ソードアート・オンライン・リターン   作:剣の舞姫

32 / 45
お待たせして大変申し訳ございませんでした!
今回はファンの皆さまお待ちかね! CV沢城みゆきの彼女が登場!!


第三十一話 「空から落ちてきた少女」

ソードアート・オンライン・リターン

 

第三十一話

「空から落ちてきた少女」

 

 リーファがアインクラッドに来た翌朝、キリトはリーファを連れてアスナ、ユイ、ルイと共に黒閃騎士団の本部へと向かっていた。

 道中、黒閃騎士団についての詳しい説明をリーファに行いつつ、立場上彼女にはキリトの部隊に入ってもらう事になっている。

 リーファの戦闘スタイルは流石キリトの妹というだけあり、盾無しの片手剣一本のスタイルだったので、片手剣のソードスキルに関してはキリトが教える事になった。

 

「所でキリト君、リーファちゃんのレベルとかはどうなってるの? やっぱり1?」

「いや、どうやらALOでのステータスデータなんかも引き継がれてるみたいで、相応のレベルになってた…確か、53だったよな?」

「うん、片手剣スキルはもう1000になってて、後は投剣が0、索敵704、ハインディングが450、体術はまだ持ってないね」

「あ~、体術はなぁ…便利だから後で取りに行くか? エクストラスキルだし、イベントクリアすれば取得出来るから」

 

 片手剣と体術の複合スキルなんてものもあるので、持っていて損は無い。キリトもアスナも、というよりSAOの攻略組は一部の例外を除いて全員が体術スキルを取得している。

 

「簡単なの?」

「初心者にはちょっと厳しいかもしれないけど、スグなら大丈夫だろ」

 

 2層の体術マスターであるNPCの所へ行くだけなのでMobモンスターなら今のレベルでも問題無い。

 後は取得イベントをクリアすればそれで終わりなので時間はそれほど掛からないだろう。

 

「まぁ、取りあえずはギルド本部へ行こうぜ、話はそれからだ」

 

 とは言っても、もう本部はすぐそこなのだが。

 見えてきたギルド本部の入り口、そこを目指して歩いていた一行だが、ふとリーファが何かに気付いたように空を見上げると、隣を歩いていたキリトの袖を掴んで引っ張る。

 

「ねぇ、お兄ちゃん…あれ、何かな?」

「ん? …なんだ? 空に、バグか?」

「え? あ、ホントだ」

 

 キリト達が見上げた先には、空の一部がバグでも起こしているのか、歪んでいるのが見える。

 

「ユイ、あれはバグでも起きてるのか?」

「…いえ、ちょっと調べましたけど、あのようなバグが起きてるという情報は出てきません」

「こっちも、同じ…現状で起きてるバグは、以前と変わらず」

 

 と言うことはあれはバグではないという事になるのだが、あのような現象をバグと言わずなんと言うのか。

 

「あ! 何か穴があいたよ!」

 

 アスナの言葉にもう一度見上げれば、バグらしきものが起きているところに穴が開き、向こう側の電子プログラム郡が見えていた。

 そして、同時に穴の中から、一人の少女が出てきて、そのまま自由落下してくる。

 

「危ない!」

 

 持ち前の反射速度でキリトがいち早く飛び出し、落ちてくる少女の真下まで移動すると、その場で飛び上がって少女をキャッチし、そのまま着地する。

 奇しくもお姫様抱っこになってしまったが、それは見逃してほしいと思うも、アスナとリーファの表情を見る限り、許してくれるかは…微妙だ。

 

「っと、それより…気を失ってるみたいだな」

「キリト君、その子は…」

「ああ、多分何かの衝撃で気を失ったんだろ、ステータス表示は見えるからユイやルイみたいなMHCPじゃないし、ハラスメント警告が出ないって事はNPCじゃない、ただ気を失ってるだけのプレイヤーだ」

 

 少女の服装を見る限り、SAOではあまり見かけない装備だが、どこかの階層から転移しようとしてバグが起きたのかもしれない。

 一先ず本部の中へ運び、団長室のソファーに座らせると、キリトは団長用のデスクへ座り、アスナがその隣に立って、ユイとルイは先ほどの少女の様子を見てくれている。

 リーファは団長用デスクの前に立ってキリトとアスナからSAOで生き抜くためのこれからの方針と、ギルドでの決まりごとなどの説明を受けていた。

 

