ソードアート・オンライン・リターン   作:剣の舞姫

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久しぶりに戦闘を書いた気がする…。ラブラブ多すぎたかね?


第二十話 「最大難易度の戦い」

ソードアート・オンライン・リターン

 

第二十話

「最大難易度の戦い」

 

 丸一日掛けてレベル上げを行ったキリトとアスナは、前回の最終決戦時ほどではないものの、大分それに近いレベルにまで上げる事が出来た。

 翌日にはユイとルイを連れて第1層はじまりの街に行き、ディアベルとシンカー、ユリエールに挨拶と、新しい娘のルイを紹介してから地下迷宮に向かう事になる。

 

「しかし、キリトさんも物好きな方ですねぇ、スカペンジトードの肉を食べたいとは」

「シンカーさんは食べた事があるんですか?」

「一度だけね…でも僕もユリエールも一口でアウトだったよ」

 

 ユリエールを見ると、味を思い出したのか青白い顔をして頷いていた。

 曰く、不味い訳ではない。不味い訳ではないのだが、美味しいとも思えない、でも何処か美味しいと思えなくも無いのに、不味いとも思えてしまう。そんな摩訶不思議な味なのだとか。

 

「現実で食用カエルの肉は鶏肉に近いって言うけど、スカペンジトードの肉は俺も食べたいとは思わないなぁ」

「そうでっか? ワイはごっつ好みな味やったんやけどな」

 

 ディアベルもキバオウも食べた事があるらしいが、ディアベルも美味しいとは思えず、キバオウだけは美味しかったと感想を残している。

 

「とりあえず、俺も食べてみたいから地下迷宮に行って来るよ」

「ああ、ただしあまり深いところまでは行かない方が良い。最深部に近づくにつれてポップするモンスターのレベルがどんどん上がるからね」

「ああ、気をつけるよ」

 

 挨拶を終えてキリト達は黒鉄宮から地下へと降りていった。

 懐かしい地下ダンジョンに入ると、早速だが目的のシステムコンソールのある部屋へ向かって歩き出し、途中でポップしたスカペンジトードも倒しながら進む。

 

「お、スカペンジトードの肉ゲット」

「う~、ディアベルさんやシンカーさんにああ言った手前、捨てられない…料理、したくないなぁ」

 

 アイテムストレージにスカペンジトードの肉が追加されたのを確認して嬉々としているキリトの隣でアスナがゲッソリしていた。

 その2人の前方ではユイとルイが手を繋いで歩いており、若干だが足の遅いルイをユイが引っ張る形になっている。

 

「おねえ、ちゃん…はや、い……」

「ごめんなさいルイ! もう少しゆっくり歩きますね」

「う、ん……」

 

 姉妹仲良くしている様でキリトもアスナも安心した。手を繋いでいる姿や、ユイのお姉ちゃんっぷりが微笑ましい。

 

「この階だったっけ?」

「うん、この長い廊下の先だった筈だよ」

 

 漸くシステムコンソールのある階まで降りてきた。今は長い一直線の道を歩いているのだが、この先にシステムコンソールのある部屋があり、その手前でギルティサイスが現れるのだ。

 用心の為、既にキリトはエリュシデータとダークリパルサーを、アスナはランベントライトを抜いていつでも戦える様に戦闘準備を整えている。

 ユイとルイも両親が戦闘準備を整えた時から既に2人の後ろに移動しており、キリトとアスナがギルティサイスとの戦いを始めた瞬間にコンソールのある部屋へ走れるよう準備をしていた。

 

「……っ! 来るぞ!!」

 

 何も無い所から突然現れた巨大な鎌、その刃が振り下ろされた。

 キリトはユイを、アスナはルイを抱かかえて回避すると、2人をコンソールの部屋まで走らせてから現れたギルティサイスと対峙する。

 

「やっぱり、威圧感が凄いな」

「うん、でも…」

 

 横薙ぎに振るわれた鎌を避けてキリトがギルティサイスの懐まで飛び込むとダブルサーキュラーを発動し、アスナはリニアーをギルティサイスの腕に放った。

 

「おおおぁああああ!!!」

 

 ダブルサーキュラーを放った後、キリトはギルティサイスが反撃する暇を与えないよう連続で斬りかかり、その後ろではアスナが腕を中心に狙って攻撃している。

 

「(もっとだ! もっと、もっと速く!!)」

 

 斬りかかる度、キリトの剣速が速くなる。だが無常な事にギルティサイスのHPバーは未だ殆ど減っておらず、逆に…。

 

「きゃあ!?」

「アスナ! ぐぁあああっ!!?」

 

 ギルティサイスの反撃を許してしまい、二人とも一撃でHPが半分も削られてしまった。

 

「くっ…アスナ、俺が時間を稼ぐ! アレを使え!」

「っ! 10秒だけ、持ちこたえて!!」

「判った!!」

 

 アスナが下がってシステムメニューを開くのと同時にキリトがギルティサイスの振り下ろしてきた鎌をエリュシデータとダークリパルサーをクロスさせる事で受け止める。

 

「スターバースト……ストリーム!!」

 

 鎌を弾いてから放たれる二刀流上位スキル、黒の剣士キリトの代名詞とも言うべき高速16連撃、スターバースト・ストリームがギルティサイスに襲い掛かった。

 ギルティサイスを襲う二刀の刃、ライトエフェクトにより輝く軌跡を描きながら振るわれる高速連撃は光の粒子を星の如く残しながら次々と振るわれた。

 だが、スターバースト・ストリームの弱点は斬撃の最中はキリト自身が無防備になるという点だ。斬撃の合間に振るわれる鎌が身体の彼方此方を斬り、キリトのHPが見る見る減っていく。

