IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
風魔小太郎など数々の忍者伝説が色濃く残る箱根山。
……光あるところ闇あり。歴史の影に悪を挫き弱きを助ける正義の《善忍》、悪の限りを尽くし混沌へ導く《悪忍》との壮絶な戦いが現代においてもなお、続くも時と共に忍びが廃れいく中、風魔、服部一族から一目おかれる一族がいた
その名は《犬神一族》。風魔、服部両方の血と流派を受け継ぎ、更に歴代頭領がある異能を有していたからだ
現在、犬神一族は盟約を結んだ日本最大の暗部《更識家》の歴代《楯無》、風魔一族《風魔小次郎》、服部一族《服部半蔵》と共に人知れず人に仇なす《悪》を狩っていた
だが、それは突然の終わりを迎えた…厳重に張り巡らせた結界は破られ、無数に点在していた藁葺き屋根の家屋から火がのぼり、中から火だるまになった住人が苦しみもがきのたうち回る姿を見るのは無数の影…忍者にも似た鋼の身体を持つ集団
『迅雷003、ターゲット、確認できず。障害駆逐率90%…』
『迅雷004、障害の完全排除。引き続き探索開始』
無機質な音声と共に逃げ惑う住人。立ちはだかる一族の手練れたる上忍達を巨大な手裏剣で切り裂き、またはクナイで貫き通し、つかみ上げそのまま首をねじ切る姿は悪魔としか言えない…一方的な蹂躙が繰り返される
『迅雷005、最重要ターゲット《犬神霧也》確認。確保する』
迅雷005の前には忍び装束に身を包んだ犬神霧斗の妻《犬神朔夜》。刃こぼれした小太刀を構える後ろには血まみれになりぐったりとした黒髪に白いマフラーで顔を隠した子供の姿
『犬神霧也を渡して貰おう』
「いやよ!この子は……霧也はアナタ達……トオミネコーポレーションには渡さない!!」
『……抵抗を確認…排除実行す……』
「させるか!犬神流忍術!絶・天狼!!」
朔夜に振り下ろされた巨大な手裏剣が細切れになり、迅雷005の強固な装甲すらも切り刻みガラガラと崩れた先に短く切りそろえた黒髪に白い陣羽織、忍び装束に身を包んだ青年が駆け寄る
「朔夜!霧也!無事か!!」
「私は大丈夫。でも霧也が…みんなは?」
「……全員やられた…まさか結界を破られるとは。風魔小次郎殿と《半蔵学院》にいる霧夜、禀音に式神をとばした…直に助けが」
『来るはず無いよ…お前たちはここで死ぬんだからな。親父の邪魔をするクソ忍びはな!!フレイムアップ!武装合体ファイバード!!』
背後からの声に振り返る。そこには赤と青い装甲を纏った何かが炎を纏う剣を構える姿…底知れない何かを感じ霧也を庇うように立つ霧斗、朔夜
「…アナタ」
「ああ…やるしかない……」
小太刀を片手に構え素早く印を切る二人、だが無情にも赤と青い装甲を纏った何か…ファイバードのフレイムソードが身体を焼きながら切り裂く。おびただしい血飛沫が舞うも二人の瞳から光は消えていない、それどころかがっしりとファイバードの身体に組み付く
『な、何をする貴様等!はなせ!!』
「…離さん。お前のような悪を野放しには出来ん。受けて見ろ…犬神流忍術、秘奥儀を」
「……命を躊躇なく奪うアナタにふさわしい技…私たちの命の炎を限界まで高めた禁じ手…」
二人の身体から黄金の気…いや燐火が溢れ出す。必死にもがくファイバードから少し離れた場所に寝かされていた霧也の瞳がうっすらと開き、痛む身体を起こす
「ち、父上、母様……」
二人の耳に声が届いたのか、霧也へ優しさと愛しさが込められた瞳が向けられる
(ごめんなさい。霧也…)
(……霧也、強く生きろ…お前は私達よりもの強い《読心》を持つ……悪に屈するな…《牙無き人の刃》となれ!!)
