ソードアート・オンライン・リターン   作:剣の舞姫

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第十四話 「攻略組ギルド団長会議」

ソードアート・オンライン・リターン

 

第十四話

「攻略組ギルド団長会議」

 

 第60層の主街区にあるとあるレストランに、攻略組ギルドの各団長達が集まって食事会を開いていた。

 黒閃騎士団からは黒の剣士キリト、血盟騎士団からは神聖剣ヒースクリフ、アインクラッド解放軍からは攻略団長ディアベルと支援団長シンカー、聖竜連合からはブルーノ、風林火山からはクライン、そして最近になって攻略組入りした月夜の黒猫団からはケイタがそれぞれ出席している。

 

「さて、本日は会議という名の食事会ということで、無礼講だ。存分に楽しんでくれ、乾杯」

『乾杯』

 

 ヒースクリフの音頭で乾杯し、食事会が始まった。

 食事をしながら最近のギルドの近況を話し合ったり、ギルドの決まりごとについてどんな良いものが他のギルドにあるのかなどの意見交流も行われていたが、中でも一番話題として大きく取り上げられたのはキリトの二刀流だ。

 最近になってキリトは情報屋を通じてユニークスキルである二刀流取得をアインクラッド全土に公表した。当然だが、嫉妬や妬みといった声はあったものの、攻略組最強2大ギルドの片割れである黒閃騎士団の団長がもう片方の血盟騎士団団長と同じくユニークスキル使いになったというニュースは、攻略を進める上で喜ばしいものだと、納得する者が多い。

 

「そういやキリト、もう直ぐおめぇ結婚2年目だろ? 結婚記念日の祝いとかってするのか?」

「ああ、それならギルド内で盛大に祝ってくれるって事になって、良かったらお前も来るか?」

「お、良いのか? なら遠慮なく行かせて貰うぜ」

「ああ、ディアベルもケイタもシンカーさんも来いよ、歓迎する」

「当然、行かせて貰うよ、第一層攻略の時からの付き合いだ、何か祝いの品でも用意しておこう」

 

 クラインの言葉からキリトとアスナの結婚記念日の話にシフトして、祝いにはクラインもディアベルもシンカーも来てくれることになった。

 当然、この場に居るので誘わないのは悪いとブルーノとヒースクリフにも誘いを掛けたが、その日は生憎と2人とも都合が悪いとの事なので、丁重に断られる。ただし、後日何か祝いの品を送るとの事だ。

 

「それにしてもキリト君とアスナ君は随分と早い時期から結婚していたらしいね?」

「まぁ、知り合ってもう4年ですから」

「おや、それではSAOを始める前からの知り合いという事かな?」

「…ええ」

 

 ヒースクリフの問いに対して嘘を付いた。正確には前回から合わせて4年という意味なのだが、それを話すわけにもいかないので、あえてSAOを始める前から、つまりリアルでの知り合いだという事にしたのだ。

 

「かぁ~! 羨ましいねぇ、黒閃騎士団副団長、閃光のアスナさんといやぁ、アインクラッド美女グランプリで堂々の1位に輝くアインクラッド一の美少女って噂だぜ? そんな美人の奥さんとかこの幸せ者め!」

「お、おいクライン、頼むから首絞めるな…!」

 

 因みに、キリトとアスナの影響で現在のアインクラッドでは結婚ブームが来ている。前回では結婚するプレイヤーカップルは少なかったのだが、今回は結婚するカップルがかなりの数居るという話だ。ただし、同じ様に離婚するカップルも多いらしいが。

 

「あれだな、キリトくんとアスナくんは誰もが認める最高カップルという事で、君達ほど長く続く夫婦は未だ現れないらしいよ」

「ディアベル…そういうお前はどうなんだよ? お前だって顔は良いんだからモテるだろ?」

「い、いや、俺はそこまで・・・シンカーとは違うよ」

「ちょ、ディアベルさん!?」

 

 何でも、シンカーは同じアインクラッド解放軍の団長補佐であるユリエールと付き合いだしたらしい。

 キリトとアスナの影響で、近々結婚も視野に入れているのだとか。

 

