これは、私がまだ東京にいた頃のお話…
私は東京で音ノ木坂という、音楽に力を入れている学校に入学した…もちろんピアノが大好きだからだ…。
そして、私が入学して2ヶ月余りの事…
そう、新しい学校生活が始まって2ヶ月…大体の人は自分に合った友達を作り、自分の合う合わないの見方が出るようになる…その頃は私だって…ちゃんと友達は作っていた…。
でも、そのような見方が生まれることによって、もう一つの見方がが生まれてしまう…それは
…嫌いな人に対する…虐め。
その時、丁度私の隣にいた男子がその被害にあっていた…
私には正直その人がそんな被害にあっているなんて考えられなかった…。
だってその人は背が高くて、誰にでも優しくて、顔も結構イケてる方……とてもイジメのターゲットになるような人とは思えない…。
『またアイツが来たぜ』
『なんで学校へ来るんだよ』
『見た目がいいからって調子乗ってるよね~』
あちこちから男子や女子の悪口が、彼が教室に入る度に私の耳に入った…
私は聞いているだけで、怖かった…そのせいで人との関わりを持つのが嫌になった…
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何日か経って、私は教室にいるのが怖くなって、自然と教室から離れるようなった…昼食の時間には屋上へ行くのが当たり前になっていた…
そして、今日も屋上へお弁当を食べに向かった…すると、そこには彼がいた…彼は私の顔を見て少し笑顔を見せてくれた…。
私は彼の隣に自然と座っていた…
「…友達と食べなくていいの?」
その言葉が彼との初めての会話だった。
「…私はああいう空気は好きじゃないから。」
「そっか…でも、ここで飯を食うのはやめた方がいいぜ。」
「どうして?」
彼の言葉に疑問を感じ、私は問いかける…。
「君も嫌われてしまう。」
「え…」
「俺の存在があの教室の害になっているからここにいるんだ…君もここにいては、いずれ俺と同じ運命にあってしまう…。」
「一人相手に…大勢で攻撃するような人たちとは関わりたくはない…それなら嫌われても構わない。」
「……そっか。」
「ねえ、教えてくれない?どうしてあなたがこんな被害にあっているのかを…」
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彼は何も隠さずに全てを話してくれた…きっと1人で悩むのもそろそろ限界に近かったのだろう…。
そして彼が虐めにあっている原因は…
…嘘情報の拡散。
SNSとかでよくある事件…彼は全くあてはまらないレッテルを無理矢理貼り付けられ、クラス中に広められた…
少人数ならともかく、クラス全員…約30人…どうあがいても絶望しかない…。
「そっか…これはもうどうしようもないね…」
「あぁ…アイツらは影でコソコソと俺の悪口言うだけのヤツら…非常に腹立だしい…」
彼は無表情のまま空を見上げる…
「ねぇ…」
「なんだよ?」
「私とお友達にならない?」
「はぁ?」
「お友達よ」
私は彼に何度も言った
「やめとけ」
「あらどうして?」
「君のこれからの学校生活が苦しくなるぞ。」
「…別にそれでも構わない。」
…ギュッ
私は無意識で彼の手を握っていた…
「怖がらなくていいよ…私は貴方の味方だから。」
「…後悔しても知らねえぞ…あと手を離せ。」
私は慌てて彼の手を離す。
「私は桜内梨子、え~と…」
「俺の名前?」
「う、うん…ごめん」
「名前は…悠之。」
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あれから二週間が経った…
私は、ピアノのレッスン以外の日に彼とお出かけしたりと、結構楽しんでいた。
「ほら、こんな服とか似合うと思うけど?」
「こんな爽やかなのが俺に似合うのか?」
私は1着の柄の入った白いシャツを少し強引に着させてみた…。
「ほら、あそこに鏡があるからちゃんと見て。」
「……」
彼は無言だけど、顔は少し満足気な表情をしていた…。
「気に入ったでしょ?」
「…まあな。」
「え~…他にいうことはないの?」
「うん?…ああ、そうか…」
彼は私の頭をそっと撫でる…
「ありがとな。」
「あ、うん…ど、どういたしまして…///」
私は今日初めて彼の行動に胸が苦しくなった…。
ちらっと彼の顔を見ると、とても綺麗な顔立ちをしていて少し顔が熱くなる…なんでこんなに素敵な人がいじめの標的にされなくちゃならないのだろう…。
「なあ」
「どうしたの?」
「…なんでこんな俺のそばに居てくれるんだ?」
「なんでかな…ほっとけないというか…」
私は彼の顔を見つめる…。
「悠之君のことが好きなのかも…。」
「……」
「なーんてね、ちょっと言ってみたかった…」
ギュッ…
「え…?」
私は何故か彼に体を抱かれていた…。
「俺も…お前の事が好きだ…」
「…え、そ、その…///」
普段無口な彼からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった…
「…その…ホントにいいの?
