お久しぶりです!!
学生時代の俺を見かけた……?
ダイヤの衝撃的な言葉から1週間が経とうとしていた……。
現実的にそんなことが有り得るはずがない…人違いではないのか…?けれど、善子ちゃんもダイヤも、雰囲気はだいぶ違ったが見かけたと言っていた…。
まっさきに俺が頭の中に浮かべたのは、学生時代梨子が付き合っていた、俺にそっくりな人…しかも俺に顔も似ているとも言っていた…。
幽霊…?
まさかそんな現実離れした現象があるわけが無い…。
「ねえ…悠之くん…。」
「どうした…?」
「悠之君は…幻影なんかじゃないよね…?」
「千歌…」
不安そうに俺のことを見つめる…そりゃあそうだろうな…他の人が見間違えるほどの人間を見かけたと言っているんだからな…しかもその人は既に亡くなっている…。
…そんなの不安になって当然だ。
「大丈夫…俺は幻影なんかじゃない…。」
「わかってる…けど…」
そんな千歌を見ていられず、黙って抱きしめる…。
「今は落ち着くことが最優先だ…。」
「うん…」
「だから、今日はもう寝よう。」
ひとまず千歌を落ち着かせ、一緒にベットに入る…。
~~♢♢♢~~
目撃情報から1週間が経過した…。今のところ変わった様子無い…
静岡で見つかったり、東京で見つかったり…まるで誰かを探しているようだ…俺の知っている中では静岡と東京を行き来しているのは…
俺と梨子だけ…
何を考えているんだ俺は…そんなにことが有り得るはずがないのに…。
「おーい悠之くん?」
「な、なに?千歌。」
「さっきからずっと呼んでるのに…顔色悪いよ?」
「ご、ごめん…考え事してた。」
「大丈夫?これから梨子ちゃんのピアノオーディションを見に行くのにそんな感じで…。」
「あぁ、大丈夫さ。ちょっと寝不足なだけ。」
「も~演奏中に寝ちゃだめなんだからね?」
「へいへい~」
まぁ…流石に考えすぎか。
~♪♪♪~
~楽屋~
「お~い!梨子ちゃん~♪」
「千歌ちゃん!悠之くん!来てくれたんだ~」
「よぉ、緊張してないか?」
「少ししてるけど、きっと大丈夫♪」
「そっか、頑張ってな。」
「うん♪」
思ったより自信がありそうで良かった…後は、演奏を楽しみに待つだけだ。
たくさんの人達が演奏を終えて、やっと梨子の出番がやってきた…果たしてどんな演奏をするのか楽しみだ。
梨子がステージに上がり、一礼をしてから椅子に座り…演奏を始める…。
彼女の演奏を聴くのは初めてだけど、演奏に全く迷いが無い…聴けば聴くほどその音色に心が引き込まれていく…。
そして、あっという間に演奏が終わる…。
♢
「(ふぅ…とりあえずノーミス…けれど、練習の時ほど力が発揮できなかったかも…80点ってところかしら…。)」
私は一礼をして、顔をあげる…
あれ…?
あの男の子…どこかで…
あの黒髪……赤い瞳……
~~~~~~~~~~~~~~
『君、名前は?』
『悠之…』
『ほら、こんな服とか似合うと思うんだけど。』
『こんな爽やかなのが俺に似合うのか?』
うそ…そんなはずない…だってあなたは…。
『どうして…こんな俺のそばにいてくれるんだ?』
『なんでかな…ほっとけないって言うか…』
『悠之くんのことが好きなのかも……なんてね♪』
『ゆ、悠之くん…ここ外だよ?恥ずかしいよ…///』
『ありがとう…大好きだから。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私は演奏を終えた後、楽屋に戻らず、すぐさまに客席に向かった…。
「桜内さん?楽屋はこっちよ?」
「ごめんなさい、お昼までには戻ります!」
この目で確かめなくちゃ…!!
