IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

41 / 48
あの日の事はいまでも夢にみる

ー絶対にお父さんから手を離すんじゃないよ燐。マヤ、他のみんなは!!ー


ー脱出シャトルには乗っているはず。先の未来にあの子達の知識と経験は必要だからー


ーそうだね……束ちゃんの作ったISコアは?ー


ーごめんなさい、全部奪われたみたい……束ちゃんの夢が遠のいていくわー

警報がなる中、お父さんとお母さんは僕の手を握りしめ走っている。行き先は第二ターミナルにある避難用シャトルが係留してある場所…変な臭いがする中を抜けようとした時、お父さんが止まった


ーマヤ、燐を連れて先にターミナルに向かうんだ…ー

ーえ、アナタもー

ーそうはいかなくなったんだ……燐、お母さんを頼んだよ。なに、子供を持つお父さんは世界で一番強いんだから…ー

いつもより強く撫でてお父さんはかけだしていった…お母さんをみると涙を流していた、何で泣いてるのって聞いても答えてくれなかった、その代わり強く抱きしめてくれた

ーごめんね、ごめんなさい燐………あなたにつらい……本当にー


それからターミナルに再び歩き出したお母さんと手を強く握りながら向かうと、一隻だけ避難用シャトルがあった。お母さんはシャトルの発進準備をしていた時、足音がして振り返ったらお父さんが真っ赤な服を着て歩いてきた

ーお父さん!ー

僕が駆け寄ろうとした時、ぐらりと倒れたお父さんをささえた。鼻に鉄にも似た匂いと、塗れた感じがして手をみると真っ赤な、真っ赤な血が付いてる

僕の服も血で赤くなっていく……お父さんの着ている真っ赤な服は血で染まった白衣だった


ーり、燐…………早くマヤを…お母さんを連れて…危ない!!ー

いきなり身体が浮く、お父さんに突き飛ばされたと感じ目を向けると、真っ直ぐな目で笑いながらお父さんが、お父さんが……

ー燐!見たらだめ!!ー

目隠しされたけど、遅かった……お父さんが、輪切りにされた…お父さん…嘘だよね……お父さん!!

ー獅童マヤミイイッケタ!!さあ、我らバイオネットヘ来るのです、そうすれば子供の命は助けましょう?ー

ーイヤよ、あなた達バイオネットは世界に不幸ばかりを撒き散らす災厄…その口車に乗せられて運命を狂わせた人がたくさん居ることを知ってるわー


ー……なら交渉は決裂です……獅童マヤ、死になさああああああい!?煙幕か?こしゃくなあああ!!ー

真っ白な煙が辺りいっぱいに広がる。お父さんの姿が見えない。お母さんが僕を抱きながら三人分の席にしかないシャトルのシートに座らせた


ー燐、よく聞いて……あなたはどんな事があっても生きるの、生きることを諦めないで、先が見えなくて絶望しかない未来だとしてもアナタが生きて未来を切り開くの……何事に対しても絶対に諦めちゃだめ………お母さんと約束してー


ーう、うん……お母さんー

ー見つけたぞ獅童マヤああ!!ー

ー危ない!ー

空気が抜ける音と一緒にハッチが閉まる、でもお母さんが光に包まれた。辺りが熱くなり燃えだして肌が焼ける…意識が朦朧としながら最後に眼にしたのは光に包まれるお母さん…お母さんが……消えていく

熱い……熱いよ……お母さん……お父さん………熱い
…アツいよ……アツい




ーち、少しやりすぎた…まあ楽に死なせてやったからいいか…ガキの方は、まだ生きてんな……ミッションコンプリート!なんちゃってな♪ー

冷めた声を聞きながら僕は意識を手放した、次に目を覚ました時から《地獄》が始まった……でも僕はお母さんとの約束を守り生きた、同じ歳の子達が死んだ眼をしていた……だから、僕は…


ー諦めたらダメだ、必ずID5のみんなが助けに来てくれる…生きることを絶対に諦めちゃダメだー

母さんの言葉を、生きることを諦めたらだめだって、凍也、トウヤ、疾風、ハヤテ、弾、霧也にずっと言い続けた




第十九話 黒い鋼の悪魔

バイオネットによるガオーマシン強奪、姿を見せた総帥《沙華堂牙藍》の手で燐が瀕死の重傷を負いファイバードへの撃墜もしくは確保がGGGで決定した直後、異世界から来訪した《不動統夜》少年。ISファイバードを身に纏っていた為にバイオネットと誤解したGGG機動IS部隊により攻撃を受け《諜報部主任》犬神霧也に気を失わされ本部へ、事情を聞いた大河、メインオーダルームスタッフ承認のもと帰る方法が見つかるまで保護されることとなった

 

バイオネットの成り立ちと歴史を閲覧する統夜に一族を滅ぼした本人と勘違いした霧也に魂ごと冥界へ、そこで統夜が犯した罪を変わりに受ける母の姿に驚愕。乙女座バルゴの奥義《天舞宝輪》により危機に陥るも四年後の未来から女神アテナ降臨により窮地を脱する。しかし霧也の行為により《この世界で未来に起こりうる事象》を教えないと大河をはじめとしたメインオーダールームスタッフの前で発言直後、GGG中国にゾンダー出現。現地に向かった疾風、凍也、ラウラは鈴と合流。

 

しかしゾンダーISの石化能力に苦戦しながら自らを守るために楯となった二人を見て、この先にあるラウラ、鈴、背後の街にすむ人々の《未来》を守るために自らの目を潰した疾風、苦戦を強いる撃龍神の前に《黄金の杖を持つ美しい女性》の不思議な光により、敵の姿をとらえ《未来を守る》強い意志を込められた双頭龍がコアをえぐり抜き勝利を得たのだった

 

第十九話 黒い鋼の悪魔

 

 

ーガオーマシン強奪から三日目ー

 

 

GGG中国がおかれているここ、科学院航空星際所内にある総合医療施設《龍》。ドイツ連邦が誇る医療技術、中国の古来から誇る鍼灸薬学を融合を目的として設立されている

 

ゾンダーISとの戦闘で自ら目を貫き勝利を得た疾風が運び込まれ二日目、医局長室ではヤン司令、ヘルガ博士がカルテと治療経過を日本にいる大河とのリアルタイム通信で伝えていた

 

『…では疾風君は二度と光が戻らないと』

 

 

「そうだ、治療と同時平行で診察したが彼の視神経は深く傷ついている。視神経修復は我がドイツ連邦医療技術、ボーデヴィッヒ少佐に使われたオーダン・ルージュ用のナノマシンですらも修復は不可能だ」

 

 

「ヘルガ博士、神経修復技術に関してはドイツ連邦医療技術が最先端を走り不可能はないと聞いたが」

 

 

「……ヤン司令、大河長官、まずはコレを見てもらいたい」

 

 

軽快にキーを押すヘルガ博士の前には視神経を模したモデルが投影、ある箇所をズームする…

 

「彼の視神経、いや全神経はバイオネットの手によるナノレベル、遺伝子レベルでの改造がされ我々の知る神経組織とは根本的概念から違う………うかつに治療を施せば視力回復どころか命に関わ…」

 

 

『…命と引き替えになど私は承認できん!』

 

大河の力強い言葉に無言で頷くヘルガ博士、しかしヤン司令だけは静かに席をたち部屋を出る…向かうのは疾風が眠る病室。しかし途中で人影が目に入る

 

 

「ぐ……は、はあ……」

 

病院着に身を包んだ疾風…這い蹲りながら手を伸ばし向かうのは施設の出口。おぼつかない足取りで歩く…が足がもつれ倒れそうになる寸前で誰かに抱きかかえれた

 

 

「無茶をするな…君は病人なのだぞ」

 

「誰かわかりませんが、ありがとうございます…ですが私の力を必要とする仲間が…」

 

 

「体調が万全でない状態で行ってどうする…たとえ合流したとしても迷惑をかけるのが目に見える。今は休み身体を治すこと、それが今の君がやるべき事だ」

 

 

ヤン司令の正論に何も言えず黙り込む疾風…彼の言葉から不思議な懐かしさを感じてながら意識は途絶えぐったりとするのを見て安堵する

 

「…いつまで見てる気だヘルガ」

 

「気づいていたか…やはり彼は竜崎女史とよく似ている…誰かの為に己の身を犠牲にする姿も含めて」

 

「…」

 

「……名乗ってやらないのか?ヤン、君が…」

 

 

「止めろ。乙女を見殺しにした私がいまさら《父》と名乗る資格などない………失礼するヘルガ」

 

 

「……我がドイツの最大の恩人…《竜崎乙女》女史が惚れるわけだ…不器用なまでにまっすぐなお前に…」

 

 

ーあの人、軍人だけどスッゴく不器用でまっすぐで…この子達の名前を考えててエネルギー制御式を何回も間違えて…《廬山の龍神》様に名前をわざわざ伺いをたてにいったの。山登りが苦手なのに…双子なんだけどどっちかわからないのに男の子の名前をー

 

 