君に合ってるかな…だって私地味だし…。」
「…俺はそんなお前の事が好きだ。」
「もぅ…からかってるの?」
私と彼は、一緒になって笑っていた…
「今…自然に笑えたね。」
「なんか久しぶりに笑えた気がする…きっと梨子のおかげだ。」
「あ、やっと名前で呼んでくれた~」
「…からかうなよ。」
「ふふっ、さっきのお返しよ。」
彼の笑顔はとても素敵だった。
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でも…楽しい時間はそう長くは続かなかった…。
~終業式前日~
誰かが、私達が一緒にいたことを広めたらしく、それが私ではなく、何故か彼の方に攻撃が強くなった…
「おい」
「……」
「お前ちょっと屋上来いよ。」
そして遂に悠之君が呼び出されてしまった…人数は4人の男子…みんな強そうな見た目をしていた。
私は不安だったので様子を見に行くことにした。
「お前よ~最近彼女作ったらしいな~」
「……」
「最近妙に明るい雰囲気だと思ったらこういうことかよ~」
「……」
「おい、だんまりかよ…少しくらい返事しろよ~」
「…うるせえよ。」
ガッ!
男の中の一人が悠之君の胸ぐらを掴む。
「俺はお前らと関わる気は無いんでね…早く消えてくんね?何をよくわからない情報を流し込んでるかしらないけどさ…!」
「…はぁ?」
ドゴッ!
「カハッ…!」
悠之君のみぞに拳が入った…彼は思い切り吹き飛んでフェンスに体をぶつける
私はその時怖くて震えていた…。
「生意気な態度とりやがって…調子に乗ってんじゃねえよ。」
バキッ
ドゴッ
悠之君に3人の蹴りが入る…もうリンチ状態だった…
「なんだよ…口で言った俺に対して…てめえらは…暴力で返すのか?」
「はぁ?おまえまだ言うのかよ?」
「もうやめて!!!」
私は体が自然と動いていた…
そして、殴ろうとしていた男の体を突き飛ばす。
でも、私の力じゃ男の人には全く通じず…簡単に起き上がってきた…
「なんでこんなことするの!?彼があなた達に危害を加えた事があるの!?」
「っ…ふふふ…」
「…?」
「─っははははは!!!」
男子達が一斉に笑いだす…なんだか不気味な雰囲気…。
私は容赦なく首を捕まれそのまま絞められた…。
「いたっ…やめ…て…」
「ふふ…別に理由なんか特にねえよ。」
ググッ…
「じゃあ…なんで…」
「普通の学園生活なんて面白くないじゃん?もっと刺激があった方が楽しいからな。」
もう1人男が近づき、私の髪を触りながら話し出す。
「別に最初は誰でもよかったんだ、だけど高身長で顔立ちも整ってる…これ程どん底に叩き潰したくなるものはないだろ?」
どんな理由かと思ったら…くだらなすぎる…そんなことの為に…刺激を求めることのために彼を利用していただなんて。
「そろそろ離してやれよ、気絶とかしたらめんどくせえからな。」
スッ…
私は首から手を離されたけど…彼らの狂った目に恐怖して全く抵抗できなかった…
「ハア…ハア…。」
「それにしても、こんな男しかいない屋上によく来られたもんだな」ムニュ
……!?