「「………犬神流忍術!滅・天燐!!」」
『ひ、ギ、ギャアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー』
凄まじいまでの光と共に二人の身体は爆発、ファイバードもろとも飲み込み、霧也に爆風が襲いかかった。近くの岩にしがみつきやがて収まる。フラフラ立ち上がる霧也の目には大きくうがたれた地面。足に何かがあたる。ボロボロになった小太刀を手にようやく理解した
父と母が死んだ事実を…
「ア、ア、ア………ウワアアアア!父上!母様!嫌だ。嫌…………ガバッ?」
『捕まえたぞ…犬神霧也……コレはクソ忍びに殺されかけた駄賃だ!遠慮なく受け取れ!!』
胸板から出た刃の向こうにはボロボロになったファイバードが息を切らしながら、霧也を貫きそのまま、迅雷が持つ生体ポッドへ乱暴に投げ入れた
数時間後、式神からの連絡を受け駆けつけた風魔小次郎、龍魔、半蔵学院教諭《霧夜》、更識楯無がみたのは死屍累々の阿鼻叫喚の地獄と化した犬神一族の里だった
「り、リっくん……返事をして、お願い!」
「落ちつくんじゃ束君、今はあの空間の解析を優先するんじゃ…凍也くん、炎竜周辺の避難状況は?」
『避難誘導は完了したぜ!』
『それより、あの空間はいったい!獅童博士、たば…アリス博士解析を急いでください』
呆然となりながらインカムで呼びかける束の目に映るのは、空間の捻れを示す値、そして不可思議なドーム状の球体が輝き、少し離れた場所にはディバイディング・ドライバーが深々と地面に突き刺さる映像が映し出されている
様々な角度からデータ計測、表示したモニターを複数展開、解析するレイジと束はある結論にたどり着いた
「……あの球体はおそらく、アレスティングフィールド、レプリケーションフィールドで形成されたディバイディングフィールドに何らかの干渉…例えば超高速で運動する物体が存在したせいで生まれたものじゃ」
「それに、クラインスペースを形成しているから、中からも、外からも干渉できない。メビウスの輪と同じ原理の構造だよ…でもこのままじゃ、このままだと後三十分で…リッ君、ううん大阪の街が消滅しちゃう」
第十五話 風と雷(後編)
遡ること一時間前…
「まどかお姉ちゃ~ん、はやくはやく」
「ま、待ってルネ、ユキ…そんなに走ったら危ないよ」
「へいきへいき!早くしないと道頓堀たこ焼き売り切れちゃうから」
元気いっぱい走る双子の姉妹《大河ルネ》《大河ユキ》を追いかけるのはGGG預かりとなった少女《織斑マドカ》。肩で息をしながらようやく二人に追いつき道頓堀名物たこ焼きを買うべく行列の最後尾に並ぶ
なぜマドカがGGG長官大河幸太郎の娘と大阪にいるのか
『ルネとユキを大阪にですか?』
『ああ、前々からいきたいと言われててね。なかなか約束を守れなくてね。君も気分転換をかねて大阪に遊びにいくのはどうかと思ってね』
『でも私は……』
『たまには年長者の言うことも聞くものだよ。マドカくんには、いつもユキとルネを見てくれて、家事を手伝ってくれているご褒美だ。楽しんでおいで』
などの経緯があり、こうして三人は大阪の珍しい食べ物、通天閣などを巡り歩いていた(むろん、マドカには気づかれないように護衛がついている)
「まどかお姉ちゃん、はい!」
「エ?コレは?」
「いつもわたしたちの事をみてくれてる、まどかお姉ちゃんにプレゼントだよ」
長い行列から解放され、出来立てホヤホヤのかつお節がふんわり、ソースが香るたこ焼きを口にするマドカの目には、少し不格好ながらも一生懸命に作ったと感じるペンダントが映る
「あ、ありがとう…大事にするね……ルネ、ユキ」
少し目を潤ませながら二人にありがとうを言いながら二人に「はい、あ~ん」とたこ焼きを食べさせるマドカ。なぜかはわからないが護衛についていた人物が
