「リアスの歓迎会をしましょう!」
お昼休み、みんながマオが作ったご飯を囲んでいるときに、リーリエが急に席を立ってそんなことを言い出した。ポケモンフーズを食べていたポケモンたちもクラスの皆も一斉にリーリエを見る。
「と、突然どうしたのリーリエ?」
「いえ、ふと頭に浮かんだので……思わず口に出してしまいました」
「歓迎会か……そう言えば忘れていた」
「あたしも。それどころじゃなかったのもあったけど、すっかり頭から抜けてたよ〜」
カキとマオがしまったという顔で顔を見合わせた。わたしもその例に漏れず、ただ新しいクラスメイトとしてリアスが加わる日を心待ちにしていただけだったので、リーリエが何も言わなかったら忘れたままだったかもしれない。危ない危ない。
歓迎会というのはその名の通り、新しく学校にやってきた子を歓迎するためのイベントのこと。このトレーナーズスクールの恒例イベントで、クラスの皆が参加して盛り上げて、新入生に早く学校に馴染んでもらえるようにする。わたしたちのクラスではまだやったことがないんだけど、他のクラスの歓迎会を手伝ったりしかことが何度かあるから皆知っている。
「皆さんも覚えていなかったんですね……てっきり何か理由があるのかと思ってました」
「うーん、理由はあるにはあるけど。リアスってまだあんまり動けないでしょ? 歓迎会はなんだかんだ言って歓迎される側も疲れるし、それでまた寝込んじゃったら意味ないからさ、リアスが元気になってからだよなーって」
「「……………」」
「な、なんだよ?」
「いや、マーマネがちゃんとその辺考えてたのが以外っていうか……」
「以外? 失礼だなー! 僕はこれでもリアスのリハビリのデータとかちゃんと見てるんだからな!」
ぷんすかとマーマネが怒り出す。こればかりはマーマネは悪くないのでみんなで謝った。
でも、わたしも正直ちょっと意外に感じた。マーマネってリアスとはそんなに関わりあってなかった気がしたけど、本当は全然違ったみたいだ。カキがちょっと気まずそうにしてるのは、リアスへの対応についてマーマネと自分で差はないと考えていたからじゃないかと思う。でも、カキは口下手なところがあるから仕方ないんじゃないかな。
「それで、歓迎会についてマーマネはどう思ってるの?」
「今ぐらいならいいんじゃない? 手と足もちゃんと動かせるようにリハビリ中、もうすぐ車椅子に座れるようになるって先生が言ってたから、それに合わせればいいと思うけど」
「なるほどね! じゃあリアスを車椅子に乗せて学校を見て回れるようになったら歓迎会をやろう!」
マオのその提案にみんなが賛成して、時期はリアスの車椅子デビューの日に合わせることになった。
手足が動くってことは自分で車いすを漕げるようになるってことなのかな、と思ってマーマネに聞いたらそうではないらしい。あくまでコップやスプーンが持てるくらいで、自分の力で車いすを漕ぐくらいになるにはまだ時間がかかるとのこと。つまり車いすはわたしたちが押してあげないといけないね。
「歓迎会をするのはいいとして、何をするかも問題だな」
「カキはよくスポーツ対決をするけど今回は難しいかもねー」
「ポケモンバトルも厳しいか……トレーナーかどうかも分からないしな。見る分にはいいかもしれないが」
「ポケモンバトルは色んなところでやっていますからね。バトルにこだわらなければ良いのではないですか?」
カキたちがああでもないこうでもないと話し合い始める。確かに歓迎会の内容についてはちょっと工夫が必要かもしれない。
リアスは瞳を動かすことはあっても口を開いて話すことはしない。ククイ博士が言うには「そもそも声が出せない」らしい。喉が痛い……というわけじゃなさそうだけど。喉から声を出すなんてこと、私たちは当たり前のことのようなことだから少し不思議だ。
そのせい、というわけではないんだろうけれど、リアスはいろんなことに対する反応が薄い。話しかけたらこっちを見てくれるけど、ちゃんと話を聞いているかまでは分からなかった。
そのため、リアスの歓迎会には自然と制限が多くなってしまう。それでも歓迎会というからにはリアスに楽しんでもらいたかった。
「う〜ん、なかなか難しいなぁ。スイレンはなにか考えてない?」
いい案が出ないのか、困り顔でマオが聞いてきた。隣ではリーリエが「時期尚早だったでしょうか……」と落ち込んでいる。
確かに、少しだけ気が早い話だったかもしれない。いつもならしばらく新入生と過ごして、どんな内容にするのか決める(らしい)。でも、わたしたちは何日間かリアスと顔を合わせているとは言っても言葉を交わすことすらなかったから分からないことばかりだ。一緒に授業を受けたり遊んだりすれば時間をかけてリアスに合った歓迎会を考えることもできるかも。
でも、それこそ工夫次第できっとなんとかなる。
何をすればリアスは喜んでくれるのか、興味を持ってくれるのか、わたしたちと仲良くなれるのか。それが分からないからマオたちは困っている。なら……
「なら、リアスの好きなものを見つけるための歓迎会にすればいいのかも……」
「と、言いますと?」
「リアスが喜ぶものが何かわからないのは仕方ないよ。だから、歓迎会で見つけてあげればいいんじゃないかなって」
実はほんのすこしだけ、焦りにも似た気持ちがあった。だってリアスは誰なのかわからない。もしかしたら明日にでも手がかりが見つかって、ここからいなくなってしまうかもしれない。
だから、歓迎会をするならできるだけ早く。でもそれを言葉にはしなかった。
そのとき、ぽん、とマオが手を叩く。
「あぁ、なるほど!たとえばあたしはできるだけいろんな種類の料理を作ってリアスに食べてもらう、そしてリアスがたくさん食べたのが、たぶんリアスの好きな料理って感じだね!」
そんなマオの言葉を皮切りにみんなも納得がいったみたいだった。ほっと胸をなでおろす。
目標が決まれば、あとはアイデアを出すだけ。これはみんな早かった。ククイ博士に報告すると、「歓迎会? ナイスアイデアだ! 俺も混ぜてくれないか?」と快くOKしてくれるどころかやる気を出してくれた。
あとはそれぞれ準備をして、リアスが回復して教室にやって来るのを待つだけ。
「わたしたちにとっては初めての歓迎会だね……頑張ろう、アシマリ!」
「しゃま!」