スカサハさんに師匠と呼ばれたいだけの人生だった。   作:受験おじさん

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見切り発車と深夜テンションで書いてしまったものなので続くかは分かりません。



プロローグ

 少女は走っていた。

目的地は森の奥地、目標はある竜の討伐および負傷者がいればその者を連れて帰ってくる事である。

 事の発端は直ぐ前を走る同業者の女による一言であった。

 

「森の奥地で見た事の無い程巨大な竜が出た、友が私を逃がす為に戦ってくれている・・・助けてくれ。」と

 

 通常、竜にそこまで苦戦を強いるものではない。

地竜、翼竜は硬いだけで牙と爪に気をつければ難なく狩れる。炎竜は・・・少し厄介ではあるが翼竜が火球を飛ばし、色も翼竜より黒色ので知っていれば餌食になることはほとんど無いであろう。

 

 だが見た事の無いとなれば話は別だ。

どのような攻撃をしてくるのか、鱗の硬さ、移動の速さなど何もわからないのだ。

気が付けば頭と体が別れているなんて事もあるかもしれないほど素早い動きをするかもしれないし、圧倒的硬さの鱗により此方の攻撃が全て無効化されるかもしれない。

 更に竜において体の大きさはそのまま強さを表している。

彼女が言うにはその竜はちょうど森の木々程の・・・おそよ成人男性4人分の大きさがあると言っていた。

 そこまでの大きさの竜など私はこれまで見た事がない。

事実、具体的な大きさを聞いた同業者達は誰も彼女へ救いの手を差し伸べなかった。

彼等は強いが無茶で無謀な戦いは絶対にしない。

自身が生き延びる為に他を捨てるのはこの業界では当然だ。

 それでも彼女に救いの手を差し伸べようとするのは余程自分の腕に自信のある馬鹿か余程お人好しの馬鹿のどちらかである。

 

(まあ、私はどちらにも当てはってしまいますがね・・・)

 

 この手の仕事をして1ヶ月、ハタから見れば初心者であるのは間違いないが実力だけは誰にも負けないほどの自身がある。

 だから試してみたいのだ、今の実力をその竜に・・・

そして、助けたかったのだ、涙を堪えながらも必死に叫ぶ彼女の事を

 

「あと、どのくらいですか?」

 

「・・・300ほどの木の先だ。」

 

 彼女の答えに心臓が高鳴るのを感じる。

薄々気が付いてはいたが、どうやら自分には戦闘狂の気があるようだ。

 実に楽しみで、楽しみで、楽しみで、興奮が止まらない。

・・・が、全てを本能に任せては手痛いしっぺ返しをされる可能性がある。

まずはしっかり冷静に、敵の弱点、行動を観察しなければ死んでしまう。

 

(落ち着け・・・落ち着け・・・)

 

 右手に持つ身の丈ほどの槍を強く握りしめ心で思う。

 

(私は強い、私が負ける事はあり得ない)

 

 そうやって自身に暗示をかける。

これが案外効くものだから馬鹿にならない。

 

(・・・よしっ!!)

 

 自己暗示を終えたところに声がかかる。

 

「あと50、戦闘準備を」

 

 その声とともに正面のその先を見据えると同時に猛烈な寒気を感じた。

 もし一言で表すのならば「嫌な予感がする」といった所だろうか。

 その寒気を感じた瞬間、少女は・・・少女の本能は前の女性の腕を取り近くにあった大きな岩へ転がり込んだ。

 

 その刹那、鳴り響く轟音

 

『グギャアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 そしてその轟音と共にやって来る猛烈な熱風に目を開けていられない

 

(何だこれは、熱い・・・全身が焼けてしまいそうな程に)

 

 それほどに熱かった、まるで火山へ放り込まれたような熱を彼女達は感じていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 一体どの位伏せていたのだろうか、熱は大分弱まっている。

 

「・・・大丈夫か?スカサハ(・・・・)

 

「・・・はい、なんとか」

 

 お互いを見やり外傷を確認するが、土埃を被っている程度であった。

なんとか無事に済みチラリと岩から先を覗く。

 

・・・そして絶句した

 

 岩から先の木々がほとんど消滅(・・)しており、大地は焼け黒く変色している。

その先にここからでも大きく見えるほどの赤い竜。

 