(し、信じらんねぇ。あのマドカがあんなに穏やかな顔になんのはじめてみた……スコール、あたし等のやった事は間違いじゃなかった。お前にも見せてやりたいよ)
いまだに消息が掴めないスコールを想いながら、三人を見守るスーツ姿の女性…数日前にイゾルデに現れた大蜘蛛ゾンダーの素体になっていたオータム。GGGに保護され目覚めた彼女は真っ先にMことマドカの安否を聞いてきた、長官であり身元引受人である大河から今に至るまでの経緯を聞きほっとしていた
だがバイオネットの幹部、それらを統べる盟主に関しての記憶はオータムの中から人為的に消されていた。亡国機業のエージェントとして活動していた経歴から、一時は拘束、収容所へ送るべきと声が上げられていたが
『彼女…オータム嬢ちゃんはバイオネットの手口を知り尽くしている。その経験を生かして対バイオネットのエージェントへ起用したらどうかい?』
国連事務総長にしてGGGの立役者、地球防衛会議《ロゼ・アプロヴァール》議長の一声でGGG日本本部直属《チーム・ハウンド(猟犬)》の一員へとなった
当然、バイオネットに狙われる可能性があるマドカの護衛も自らの意志で買って出ていた
(スコール、今どこいんだよ…)
小さく呟き、移動し始めた三人と距離を開けながら歩き出した頃
「もうやってらんないわよ!」
声を荒げながらベンチに座りたこ焼き、大阪風お好み焼き、串カツ、etc.etc.が入った袋を開きやけ食いする女性の姿…服装から見て空軍の軍服。襟元にはIS部隊の徽章が見える
「たかだか、三キロ太っただけでダイエットしろ、減量しろだの、あたしは食べ盛りなんだから別にいいじゃない」
あっという間に、特大お好み焼き《ナイアガラの滝》スペシャルを平らげ、プリぷりのタコたっぷりの特製タコ焼きをかき込むように食べる姿に彼女の近くを通る人たちは若干引いている
「……I-SWAT辞めようかな…空を飛ぶのは好きだけどデートの時間もとれないしダーリンとラブラブ出来ないし………ああ~考えたらお腹空いた!好きなように食べて食べまくってやる!」
「オヤオヤ、いけませんねぇ~」
「だ、誰よ、あんた!?」
「そんなに食べたいですか?ならもう少し食べ応えのあるモノをあげましょう」
女性の座るベンチの周りをくるくる回り、奇抜なピエロのような衣装の下から紫色に輝く結晶…ゾンダーメタルを取り出しゆっくりと近づけていく
「……食べて食べて大きく育ちなさい~この街にあるモノ全てが貴女のためのご馳走ですよお~」
ヒタリと額に当てられたら女性と瞬く間に融合、手元にあった食べ物を瞬く間に平らげ、ベンチに手をかけ貪るように口にしバリバリ食べ始める
「ご馳走、食べた……食べたい……ゾ、ゾゾ…ゾンダアアアアアアアアアアア!!」
「いいですよお~さあたくさん食べなさい。フヒヒヒハハハハハ!!」
★★★★★★
「うわあ~すごくきれいだよ。マドカお姉ちゃん」
「ル、ルネ、そんなにはしゃいだらダメだよ…」
「マドカお姉ちゃん。ビリケン様と写真撮ろうよ」
「はいはい、じゃあ並んで……どうしたの?」
「アレって何かな?」
通天閣名物のビリ○ン様の写真を撮ろうとした二人の指差す方には夕日に染まった大阪の街。しかし何かが動く…目を凝らしみると十五メートル前後のピンクの丸い何かが転がり、そのまま通天閣へぶつかり大きく揺れ、マドカはとっさにルネとユキを抱きしめ庇うように手すりに捕まり必死に耐える
「…大丈夫。ルネ、ユキ」
声をかけるも返ってこない。代わりに震えが伝わる…マドカはある言葉を思い出し耳元で囁いた
「怖くない、怖くない……ルネ、ユキ、大丈夫。私がいるから怖くないよ」
優しく耳元で話しかけながら、外を見るマドカの目には《雪だるま》みたいな何かがゆっくりと迫る姿…展望台のいた人たちも諦めの色がみえる
そうしている内に、ゆっくりと歩み寄り通天閣に掴みかかると大きな口を空け食べようとしたときだった
『ハアアアアア!!』