膨らんだお腹を愛おしく撫で惚れ気全開で話すテラフォーミングテクノロニクス権威にしてヤン司令の妻《竜崎乙女》の言葉…

 

本来なら産まれた子供たちと普通の穏やかな日々をおくりネクストフロンティアへの第一歩《惑星開発用IS》を発表するはずだった。しかしバイオネットの歪んだ悪意が全てを壊した…夫の立場と未来を守るため、生まれたばかりの二人を連れ姿を消した乙女は八年後に逃亡先のイギリスでドクター・ウェストの卑劣な手にかかり命を落とした

 

 

バイオネットの危険性、対策を政府高官に進言していたヤンの耳に入り深く後悔した。息子たちは生きていると信じ必死に努力を重ね軍内部での発言権を得て疾風達が捕らわれているバイオネット研究所への突入策を提言、しかし却下されヤンはID5へ国家への背進と取れる情報流出をきめ一年後、ようやく救出された事に喜んだ。だが乙女を見殺し、二人に地獄を味あわせてしまったケジメとして《父親》と名乗るのを止めた………気絶した疾風を背負い歩くヤンの姿は紛れもなく息子を思う一人の父親の背中をヘルガはみた

 

それから三日後の朝、回診に来たヘルガ、ヤンがみたのはもぬけの空となったベッド…枕元にはドイツ語と中国語でそれぞれ書かれた封筒が添えられていた、封を破り見た内容

 

ーGGG機動IS部隊所属、竜崎疾風の療養の為《五老峰》へ連れて行きます…勝手な判断をお許しくださいー

 

GGG中国、科学院航空星際所所属《凰鈴音》

 

GGGドイツ、シュヴァルッエア・ハーゼ隊所属

 

《ラウラ・ボーデヴィッヒ》特務少佐

 

すぐさま連れ戻そうとするヘルガを静かに手で制したヤン

 

「なぜ止めるヤン。彼はまだ完治しては」

 

「これでいい。三人が向かった五老峰には《あの方が》いる……ヘルガも名前を聞いたことはあるはず」

 

「…まさか老師《童虎》がおられるのか!」

 

「老師ならば、現代医学をも超えた治療法をご存じのはず。ラウラ特務少佐、凰鈴音少尉。彼をまかせたぞ」

 

 

五老峰へ向かっている二人に息子《竜崎疾風》を託す敬礼するヤン、ヘルガも同じ気持ちで静かに敬礼した

 

「疾風、そろそろ五老峰につく…だが老師とはどんな方だ?」

 

 

「…老師は私に人としての生き方とはなにか、そして成すべき事。人として大事な事を教えていただき鍛えていただいた私の師です」

 

 

「老師って…廬山の龍神様よね…その人なら目を治す方法を知ってるの?」

 

 

「…はい、以前に話で聴いたことがあるのです。自らの光を閉ざし仲間たちを救い、様々な戦いを経て遂には光を取り戻した聖闘士…私の兄弟子《紫龍》兄者の話を」

 

 聖闘士(セイント)。聞き慣れない言葉に疑問をもちつラウラに抱き抱えられながらわかりやすく話す疾風。やがて二人は五老峰の入り口へと降り立つ。二人に支えられながら険しい道のりを歩き出し始めた

 

 

そこで二人は知ることになる…疾風…竜崎兄弟の呪われた過去、残酷な運命を……

 

 

「…よっと、久しぶりだな五老峰にくんのは……元気にしてっかな老師、それに疾風《親友》」

 

疾風達とは別方向から切り立った岩肌を蹴りながら移動しつぶやく少年。その背中にはボロボロの布に巻かれた何かから《黄金》の光が漏れたことに気づかずやがて姿は見えなくなった

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

(ガオーマシン強奪から10日目)

 

GGG日本本部では疾風の戦線離脱により生じた戦力不足が深刻化していた。機動IS部隊で残るのは疾風の兄《竜崎凍也》そして超竜神、研究開発部門副主任ユーノ・スクライアのアリエス、そして諜報部主任《犬神霧也》のボルフォッグ…しかしアリエス、正確には《創生》システムのバージョンアップを含めたフルメンテナンス。犬神霧也は先の件での行動により懲罰を含めガオーマシン捜索任務から外され、現在は更識家令嬢護衛とは《別任務》を言い渡されてい実質、機動IS部隊には凍也と炎竜しかいない。事態を重くみた地球防衛会議、同議長ロゼは新たな支援部隊設立に向けての会議を開き、それに大河も出席し二、三日GGG日本本部を離れていた

 

「……………」

 

 

本部上層にある宇宙開発公団、その臨海部にある砂浜で一人物思いにふけるのは、異世界から来た少年《不動統夜》…潮風と海鳥の泣く声が響く中、脳裏に浮かぶのは霧也の手で《あの世》。正確には《冥界》に魂を跳ばされ見た光景

 

地獄の業火に身を焼かれ苦しむ母親の姿…彼自身が持つ《堕淫の書》を使い続け犯してきた罪すべてを受け無限地獄の中で最も罪の重い《煉獄》に落とされていた

 

統夜の知る知己、亀山一夏の養父《亀山玄武》の知り合いである幻想郷で地獄を管轄《四季映姫》は名前は知るのみの存在であり《大神ゼウス》に並ぶ神《冥王ハーデス》の力、高位神格の相手では助け出すことも不可能

 

それ以上に自らの犯してきた罪を霧也に見せられ迷い、苦しんでいた…こんな自分がファイバードを纏っていいのか?罪を犯し結果、母を地獄で苦しませるような自分に…考えれば考えるほど答えは出ず。さらに深まっていきループする

 

 

「どうすれば…どうしたらよかったんだ………」

 

あの時、先に起こるであろう未来の出来事を言えば…竜崎兄弟の弟《疾風》は失明せずに済んだかも知れない。3日前にメインオーダールームで中国からのリアルタイム通信で大河と会話していた疾風が統夜がいることに気づき話をしたいと言ってきた

 

…緊張しながらも恨み言をいわれるのかと思っていたが意外な言葉が耳に入った

 

ー私は恨んでいませんよ…燐を含めた私たちは常に死を覚悟して戦いに赴くようにしています。光は失いましたが大事なモノを守る事ができましたー

 

 

ーだ、大事なモノ…ー

 

 

ー……今を生きる人々の明るい希望に満ちた未来を…さっきも言いましたが気に病むことはありませんー

 

 

包帯で目を隠し話す疾風の言葉からも恨みや怒りも感じられない。それどころか逆に統夜を心配する感情が見えた…自身よりも他人を思いやる優しさに何も言えずメインオーダールームを後にし5日過ぎるも悩みは深まっていく

 

 

『…答えてやろうか不動統夜?』

 

 

とっぜん響いた声と風を切る音…本能的に砂浜を蹴り飛び退くと手裏剣?にも似た何かが突き刺る

 

『かわすなんてすごい、すごいぞ…褒めてやるよ………紛い物の癖にな』

 

「…な、なに……っ!?」

 

声がした方向には全身装甲の《黒いIS》統夜がよく知るモノ、自らが初めて生み出したIS《ゲシュペンスト》と寸分違わない。明らかな殺意をバイザー越しに感じファイバードを展開するも…だが地獄で苦しむ母の姿が脳裏に浮かび手が止まる

 

『おやおや、自慢のファイバードは出さないのか?いや出せないが正解か…紛い物(フェイカー)、なんってな!!』

 

「うわっ!」

 

プラズマカッターを展開、大きく袈裟切るもかわされるが逆手に構えた手が肩に触れ他のを感じながらも、その声と動きに統夜は覚えがあった。GGGに保護された当日に閲覧したGGGアーカイブズに映像と共に記録されていたモーションパターン、音声…すべてのピースがはまり怒りにわなわな震えだした

 

「お前はファイバード…バイオネット総帥か!」

 

 

『大正解!さすがはオレ様の紛い物だな~しかしまあこうも事が上手く運ぶなんてな…アヒャ!』

 

 

「ちっ!」

 

プラズマカッターで大きく凪払うも跳躍、着地下のを見逃さず切りかかる、すべて紙一重でかわす統夜に自慢げに語り始めた

 

『お前がこの世界に来ることは千年前からわかってたんだよ。オレ様と同じスペシャルなチート転生者でISファイバードにグラヴィオン、ゲシュペンストを作れるって知った時は驚いたなぁ。しかもISーインフィニット・ストラトスーが嫌いなとこを含めてそっくりなことにな。たがなオレ様は《紛い物》なんか認めねぇ…そのために色々仕込んでたんだ。そのうち一つがクソ忍者の里を迅雷の無人テストもかねてなガキ…確か犬神霧也一人残して滅ぼしたんだよ…目の前で両親を殺した憎い憎い憎い憎い憎いファイバードへの恨みを植えつけて…後はわかるよなあ?不動統夜ぁ?』

 

「………俺を犬神霧也に殺させるために仕組んだのか!」

 