「いやぁ!離して!!」
「そんな胸を触られたくらいで叫ぶなって」ムニュ
「ひっ…嫌…」
「おいおい泣かしちゃ可哀想だろ~?こういう清楚系な女の子には優しく扱って上げなくちゃ…」
無理矢理床に押し倒される…
「ほんとに綺麗な顔をしてんな…少し舐めさせてよ…。」
「やめて!!いやぁ!!!!」
嫌だ…
気持ち悪い…
触らないで…
「…めろ…」
「…あ?」
「…やめろってんだよ!!テメェ!」
「あれだけ殴られてんのにまだ立ち上がんのか…ちょっと甘く見すぎてたな。」
「これ以上…俺の梨子に手を出すんじゃねえ!!」
悠之君の叫び隙ができ、私は拘束から逃れられた…でも…。
四人相手ではやはり敵わず…悠之君がまたリンチにされてしまった…
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「悠之君!大丈夫!?」
「…ごめん…。」
彼の目から涙が溢れていた…
「…カッコ悪いところ見せちゃって…。」
「ううん、勝ち負けなんてどうでもいいよ…早く治療して帰ろ?」
「あぁ…。」
あの後、悠之君と私への攻撃が強くなり…かなり辛い1日になってしまった…やっぱりクラス全員相手にするのは不可能だった…
そして放課後…
「でも、嬉しかったよ…体を張って私のことを助けようとしてくれたこと…」
「でも…俺は最後まで君のことを守れなかった…。」
私は悠之君の手を握る…確かに私も怪我をした…
腕や手首を…でも悠之君の怪我に比べれば全然大したことのない怪我…
そのまま無言の状態が続いた…何か喋りたかった…でも言葉が見つからない…
「じゃあ私こっちだから…」
「まって…」
「…?」
ギュッ…
悠之君は私の事をいきなり抱きしめた…。
「ど、どうしたの?」
「いいからじっとしてて…」
「う、うん…」
そのまま悠之君は私の唇にキスをした…
「ゆ、悠之君…ここ外だよ…?恥ずかしいよ…///」
彼は抱きしめたまま私を離さない…キスをしてくれたのは嬉しい…でも外だからやっぱり恥ずかしいかな…
「ありがとう…」
「え…急にどうしたの?」
「大好きだから…」
「い、いきなり何言ってるの?私だって悠之君の事…///」
「…じゃあね。」
悠之君は最後に笑顔を見せてそのまま走り去ってしまった…。
確かに今の悠之君は笑顔だった…でも…
悠之君の笑顔がどこか寂しそうだった…。
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何だか…もやもやした…悠之君がどこか遠くへ行ってしまいそうで…不安で不安で仕方が無かった…
私はとりあえず家に帰り、彼に電話をしてみた…
何回かけても
何回かけても
悠之君とは繋がらなかった…
怖くて怖くて…食事も通らずに私はそのまま眠りについた…。
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翌日…やはり悠之君とは連絡が通らない…怖いけど私は1人で学校へ向かった…
学校へ着いた時…私の予感はやはり的中していた…
ホームルームで担任から告げられた言葉…それは…
悠之君は自殺した…
私はショックで言葉も出なかった…周りのみんなも…ショックで何も言わなかった…
貴方達がした事が…結果…こうなってしまった…私はそう訴えたかった…
貴方達のせいで…私の大切な人の命が奪われた…
♢
当然学校は中止になり、全員帰宅することになった…
家のポストを見てみると1通の手紙が入っていた…手紙を見ただけで私は何かを察した…
私はおそるおそる手紙を開いてみる…
『梨子へ
君がこの手紙を読む頃には俺はきっとこの世にいないと思う…
やっぱり耐えられなかった…
最後まで楽しい日々を送れたのは梨子のおかげ。
でも、俺のせいで梨子が傷付けられる事が嫌だ…
だから君は俺の分まで生きてほしい…
ワガママな事をしてごめんね…
今まで本当にありがとう…。
悠之より」
私はこの手紙を読んで初めて涙がこぼれ落ちた…
涙が手紙にあたってインクが滲み…
私は部屋の中で泣き叫んだ…。
「悠之君…」
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そして2年後…私は父親の仕事の都合で静岡に引っ越してきた…
間違えて文化祭の日に学校へ行った時…思いもしない出来事が起きた
最初は本人かと思った
でも、やはり見間違えだった…
でも、顔も似ていて、名前も同じ…まるで死んでしまったあの人のようだった…
本当は彼に抱きつきたかった…例え本人ではなくても…
毎年の夏…彼の事を思い出してしまう…だから心が痛い…
だから…私は夏が嫌い。
今年も…お墓参りに行かなきゃ…八月は悠之君の誕生日なんだし…
もし願い事が叶うとするなら…
もう一度彼に会いたい…
まだ未完成だけど、私のピアノの演奏を聴かせてあげたい…
また…一緒にお出かけがしたい…
また…彼の胸に抱きしめてもらいたい…
でもそれは、永遠に叶わない願い…
悠之君…ごめん…
私…あなたがいないとダメみたい…。
久しぶりにシリアスなお話を書かせていただきました。
梨子ちゃんが悠之君によく構っている理由が少し分かっていただけたかと思います。
あ、一応書いておきますけどこの作品は原作設定を完全スルーしています。