「と、まぁ…こんな所か、一番注意してほしいのはHPが0にならないようにする事。ナーヴギアじゃなくてアミュスフィアだっけ? それを使ってるスグには当て嵌まらない可能性もあるけど、その場合はHP0になったらどうなるのかなんて誰にも予想出来ないからな」

 

 ナーヴギアを使わずにSAOにログインした場合、HPが0になったときにどうなるのか、それは不明だ。

 アミュスフィアはナーヴギアより安全性を確立した製品だとリーファから説明を受けたので、ならば現実の肉体が死ぬ事は無いだろうが、もしかしたら意識が永遠に目覚めない可能性もあり得るのだから。

 

「暫くはスグにはレベル上げに専念してもらいたい」

「わかった」

「目標は90以上だ、攻略組でも上位は基本的に90以上だからな」

「今が53だから…最低でも37は上げないと駄目ってことだよね」

「そうなる。効率の良い狩場なんかは後で教えるから、教導部隊と合流してレベル上げをしてきてくれ」

「うん」

 

 恐らく時間は掛かるだろう。リーファのレベルは中層プレイヤー程度、そこから攻略組に合流するとなると、相当な無茶をしない限りは時間が掛かってしまうのだ。

 勿論、彼女が現実世界で剣道の全国ベスト8の実力を持っているという事は剣を扱うセンスで言えば同年代の人間に比べて並外れているとも言えるが、完全スキル制だというALOとは違い、レベル制のSAOでは役に立たないとは言わないが、戦闘センスが高いだけになってしまう。

 センスが良いだけでは生き残れない世界だからこそ、レベルを上げて貰わなければならない。

 

「ん…こ、こ……は」

「あ、目…覚めた」

「ホントです! パパ! ママ! 目を覚まされましたよ!」

 

 話し込んでいると、ソファーで寝ていた少女が漸く目を覚ましたらしい。

 ユイに呼ばれてキリトとアスナ、リーファがソファーの前に行くと、少女は身体を起こして、こちらを警戒しながら見つめていた。

 どうにも現状を把握出来ていないらしいので、口下手なキリトより人好きのする笑顔を浮かべたアスナが対応する事に。

 

「こんにちは、わたしはアスナ、今あなたの居る黒閃騎士団本部で副団長をやってます」

「アス、ナ? 黒閃騎士団? えと、どういうこと?」

「? 黒閃騎士団って、攻略組のギルドだけど、知らないかな?」

「攻略組? え、ちょっと待って、どういう意味? 攻略組って、何かのゲーム?」

 

 どうにも話が噛み合わない。こちらの話を理解出来ないどころか、少女自身が現状を正しく認識していないように見受けられる。

 

「君、名前は?」

「な、まえ…名前は朝田詩乃よ」

「い、いや、それはリアルの名前だろ? ここでリアルの名前を出すのはマズイだろ」

「リアル? え、どういうことよホントに」

「どういうって、ここはSAOだろ? オンラインゲームでリアルの名前を出すのはマナー違反だぜ?」

「ゲームの中? SAO?」

 

 どうにもおかしい。リアルの名前を名乗ったという事は記憶喪失とかではないのだろうが、自分がSAOの中に居るという事すら認識していないように見える。

 

「この辺に、何か名前みたいなの出てないか? それが君のプレイヤーネームになるんだけど」

「…これ? S・ⅰ・n・o・n…シノン? これが、私の名前?」

「シノンちゃんかー、じゃあシノのんだね! よろしく、シノのん」

 

 目を白黒させている朝田詩乃…シノンに、アスナは変わらず人好きする笑みを向けていた。彼女が人気の秘密はこの笑顔なのだろう。

 

「それで、私の名前がわかったのはいいけど、事情を説明して欲しいわ。ここが何処で、どうして私が此処に居るのか」

「まず、聞きたいんだけど、SAOってゲームは知ってるよな?」

「SAO? さっき言ってたオンラインゲームの名前よね……駄目、なんか頭に靄が掛かったみたいで、思い出せない」

 

 自分のリアルの名前は思い出せる。だけどSAOの存在も、どうして自分が此処に居るのかも、何も思い出せないと言う。

 部分的な記憶喪失という事になるのだろう。もっとも、あのようなバグから出てくるなんて登場をした時点で、何か障害が発生していても不思議ではないのだが。

 

「じゃあ、説明するけど、此処はSAO…ソードアート・オンラインってゲームの世界で、元は茅場晶彦って言う男が開発した2年前まで最新のフルダイブ型VRMMOゲームと呼ばれていたんだ」