ネービーブルーを基調としたIS《ガオファー》がミラーコーティングが剥がれ落ちながら量子変換したドリルガオーで顔面を殴りつけ、たまらずゾンダーISが地面へと跳ねるように倒れ、遅れてIS氷竜…凍也が火災を起こす街に着地、同時にフリージングライフル、フリージングガンで消火していく、炎竜は何時ものように着地に失敗しかし立て直すと、通天閣から逃げ遅れた人達の救援作業を開始する
『燐!要求助者は俺たちに任せろ!』
「街の火災鎮火は任せてください。ゾンダーISをお願いします!!」
「わかった!いくぞゾンダーIS!!」
むくりと立ち上がるモフモフとしたクマをモチーフにしたゾンダーISと対峙するガオファー…最初に仕掛けたのは燐、素早くイグニッションブースト、いやリボルバーイグニッションブーストで翻弄、懐へ潜り込みそのまま身体を捻り蹴りを叩き込む…がその柔らかな体へ沈むようにめり込んでいく
『ナニ!ぐあああ!?』
動きを封じられ、そのまま殴り飛ばされるも背後に通天閣があることに気づき踏みとどまる
『こいつ、身体が柔らかすぎてダメージが通らない…ならばドリルガオー!ハアアアアア!!』
ドリルガオー装着モードへ変わり殴りかかる…がズブズブとめり込み、動きを封じられる…ドリルガオー分離と同時にそれを足場代わりに駆け上がり顔面へ空中回し蹴りを決め、たまらず地面へ倒れた
『いまだ!ガオーマシン!!』
歩道橋の下から黒いステルス戦闘機…ステルスガオーⅢ、車両整備庫からH2AロケットをモチーフにしたライナーガオーⅡ、クマゾンダーISからドリルガオーⅡが離れ再ドッキング。ガオファーの周囲を旋回する
上空に待機していた三段飛行甲板空母、オペレータールームで戦況を見守る火麻参謀、専属オペレーター束のモニターパネルが赤く明滅する
「長官、リッ君からファイナル・フュージョン要請シグナル来たよ!」
『うむ、ファイナル・フュージョン承認!!』
「はい!いくよリッ君!ファイナル・フュージョン!プログラムウウウ~ドラアアアイブッ!!」
大きく振り上げた拳が、ガシャンと透明なパネルを叩き割り、正面モニターにファイナルフュージョンプログラムが走り文字が赤く明滅した
ーGAOFIGHGARー
『ファイナル!フュゥウウジョオオオン!!』
叫ぶと同時にリングジェネレータからプログラムリングが展開、その上を各ガオーマシンが滑るように飛翔。まずはドリルガオーⅡの上部部分がスライドそのままガオファーの足へ接続、続けてライナーガオーⅡが後部サブロケットをパージ上下に展開し跳ね上がった肩アーマー部分へ侵入と同時に量子化装着、ステルスガオーⅢが背部へ逆噴をかけ静止と共にロッキングしインテークが競り上がり胴体へエンジンユニットが火花と共に腕部強化フレームへ接続と同時に拳が勢いよく回転しながら飛び出しガッガッと止まり最後にヘッドギアが装着されマスクが付きGストーンが競りだし《GGG》のマークが光輝く
「ガァオッ!ファアイッ!ガアアアッ!!」
緑色のエネルギーを両拳から溢れ出させ大きく交差し拳にGの刻印を光らせEMTが弾け飛び、黒いIS《勇者王ガオファイガー》が左右のウルテクエンジンを展開し緑色の光を輝かせ飛翔する
「ディバイディングドライバー射出!」
「はいは~い!ディバイディングドライバー、キットナンバー02………イミッション!!」
素早くコンソールを操作、束の背後に現れたパネル、左側に配備されたパッドを力いっぱい叩く。《1》と大きくかかれたシャッターが開きミラーカタパルトから分離したディバイディングドライバーが射出、同時に合体。平行して飛翔するガオファイガーの左腕に接続、先端部が光り輝く
『オオオオ!ディバイディングッ!ドライバアアアアアアアッ!!』
