side story Yuji 「Roots」
まだ、俺が東京で暮らしていた頃…
別れを言うのが辛くて逃げるように東京へ引っ越した俺…後悔はいっぱいあった、あの日から千歌の事を思い出すだけで、胸が強く苦しめられた。
だけど、これは母さんの仕事なんだ…そう心に言い聞かせて我慢した。
東京でも、もちろん友達ができた。高校も付属でそのまま持ち上がりで進学できるとても都合のいい中学校だった。
ただ…俺の周りに集まる人達はみんな碌でもない人達だった。
そう…俺の学校は不良のたまり場だったのだ。
そして、クラスでは弱い人はいじめられ…奴隷のように扱われていた。
そして、いじめられている人を助けると、今度はその人がターゲットになってしまう…。
そのことは、転校生の俺はまだ知らなかった。
「なぁ、お前…コーラ買ってこいよ?」
まただ…またいつもの日常が始まってしまった。
「ごめん…もう今月はお金が…。」
「あぁ?口答えしてんじゃねえよ。おい、悠之お前もなんか飲むか?」
「…そうだな、俺も喉乾いたしな…向こうで決めるわ。」
~~~~~~
「なぁ、お前抵抗しないのか?」
俺はいじめられていた男子に問う。
「え…ど、どうしたの?急に…」
「こんな学校に来ちまったんだ…弱々しい態度のままだと体が持たないぞ。」
「……」
俺は、自分の金でコーラとアクエリアスを買った。
「…な、なんのつもりだい?」
「母さんの為に…お金貯めてんだろ?そんな人から金を奪うなんて最低だ。」
「ど、どうしてそれを…」
「…お前が色んなところで手伝ってるのを見た…中学生じゃバイト出来ないから知り合いのところで店手伝って小遣い稼ぎしてんだろ?」
「う、うん…」
「だったら母さんを…喜ばせてやれよ。」
俺達はそのまま教室に戻った。
だが…その一部始終を見ていた人物がいた…。
すぐにクラスにばらまかれて、わずか3時間後…ターゲットが俺の方を刺した。
「なんだよ悠之…やっぱりお前もいい子ちゃんぶってんのかよ…」
「まじできもーい~こんなやつと仲良くなって一体何になるの?」
「…ふふっ。」
つい俺は笑みを浮かべてしまった。
「何笑ってんだよ、マゾかよお前。」
「悪いな…あまりにも低次元過ぎてよ…」
『腹の底から笑いが止まらないもんでな。』
俺がそう言うと1人の男が俺の胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ舐めてんのか…?転校生の分際で調子乗ってんじゃねえぞ…?」
「ゴミみたいに調子乗ってるのはお前達の方だ…善良な人間を数十人で攻めるなんてよ…。」
もう既に俺の周りにはクラス全員が包囲網のように囲んでいた…。
「やれ!!!」
そしてその日から2年余り…。
中学校を卒業して、既に高校2年を進級して3年生になる直前だった。
あの日の出来事が原因で俺の周りには碌でもない人達が集まるようになってしまった。
俺はなるべく避けながら日々暮らすようになってしまっていた…
「なぁ悠之、隣町の野郎達が喧嘩ふっかけて来たんだが、ぶちのめしに行かね?」
「興味無い、お前達だけで行けよ。」
「そう言っていつも心配して助けに来てくれるじゃんかよ~」
「……」
そう、あの日以来弱いものいじめをするものはほとんど居なくなった…それはいい事だ。
だけど、今度はほかの学校と喧嘩をするようになってしまった…何度も警察沙汰になって正直めんどくさい。
だから、いつも俺がやり過ぎないように止めに入るのだが…。
「まぁ、今回は問題起こさねえように努力すからさ。」
俺はひと足早く自宅へ向かった…歩いて20分くらいなのでいつも適当にぶらぶらと歩いて帰っている。
1人で帰ろうとしたその時…
「あの…月夜学園の人…ですよね?」
特に名前も知らないほかの学校の女子生徒が校門で出迎え、そして話しかけてくる…何か不安そうな顔をしているようだ…。
「そうだけど…何か用?」
「あの…うちの学校の男子達が喧嘩を仕掛けたって聞いて…うちの学校の生徒達は全然強くもないのにイキがっていて…このままだと全員大怪我を…。」
「俺に説得をしに行って欲しいと?」
「は…はい!月夜学園で物凄く強い人がいるって聞いて…その人に頼んでもらえれば…。」
「…そんなヤツ知らないな。」
俺は必死で誤魔化した。
~~~~~
今日の夕食…多分母さんは忙しくて事務所で食べて帰るんだろう…適当に買い物して帰るか…。
商店街の中を歩いていると、何やら小さな声で陰口が聞こえてきた…。
「ねぇ…あの人、月夜学園の人じゃない?よくあんな汚い学校で暮らしていけるよね~?」
「だ…ダメだよそんなこと言っちゃ…」
「だってホントのことじゃん~ダメだよ?梨子も付き合う男の子とかちゃんと決めないと~こういう人とか特に。」
「……」
まぁ…変な噂されても仕方ないだろう。実際にうちの学校はたくさんの不良達が暴れ回っているから汚いイメージを持っていてもおかしくない……ん?