『ま、それもある…お前の性格上、一度でも敵対したら相手が信じ歩み寄ろうとしても容赦なく切り捨てるだろ?あの糞ババアが産みだしたGGGの面子に対して不信感を植え付けるのが目的だったからな…旨い具合に手のひらで踊ってくれたお陰で護衛もなく、自慢のファイバードを展開できないお前を殺す事が出来る……まあゲシュペンストじゃ味気ないからな……来いファイバード』

 

ゲシュペンストと入れ替わるようにファイバードを展開、その姿から邪悪な思念が溢れるのを肌で感じる一方で何かを感じ取る

 

 

(やめろ、やめてくれ……もう人を殺したくない……命を奪いたくない…)

 

たどたどしい懇願にも似た悲痛な声…統夜は知っていた、いや転生する前に見ていた勇者シリーズ《太陽の勇者ファイバード》、火鳥勇太郎の苦悶に満ちた声に驚愕するのを見て自慢げに語り出した

 

『オレ様のカッコイいファイバードの声を聞いたのか…お前が使う紛い物と違って正真正銘本物のファイバードだ。まあ最初は魂はなかったが偶々、宇宙警備隊本部を見つけてな~跡形もなく壊滅させて捉えたファイバードの魂をコアに定着させたんだよ……人を殺す度に聞こえる音楽(苦痛の悲鳴)は讃美歌だったぜ。カッコイいオレ様に相応しい交響楽ッ!カッコイいだろ不動統夜!!』

 

 

クルクル回りながらフレイムソードを展開、構え自慢する沙華堂牙儖にフツフツと怒りが沸き起こる。自分を罠にはめ不信感を植え付け、さらには憧れていた太陽の勇者ファイバードの魂を汚し続けた事は許せない

…しかし展開しようにも統夜の脳裏に身を焼かれる母の姿が浮かび手が止まるのをお構いなしに凶刃が迫る…が白銀色の光が防いだ

 

「お、おまえは…」

 

 

「……」

 

 

紺色の学生服に白髪に鋭く突き刺さるような赤い瞳をファイバードに向けながらフレイムソードをシルバームーンで受け、統夜の前に立つのはこの世界に迷い込んだ初日に攻撃を受け自身を気絶させたGGG諜報部主任《犬神霧也》…大河長官から別任務を受けて離れていたはず。なぜここに?疑問に思う統夜をよそにファイバードが忌々しそうに叫んだ

 

『……邪魔すんなクソ忍者!……はは~ん、紛いモノ…不動統夜にトドメを刺しにきたのか……憎いもんなあ~』

 

 

「……ガンドーベル、ガングルー、各機システムチェンジ!!一斉攻撃!!」

 

 

ガンドーベルの胸部バルカンからミラー粒子弾、ガングルーのメリケンサック状の武器《アイアンネイル》の左右からの攻撃は統夜ではなくファイバードへ吸い込まれるように直撃、自身が攻撃されるとは思ってもいなかった牙儖は後ろへ吹き飛ばされるのを目にした統夜も驚いていた

 

「……何をしているのですか、早くGGG本部いえメインオーダールームへ急ぎ避難をしてください!!」

 

 

「…何のつもりだ犬神霧也」

 

 

自らを再起不能にしかけた犬神霧也の行動に不信感を露わにする統夜…何故、この場に居て自分を守るのかが理解できなかった

 

 

「…アナタが私を信じないのはわかっています…これから先、私を信じなくて構いません。ですがアナタを護るよう頼んだGGG大河長官、未だ目覚めない燐。疾風、凍也、ユーノ、束さん。GGGのみんなだけ信じてください…」

 

 

「た、大河さんがお前にオレを護るように?」

 

 

『や、やりやがったなクソ忍者!』

 

 

霧也の言葉を遮り、怒りの炎を燃やしフレイムキャノンを撃つファイバード…狙うのはもちろん統夜。しかし二人の姿がかき消すように消える

 

 

『ドコへ消えた!クソ忍者!紛い者!!』

 

 

「……私はココです!!犬神流忍術!疾風狼牙!!」

 

 

太陽を背に姿を見せると、シルバームーン、シルバークロスを投げる嵐をまとった狼が牙をむき襲いかかる。しかし牙儖はフレイムキャノンで撃ち落とし、なにもない背後へ剣を構えた

 

『バレバレなんだよ。受けてみな?飛天御剣流・九頭龍閃!!』

 

 

「な、ぐ、ぐあああ!!」

 

 

円を描くように放たれた九つの斬撃が襲いかかり学生服を切り裂かれ血が辺りに舞わせなが受け身を取り土誇りにまみれながら、ふらふら立ち上がる

 

『俺様の九頭龍閃を受けてよく立ち上がったなクソ忍者………その腕とリミビッドチャンネルのおかげか?dhiamon・raplus(ディモン・ラプラス)?』

 

「私をその名前で呼ぶな…」

 

拳を握りしめる霧也の腕、手首の付け根、肘から何かがジャキンと飛び出す…銀色の幅広の刃《単分子ブレイド》、斬られた腕からバチバチと火花が散らせながら対峙する…しかしファイバードはフレイムソードを納めた

 

『……や~めた。ここでお前を倒した所で華やかさが全く無いからな~オレ様の用意した最高の舞台で待ってやる。またな不動統夜、クソ忍者…』

 

いつの間にかにコールしたGリヴォルヴァーをこめかみに押し当て迷わず引き金を引く。轟音と共に頭が吹き飛びファイバードは地面へ倒れる…いや寸前で姿が消え血溜まりと装甲の破片のみ残された

 

「き、消えた?いったいどうなってるんだ!?」

 

 

「……おそらく空間転移したので…ぐ!?」

 

 

ぐらりと膝をつく霧也、その瞳から真っ赤な血が涙のように流れ落ちていくのを目にし言葉を失う統夜…やがてゆっくりと口を開いた

 

「……はあ、はあ…お願いがあります。私が奴をリーディングし得られた事実をメインオーダールームにいる獅童博士、束さん、火麻さんに…伝え……て…ください……手を」

 

差し出された血とGリキッドに濡れ皮膚の下からメカニズムを覗かせた手を見て逡巡する…自分をあんな目に合わせた張本人を信じていいのかを、しかし血涙を流す瞳から尋常なら無い事態が起きる事を知り得た目に動かされた

 

「………わかった。手を握ればいいんだな」

 

その言葉に頷く霧也の手を握った瞬間、統夜の脳裏に様々なイメージが流れ込み膨大な情報の海に漂った同じ頃、メインオーダールームは喧騒に包まれていた。

 

「アフリカにガイゴーが現れただ!?」

 

 

「間違いない、ガイゴーに使われとるGSライド反応は他のGISシリーズとは違う。ある意味個性をもっておるからの…参謀、ワシと束くん、そしてシャルくん、凍也くんと共に三段飛行甲板空母、三式空中研究所でアフリカへ向かう……ユーノくんはメインオーダールームで万が一に備えつつ、燐、不動くんを頼む」

 

 

「わかりました。では三段飛行甲板空母、三式空中研究所をアフリカへ緊急発進準備します」

 

ユーノをメインオーダールームに残し、火麻、束、凍也は三段飛行甲板空母、獅童博士、シャルは三式空中研究所へ乗り込むとアナウンスが響き、ヘキサゴンから切り離され海面へ浮上と同時に空へ舞い上がり、ウルテクスラスター全開で一路アフリカへ進路を取る

 

(……燐)

 

小さくなっていくGGG本部にガラス越しで眺めるシャル、意識が目覚めない燐を残していく不安もあった、しかしガイゴーがアフリカに現れたということはゾンダーも出現する可能性も捨てきれない。レイジからの頼みに頷き同行することを決めたシャルは嫌な胸騒ぎを感じていた

 

 

(………何だろ。すごく嫌な…ううん、わからないけど何かが起きる気がする)

 

 

拭いきれない不安に身震いするシャル、一方、束はガイゴーに対して複雑な想いを秘めていた

 

(ライ先生、なんでこんな事に……バイオネットは何でわたしから大事な人を奪うの…許せないよ…絶対に許さない)

 

 

恩師であり、誰にも認められず全てに飽きてしまった自分を認め新しい視野を広げ家族のように親しく付き合いをしてくれたライ、マヤを1日たりとも忘れていなかった束…燐を暗殺用サイボーグへ改造し全てを奪ったバイオネットへの怒りがこみ上げらせながらアフリカへ向かうGGG機動IS部隊を乗せた二隻は蒼い空の彼方へ消えると同時にメインオーダールームへ気絶した霧也を肩に抱えながら飛び込んできた

 

 

「ユーノ!」

 

 

「不動くん?それに霧也……いったい何があった…」

 

 

「今から説明する、それより火麻参謀、獅童博士は!」

 

 

「それが、さっきアフリカにガイゴーが現れたから三段飛行甲板空母と三式空中研究所で現地に向かったんだ。デュノアさんと束さんも一緒に」

 

「なんだって!今すぐ通信を繋ぐんだ…このままだと」

 