地面へ突き刺したディバイディングドライバーの先端から光が走り、アレスティングフィールドとレプリケーションフィールドの次元反発作用により、直径五キロの特殊戦闘フィールドが広がり、クマゾンダーISはそのまま中へ落ちていく。ガオファイガーはディバイディングドライバーをフィールド外に投げ地面へ突き刺さるとウルテクエンジンで逆噴をかけ降り立ち構えた
『いくぞ!ゾンダーIS!!』
『ゾンダアアアアアアアアアアア!!』
「アッハハハハハ~いけませんねぇガオファイガー、いや燐……わざわざ大きな墓穴を作るなんて……貴方への素敵な誕生日プレゼントも用意したと言うのに。コレでおさらばですね…アヒャハハハハハ~」
大阪城の天守からみる濃紺のマントにも似た奇抜な衣装、ピエロみたいな仮面に尖り帽子姿のバイオネット最高幹部の一人《ギムレット》が高らかに笑う後ろに、ずんぐりとした白と黒のカラーリングが目立つISサイズより大きめな機体…数ヶ月前に次世代環境機関NEOから盗み出されたGNR-01《ガイゴー》。
『……ガ…オファ…イガー……G…スト……ン…………………リ……ン…。リ……………』
微かに声を漏らすも風に流され、やがて二つの影は闇夜に溶けるように消え去った
『ゾンダアアアアアアアッ!!』
『プロテクトッ!ウォォオオオオル!!』
クマゾンダーISの腹部が開きタコ焼き鉄板。いや巨大化したタコ焼きがミサイルのように襲いかかる。プロテクトウォールで防御、ウルテクエンジン全開で加速と同時にファントムリングを形成、ゼロ距離で胴体に構えた
『ファントムリング!ブロオオクウウン!ファアアアアアントオオム!!』
戦況を見守る誰もが、クマゾンダーISのボディを貫き砕く。そう思った…だがゾンダーバリアと絶対防御、厚い毛皮にも似た装甲に阻まれ勢いよく弾かれル
『クッ!コレもダメか………ブロウクンファントムも効かない………なら!ヘル・アンド・ヘブン!!』
腕を戻すと同時に身体を沈め足を払う。勢いよく転ぶクマゾンダーISから距離を取り、大きく両腕を交差し左右に広げた腕、その拳に破とと防御のエネルギー光が溢れだした
『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフオ…ムン!』
呪文を唱えながら攻撃のGエネルギー、防御のGエネルギー溢れさせる右手と左手を徐々に近づけ胸の前で突きだした形で組んだ瞬間、緑色の竜巻《EMT》が発生。拘束されたクマゾンダーISにウルテクエンジン全開で加速する…だが
『ぐ、ぐううおおおおおおお!!』
ウルテクエンジンを展開し四基のGSライド最大出力で地を抉りながら突進するガオファイガー…いや燐の身体が凄まじいエネルギーの奔流に悲鳴をあげる
(グアッ!)
…GSジェネレータ、絶対防御をも超え襲いかかる激しい痛み、熱さに耐え抜き、そのまま両拳をクマゾンダーISの絶対防御、ゾンダーバリアごと胴を貫く、上半身がまるで風船みたいに弾け周囲に金属片とオイル、丸いナニを勢いよく撒き散らしながらメキメキとコアを抉り抜く
『…ムウウン、セヤアアアア!!』
抜き取った瞬間、ゾンダーISが爆発、凄まじいまでの爆風に巻き込まれ、ガオファイガーの手に握られたゾンダーISコアがフィールド外へと投げ出される
「いかん!ゾンダーISコアが!?」
『パワークレーン!』
「パワーラダー!!」
「『ゾンダーISコア、確保完了!!』」
青と赤のクレーンとラダーがコアをキャッチする姿、それをみてほっと胸をなで下ろし深々とシートに座るレイジ…
『よし、作戦完了だ。燐そろそろディバイディングフィールドから出ろ』
『はあ、はあ…り、了か…な、なんだこれは!!』
驚く燐…ガオファイガーの目に映るのは高速で動くナニカ…よく見ると撃破したゾンダーISの身体から飛び出したタコ焼きミサイル。それらがさらに加速し空間に変化が起こりやがてドーム状に展開。燐とガオファイガーを飲み込んだ
『り、燐…く、いくぞ凍也』
「待て!うかつに飛び込んだら…」