 

「キリト君、今!!」

「せぉおおおあああああ!!!」

 

 最後の16撃目が決まると同時にキリトはスキル後の硬直で動きが止まる。だが、それでも最後の一撃がギルティサイスに見事な隙を生み出してくれた。

 

「はぁああああああ!!」

 

 キリトの背後から走り寄るアスナがランベントライトを構えると、ランベントライトがソードスキルの発動によりライトエフェクトで輝く。

 そして同時に、アスナの姿がその場から消えた。

 

『Gigaaaa!!』

 

 此処に来て、初めてギルティサイスが悲鳴を挙げる。見ればいつの間に移動したのか、アスナがギルティサイスの真後ろからランベントライトを首の骨と骨の間に突き刺していたのだ。

 

「キリト君!」

「任せた!」

 

 今度はキリトが後ろに下がる番だった。

 キリトが下がると同時にアスナは再び姿を消し、ギルティサイスの眼前に現れて眉間にランベントライトを突き刺す。

 

「まだまだぁ!!」

 

 一度だけではない、二度、三度…目にも止まらない高速連刺突がギルティサイスの眉間を襲い、ギルティサイスももがき苦しむような声を上げながらアスナを叩き落そうとしたのだが、迫ってきた腕を蹴るのと同時に再びアスナの姿が消え、ギルティサイスの前まで戻ってきたキリトの横に並ぶ。

 

「相変わらず、アスナのユニークスキルは理不尽な速さだよなぁ」

「それはまぁ、理不尽な速さだから“神速”なんて名前が付けられてるんだよー」

 

 キリトが口にした言葉、アスナのユニークスキル。そう、アスナはつい最近の話ではあるが、いつの間にかユニークスキルを取得していたのだ。その名も、“神速”。

 ヒースクリフの神聖剣、キリトの二刀流に続く三つ目のユニークスキルが表舞台に現れ、その担い手にアスナが選ばれた。

 

「キリト君も装備、変えたみたいだね」

「ああ、魔剣エンシュミオンとエリュシデータ、そして…っ!」

 

 瞬間、キリトがソードスキルを発動させながらギルティサイスに斬りかかる。

 発動させたスキルの名は、二刀流最上位スキル、ジ・イクリプス…二刀流最強の、超高速27連撃にして、嘗てヒースクリフとの最終決戦にて彼に破られた“本来の”奥の手。

 超高速の27連撃の最中、ギルティサイスが反撃しようとするも、その悉くがアスナの神速からなる不可視の反撃により弾かれる中、ついにジ・イクリプス最後の27撃目である刺突が決まった。

 通常であれば此処でキリトはスキル発動後の硬直が待っている筈だ。だが、硬直している筈のキリトは全く止まっている様子は無い。それどころかジ・イクリプス発動時のライトエフェクトとは別のライトエフェクトがエンシュミオンとエリュシデータから放たれていたのだ。その光は、スターバースト・ストリームのソレと同じ。

 

「でぇああああああ!!」

 

 ジ・イクリプスが放たれた直後に間髪入れず放たれるスターバースト・ストリーム、本来であれば有り得ない事なのだが、アスナの表情には驚きが無い。

 それも当然だろう、彼女もソレが何であるのか知っているのだから。ソレが、キリトのエンシュミオンとは別のもう一つの切り札であるという事を。

 合計43連撃を受ける事となったギルティサイスは此処に来て初めて動きを止めた。これはチャンスだと、キリトとアスナは直ぐにユイとルイの待つコンソールの部屋へ走ろうとしたのだが、気がつけば二人揃って床に倒れていたのだった。

 

「…え?」

「あ……え?」

 

 同時に気付く、二人のHPが共にレッドゾーンに突入していたのだ。2人とも片方に戦いを任せている間にHP回復を行って全快にした筈なのに、満タンだったHPが一瞬で8割を失った。

 

「な、にが…」

「きり、と…くん、あれ」

 

 辛うじて動かせた頭でギルティサイスの方を向くと、キリトとアスナの攻撃でHPが随分と減ったギルティサイスが鎌を振るった後なのか、振り下ろした鎌を持ったままキリトとアスナを睨みつけている。

 

「ルイ、ちゃんの言ってた…全体攻撃」

「HP、が減ると使うって、やつか…」

 

 油断していた。確かに何の警戒も無く後ろを振り向いてしまった2人の落ち度だが、これは相当に不味い状況だ。

 ダメージが大きすぎて2人とも全く体が動かない。よしんば動かせたとしてもアスナのランベントライトとキリトのエリュシデータが随分と遠くに弾き飛ばされてしまい、近くにはエンシュミオンだけしか無いこの状況で、果たして勝てるかと言われれば、無理としか言いようが無い。

 

「(くそっ! 何か、何か無いのか!?)」

 

 ギルティサイスがキリトとアスナの前まで近づくと、トドメを刺すために鎌を構え、大きく振りかぶると、ソードスキルでも発動させたのか、鎌自体がライトエフェクトを発して光り輝く。

 

「キリト君…!」

「くっ…!」

 

 なす術が無い。もう、これで終わりだ。

 ユイとルイの声が、遠くから聞こえたのを聞き取りながら、キリトとアスナは目の前に迫ってきた鎌の刃を、見つめ続けるのだった。




キリトの連続スキル行使の秘密については次回説明します。ただ、この場で言えるのは、あれがキリトの切り札にして、以前本編に出たスターメテオ・ストリームの正体だという事です。

PS.風邪で寝込んでました。最高で38,4度、死ぬかと思った…。
今もまだ微熱で咳も止まりません。

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