「わ、わかったよ、通信を繋ぐよ…メインオーダールームより三段飛行甲板空母、三式空中研究所、応答してください……つ、通信が繋がらない!?レーザー通信に、コレも繋がらない…」

 

 

「ち、オレに貸してみろ……量子通信、超空間通信も……まさかバイオネットの仕業か!!」

 

 

ー正解、正解であ~る!さすがは総帥のイミテーションなだけはあ~る!!ー

 

 

甲高い声が響き、メインスクリーンにノイズ混じりにある人物が映し出された。特徴的な髪型に、肩に掛けたギターをかき鳴らす女性…《ドクターウェスト》が狂気に満ちた瞳を向け歓喜している

 

 

「そ、そんなドクターウェストは疾風が」

 

 

ー我が輩が、あの失敗作如きに殺されると?アハハハハハハ!傑作でありますなあ~バイオネットの子が親に勝てるわけないである!ー

 

 

(……バイオネットの子?俺が知る限り竜崎疾風、凍也は…)

 

 

ーま、無駄話しはココまでにするである。我らが総帥の偉大なる計画を全世界に発するのであ~る!!ー

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

同時刻、地球防衛会議場

 

 

「ですから!彼は被害者なのです!バイオネットの策に利用されたと!私は何度も申し上げているはずです!!」

 

 

「しかし、彼がバイオネットとの関わりを持つ可能性はある…これ以上彼、確か《不動統夜》を庇うのであれば我々、地球防衛会議はGGGの即時解体を議決するのも可能なのだよ…大河くん?」

 

 

「ですから、私、いえGGGは彼を守る義務があります!!」

 

 

支援部隊設立会議のはずが査問会へ様変わりし、GGG長官大河は何度も声を上げ異世界からの迷い人である《不動統夜》を庇護する姿勢に、地球防衛会議議員にしてトオミネ・コーポレーションCEO《トオミネ・タケル》は淡々と揚げ足を取るような言葉を投げかける

 

「ふう…世の中奇麗事だけでは回らないのだよ…何時までも正義の味方《ID5》でいる気かね?無駄に金ばかり喰うだけの虫のGGG?まあ、叶いもしない夢などに無駄な金をかける宇宙開発公団ならではの回答ととらえてもかまわないか?」

 

 

「無駄ではありません!我々宇宙開発公団、いえGGGは人類の未来と先人達が刻んだ《叡智》は決して無駄では無いのです!」

 

 

議員席から身を乗り出し、遠峰タケルに対し反論する大河。しかし周りの地球防衛会議議員の反応は様々だ…いや明らかにおかしい。それにロゼ議長の姿も見えない

 

話はこのまま平行線をたどろうとした、その時。中央メインスクリーンに光が灯りノイズ混じりに音声が響いた

 

 

ー…全世界各国首脳、および国連《地球防衛会議》常任理事議員、GGGに告げる、我々はバイオネットー

 

 

「バ、バイオネット!?」

 

 

今まで、表舞台に現れることなく、影で様々な謀を巡らし人々を不幸に陥れ第三国へ組織が産み出した兵器を与え内紛を拡大、膨大な利益を基に拡大した負の存在《バイオネット》。それがすべての衛星通信に介入し、こうして姿を見せた事に驚きを隠せない大河

 

 

ー…バイオネット総帥として、我が理想を阻みしGGGに対して宣戦布告する!手始めにココ《アフリカ》の《開放点》を開放させる!!ー

 

 

「か、開放点だと!」

 

 

「なぜバイオネットが開放点の場所を!?」

 

 

「開放点の位置は旧GDEファイルの極秘事項の筈だぞ!」

 

 

「すぐに高杉元帥に連絡をつなげ!」

 

 

ー刮目せよ世界、我が姿を!偉大なる神の姿を!……その瞳に、記憶に、遺伝子に焼き付けよ!!我が名はしー

 

アフリカ大陸を背景に宣言するファイバード。全身装甲越しに声高らかに、全世界に向け発信宣言し終えたところでジャックされた通信は途絶え回復、唖然とする地球防衛会議議員達、遠峰タケルはゆっくりと大河をみた

 

 

「さて、GGG大河長官…コレはどういうことかね?先の映像をみる限りバイオネット総帥は、君が保護している《不動統夜》が所持しているIS《ファイバード》にしかみえなかったのだが?これ以上庇いたてをするならば…」

 

 

「まってください!コレがバイオネットの策謀だとわからないのですか!!こうしている間に《開放点》が開かれれば地球が…三十数年前と同じ事に」

 

 

「話を逸らそうとするとは見苦しいな、大河長官…い」

 

 

「何をしているんだい」

 

さらに追い打ちを掛けようとした遠峰タケルの声が背後から響いた声に遮られ、動揺する議員達のざわめきもやみ、視線が一方向に注がれた

 

「ロゼ議長、遅いお着きで(ババア!何故ココにいる!!しくじったのか?迅雷共は!?)」

 

 

「少し道が混んでたんで遅れてしまってすまないね…今日はGGG支援部隊設立に向けての議題だってはず。それがGGG解散議案になっているのは可笑しいんじゃないんかねぇ遠峰ボウズ?わたしに説明をしてもらえると嬉しいんだが。ソレより今はバイオネットがアフリカの開放点を開こうとしている事に対して議論する必要があるね」

 

 

ベージュ色のスーツに身を包み、強い光を湛えた瞳を向ける国連事務総長、地球防衛会議議長《ロゼ・アプロヴァール》の言葉に頷く他の議員達。スクリーンを展開しカツカツと壇上へ上がり席へ座ると、空気が一変する

 

「幸太郎、さっき日本本部から緊急通信があった。アフリカにNEOに保管されバイオネットに強奪されたガイゴーが現れたと。三式空中研究所、三段飛行甲板空母が現地に向かっているそうだ…」

 

「ロゼ議長、私はコレより現地に…」

 

「話は最後まで聞くんだ、アフリカに向かうには一時間以上かかる。それにこの一報を最後に通信阻害されている…信じて待つんだ、幸太郎」

 

 

「ですが!」

 

「それに今、日本本部には強力な助っ人が《伯爵》が向かっている…燐坊達の為に力を貸すために」

 

 

(伯爵?まさか………奴か!!)

 

 

「…彼が……世界の富の三分の一を有するサンジェルマン卿が…」

 

 

大河の声に力強いまなざしを向け頷くロゼ…《サンジェルマン》の名を聞きわなわな震え出す遠峰タケルをよそに議会をまとめあげバイオネットに対して現状でできる最善の方法を模索した頃、アフリカに到着した三段飛行甲板空母、三式空中研究所はウルテクブースターを解除し、途中で合流したセシリアと共に凍也、炎竜はガイゴー探索を始めていた

 

 

「GSリアクション関知できず。これよりキリマンジャロ周辺に探索エリアを広げます」

 

『わかったわい、ワシ等も広域探索を引き続き継続する。聞こえてるかのセシリアくん』

 

 

「は、はい。獅童博士」

 

 

『今回は急な参加要請をして本当にすまんかったの…』

 

 

「い、いえ、イギリスGGG代表として当然ですわ。本部より送られてきた《ウルテク・Gビット》のテストも兼ねてますし」

 

 

『本来なら君用に入念に調整をするんじゃったんたが、なにぶん時間が無くての…最終的な調整は実戦込みになるがの』

 

 

「大丈夫ですわ。ウルテク・Gビット、必ず使いこなして見せますわ」

 

 

そう告げると、三式空中研究所と通信を閉じ空高くそびえるキリマンジャロ周辺へ飛翔するブルーティアーズの左右にはイギリスGGGで開発された量子通信遠隔操作浮遊広域防護機動楯《ウルテク・Gビット》が推進部から淡い緑光を光らせる

 

 

(ウルテク・Gビット。イギリスGGG主導で開発された新装備…わたくしのブルーティアーズとは違って広域防護を目的とした装備…)

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

「い、いえ、何でもありませんわ…あの凍也さん…」

 

 

「大丈夫ですよセシリアさん。疾風なら必ず元気になって戻ってきます…燐との約束ですから」

 

 

「燐さんとの約束?」

 

 

「……ええ」

 

セシリアの問いに頷く凍也…IS氷竜とツートップ、バックスに炎竜(スタンドアローン・モード)がアフリカの空を風を切り飛ぶ。各種センサーを最大レンジで展開しながら会話していく

 

(凍也さん、無理してますわね…でも約束って)

 

 

約束という単語に興味を持つセシリア、GGGに配属されてから燐、疾風、凍也、霧也、炎竜、雷龍と共に行動する中、強い結束力を度々みていた。もしかしたら《約束》が関わっているのではないかと考える一方で羨ましさを感じた時、GSリアクションが反応する

 

「凍也さん!ガイゴーのGSライド反応を確認しました」

 

 

「!場所はどこですかセシリアさん」

 

「AGM97ポイント……キリマンジャロの麓ですわ」

 

 

『でかしたぜセシリア!すぐに獅童じいさんに連絡だ』

 

 

「ご心配なく、もうすでに送りましたわ炎竜。では参りましょうか…凍也さん、炎竜」

 

