ソードアート・オンライン・リターン   作:剣の舞姫

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シリカ登場です。ただし台詞は無い。
それと、途中一部で糖分過多となります。くれぐれも珈琲のご用意をお忘れなき様・・・。


第十話 「二刀流の目覚めと殺しについて」

ソードアート・オンライン・リターン

 

第十話

「二刀流の目覚めと殺しについて」

 

 前回より半年早い二刀流の習得、それはキリトにとって嬉しい誤算だった。

 確かに早いうちに二刀流を習得出来たらとは思っていたが、全プレーヤー中で最も高い反応速度を持っていても、いつ、どのタイミングで習得出来るのかは不明だったため、もしかしたら前回と同じくらいのタイミングになるのではないかと思っていたくらいだから、今回の二刀流習得は本当に嬉しい誤算でしかない。

 

「あ、でもやっぱり二刀流のソードスキルは取り直しだな」

「本当だねー、今はまだエンド・リボルバーとカウントレス・スパイクの二つだけ?」

「ああ、熟練度を上げてやらないとダブルサーキュラーもスターバースト・ストリームも、ジ・イクリプスも使えない」

 

 動きだけなら再現出来るが、実際にソードスキルとして発動するには二刀流のスキル熟練度を上げなければ無理だ。

 幸いな事に片手剣のスキル熟練度は先日コンプリートしたばかりなので、これから先は二刀流の熟練度上げに集中出来る。

 

「前より半年も早く取得出来たんだもん、前より早く熟練度上がるよね?」

「ああ、前はジ・イクリプスは習得出来ていたしコンプリートもしたけど、やっぱり片手剣一本より慣れていた訳じゃない。だけど今回は前以上に慣れることが出来る筈だ・・・・・・それに、二刀流用のシステム外スキルの構築もな」

 

 キリトは前回と同様にシステム外スキルの構築を行っていた。今の所は前回と同じで“武器破壊(アームブラスト)”を一刀流での対人戦メイン戦術に組み込んでいる。

 だが、今現在、キリトが考えているシステム外スキルは二刀流用、それも最上位剣技であるジ・イクリプスをも超える真に最強のソードスキルと呼ぶべきスキルなのだ。

 

「ヒースクリフ団長との戦いでの、キリト君の切り札・・・」

「ああ、二刀流システム外ソードスキル・・・スターメテオ・ストリーム、必ず組み上げてみせるさ」

 

 完成させるには二刀流のスキル熟練度をコンプリートさせる事と、今以上に反応速度や反射速度、剣速、自身のスピードを上げなければならない。

 事実上、予定している75層ボス攻略に間に合わないとまで考えていたスキルだが、半年も早く二刀流を取得した事で完成の目処が立った。

 ジ・イクリプスまでのソードスキルはヒースクリフ・・・茅場晶彦が考えたものだが、キリトの考えているシステム外ソードスキルはあくまでキリト自身が考えた物、つまりヒースクリフとの戦いでは完全に彼の知らない戦法ということになるので、大きなアドバンテージを得る事が出来る。

 

「ユイ、覚えている限りの事で良いんだが、神聖剣について教えてもらう事って出来るか?」

「はい、わたしが以前まで使えたGM権限で覗き見たユニークスキルの話になってしまいますが・・・」

「それで構わない」

「そうですか・・・では、先ずユニークスキルについておさらいです」

 

 ユニークスキルとは通常のエクストラスキルの様に出現条件を満たせば誰でも使えるスキルではなく、全プレーヤーの内、いち早くスキル出現条件を満たした者にのみ与えられるスキルである。

 その数は10個で、1万人の内、10名だけがユニークスキル取得可能となるのだ。

 

「パパの二刀流は全プレーヤー中、最も反応速度の速いプレーヤーに与えられるスキルです。そして、ヒースクリフの使う神聖剣、あればGMにのみ与えられるスキルとして設定されています」

「つまり、ヒースクリフ団長は最初から神聖剣を取得する事が決められていたって事ね」

「ああ、公平を信条としている癖に随分とセコイ手だ」

「因みに、残る8つのユニークスキルでわたしが閲覧出来たのは6つだけです」

「それって二刀流と神聖剣以外にって事?」

「はい」

 

 ちょっと、気になった。

 既にキリトが二刀流を取得しているので、もうこれ以上のスキル取得は無いだろうと思っていたが、考えてみればまだ8つもユニークスキルは残っており、その詳細はキリトもアスナも知らないのだ。