「おい、お前ら今うちの学校の悪口言ってたろ?」
その時、俺の学校の生徒が後ろから2人の女子高生に近寄った…
アイツ…喧嘩しに行ったんじゃなかったのか?
「はぁ?知りません~梨子行くよ?」
「…ご、ごめんなさい!勝手なことを言ってしまって…。」
「ちょっと梨子!あんたねぇ!?」
「なんだお前…妙に素直じゃねえかよ…だけどな、うちの悪口を言うやつは…」
「やめろ…カイト。」
「ゆ、悠之…!?」
「本人も謝っているんだ…それくらいにしろ。」
「…だ、だけどよ…!」
「…俺の言うことが聞けないのか?」
「…っ!」
…これ以上コイツがこの人たちと喋っていたら絶対にぶちギレていた…。
「すまない、うちの学校ヤツが…」
「い、いいえ…こちらこそすみません…。」
2人の女子高生は少し早歩きで俺たちの元から離れた…。
「もういい加減、そんなことでキレそうになるのは卒業しろ…カイト。」
「悠之、ちょうどいい所に!」
「おい…話を聞け…」
「うちの学校が今ボコボコにされちゃってるんだ…だから、助けてやってくれないか?」
「喧嘩はしない…助けるだけだ。」
「あぁ、わかってるよ。」
急いで現場に向かった…だが、なにか妙だ。
俺の学校の連中がボコボコにされている?さっき話しかけてきた女の子は強くもないのにイキがっていると聞いた…。
大体いつもやりすぎて警察沙汰の問題になるのはうちの高校のはずだ…そんなヤツらにボコボコにされるのか?
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カイトの言った通りの場所に来てみた…もう誰も使っていないような薄汚れた工場だった…。
なのに、人の気配をまるで感じない…本当にこんな所で喧嘩なんてあったのだろうか?
「…カイト、本当にここで喧嘩なんてあったのか?」
「…何言ってんだよ…これから始めるんだよ…!」
周りの明かりが一斉に付き、俺を照らすように光る…物陰に隠れていたのか、よく分からなかったが…。
全員合わせて50人くらいはいる…。
「…俺をハメに来たな。」
「そう…あんたがいると俺たちの学校が困るんだ…この2年間…あんたのせいで弱い奴らにも権限ができた…そんなつまらない学校生活には何も刺激がない…!」
「…そうか、主犯はお前か…カイト。」
「あぁ…クラス全員がこの意見に賛成した…もちろん隣町の学校達もだ…」
…ここにいる全員が喧嘩に腕前があるのなら、俺は確実に倒されるだろう…。
「2年前…クラス全員を敵に回して1人で勝ったお前には正直腰が抜けたよ…だけど、あの時とは違う…!今度は50人だ!2年前とは倍以上の人数だ…!」
「そうか…」
『…手を組む相手を間違えたな。』
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「どうして…なぜ…勝てない…?」
「…あたりまえだ、喧嘩に使えないようなヤツらを集めてもサンドバッグにしかならん…。」
「くそ…!」
「カイト…何故こんなことをする?…もうやめないか?こんなことをしたって…体をボロボロに痛めるだけだ…。何も得がない。」
「……」
「喋らないならもういい…こいつらを連れてここから去れ。」
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…寒い…おかしいな…あんなに体を動かしたのに…暑くて汗をたくさんかくはずなのに…。
汗が一滴も出てこない…体が冷たい風に煽られてどんどん体が縮こまっていく。
そうか…きっと今この瞬間…1人になってしまったからだ。バカな連中とはいえ、俺の友人であることには変わりない…。
そんなみんなに敵対され、一斉に反抗を食らった…。
もう俺には仲間がいない…そう思った時…1人の名前が自然と口に出た…。
「…千歌。」
それと同時に涙が溢れてきた…アイツのそばから離れたの時も…こんなに冷たくて…寒い日だった…。
何を馬鹿なことを考えているんだ俺は…今更…こんな荒れ果ててしまった俺を…アイツは受け入れてくれるはずがない…。
「…悠之。」
「母さん…?」
工場の出口に母親が出迎えていた…。
「貴方…いつまでこんなこと続けるつもり?」
「続けたくなんかないさ…もう…こんなこと。」
「そう…ならいいわ、話があるの早くうちに帰るわよ。」
そのまま車に乗りこみ、自宅へ向かった。
そして…何もかも全て失ってしまったかと思ったあの日…まるで導かれるように、引越しの話になった…。
希望と不安を胸に、俺は新しい生活の準備を始めた。
…誰だよ!これ以上投稿することはありませんって書いたやつは!!結局同じような事書いてるじゃんか!!
…はい、お久しぶりです…そして、あけましておめでとうございます。
本編と言うより、サイドストーリー的なものや、皆様のリクエスト的なものなどがございましたらちょこちょこと書いていこうかなと思います。
今回は主人公の悠之君のお話を描きました!彼がどうして喧嘩が強かったのかがわかったと思います。
では、また次回があればよろしくお願いします!