 

力強く頷き、三人は飛行機雲を生みながら現地へ向かう。連絡を受けた三式空中研究所、三段飛行甲板空母も雲の切れ目からその弾丸にもにた姿を見せ併走するように向かい、到着した

 

「ラ、ライ………」

 

 

「せ、先生……」

 

 

そこにはガイゴー《アクティブ・モード》がウルテクスラスターを光らせながら滞空し待つ姿…その胸部装甲は大きく開かれ無数のケーブルに繋がれた《獅童ライ》の頭部…うつろな瞳を向け微かに誰に語りかけることもなく唇が動いた

 

 

『………プ、プラン……B…移行………アナライズ………』

 

 

装甲が閉じ、スリットに光《化学物質》が周囲環境に適した物質合成が始まった瞬間、光の粒子が三式空中研究所、三段飛行甲板空母を包み込んだ瞬間、光の雨が降り注いだ

 

 

「第三エンジン被弾!」

 

「い、いったいなにが!」

 

「わかったよ火麻さん、あの光はミラー粒子を瞬間生成したものだよ…それに粒子間相互反発作用を利用して撃ち出してる」

 

 

「ヤツら、ミラー粒子技術を再現した!?」

 

GGGが誇る超技術《ミラー粒子》。コレは宇宙開発において有用な技術として生み出されたモノ。しかも極秘技術であるそれを再現したガイゴーに驚く火麻。しかし二人、束とレイジは顔をうつむかせ声が漏れた

 

「火麻くん、再現できて当然なんじゃよ…ミラー粒子技術を発案したのは…発案したのは」

 

 

「リッくんのお父さんが、宇宙へ…ネクストフロンティアへ向かうために生み出したの………」

 

二人の絞り出すような発言に驚きを隠せない火麻。その間にも光の雨《ミラー粒子の雨》が二隻へ降り注ぐ…地球上で最高の強度を誇るレーザーコーティングG装甲でも長くは耐えきれない

 

「束さん!火麻参謀…ミラー粒子技術を使うとは…」

 

 

『やばいぞ!装甲が持たないぜ!』

 

「凍也さん!私に任せてください……ウルテク・Gビッド展開!おゆきなさい!!」

 

 

セシリアの声に背後に浮遊していた菱形の機体《ウルテクGビッド》が変則的起動と共に三段飛行甲板、三式空中研究所の周りを飛翔、緑色に発光する先端から光があふれシールドが形成。ミラー粒子弾を防いでいく

 

「ウルテク・Gビッドをあのように使うなんて、さすがはオルコットくん、凍也くんが見込んだけはあるかの」

 

 

『レイジ先生、キリマンジャロ周辺から異常なエネルギー波動を検知してるよ…コレってまさか!!』

 

 

「こ、コレは……まさか、この場所は……間違いない、プラネット・エナジー開放ポイントじゃあああああああああ!!」

 

 

キリマンジャロの麓に広がる大地が揺らぎ、動物達は危険を感じ安全な場所へ駆け出していく…ミラー粒子弾を降り注がせるガイゴーから離れた場所、開放ポイント周辺が揺らぎ、何かが姿を表した

 

 

『よくやってるなガイゴー。GGGも今頃はオヤジが解散決議に邪魔なババアに迅雷を向かわせたはず………さあ始めるか……1000年前の続きを…アヒャアア』

 

 

開放点活性化装置のスイッチを入れ、数秒で大地が揺るぎはじめたのを満足そうに見ながらガイゴー、三段飛行甲板空母、三式空中研究所をみた

 

 

『ククク、俺様の改良した開放点活性化装置はオーボスが使っていたのを新しく造ったからな。あと90分でアフリカは……ヒャハハハハハハハハハ』

 

 

狂気の込められた叫びがこだまする…しかし、彼は知らない……この地、天高くそびえる霊峰《キリマンジャロ》に眠る存在《氷の獅子》を

 

 

ー…………シドオーリン………ー

 

 

氷の獅子の声、それは光を越えGGG本部《G・クリスタル》ルームで眠り続け意識の海に漂う《獅童燐》の心に届く

 

 

ーだれだ…ー

 

 

ー………シドオーリン……酋長、と、同じ心、持つ…星の命…あぶない……シドオーリン……目を覚ます…ー

 

片言で語りかける黄金の光が見せたのは、ガイゴーの攻撃を受け苦戦するGGGメンバー、凍也、炎竜、セシリアが二隻を守りながら攻撃をするもミラー粒子弾幕に遮られ、眼下に広大な大地が震え、動物達が安全な場所へと駆け出していく

 

 

ー………シドオーリン……命を………星に住む命をー

 

 

黄金の光が消えた瞬間、燐の眼が開かれ上半身を起こしながら点滴、検査器具を外し立ち上がろうとする…しかし崩れるようにベッドから落ち、身体に激痛が走る

 

「ぐ、はぁ、はぁ………」

 

痛みに耐えながら病院着を脱ぎ捨てる。腕と胸に巻かれた包帯に血が滲むのも気にせずIDスーツ、冷却コートを肩に掛けGクリスタルルームから壁に身を任せるように歩き出しながらGGGアーカイブズ、多次元諜報潜水艦から意識を失っている間の状況を確認するべくデータリンクを始める。もう一人のファイバード…で異世界から迷い込んだ《不動統夜》、霧也の起こした不祥事、自分が抜けた穴を埋める為に戦うも失明した疾風…戦力が枯渇したままGGGが三式空中研究所、三段飛行甲板空母でアフリカに向かった事

 

肩で大きく息を吐き、ダンっと壁を殴りつけた…自分がもっと早くに意識を取り戻してれば、こんな事態にならなかったはず。しかし今はアフリカで最悪な事態が起こりつつある

 

なんとかしてアフリカへ向かわなければならない。やがてメインオーダールームの入り口にたどり着こうとした燐の耳に聞き慣れた声が響いた

 

 

 

ー刮目せよ世界、我が姿を!偉大なる神の姿を!……その瞳に、記憶に、遺伝子に焼き付けよ!!我がバイオネットを讃えよ!!ー

 

 

ー以上で我らが偉大な総帥様の宣言は終わりであり~ます……我らが総統様のお声はしびれる、あこがれる~ー

 

「お前ら、狂ってやがる……俺をハメるためだけこんな事するなんてな」

 

 

ーそぅのおおおおお通りであります!ですがそれは総帥のイミテーションであるアナタにも……ー

 

 

「ドクターウェスト!」

 

ドクターウェストの言葉を遮るように響いた声、統也、ユーノが振り返りみたのは息も絶え絶え、包帯から血をにじませながらも立つ少年の姿。ゆっくりと二人の間を抜けメインスクリーンをにらんだ

 

 

ーおやおや、総帥様の剣を受け生きていたとは……さすがはバイオネットの元《最高傑作》バイオダインRINー

 

 

「……あいにく、オレはまだ死ねないんでね。お前たちバイオネットの野望を叩き潰すまではな!!」

 

 

(……バイオダインRIN(リン)?まさか、この世界の獅子王凱、いや勇者王はコイツなのか…)

 

 

ーあひ、アヒャハハハハハハハ!!笑わせる、笑わせてくれるでありますね~でも、コレがアナタと最後の会話になると寂しいものです…開放点が解放されれば我々のバイオネットの大勝利でありますー

 

 

「開放点だと…お前たち、まさか!」

 

 

ーそのとおおおおおおり!おっとおお、時間がないであるからか失礼するでああああある!!ー

 

 

「待て!ドクターウェスト!?………うっああ」

 

 

メインスクリーンからドクターウェストが消え、叫ぶもぐらりと身体が崩れ落ちそうになる燐、寸前でユーノが肩を貸し支えた

 

 

「わ、悪いユーノ……」

 

「別にいいよ。意識が目覚めたばかりで傷も治ってないのにムチャは」

 

 

「い、いまは、そんな状況じゃないんだ…開放点が完全に開くまでの時間を、そしてアフリカまでの所要時間を頼めるかな」

 

 

「ま、まさかアフリカにいくの!ムチャだよ。アフリカに今から向かうには今からだと2時間…それに開放点解放まで予測時間は」

 

 

カタカタと空間投影ディスプレイに開放点解放時までの時間が示された…《90》分。三式空中研究所、三段飛行甲板空母で三十分。現在、GGG本部には同等の空中艦はない。例えあったとしても待ちかまえて居るであろうガイゴーの前に、ガオーマシンも無く修復率30%のガオファーでは存分に力を発揮できない…打つ手無し、そうユーノの心に浮かんだ時、燐は驚くべき行動をとる

 

 

 

「お願いだ!君の力をオレに貸してくれ!!」

 

 

「な、ナニしてんだよ!いきなり、そんなこといわれても…」

 

 

「……途中まで連れて行ってくれるだけでいいんだ。彼処にはオレの大事な仲間たちがバイオネットと戦ってるんだ。現場についたら放り投げてくれてもいい、だからお願いだ!」

 

 

…冷たい床に手をあて、全身の至る所に包帯を巻き、血を滲ませながら土下座し懇願する燐…力を貸してほしいと何度も言葉を口にする姿に驚き狼狽える

 

「…君が霧也のしたことで、オレ達GGGを信じろれなくなってるのは知っている……でも今だけは力を貸してほしい…」

 

 

 

「(な、なんなんだコイツ…なんで初めてあった相手に土下座までして頼むんだ……自分の身体がボロボロなくせに…顔を知らない他人の為に命をはるなんて…)や、やめろ、頭をあげろったら」

 

 

「……三十数年前に彼ら《ダ・ガーン》達に託された地球を、そこに住む人たちの命と未来を守るための力をオレ…いやGGGに貸してくれ……頼む!」

 

 

燐の姿、言葉から必死の想いをかんじる統夜…しかし、脳裏に初日に受けた攻撃、霧也の天舞宝輪で五感のうち地獄で苦しむ母親の姿がフラッシュバックし、心が頑なになろうとした時、燐の後ろに光が集まり現れた姿に息をのんだ

 

(か、母さん!なんで)

 

 

ー統夜…この子の力になってあげて…この世界に訪れたのは偶然じゃないの。私が統夜を呼んだのー

 

(え?)