 

「因みにわたしが知っている残るユニークスキルは神速、無限槍、手裏剣術、抜刀術、射撃、暗黒剣の6つですね」

「神速は速度系だよな・・・無限槍は槍を使う奴に与えられるって所か? 手裏剣術は投擲武器だな」

「抜刀術は刀使いかな? クラインさんとか。暗黒剣と射撃っていうのはよく判らないけど」

 

 因みにユイでも残るユニークスキルの取得条件は知らないらしい。そこまで閲覧する権限は以前でも持っていなかったとか。

 

「ねぇねぇキリト君」

「どうした?」

「わたしもユニークスキルを取得したら面白くない?」

「いや、それは確かに面白いけど・・・そう簡単に取得出来るものじゃないだろ? 俺だって前回二刀流を取得出来たのは全くの偶然だったんだし」

 

 ロマンがな~い。とふくれっ面になるアスナの腰に手を回し、抱き寄せながら耳元に口を寄せて、キリトは囁くような声で伝えるべき事を言う。

 

「ユニークスキルが無くても、アスナは俺の事を守ってくれてる、 だからこそ、俺はそれだけで無敵になれるんだ」

「き、キリト君・・・・・・」

「アスナは、いつだって俺の勝利の女神だよ」

「わ、わたしも、キリト君が守ってくれるから、いつも頑張れるんだよ? キリト君も、わたしの勝利の王子様なんだから」

 

 娘の前だというのに何をやっているのか、と出来た娘であるユイは両親の仲の良さを喜びつつ、呆れつつ、空気を読んで先に寝室へ向かう。

 その後、キリトとアスナが寝室で眠るユイの両サイドに横になったのは3時間も後の事であったのは、言うまでもない。

 

 

 

 キリトが二刀流を取得して数日、キリトとアスナは二人でレベリングとギルドに説明した上で二刀流スキル熟練度上げをしていた。

 右手にはエリュシデータを、左手にはエリュシデータとエンシュミオン以外でキリトが現在持っている片手剣の中でも最高の剣であり、50層ボス攻略にも使用していたシャドウロードという黒い片手剣を持ってエンカウントするモンスターは片っ端から倒している。

 現在二人が居るのは最前線から離れた第35層にある迷いの森の中で、時期的には前回キリトがビーストテイマーの少女シリカと出会うより前になるのだが、この森は何気にモンスターが豊富なので、熟練度上げには丁度良いのだ。

 

「この森でシリカちゃん・・・だっけ? その子に会ったの?」

「ああ、丁度タイタンズハンドってオレンジギルドにメンバーを殺されたシルバーフラッグスってギルドの生き残りの依頼でな、タイタンズハンドを追っている時に会ったんだ」

 

 因みに、今現在はまだシルバーフラッグスも健在だ。同時にタイタンズハンドや笑う棺桶(ラフィン・コフィン)といったオレンジギルドやレッドギルドもまた。

 

「タイタンズハンドは正直、小物だ・・・黒鉄宮送りで十分だけど」

「ラフコフだね・・・」

「あいつ等は・・・俺の正直な意見だけど、殺すべきだと思ってる」

 

 前回は、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦で何名かのメンバーをキリトは殺している。だが、リーダーであるPoHとジョニー・ブラック、ザザといった厄介な三人は殺せず、あのときに姿を現さなかったPoH以外のジョニー・ブラックとザザだけ黒鉄宮送りに留まってしまった。

 しかし、キリトの考えとしては、あの三人はここで殺しておかなければ黒鉄宮に送っても脱獄するかもしれないし、現実に戻った後に凶悪犯罪を犯す可能性も考えられる。

 

「最悪なのは、SAO帰還後に帰還者を狙って殺人を犯す可能性だ」

「快楽殺人者で、殺しを何度もSAOで経験しているから・・・あり得そうで怖いわ」

 

 キリトとしても積極的に殺したくはない。だけど、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だけは別と考えなければならないだろう。

 何せ、前回の討伐作戦で貴重な前線攻略メンバーを何人か失っているのだから。今回も同じ事が起きて攻略に遅れが生じる可能性だってある。

 

「50層の攻略が前回より早く終わったから、今の所は前よりも攻略ペースが早い」

「でも笑う棺桶(ラフィン・コフィン)を野放しにしていたら前と同じペースに戻る可能性も、ううん・・・下手したら前よりも遅れてしまう可能性もあり得るよ」

 

