IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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―何で俺、空を飛んでるんだ?―


宝石のようにちりばめられたように輝く空、星の瞬きを目にしながら自由に空を舞う……風が気持ちいい

体を軽く捻り急上昇、そして降下しバレルロールしながら厚い雲を突き抜けた俺は遠くから異様な気配を感じる


身体の奥から沸き起こる怒り、悲しみに似た感情で頭が支配されそうになるのを必死に押さえる俺の頭に様々な光景が浮かぶ


紫色の宝石?、白亜の鎧姿の騎士、白く巨大な船、試験管のシリンダーに浮かぶ子供、無機質な建物……なんだよこれ?


頭を軽く押さえながら空を漂うと溢れ出したイメージが浮かばなくなる…それ以上に空にいると心が落ち着く


「……空はいい……」


そう言葉を漏らした俺はそのまま意識を失った





第十三・五話 戦士―キオク―

―J-011、ジュエルジェネレーティング・アーマー出力臨界突破!このままでは押し切られるぞ?―

 

 

『…わかっている!トモロ、あの敵の正体は?』

 

 

―………おそらく各銀河星系に《伝承》としての存在が示唆されている《…》だと断定する―

 

 

冷静で的確な情報…トモロ119の言葉が正しければ私…赤の星【アーク艦隊】所属、認識番号《J-011》が対峙しているのは《……》。《……》は――――――させるためだけに眼下に広がる蒼く輝き数多の《生命》に満ちた星から……をしょうとしている

 

 

その証拠に数ヵ月前、惑星から――――――が――――ている。私は原因調査へ赴くため《シノノセイジュウロウ》にアルマと《あれ》を預け五年かけて修復を終えたアーク級11番艦《Jアーク》で深い海より浮上する

 

 

―ジュエルジェネレーター正常稼働確認。これより大気圏を離脱する―

 

 

 

 

閑話 戦士―ソルダート―

 

やはり空はいい…《赤の星》の技術の粋を集め産み出された対原種用決戦兵器《Jアーク》は瞬く間に大気圏を離脱すると同時に船体が激しく揺れた

 

 

「む!」

 

―J-011、左舷九時方向よりエネルギー反応。ジュエルジェネレーティングアーマー展開!!―

 

「くっ!急速反転、同時に反中間子砲一斉掃射!」

 

 

―敵影確認……攻撃開始!!―

 

 

……戦いはじめてまだ時間も経ってはいないのにか変わらず私の艦…いやメガフュージョンした身体は中破寸前…《Jクォース》も砕け各種武装も半数以上機能停止、ジェネレーティングアーマーも既にない等しかった

 

嘲笑うように立ちはだかる《……》は再び攻撃を仕掛けてくる。装甲が砕けながらも必死に耐えながら考える

 

 

《赤の星の戦士》である私がこの星のために戦う理由を

 

―お父様、いい加減セイジュローを認めてください!!―

 

―義父上!今日こそは勝たせていただきます!!―

 

 

人ですらない《私》を《父》としたう娘がほほを膨らませながら、その娘が見初めた義息子と真剣にて切り結ぶ日々…

 

 

―…………、必ず帰ってこい。私に印可状を与えるのだろう?もし帰ってこないときには妾が地の果てまで追いかけてやるからな―

 

 

Jアーク修復作業に向かう途中に立ち寄った京の都で出会った唐より来た《修羅姫》の顔が浮かぶ度に力がJジュエルから溢れ出してくる

 

 

私は戦士……蒼き空を駆け原種と戦う為の道具

 

 

しかし今は違う

 

 

未来を生き、無限の可能性に満ちた《命》達を守るために戦う

 

 

たとえ…

 

 

『トモロ!Jジュエルジェネレータ、リミッター解除!!』

 

 

―ジ、J?この状態での使用は駆体が持たないぞ!!―

 

 

『構わん!今使わなくしてあいつを……《………主》を止めることはできん!!』

 

 

―了解、ジュエルジェネレータリミッター解除!最出力!!―

 

 

『ぐ、グウウウ………………ジェエィッ!フェエニックスウウウ!!』

 

 

赤い光に包まれ私…いやキングジェイダーは炎とみまごうばかりのエネルギーに包まれ身体が悲鳴をあげるのをこらえ火の鳥と化すと大きく羽ばたく

 

『……………………』

 

 

火の粉を羽のよう舞い散らせ奴へ体当たりする度に身体が軋む…

 

 

―ジュエルジェネレータ出力最大維持!―

 

 

『うおお!!』

 

 

何度も、何度もぶっかり奴はわずかに体勢を崩す…

 

『トモロ!転移座標入力後ESミサイル全弾発射!!』

 

 

―了解、ESミサイル全弾発射!!―

 

 

オーバーロードし自らをJクォースと化した炎鳥《J・フェニックス》から無数のミサイルが発射、しかし巨大な何かの背後へ着弾と共にESウィンドウが開かれキングジェイダー、いやJ・フェニックスは力の限り体当たりをした

 

『うおおおおお!!』

 

 

『??!?』

 

 

背後に開かれたESウィンドウへ吸い込まれるよう姿が消えると共に赤い炎が瞬く間に消え真っ白になり各部装甲が砕け内部機構がむき出しになったキングジェイダーが力なく浮かぶ

『く、うう……もう一歩も動けん』

 

 

やがて地球の重力へ引かれ始め私の身体が赤く燃える…すでに身を守るジェネレーティングアーマーは機能せず、本体が受けたダメージは深刻なものだった

 

 

―J、このままでは燃え尽きるぞ―

 

 

『そのようだな……トモロ、やつが次にこの星へ来るのは何時だ』

 

 

―あく……まで予…想だが1300年…後……―

 

 

『トモロ?どうした!?』

 