 

ー今のままじゃ、統夜の世界にいる《あの敵》には勝てない。この子達にあって統夜に無いものを知って欲しいから呼んだの…時間は無いわ……お願い、この子の力になってあげて…ー

 

 

僅かに笑みを浮かべながら、統夜を抱きしめ耳元でなにかを囁いてふわりと、優しいぬくもりを残して風ように消えた…微かに残る母の温もりと言葉は頑なになった心をほぐした

 

「頭をあげろったら…今の状況は俺だってわかる…現状をみたら間違いなくやばいってのは…」

 

 

「なら…」

 

「力を貸したいのは本当だ。でもアフリカにいくには、ウルテクスラスターに準ずる推進システム搭載した空母が必要不可欠。しかも《開放点》が解放されるまで90分以内で到達、解放を阻止するための戦力は圧倒的に不足している。力を貸そうにも不」

 

「可能だ」

 

 

不可能…と言いかけた時、凛とした声が響く…コツコツと靴の鳴る音と共に現れたのは黒のモーニングスーツに身を包み、緑色の宝石が嵌められたスティッキを右手に持つ薄紫色の髪が目立つ青年の姿。統夜は彼を知っている…転生前に見ていたアニメ《超重神グラヴィオン》の登場する武装戦隊アースガルツを率い、世界の三分の一の富を持つ大富豪

 

「……ク、クライン・サンドマン」

 

思わず漏らした言葉に《彼》はゆっくりと目を向ける、わずかな戸惑いの色を見せながら土下座をする燐の肩に手を添え立ち上がらせた

 

「サ、サンジェルマン伯爵?なぜ日本に」

 

「久しぶりだな燐…今までの経緯は理解した。ユーノ・スクライアくん、いきなりですまないが《ミラーカタパルト》、整備エリアを借りさせていただいてかまわないかね」

 

 

「は、はい…サンジェルマン伯爵」 

 

 

「そう硬くならなくていい…今は一刻を争う。私からもささやかながら力を貸そう……トリア、重力子とウルテクスラスターを、ディカは霧也をマニージマシンへ治療を頼む…」

 

 

『わかりましたサンジェルマン様!』

 

「霧也様の治療は私たち医療メイド隊にお任せください。さあ、こちらに」

 

 

「あ、ああ(……な、なんでトリア、ディカまでいんだよ……この世界は超重神グラヴィオンの世界も融合してるのか?)」

 

 

笑顔で気絶した霧也を手慣れた様子でいつの間にかに用意したマ ニージマシンへ座らせるディカ、スパナ片手に笑顔で答えるトリアに困惑しながらも、サンジェルマン…サンドマンへ目を向ける

 

 

「どうかしたかね、不動統夜くん」

 

 

「な、なぜ俺の名前を…」

 

 

「今は一刻を争う。君とはあとでゆっくり紅茶を飲みながら語りあいたい…今なすべきことがあるのではないのかね…君にしか出来ないことが」

 

 

サンジェルマン伯爵の言葉が心に響く…統夜はその場から駆け出した。向かうは整備エリア。

 

 

「さあ、みんな!ウルテクスラスターと重力子エンジンの最終マッチング作業。ガオファーを仕上げるわよ!!」

 

 

「「「「「はい!」」」」」」」

 

 

メイド隊、GGGメカニック隊の声が響く。ミラーカタパルトには試作型弾道整備強襲艦《アマノシラホコ》。その周りで各々が持ちうる技術、経験をフル動員する…一人一人の力は弱い、しかし集まれば、強い結束と勇気を生み出す

 

地球に危機が迫る中でも、絶望の色はいっさい無い、それどころか希望の炎を燃やし、未来を信じ行動する姿と場の空気に統夜は一瞬、圧倒されるも気を取り直しトリアに歩み寄った

 

「俺にも協力させてくれ、分担した方がはかどるからさ。ガオファーに関しては任せてくれないか」

 

 

「ん、いいよ。君にガオファーは任せた。システムやハード周りは手が開いてるメイド、GGGメカニックのみんなが手伝うから」

 

 

「あ、ああ」

 

 

ガオファーがある一画に着くと、すぐさま機体状況を確認する。その現状に思わず目を疑う

 

 

(レーザーコーティングG装甲、推進系は修復50%。内部フレームは…ひどいな。動けたとしても10分経たない内に機体がバラバラだ……ならコレを使うしかない)

 

 

「みんな聞いてくれ。今から言うガオーマシンの予備パーツと補修材を集めてきてくれ。リストは各パーツ事にみんなの端末に送ってある」

 

 

送られてきたリストに目を通したメイド隊、GGGメカニックは数秒もしないうちに揃えて来た。それを各種工作機がフル動員しチームごとに組み上がると統夜の前に集められ、HMDとVGを装着し操作。各部パーツが接続、駆動部、フレーム、最後に装甲が付くと見たこと無い三機が姿を見せた。そこにガオファー装着のためにきたIDアーマ姿の燐も今までのGGGメカとは違う概念で生み出された二つに驚く

 

 

「こ、これはISのパッケージか?」

 

 

「違うな。コイツはアシストマシーン《ブレイブナイト》だ。今のガオファーはガオーマシンが無い。その上、完全に修復されていないガオファーの防御力向上と機能強化に特化したヤツだ………詳しい説明とアジャスタは」

 

 

「ウルテクスラスター、重力子バーニア調整準備終わったよ!」

 

「十分で完了。さ、最短記録更新したよ…ガオファーとアシストマシーン三機積み込み急いで!開放点解放まで60分!気合い入れて送り出すわよ!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

「…あまり時間がないか。いくぞ燐……おまえの仲間が待っているアフリカへ」

 

 

「あ、ああ……ありがとう不動くん」

 

 

感極まった声を漏らす燐、完成した三機、ガオファー燐、アシストマシーン最終調整とマッチングに付き合うために統夜、GGG整備班、整備メイド隊が乗り込みリニアシートに座ると同時にカウントが始まる

 

ー試作型弾道整備強襲艦《アマツ》、ミラーカタパルトへー

 

 

試作型弾道整備艦《アマツ》……サンジェルマンファンデーションが開発した艦。地球と宇宙を繋ぐ往還資材運搬およびステーション組み立て設置を目的とし開発されていた

 

 

しかし重力子バーニアの調整に時間がかかり、お蔵入り仕掛けていたがGGG整備班のウルテクスラスターを組み込むことで制御に成功し、いまアフリカで苦戦するGGGメンバー救出のために燐、統夜、GGG整備班と整備メイド隊が今、飛び立つ!