凍也の制止を聞かずに飛び込む炎竜、だが次の瞬間弾かれたように空間から飛び出したアスファルトを削りながらようやく止まり。頭を抑えながら立ち上がる
「せ、せんせい。あの空間は…リッ君と通信が」
そして、通信が途切れてから十五分、IS学園からシャルルが到着しゾンダーISコアを浄解し今に至るのだが状況は変わらない。それどころか更に最悪な事態に発展していた
「大阪が消滅?」
「うむ、シャルル君はディバイディングフィールドは何か知っとるのかの?」
「ディバイディングフィールドはレプリケーションフィールドとアレスティングフィールドの相互次元反発作用を利用し形成されてて、いってみたらブラックホールにも似た性質を持っているんですよね?」
「そうじゃ。ワシらは《ある世界》の友人T、そしてM君の協力で生み出す事に成功した。じゃがソレでも不安定な空間に変わらん。燐との通信がとぎれる前に辛うじて拾えた映像にヒントがある」
モニターに映されたのは、高速でディバイディングフィールド内を疾走する丸い球体…タコ焼きミサイルの解析データを出力する
「あの球体、タコ焼きがアレスティングフィールドとレプリケーションフィールドのバランスをかき乱すほどの運動エネルギーで動いた結果、超空間次元ポッドができたんだ………中はもちろん、外からも通信が…通信が…そしてフィールドの復元が開始して完全に閉じたらリッ君が…大阪の街ごと」
ーウワアアアアア!!ー
手で顔を覆うシャルルと顔を俯かせる束の脳裏には閉じた空間で圧縮、粉々に砕けるガオファイガーと消滅する大阪の街…その手に大粒の涙が落ち白い手袋を濡らしていく…レイジは胸が痛くなりながらシャルルに訪ねた
「シャルル君、君の力で燐と連絡がとれんかの?」
「は、はい…………ごめんなさい。ボクの力じゃ届かないです」
少し目を閉じ呼びかけるも届かない事を伝えるシャルルの言葉に少し目を伏せた時、アラートが三式空中研究所に響き渡り、すぐさまモニターを目にする二人の表情は凍りついた
「…いかん!フィールドの復元が始まってしもうた!」
「復元まであと十分………もうダメなの……いや…リッ君…リッ君!!」
「燐!」
徐々に縮み始めるディバイディングフィールドに二人の声が響く、内部にいるガオファイガーは脱出の方法を探し、無駄と解りながらもブロウクンファントムを繰り出す。しかし別方向から転移したブロウクンファントムを受け膝をつく
『はあ、はあ………このままだと……いや、まだ諦めててたまるかああああ!!』
再びブロウクンファントムを撃ち放ち、何度も倒れながら脱出を試みる…だがすでに限界が近づいていた
「もう、もう打つ手は無いのか…」
だんっとコンソールを叩き空を仰ぎ見た時、再びアラートがなる…大気圏上層部から自由落下する隕石。いや金属反応、新手のゾンダーかと手に汗が滲ませる火麻、レイジ、束…三式空中研究所の正面モニターに映されたの救急車にも似た何か。突然通信が入る
ーコチラ、GGGロシア所属《G-IS-07アリエス》…獅童レイジ博士。獅童オウマ教授から手渡された空間修復ツールを創世、譲渡します!!ー
「に、兄ちゃんから?アレが完成したのか…束君、燐は助かるぞい!バックアップを頼む!!」
「は、はい!超空間次元ポッドの次元収束ポイント検出…できたよ先生!」
涙を拭き、素早く超空間次元ポッドの次元収束ポイントを検索。すぐさまソレを降下中のアリエスへと転送、同時にアリエスに変化が起きた
「いくよ…アリエス。創世コンテナ展開!」
瞬く間に人型に変わると量子変換した背部に配置した長方形のコンテナを展開。中央が開き三基のGSライドを中心にツールが制作、最後にオレンジ色の装甲が着くとセンサーに光が輝く
「ぶっつけ本番で悪いんだけどいってくれるかな?」
「「「ピピピパヘピハピバ!」」」