「へぇ、シンカーさん、おめでとうございます」

「あ、あはは…うん、ありがとう」

「ケッ、女の居るギルドは良いねぇ、出会いがあってよ」

「全くだクラインくん、それは同意するよ」

「って、ブルーノ! てめぇのギルドにも女は居るだろうが!!」

「ウチに入る女プレイヤーみんなゴツイんだって!!」

 

 曰く、ゴリラにすら素手で勝てるんじゃね? と言いたくなるような女性ばかりらしい。その内「ブルァアアア!!」とか言い出しそうで怖いとか。

 

「そういえばケイタ、サチは? 最近良い雰囲気だってダッカーからメールが来てたけど」

「え、いや・・・サチとは友達であって、別に付き合うとかそんな関係じゃないからなぁ」

「ここにも居たよリア充…」

 

 クラインがそろそろ呪詛を唱え始めそうで怖いので、この話は早々に切り上げた。

 因みに余談だが、ヒースクリフは女性に対して全く興味を示さないらしく、噂ではホモじゃないのか? とか言われているのだが、彼自身がそれを強く否定してた。

 

「さて、今回の食事会だが、幹事であるキリト君が我々に話したい事があるという事で集められている……キリト君、そろそろ話してもらえるかな?」

「ああ、今回みんなに集まってもらったのは殺人ギルド、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)についてなんだ」

 

 その名前が出た途端に、全員の顔が真剣な表情になった。どうやらふざけた雰囲気で聞いて良い話ではないと直ぐに判断したらしい。

 

「何日か前に、俺とアスナが黄金林檎っていうギルドの団長、グリセルダさんを笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の暗殺から助けたんだが、正直に言う…あいつらはそろそろ攻略組の人間すらPKする恐れがある」

 

 グリセルダのレベルは攻略組にこそ届かないが、それでも中層プレイヤーの中ではトップクラスだった。そんな彼女を暗殺とは言え、殺せるだけのレベルと実力があるという事は、近いうちに攻略組の者すら殺せるだけのレベルと実力になる可能性が高くなる。

 

「そうなる前に、攻略組の人間が奴らに殺されるなんて事が起きる前に、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)を討伐するべきじゃないかと、俺は思ってるんだ」

「なるほどな、確かに…奴らの噂は僕も聞いているが、ろくな噂じゃない」

「俺も知ってる、確か今までにPKされた200人以上の内、半分以上はラフコフに殺されたって」

「攻略組から犠牲が出れば、攻略に致命的な遅れすら生じる可能性もあるな…確かに、討伐は必要、か」

 

 ディアベルもケイタもブルーノも、それぞれ知っている笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の噂を思い出し、キリトの意見に賛成の意を示す。

 何も言わなかったが、それはシンカーもクラインも同じで、2人も頷いているのだが、ヒースクリフだけは何も言わず、頷く事も無かった。

 

「ヒースクリフ、あんたの意見は如何だ?」

「ふむ…私からは特に意見は無い。討伐するのであれば団員を派遣しよう、君達の好きにしたまえ」

 

 つまり、討伐するしないに興味は無い。するのであれば団員を出すから好きにしろという事らしい。あまりに協力的ではない態度だが、一応は討伐の際に血盟騎士団からも人を出してくれるという事なので、それで良しという事にした。

 クラインは不服そうな顔をしているが、キリトとしてはヒースクリフのこの態度は予想していた通りなので、特に何かを思う事は無い。彼は攻略で剣を振るう事に興味はあれど、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)などのオレンジ、レッドギルドに興味は示さなかったのは前回も同じだったのだから。

 

「じゃあ、この場で決めようと思う。笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦を決行する、日時や詳しい作戦なんかは今後、情報漏洩を防ぐ為にメールでやり取りするから、そのつもりで」

「わかったぜ」

「わかった」

「了解だよ」

「了解した」

「ふむ」

「あ、一つ良いかな?」

 

 誰もが了承する中、シンカーだけが挙手した。何かあったのかと尋ねれば、当然の疑問が帰ってくる。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のアジトとか、構成人数などは把握してるのかな?」