 

 

メンテキャリアが移動し、巨大なミラーカタパルトに固定、何層にも閉じられた上部隔壁が開き光が差し込む中、増設されたウルテクスラスターと重力子バーニアに火が入る

 

 

ー隔壁解放確認、弾道計算完了…ミラーコーティング…完了!最終安全装置解除!試作型弾道整備強襲艦《アマツ》緊急射出!!ー

 

 

電子反発作用により、試作型弾道整備強襲艦《アマツ》の巨大な体躯が音速を超えミラーカタパルトから射出、宇宙開発公団の建設中の第2ギガフロート中央から弾かれるように風を切り、雲を貫くと瞬く間に大気圏を抜け衛星軌道に乗る。その時間わずか十数分。無重力の海を泳ぎながらゆっくりと傾き、眼下に広がる大陸…アフリカへと落ちながらウルテクスラスター、重力子バーニアが稼働と同時に再び分厚い大気圏へと突入。やがて赤い点となり消えていった

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「くそ、ミラー粒子弾の雨が止まんねえ!!」

 

 

「早くしなければ、開放点が開放されてしまう…束くん、ポイントの特定を」

 

 

「わかってるよ。ココをこうして、ああして……コレだ!!」

 

 

「ウルテク・Gビットが…」

 

 

「炎竜!セシリアの援護に!!」

 

「わかってるよ!」

 

あれから50分余りが経過した。ミラー粒子弾の雨から三段飛行甲板空母、三式空中研究所を守るために防御シールドを展開するウルテクGビットから火花が散り、外装には亀裂がはしり限界を迎えようとしている…《開放点》の正確な位置を探す束、レイジ、凍也、炎竜は弾かれた粒子弾を森に落ちないように撃ち落とし防ぐのに手一杯の状況、三段飛行甲板空母第一カタパルトが開く

 

すらっとした手足に、緑色のクリスタルが配置され、背中には六枚の緑光を輝かせた翼が開かせながら今まで見たことの無いISをまとうプラチナブロンドをなびかせ強い意志を湛えた瞳、凛とした少女の姿に束は慌てて声を上げた

 

 

 

『待ってシャルちゃん!GIS-XX《セラフ》はまだ未完成なんだよ!!』

 

 

「そんなこといってる場合じゃないよ。みんなが戦っているのに僕一人なにもしないってこと出来ないよ!」

 

 

『ダメだよ!まだシャルちゃん用にGパワーの調整が…!前方に超高密度、ミラー粒子弾確認!!』

 

 

「ウルテクGビット!シールド最大出力!!お願い持ちこたえて!!」

 

 

高密度に圧倒的な破壊力を秘めたミラー粒子弾、それを防ぐウルテクGビット…しかし、長時間の使用とテストが十分でない状態。不可視のシールドがきしみ発生器が火を噴き、ガラスが割れるように砕け散った

 

凍也、炎竜、セシリア、束、火麻、レイジ…三段飛行甲板空母、三式空中研究所にミラー粒子弾が迫る

 

 

(……燐!)

 

 

ミラーカタパルト内にいるシャルは、この場にはおらず、意識不明の燐の名前を心の中で叫んだ

 

『ぉおおおお!プロテクトオオオ!ギガッ!クロオオオオオオオ!!』

 

 

叫びと共に、眩い閃光がミラー粒子弾を幾重にも走り瞬く間にはじけ消えた…余りのことに唖然となる一同…その前には見たことの無い未確認のIS。よく見ると装甲の隙間から見慣れたパーツがあることに気づく

 

『………みんな、無事か!』

 

 

両肩にドリル、赤と黒の装甲に身を包んだガオファーの声…レイジ、火麻、凍也、セシリア、炎竜は知っている

 

「り、リッ君……リッ君なの!!」

 

 

「間違いないよ。燐……良かった…でもどうやってアフリカに?」

 

『サンジェルマン伯爵と統夜くんが貸してくれたんだ…二人の力がなかったらココまで来れなかった…凍也、炎竜、オルコットさん、みんなを守ってくれてありがとう……今から反撃に移る!いくぞみんな!!』

 

 

 

「「「「「「「了解!/わかりましたわ/オウ!/よっしゃああ/わかったよ!!」」」」」」」」

 

 

今までとは違い、力強く答える一同…燐、ガオファー復活は皆の戦意を掻き立て再び勇気の炎を燃え上がらせた

 

 

『三式空中研究所は安全空域に。凍也、炎竜はオルコットさんを三段飛行甲板空母に収容後、開放点を探索を頼む!オレは……ガイゴーの相手をする!!』

 

 

『待ってリッ君!ガイゴーは…』

 

 

『………ごめん、束さん…オレがやらなければならないんだ………いくぞ!ガイゴー!!』

 

 

ウルテクスラスター前回で右腕部分にファントムクローを展開、殴りかかる…しかしガイゴーもクローを展開し防ぎ火花を散らす中、燐は機体の装甲越しに父ライの姿を重ねていた

 

(………父さん……)

 

クロー、拳、蹴りを繰り出すも防がれる度、何度も心の中で父さんと呼ぶ燐…しかしアラートがなる

 

(………残り五分を切った、何とかしてガオーマシンを召還させないと……)

 

焦りを内心に秘める燐…数分前に交わした統夜との会話を思い出していた

 

ー燐、この三機のアシストマシーンはお前のガオファーを防御面、攻撃面での強化に振り分けてある…コイツでガイゴーの攻撃からガオファーを守り抜きながらガオーマシンを奪還するー

 

 

ーす、すごいな…各部クリアランスも問題ないし、プログラムリングも使えるのか…ー

 

 

ーただ、問題もある…アシストマシーンを装備出来るのは十分強、十分過ぎたらガオファーとアシストマシーンは強制分離してしまう…ソレまでにガイゴーにわざとガオーマシンを呼び出させてコントロールを奪回、ガオファイガーにFFして開放点解放を食い止めるしかない…あと他に質問はあるか?ー

 

 

ー……質問というか統夜くん、君にお礼が言いたいんだー

 

ーお礼?ー

 

 

ー霧也の闇を祓ってくれた事かな…本当ならオレがやるはずだったんだ……君に迷惑をかけて本当にすまなかったー

 

ーもうすんだことだ…それよりあと五分したらつく。カタパルトに向かったらどうだー

 

 

ー…あ、そうだった…じゃあまた後で…ー

 

 

(………ガイゴーにガオーマシン召還させてコントロール奪回…難しいかな…でも統夜くんがオレやGGGの為に作ったアシストマシーンを無駄にはしないし、父さんも助け出す!だから痛いけど我慢して父さん!!)

 

 

『はああああ!』

 

 

GSライドが燐の意志に応えるように出力を上げ、信念を乗せ回転回し蹴りがガイゴーの頭に決まり、ぐらりと体制が崩れ、それを逃さずムーンサルトを決めようとした瞬間、背後の空間が揺らぐ

 

『アヒャハハハハハハハ!まだ生きていたのか。今度こそ息の根を止めてやる、試作品!フレイムソード!!』

 

 

邪悪な意志を湛えた双眸を輝かせ、ガオファーwithアシストマシーン装備に背後からファイバードの刃が迫り切り裂く寸前、別な刃が防ぎ火花が散る…その刃の先には青と黒の全身装甲、赤いヘッドギアに金色のアンテナ、緑の双眸を輝かせるIS、もう一体のファイバードが現れた事に驚きを隠せないGGGメンバー

 

 

『て、手前、不動統夜かああああああ!ファイバードを装備できねぇハズだ!!』

 

 

『……さあな、燐!コイツはオレが相手をする、ガイゴーがあれを呼び出すぞ!!』

 

 

『……………ガ、ガオーマシン………コール』

 

 

統夜の声を耳にし、振り返ると同時にガオーマシンを召喚したガイゴー…ライナーガオーⅡ、ドリルガオーⅡ、ステルスガオーⅢが周囲を飛び交う

 

(……チャンスは一度きり)

 

 

胸部スリットに光が集まり始めるガイゴー…ガオーマシンの動きが変わろうとした瞬間、ウルテクスラスタースラスター全開で接近、そのまま組み付いた

 

『?!。!?』

 

『いまだ!プログラムリング展開………』

 

プログラムリングがリングジェネレーターから走り、ガオーマシンのコントロールがガイゴーからガオファーへ移行し始め引き寄せられていく

 

………持ちこたえてくれガオファー!アシストマシーン)

 

アシストマシーン分離…そして開放点解放までのタイムリミットも刻み、コントロール奪回八割にせまりはじめた

 

『…………ガオーマシン…不正アクセス確認……パターンFF強制起動……アナライズ……シナプス榴弾』

 

『な、うわあああ!!』

 

 

胸部スリットから精製された無数のシナプス榴弾の零距離を受け、力がゆるんだガオファーの拘束を振り払い高く飛翔するガイゴー…そしてガオーマシンが吸い寄せられ光に包まれた

 

 

『……………フ、ファイナル……フ、フュージョン』

 

 

胸部スリットから光が溢れ擬似プログラムリングが形成、その上を走るガオーマシン。まずはドリルガオーⅡが装着、内部シリンダーが縮み固定、ライナーガオーⅡの補助ロケット切り離しと同時にガイゴー腕部分が背後に移動。そのまま滑り込み逆噴射と同時にロック。最後にステルスガオーⅢが背面に逆噴、駆動部に接続、火花を散らしながらエンジンブロックが肩から伸びた肘にドッキング、シャッターが開き拳がガッガッと飛び出す

 

最後に黒のヘッドギアがガイゴー頭部に装着されアンテナ中央にGストーンがせり上がりマスクが装着…光無き相貌に赤い光が灯る

 

 

『………あ、ああ……アレは!』

 

 

『アヒャハハハハハハハ!見たか!コレがバイオネットの新たな商品!《Gストーン》搭載IS………ガオガイゴーだああああああ!!』

 

 

……それは邪悪なる力、その姿は黒き鋼の悪魔

 

 

命をもてあそぶバイオネットが生み出した悪意の象徴

 

 

罪なき命を身体に宿した悪魔の名

 

 

その名も『ガオガイゴー』

 

 

『………アナライズ、ファントムリング形成…………ブロウクン・ファントム』

 

 