元気よく頷き簡易カタパルトから勢いよく飛び出す彼ら…やがて超空間次元ポッド上層に到達、ぶつかりながら三基連結すると高速回転、束が見つけ算出した空間次元収束ポイントへ突入、何度目かになるブロウクンファントムを放ち満身創痍になりひざを突く燐、ガオファイガーの前に突き刺さると分離、まるで自己紹介をするように手振り身振りで伝える姿を見て立ち上がる
『ま、まさかオウマさん達が設計していたプライヤーズ!お前たちの力を貸してくれるか!』
三体同時に頷くと燐は立ち上がり両腕を前へと突き出し構え叫んだ
『いくぞプライヤーズ!ディメンジョンッ!プライヤアアアアア!!』
三体が合体、巨大なぺンチへ変わると両腕へドッキング。プロテクトエネルギー、ブロウクンエネルギーを中央ユニットへ充填、力強く開くと空間が大きくねじれ始める
ディメンジョンプライヤー…GGGロシアが日本本部獅童レイジ博士の兄獅童オウマ教授、別世界の特別協力者《ミツキ・サエグサ》《タバネ・シノノノ》との共同製作したツールシステム…
ディバイディングドライバーが生み出した歪曲フィールド内で想定外の空間異常を起こした部分をねじ切り、修復する空間修復ツールでありパーツ状態で移送中に起きた空間異常に対し、最新G-ISシリーズ《アリエス》の単一仕様《無限創世》で完成したハイパーツールである!
『ウオオオ!』
ディバイディングフィールドの復元があとわずかと迫った時、光の柱が立ち上がり、ねじ切りつかんだ次元空間ポッドごと飛翔するガオファイガー。大きく振り上げそのまま空へと投げ捨てる…数秒後、大気圏上層部で爆発、やがて光が収まりディバイディングフィールドが復元完了した場所に降り立つ
『はあ、はあ……ガオファイガー帰投します』
「よっしゃあああああ!!大成功じゃあああ」
大喜びするレイジ、その隣に座る束と近くに立つシャルルの姿を見る…
「良かった。リッ君………本当に良かった」
「………火麻参謀。ボク、燐の所に行って良いですか?」
「ああ、いってき…「ダメだよ」」
火麻の声を遮った束、ゆっくりとシャルルに目を向け口を開いた
「リッ君はコレからワ・タ・シが優しくファイナルフュージョンアウトして、たくさん具合を見なきゃいけないから、先にIS学園に帰ったら?ち~ちゃんに怒られるよ…シャルル君?」
「そう。でもボ・ク・も燐の身体の事はよくわかるから…ガオーマシンの整備が忙しいなら、なおさらボクに任せてもらえるかな?アジャスタができるからね」
「「ふふふふふふふふふふふふ」」
ゴゴゴゴゴッ!と二人の背後に女神アテナ?黄金のライオン?のオーラをみたレイジ、火麻参謀が冷や汗をだらだら流していた…水陸両用IS整備装甲車に帰投した燐が二人から何をされたかは知るものは誰もいない
「………なんか、とんでもない修羅場って感じだね…ありがとうプライヤーズ」
とつぶやくG-IS-07アリエス、その操縦者ユーノ・スクライア。そのとなりでボケと突っ込みを繰り返す空間修復ツール《プライヤーズ》、ディメンジョンプライヤーはバイオネットとの戦いに勝利の鍵をもたらす事は間違いない
なお、クマゾンダーIS化したI-SWAT隊員《三村カナ》少尉は軍を退役、長年交際していたダーリンとお好み焼き屋を開き、まさかの人気店となり二人で切り盛りし幸せな結婚生活を送り、近々二号店を関東へ出すことが決まったそうだ
第十五話 風と雷(後編) 了
君たちに最新情報を公開しよう
IS学園、大阪に現れたゾンダーISの脅威が消え、疲れた身体を癒すため、男子の使用許可が降りた大浴場で一夏とは時間をずらし入浴する燐の背後に迫る陰は?
ゾンダーIS化したラウラの前にある人物が訪れる、朝から姿を見せないシャルルを心配する燐をよそに新たな転校生が燐と一夏のクラスへ編入してきた
ISーインフィニットストラトスー 白き翼と勇気ある者
第十六話 転校生、その名は……
次回の更新にファイナルフュージョン承認!
ー大浴場?ー
コレが勝利の鍵だ!