「茅場、晶彦…ね、駄目…やっぱり思い出せない」

「そっか…兎に角、そのSAOってゲームが2年前に正式スタートしたんだけど、そのスタートした時に茅場晶彦はこの本来であれば普通のオンラインゲームだった筈のSAOをHP0=現実世界での死になるデスゲームにしてしまった」

「どういう事? ここで死ぬと、現実世界で死ぬって事なの?」

「そうだ、俺達はみんなナーヴギアっていうSAOをプレイするのに必要な装置を頭に被っているんだけど、この世界で死ぬと、現実世界の身体はナーヴギアの大容量バッテリーから発せられる超強力なマイクロウェーブによって脳を焼かれて死ぬ事になる。そして、外部の人間がナーヴギアを強制的に外そうとしても同じだ」

 

 更に、ログアウトも出来なくなってしまい、100層のボスを倒さない限り現実世界に帰れず、キリト達は既に2年もこの世界で暮らしている事を説明すると、漸くシノンも納得してくれた。

 

「つまり、私もこの世界から元の世界に帰れないって事なのね…そして、この世界で私が死ぬと」

「現実世界の朝田詩乃という人間の脳を、マイクロウェーブで焼かれて死ぬ」

「そう…理解したわ」

 

 死にたくなければ生き残れらなければならない。それがこの世界の常識、それを理解してシノンはこの先どうすれば良いのかを問うてきた。

 記憶が無いシノンにとって、どうする事が一番最良なのかを判断するのに、この世界で2年も生きてきたキリトとアスナ達に聞くのが一番だと判断したからだろう。

 

「俺達が守るってのもアリだけど、俺たちはさっきも言った通りこの世界から帰るために最前線で戦う攻略組だ、だから四六時中守るって事は出来ない」

「構わない、私も守られるだけってのは性に合わないもの」

「それなら、強くなってもらう他ないな」

「そう、でもこの世界って剣とか槍ばかりなのよね? 銃とか、そういうのは無いの?」

 

 無い。あくまでも剣や槍などの近接戦闘武器ばかりで、遠距離から攻撃出来るとしたら投剣スキルだけであり、投剣スキルは戦闘補助にしか使えず、メインで使う人間は皆無だ。

 

「あ、でも待てよ…?」

 

 キリトは少し前に見たユニークスキルの一覧にあった一つのスキルを思い出した。

 

「この世界にあるソードスキルの中でもユニークスキルって呼ばれているものがあるんだけど」

「ユニークスキル?」

 

 これにはリーファも興味を持った。シノンと一緒になって詳しい説明を求めて目を輝かせている。

 

「1万人居たSAOプレイヤーの中でもたった一人しか取得できない希少スキル、全部で10種類あるから、全部で10人しか取得出来ないというエクストラスキルだ」

「彼、キリト君はその中の一つ、二刀流を、わたしは神速を取得してるんだよ」

 

 それからもう一人、神聖剣を取得していたラーメン馬鹿も居たが、奴は既に100層の紅玉宮にてキリト達を待つ身だから、それについては説明しなかった。

 

「で、そのユニークスキルの中に射撃ってのがあるんだ…どうやって取得するのかは不明だけど」

「射撃…でも、この世界に銃は無いってさっき言ってたわよね?」

「武器として銃は確かに無い。でも何か射出武器が射撃スキルを取得すると入手出来るようになるのかもしれないな」

 

 取得出来るか不明のスキルなので、ユニークスキルの説明はここまでにして、シノンには一先ず短剣を持ってもらう事になった。短剣についてはシリカが居るので、シリカに指導してもらえる。

 そして、シノンにはリーファ同様に黒閃騎士団に入団してもらう事になった。シノン自身もそれで自分の身を守れるのであればと、特に不満を言う事なく了承してくれたので、キリトが送った申請にOKしてくれたのだった。

 

「じゃあ、よろしくシノン、改めて黒閃騎士団団長のキリトだ」

「同じく、副団長でキリト君の妻、アスナよ」

「パパとママのプライベートチャイルドのユイです」

「同じく、ルイ」

「えと、さっき入団したばかりのリーファです。リアルではキリト君の妹で、シノンさんと同じ新人です」

「ええ、改めてシノンよ、よろしく」

 

 こうして、黒閃騎士団は新たな仲間を2名追加された。

 後日、76層ボスの部屋が見つかり、75層ボスほど苦戦する事も無く無事に攻略され、アインクラッド攻略組一行は77層へと到達するのだった。




次回はどうしよう? 77層って何かイベント的に面白いのあったかな?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。