 これは、ヒースクリフと相談するべきだろう。

 彼の正体が茅場晶彦だということを知っていても、攻略する事においては一定の信頼が置けるというのも理解しているので、今後の攻略ペースを落とす可能性が秘めている上に、存在そのものが危険な笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐について早急に話し合う必要があった。

 

「さてと、そろそろ帰らないとユイちゃんがお腹空かせるわ」

「だな、帰るか」

 

 大分周囲も暗くなってきたので、本日の熟練度上げはこの辺りで切り上げる事にした。

 転移結晶は流石に勿体無いので、一度歩いて森を出る事にした二人は森の出口目指して歩き出したのだが、数分歩いている内にキリトの索敵スキルが何かを察知する。

 

「アスナ、止まれ」

「え? ・・・あ」

 

 漸くアスナの索敵スキルにも反応があったらしく、神妙な表情を浮かべてキリトと共に近くの木に身を隠した。

 二人が木の影に身を隠して数分後、二人が居た場所を歩く集団が居た。人数は6人程度、男4人に女2人という構成だ。

 

「あれは・・・シリカ!?」

「あの小さな子?」

 

 そう、キリトが目視した集団の中に、見間違うはずも無い。シリカが、その肩にフェザードラゴンのピナを乗せて歩いていたのだ。

 しかも、最悪な事にシリカが一緒に歩いている集団の中に居るもう一人の女性もまた、キリトには見覚えがあった。かなり嫌な見覚えではあるが。

 

「あの人たちはシリカちゃんギルドメンバーかな?」

「いや、違う・・・この頃のシリカは何処のギルドにも所属しないで、基本はフリー。街中で同じフリーやソロの人とPT組んでフィールドやダンジョンに出向いているだけだったんだ・・・それに、シリカがあんな奴の居るギルドに、入るわけが無い」

「あの人達の事も知ってるの?」

「ああ、男達は知らないが、あの女だけはよく知っているよ」

 

 見間違うはずも無い。特に、シリカの隣を歩く赤髪の槍を持った女性、その女をキリトが見間違う訳が無かった。

 

「オレンジギルド、タイタンズハンドのリーダー・・・ロザリアだ」

「あの人が!?」

「ああ、そうだ・・・だけど、何でこんなにも早くにシリカがあの女と一緒に・・・?」

 

 そう、シリカが一緒に歩いている集団の中に居る女性は前回もシリカと出会う切欠となった犯罪者集団。オレンジギルドのタイタンズハンドのリーダーだった。

 だが、シリカが彼らと一緒のPTになったのはもっと後の筈、なのに何故、この時期にシリカがタイタンズハンドのリーダーと一緒に居るのか。

 

「シリカの性格から考えて、タイタンズハンドに入った訳じゃない・・・それは間違いない筈なんだが・・・」

「もしかして、わたし達が原因じゃない?」

「俺達が?」

「ほら、よく小説とかであるでしょ? 歴史の修正力ってやつ」

「ああ・・・歴史に介入して、本来の歴史を歪めようとしても、必ず本来の歴史に限りなく近い状態になるよう何らかの修正が入るってやつか」

 

 つまり、キリトやアスナがSAO攻略を前回よりも良い結果へと持っていこうと行動した結果、歴史の修正力が働き、シリカが前回よりも早いタイミングでタイタンズハンドと出会い、PTを組んでしまったということだ。

 

「不味いな・・・こんなに早いと、前回シリカがピナを死なせたときの状況から考えて、今回は前以上に危険過ぎる」

「どういうこと?」

「シリカは、元々この森を一人で抜けられるほどレベルが高くない。前回でもそうだった・・・だけど、今回は前よりも早くこの森に来てしまった・・・前よりも低いレベルで、だ」

 

 この後、シリカがロザリアと口論になり、PTを抜けて一人になれば・・・今のシリカのレベルではピナだけを失うどころの騒ぎではない。

 

「シリカまで、死ぬっ!」

 

 こんな所で自分達の行いの弊害が出てしまった事に、2人は唖然とするしか無かった。

 だけど、今の2人は前回よりもレベルが高く、キリトには二刀流がこの段階で存在している。だから、今度はピナが死んでシリカと思い出の丘に行くという仲を深める機会を失ってでも、ピナごと助ける事が出来る。

 そのために、キリトとアスナは先を行くシリカ達の後を追うのであった。




一部、書いてて砂糖吐いてましたww

次回は前回より低いレベルで迷いの森を一人で行く事となったシリカ救出劇です。

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