駆け足で客席に向かったが…彼の姿はどこにもなかった…。
ドレスからすぐに私服に着替えて会場周辺を探し始める…ヒールを履いていた状態なので、中々早く動けないけど、それどころじゃなかった…。
約15分間必死に探し回った…。
けれど…やっぱり彼は見つからない…。
それはそうよね…だって貴方は…水死体として発見されているんだもの…。
彼には両親も兄弟もいなかったので、私の家族で葬式を挙げたのをはっきりと覚えている…。
もう既に…見せられないくらいに体がふやけてしまっているとも聞いた…。
そんな貴方が生きているだなんて…何を考えているのかしら…私は。
私はゆっくりと歩いて、会場に戻る…。
「あ!桜内さん!待っていたんですよ!?どこへ行ってたんですか?」
「ご、ごめんなさい…ちょっと…」
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あのピアノオーディションの日以来…よく彼の夢を見る…少し辛かったけど、楽しかったあの高校生活が頭の中を遮る…。
もしかしたら…私の演奏を聞きに来てくれてたのかな?
それとも、やっぱり幻覚だったのかしら…。
なんだか心が落ち着かない…。
「(ちょっと出かけようかな…)」
☆☆☆☆☆
1人でショッピングモールの服を見たりするのは楽しい…それが普段の私だったら…。
やっぱり私…彼のことが大好きなんだ…なのに私は…。
いつの間にかあっちの方の悠之くんの事も大好きになっていた…。
馬鹿だ…彼に申し訳ない気持ちがいっぱいだ…。
もし…彼の自殺を止めることが出来たなら私達は一体どんな日々を遅れていたのだろう…。
今更悩んだってしょうがないのに…それでも、私はやっぱり彼のことが忘れられない…。
適当に街を歩いていると、音ノ木坂学院が見えてきた…
そうだ…私と悠之くんはこの階段を降りた先で…。
あれが…最期の会話だった…。
あの時、彼の表情は笑顔だったけど、どこか悲しそうで…
だめ…思い出しただけで心が痛くなる…あの時少しでも気づいてやれなかった私が悔しい…。
「どうして…泣いてるの?」
「え…?」
後ろから青年が私に声をかける…。
「悠之…くん…?」
「また…会えたね。」
「どうして…?だって貴方は…。」
「わかってる、俺はあの時自ら命を絶った…。」
「じゃあ…貴方は一体何者なの?幽霊なの…?」
「わかんないんだ…自殺をしたあの日から自分の意識が全くなかった……そして、気がついたら東京にいた。」
そんな…信じられない…もう既に亡くなっているはずの人が今、私の目の前にいる…。こんな出来事を受け入れてもいいのだろうか…。
「ピアノ…すっごく上手だったよ…。」
「やっぱり…あの時会場で見ててくれたんだ…!」
「うん…はいこれ。」
「これは…ハンカチ?」
彼の手から淡い桜色のハンカチを差し伸べられる。
「きっとこれは…神様が与えてくれた奇跡なんだ…ピアノも聞けた…また、こうして出会えた…もう俺には思い残すことはひとつもないよ。」
「な、何言ってるの…やっとこうして再開できたのに…。」
彼の身体の周りに優しい光が集まる…
「…お別れの時間が来たってところかな…。」
「そんな…嫌…やっと貴方にまた会えたのに…また別れなくちゃいけないなんて嫌よ!」
「泣かないで…梨子。」
「無理よ…だって私は…貴方のことが…大好きなのに…会えなくなっちゃうだなんて…。」
「梨子…この世界はね…出会いと別れの繰り返しなんだ…人間はその連鎖に向き合って行かなくちゃいけない…」
「でも…貴方がいない世界なんて…私は嫌よ…。」
「梨子…」
ぎゅっと…彼の温もりを感じる…。
今彼は私のことを抱きしめてくれている…。
これは夢なんかじゃない…ちゃんとした人間の身体…暖かくてこのまま彼と共に消えてしまいたいくらい…。
「梨子は…消えちゃダメだよ。」
「どうして私の考えてることが分かって…?」
「梨子は俺みたいに自分の命を落とすみたいな、愚かなことはしてほしくないんだ…。だから…俺よりも長生きをして…そのピアノの音色で…たくさんの人を笑顔にしてあげてね…。」
「悠之くん…わかった。私もっともっと頑張る…!」
彼が何かを言いかけた時…光が強くなり、暖かい日差しのような温もりは透き通った風のように全く感じなくなった…
ピアノ…また聴かせてね。
世界で1番…貴方のことを愛してます。
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あの日以来、私はほぼ毎日悠之くんのお墓参りに行くようになった…そこへ行けば、また彼のそばにいられるような気がして心が落ち着く…。
お墓を綺麗に掃除して、線香を供える…。
お線香の火が消えてから、彼宛ての手紙も供える…。
ありがとう…
愛する君へ…