「構成人数やアジトについては現在調査中、鼠の話では明日明後日中には判るらしいから、それを待ってる。情報が入り次第メールするよ」

「なるほど、それなら了解だ。一応、軍でも情報を集めておくよ」

 

 アインクラッド解放軍後方支援団長シンカーの部下で、情報収集部門は中々に優秀だという話なので、それはありがたい。

 ブルーノも聖竜連合でも情報収集を行っておくと言ってくれたので、それについても礼を述べておく。

 風林火山と月夜の黒猫団は少数ギルドの為、情報収集は出来ないが、それについては適材適所という事で落ち着いた。

 

「じゃあ、真面目な話は此処までにして、楽しもう」

「だな! さぁてまだまだ食うぜ!!」

「僕もエールをお代わりするよ、すいませーん!」

 

 真面目な話が終わり、再び楽しい会話が始まった。

 好みの異性の話や最近見た可愛い女の子の話など、男の集まりというだけあり、話の内容は中々に濃いというか、エロスを感じさせるというか、既に結婚しているキリトと、恋人の居るシンカーとしては返答に困る話題ばかりになる。

 

「ところでよぉキリト、おめぇ釣りスキル持ってるよな?」

「ん? ああ、コンプリートしてるけど」

「マジかよ…いや、それはいいが、俺も最近釣りスキルを上げてんだけど、何処かに良い釣りポイントってあるか?」

「いや…俺は基本的に22層でしか釣りはしないから、他の層の釣りポイントは知らないな」

「そっか、なら俺も今度22層に行って釣りでもするかねぇ」

「する時は呼んでくれ、俺も付き合うから」

「おう!」

「あ、僕も良いかな? 釣りスキルなら僕もコンプリートしているから」

 

 キリトとクラインが釣りの話をしていると、シンカーが乗ってきた。どうやら彼もキリト同様に釣りスキルをコンプリートしていたらしい。

 今度22層に来て一緒にやろうと約束すると、今度はディアベルがだったらその内はじまりの街にも来てくれと言い出した。

 

「はじまりの街に?」

「ああ、実は俺、最近裁縫スキルを上げていてね、洋服なんかを作ってるんだけど、ユイちゃんに似合いそうな服を作ったからキリトくんとアスナくんに見てもらいたいんだ」

「あ、そうなのか? だったら今度ユイも連れて行くよ」

「待ってるよ」

 

 因みにユイは現在、アインクラッド唯一のプライベートチャイルドという事と、アインクラッド最強夫婦の愛娘という事で、結構有名人になっている。

 結婚ブームが来たのは、ユイみたいなプライベートチャイルドが欲しいというプレイヤーが増えたのも原因の一つらしいが、プライベートチャイルド入手のイベント発生条件には夫婦の絆が一定レベルまで上がらないと発生しないというものがあり、その段階に行く前に離婚してしまうパターンが多いため、中々プライベートチャイルドを持つプレイヤー夫婦が現れないらしい。

 

「因みに今までのユイちゃんの服はどうしてたんだい?」

「アスナが裁縫を上げて作ってた」

 

 ユイに可愛い服を着せるんだと、親馬鹿全開にして必至の形相で裁縫スキルを上げていたアスナが今では懐かしい。

 まぁ、可愛い格好をしたユイを見たいというのはキリトも同じなのだが、この夫婦はユイの事となると本当の本気で親馬鹿になる。

 

「へぇ、アスナさんが作った服を着るユイちゃんか、可愛いだろうなぁ」

「言っておくがなクライン、いくらユイが可愛いからって、手を出したら黒鉄宮の牢獄に送るからな」

「いくらなんでも俺ロリコンじゃねぇよ!?」

 

 ユイの為なら貴重な回廊結晶すら惜しくないと言い切るキリトに、親馬鹿極まれりと、この場の誰もが思った。

 こうして、攻略組ギルド団長会議は幕を閉じる。

 そして、一週間後、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦が決行される日、およそ100名以上の討伐隊が組まれ、彼らのアジトがある層に集まるのだった。




次回は対笑う棺桶(ラフィン・コフィン)戦です。
キリトが過去に戻ってきて初のPK及び二刀流習得後初の無双となります。

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