胸部スリットに集まった光が光輪を形成、そのまま中心めがけ撃ち抜き飛ばした。狙いはもちろんガオファー…それに気づき回避運動を取ろうとする燐、しかし動きが止まりプログラムリングを展開した

 

 

『ウオオオオ!プロテクトリング!プロテクト・ギガッ!クロオオオオオオオ!!』

 

 

光輪《ファントムリング》をまとった拳とプロテクトギガクローがぶつかり合う…あたりの空気が震え放電現象が起きアシストマシーンに守られたガオファーのフレームがギシギシ悲鳴を上げる

 

『バカ!なにをやってるんだ燐!何でよけないんだ!!時間がなくなるぞ』

 

 

『……ぐ、統夜くん、オレたちの足元を見るんだ…』

 

苦悶の声をあげる燐の足元、統夜の目に映ったのは逃げ遅れたキリン、ヌー、ライオン、シマウマの姿…燐が回避しなかった理由、それは逃げ遅れた動物たちを守る為だった。アシストマシーン表面に火花が散り内部のガオファーをまとう燐の身体の表面をヌルリとした何かが、ふさがりかけた傷口が開き隙間を抜け滴り落ちていく

 

 

『…な、なんで動物たちがいるんだ!』

 

 

『…た、例え彼らは言葉を話すことができなくても、オレたちと容姿が違っても、同じ命を授かり生きている…今を精一杯生きているんだ…命は光り輝くんだ…オレはもう目の前で無慈悲に命を奪われていくのを見たくない!!』

 

燐の叫びにGSライドが出力を上げ少しずつブロウクンファントムを押し返していく…統夜は驚いていた燐のガオファーは自身の纏うファイバードとは明らかに性能差がある、絶対的な防御を誇るオリハルコンより遥かに強度が劣る装甲しか持たない筈なのに、ファイナルフュージョンしたガイゴー、ガオガイゴーと拮抗している

 

 

『オラアアア!余所見してんじゃねえよ!!飛天御剣流・龍翔閃!!』

 

 

『ぐ、なぜ飛天御剣流を使える!!』

 

 

『ああ、あの裏切り者から奪い取ったんだよ…』

 

 

『奪い取った…?!』

 

 

『俺様はな、転生特典で他の転生者から特典を《強奪》できるんだよ………良いのを見せてやるよ…………コレな~~~んだ?』

 

 

ファイバードの空いている手に出現したのは分厚い本、その本が何かを統夜は本能的に悟り力を確認し愕然となったのを見て邪悪な眼差しを向けながら目を細めた

 

 

『ま、まさか俺の特典を!』

 

 

『YES、YES、YES、YES!さっき触った時に奪わせて貰ったぜ…転生特典《堕淫の書》すごいなああコレ、最初に契約をしようとする相手と賭けを行い、それに勝利した場合発動する、負けた場合は対戦相手に対しては何も行えないように契約し服従させた相手の身体をさまざまな行為が出来るように都合の良いように改造、また避妊具のような扱いも出来て、逆に排卵を誘発させて孕ませたり出来んのか……俺ならこう変更も出来るんだよ《契約を結んだ相手にありとあらゆる命令を与える》。コイツはどんなに次元が離れていようとも絶対尊守の命令が出来るようにな………ん?亀山一夏、面白いヤツに劣化版を渡してるのか……そうだな。試しに最近お前が契約した相手に《堕淫の書》で命令してやるか』

 

 

ファイバードこと沙華堂牙濫はページヲパラパラ捲り、手を止め目を細めた先には《深月真夜(みづきまや)》、その力の詳細まで事細かに記されていた

 

『(深月真夜か…死を予知する力か)……さて、どんな命令にするかな…街中で不良共にまわされるようにするか、それとも《名も無き島》に向かわせてやられまくるか』

 

 

『やめろ!』

 

 

『アヒャハハハハハハハ!!おお、怖い、怖い………お前も人のこと言えないだろ?母親の復讐のためにあっちの世界の篠ノ之束を堕淫の書使ってめちゃくちゃにやったんだろ?女尊男婢主義の女どもなんか精神崩壊させるまでなあ?この世界が滅んだら不動統夜、次はおまえの世界だ』

 

 

『ふざけるな!確かに俺は復讐の為にそれを使った…でもな俺の世界も、この世界もおまえの好きにはさせない!!』

 

 

再び互いに切り結ぶ統夜、伽藍…そんな中、燐のガオファーは遂に限界を迎えようとしていた、しかし動こうとしない。理由は足元、そこには逃げ遅れた動物たちが居たからだ

 

 

『……は、早く逃げるんだ………グ、グウウウウ』

 

 

『やめてリッ君!ガオファーはもう限界だよ!!』

 

 

アラートが響き、遂にアシストマシーンが強制的に分離、プロテクトギガクローが消えブロウクンファントムがガオファーに直撃、嫌な音が辺りに響かせ砕け散る装甲、ウルテクスラスターから火が噴き墜落していくガオファー

 

『ぐ、動いてくれ…このまま落ちたら動物たちが…命が……ガオファー、おまえは命を守るために生まれたんだ…だから動いてくれ!』

 

 

『リッ君!火麻さん、凍也くんを』

 

 

『ダメだ、まだ開放点がみつからねぇ!!』

 

 

(お願い、誰か燐を助けて!!)

 

 

血を吐きながら叫ぶ燐…その叫びは足元にいるキリン、ヌー、ライオン、シマウマ、フラミンゴ…達に届く…ライオンが燐に目を向け瞳を閉じ、それにつられるようにキリン、ヌー、シマウマ、フラミンゴ達も目を閉じた時、その身体から光が立ち上る、それは離れた場所からも上がり、それに反応するかのように燐の左腕に埋め込まれたオリジナルGストーン《Ⅶ》からまばゆい光が溢れ、集まった黄金の光は天高くそびえる山《キリマンジャロ》に鎮座する氷の獅子に集まり光と共に消え、遙か彼方にあるGGG本部、最重要エリアにある《Gクリスタル》が鳴動、クリスタル中心から獅子の雄叫びと共に何かが隔壁を貫き光を超えた速さで瞬く間にアフリカに到達、三式空中研究所、三段飛行甲板空母を抜け、キリマンジャロから現れた光と共に墜落していくガオファーを飲み込んだ

 

 

ーシドオーリンー

 

ーき、君は…ー

 

 

ー………オレ、ガ・オーン………今は……ギャレオン……シドオーリン、オレ、力になりにきたー

 

 

ー……力に?ー

 

 

ー……シドオーリン、時間ない、星を、命を守る……シャルロットと一緒に……ー

 

 

ーわかった……ガ・オーン………いやギャレオン!オレと一緒に戦おうー

 

 

光が消え獅子の雄叫びが響き、現れたのは獅子の背中に乗るガオファー…しかし限界を迎え解除と同時に待機形態になりボロボロのIDスーツ姿の燐が現れ目を閉じカッと見開き叫んだ

 

「いくぞ………ギャレオン!フュウウウウウウウウウジョン!!」

 

雄叫びと共に燐と背中合わせに飛翔するギャレオン、ウルテクバーニアで飛翔しながら手足をのばしながら装甲が展開、胸にライオンの顔がスライドし装着、各部装甲が展開し最後にヘッドギアが装着、額にGストーンが光り輝いた

 

 

『ガイ・ガー!』

 

 

無垢なる命を守ろうとする燐の勇気、意志を感じた動物たちの想いが光となり、三十数年前に地球を救った勇者を目覚めさ、シャルロットの声に呼ばれ破壊神を構成するマシン《獅子》に宿り生まれた、人類の新たな希望《ギャレオン》と燐がフュージョンする事で《インフィニット・オーガニクス・ストラトス》…ガイガーとなるのだ!!

 

 

『な、なんだあのライオン擬きは?あんなの知らねえぞ?!』

 

 

『……順番が逆なのか(なんだ、ガイガーから別なエネルギーを感じる…わからないが、力があふれてくる)』

 

 

(な、なんで、Gの封印が解けたの!!)

 

 

(ありがとう。ギャレオン……燐、負けないで!!)

 

 

『いくぞガイゴー、いやガオガイゴー!!』

 

 

様々な思惑を孕みながらガオーマシン強奪から端を発した事件は終わりの時を迎えようとしていた

 

 

第十九話 黒い鋼の悪魔

 

 

 

 




君たちに最新情報を公開しよう

黒い鋼の悪魔ガオガイゴーに、新たな力《ギャレオン》を手にし《ガイガー》ヘフュージョンし対峙する燐。

一方、バイオネット総帥沙華堂牙濫に奪われ強化された堕淫の書を統夜は奪い返すことができるのか?

苦戦する二人、ファイバード、ガイガーに勝利の凱歌は鳴り響くのか!?


IS《インフィニット・ストラトス》ー白き翼と勇気ある者ー

第二十話 弾劾の剣!勇者王復活!


次回もファイナル・フュージョン承認!


next・winning・key

超重弾劾剣/ガオーマシン(旧)?



コレが勝利のカギだ!!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。