―メイ…ンシス…テムに深刻なダ…メージ……確認……修復作…業に12…00年…を要す……る…―

 

突然、身体がフュージョンアウトし弾き出された。内部には亀裂が走り火花が散っているが

 

「トモロ!なぜフュージョンアウトを」

 

 

―……J-011、今ならばお前……だけ…で…も…脱出はか、か、可能…だ―

 

 

「戯けたことを、私はこの艦Jアークとリンクしている…大破すれば私自身も命を失う……」

 

 

―……J-011、リンクは先程切らせて……もら…った…―

 

「な、何!コ、コレは!?」

 

私の身体が赤い光に包まれブリッジが揺らぎ始める…いや空間転移の兆し。止めようと手を伸ばすも身体の自由が効かない

 

―……赤の星、アー……ク艦……隊所属、ソルダート師団……《J-011》。お前は生…きろ……12…0…0……ねん……後……NI…そ、そ、備…え…ろ―

「トモロ!」

 

 

叫んだ瞬間まばゆいばかりの光に包まれ消え去るJ、直後ブリッジが爆発。連鎖反応のようにキングジェイダーの身体が爆発…そのまま海へと落ち水柱がたち沈んでいく

 

―ジュエル…じぇねれた……きの、う、う、う……とう…け…つ………めいんしすてむしゅうふくか、か、か、い、いい……………し…………ま、またアオウ……J………―

 

 

ひび割れ浸水する《トモロルーム》から光が消え深い深い海底へと落ちた

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

「う、ここは……?」

 

 

「気がついたか!妾に心配かけさせおって…どうした?」

 

 

「……だれだ君は……私は……私は………うっ!?」

 

全身を布に巻かれた青年は頭を押さえ苦しみだすのをみて慌てて十二単衣姿の女性が慌て寝かせつける

 

「すまない、君は私のことを知ってるようだが…思い出せないのだ」

 

 

「(本当に妾のことを覚えてないのか……)…お前は…《織斑白夜》だ」

 

 

「織斑白夜……それが私の名前か……感謝する…その…」

 

「……修羅、妾は修羅姫と呼ばれておる……どちらか好きな方で呼ぶといい」

 

 

「修羅、私を助けてくれてありがとう」

 

軽く頭を下げる青年、織斑白夜に慌てる彼女…わざとらしく咳払いしながら食事の用意をするといい部屋を出ると向かったのは別な離れ…簾をあげるとヒビが入り血だらけになった鳥を模した白い甲冑にそっと手を触れる

 

 

「…生きててよかった…本当に…《じぇい》……妾の愛しき良人よ」

 

大粒の涙が白い甲冑へ落ちただ彼女…修羅姫の泣く声が静かに響いた

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

「ん、また《あの夢》か………平安時代に巨大ロボに変形する艦なんてあるわけないよな」

 

 

大きく欠伸しながら立つんだけどなんか身体が痛い…それに

 

 

「何で服破けてるんだ………まあいいか」

 

 

あちらこちらが破けたパジャマ、なんか内側からなにかが出たって感じがする、それ以上に左腕。手の甲が熱い

 

「やけどしたわけじゃな……」

 

「一夏!今日も朝の鍛練を…お、お前なんてかっこしてるんだ!!」

 

 

「え?ほ、箒?」

 

 

「は、破廉恥な!?」

 

 

「うわあああ!?」

 

 

顔を真っ赤にした箒が俺めがけて振り下ろしてくるのを必死にかわしてるうちにさっき見た夢のことは忘れてしまった

 

この日、《織斑一夏》が見た夢が何を意味していたかが判るのはずっとあとのこと

 

白き翼の復活は確実に近づいていた





がんばれ!マドカちゃ~ん!!

その二!!



「くすぐったいよマドカおねぇちゃん!?」


「あ、あんまり動かないでルネ~目に入ったら痛いんだよ」


「でも、くすぐったくて我慢できないよ~」


「ユ~ちゃん、お願いてっだって」


コクリトうなずく湯船からでるユキの手もありシャンプーを終えシャワーヘッドからでるお湯で流していくマドカ

「はい、きれいになったよルネ」


「ありがとうマドカおねぇちゃん」

ニパァっと笑顔を向けられ照れるマドカは二人を抱き抱えるように湯船へ浸かる…


「ねえマドカおねぇちゃん、今日も泊まっていくの」


「うん、今日も泊まっていくよ」


「じゃあ、お風呂からあがったら絵本読んで」


「ルネばかりずるい…マドカおねえさま、ユキにも」


「え、ええ?でも二つは無理だから今日はユ~ちゃんの絵本でいいかな?明日はル~ちゃんのを読んであげるから」


「ええ~」


ぷくぅと頬を膨らませるルネだったものの「明日は必ず読んであげる」と指切りしてようやく納得し風呂から上がった三人はパジャマに着替え布団にはいると一冊の絵本を手にしルネとユキに優しくわかりやすいよう読み上げていく


「昔々、ある街に大きなお屋敷がありました…」


目を輝かせ話を聞く二人が読む絵本のタイトルは《雪と氷の魔術師と石榴石》…243年前にある作家が書いた小説を基に《黄金の鎧をまとった魔術師が人を宝石に変える魔女を退治する》という内容の絵本(シリーズは全部で二冊しかなく出版元は不明だった…もう一冊のタイトルは《雪と氷の魔術師と赤と青の竜》…魔術師とその弟子の旅の物語だが最後のシーンで魔術師が亡くなった弟子を氷の棺に埋葬する内容になく子供たちがいたと言う)


「雪と氷の魔術師は仕掛けをときながら歩みを進めて…」


マドカの優しく暖かな言葉はユキとルネが寝付くまで寝室に響いた



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