「あれを・・・倒すんですか?」

 

「・・・」

 

 女性はスカサハの問いを肯定することはしなかった。

 当然といえば当然だ、明らかに先程の熱風はあの赤竜が行ったものだ。

例え倒そうとしても竜の元へ駆ける間にもう一度同じ事をされれば確実に死ぬ。

 

『可能ならば今すぐにでもここを去りたい』

 

 そんな思いで胸がいっぱいになる。

友を助ける・・・などと言っておいてなんとも情けない話である。

 

(所詮私も自分の命が惜しい他の連中と同じ・・・という事か)

 

 握っていた拳を更に強く握りしめる。

 

(それにもし彼が戦っていたのなら、もう既に先の攻撃で・・・死んでしまっているだろう)

 

 無理に危険を犯す必要は・・・ない

第1にここまで来たのは彼の救出が目的であってアレを倒す事ではない。

 ここで敵討ちと突っ込めば殺される。

それよりもアレの情報を集め、討伐隊を編成しさえすれば倒す事も可能であろう。

 その為に今最もすべき事は・・・

 

「撤退だ。ここより更に離れ安全だと判断した場所で『遠視の魔術』でアレの行動を見る。」

 

 これ以外にあるまい。

既に岩の3分の2程が溶けて変形してしまっている。

いつ第2波が来るか分からないのだ、もしこの場で来れば恐らく耐えきれないだろう。

 

「いいな?スカサハ 」

 

 これは念押しだ。

 

「・・・はい 」

 

 スカサハはそれだけ言うと手に持つ槍の力を緩めた。

 

 隠そうとしない殺気、彼女は奴と戦う気でいた。それは無謀な事だと誰もが思うほどの力の差がありながらも。

 そして何より恐ろしいと感じたのが

 

( コイツ・・・笑っていた )

 

 あの種の笑いは知っている。

 

強者を見つけた時の顔、自分の全力を出せる相手を見つけた時の歓喜の・・・狂気の顔。

 

(まだ12だと言うのに・・・コイツは既に私より強いな。

私の半分しか生きていないのにも関わらず、落ち着いていて、そして何より勘も冴えるようだ)

 

 だからこそ、ここで失うには惜しい命である。

・・・それを理由に逃げているだけでもあるが、この際割り切る必要がある。

 

 『済まん』と仲間であった男に精一杯の謝罪を思いながら後ずさりを始める。

だがしかし、数歩下がった所で異変が起きる。

 

 スカサハが動かないのだ(・・・・・・・・・・・)

 

「おい、スカサハ!!早く引くぞ」

 

「・・・・・」

 

 スカサハの返事はない。

どうやら先の竜をジッと見つめているようだ。

 

「おいどうしたんだ!しっかりしろ!」

 

 肩を叩くがまるで動こうとしない。

 

「あーもう!担いでくからな!!」

 

 そう宣言し腰に手を置いた辺りでスカサハがポツリと呟いた。

 

「・・・人が」

 

・・・人?

 

 一瞬惚けてしまった隙を突かれ、スカサハは腕を振りほどき竜の元へ駆けていってしまう。

 

「おい!?スカサハ!?やめろ!!早まるな!!」

 

 しかし彼女は止まらない、今もグングンと竜との距離を詰めていく。

 

「あー!!クソ!!・・・・見捨てらんねぇ!!」

 

 どうやら私は、かなりのお人好しなんだとこの時初めて思った。

それにスカサハは『人』と言ったのだ、ならば多少の期待位は残して置いても良いだろう。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

『グガアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 竜の悲鳴にも聞こえる咆哮によってスカサハは漸く足を止めた。

そして数瞬遅れてもう1人もスカサハに追いつく。

 

「おい!!何やってんだ!早く逃げ・・・・る・・・ぞ・・・」

 

 女性の表情を一言で表すのならば驚愕。

何故そのような顔をするのか?その理由は

 

 スカサハと然程変わらない背の少年が巨竜の右前足を両断したからである(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 そして、羽、後脚、尻尾と瞬く間に胴体と切り離されていく。

そのまま何も抵抗出来ずに首を刎ねられ、竜は絶命した。

 

 少年は絶命した竜に乗り、気が付いたのか此方を見る。

 

 紅く光る目がまるで此方の全てを見透かしているような・・・とても不気味な少年だった。

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