頼む……」

 

って言ったきり黙り混んでしまったヤン司令、それから三日後に《龍咆》の実装と運用試験を終え本隊へ戻ったら一夏が世界ではじめてISを動かした男子になったってニュースになるし…まあ色々あって日本へ戻って一夏と再会してしばらくしてクラス対抗戦の時に現れた変なISと戦ってた一夏とあたしを助けた黒いIS、赤と青のIS…………声がアイツと似ててさらにISも造りも似てた

 

 

「竜崎凍矢の弟、竜崎疾風…竜崎って名前どこかで聞いたような気がするけど…」

 

 

そう口にしたあたしは手摺から離れ自室へ歩き出す…明日聞いてみようと考えながら

 

 

 

閑話 双龍と甲龍

 

 





次回は本編です!

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