とある仮定の破綻論理 作:無法松
「き、キタ!追想中次回予告!これは継続確定…」
『ピリリリリリ!』
「ああっくそ、誰だこんなときに…」
『白井黒子』
「げっ」
新台に運良く滑り込み、ようやく波に乗ってきたところで電話がかかってきた。液晶にはうるさい年下の先輩の名前。電話の電源を切り忘れていた時点で、場所が割れたと仮定した方がいい。
「テレポートか、だが俺が本気を出せば振り切れ」
「振り切れる、とでも思っていますの?甘いですわよ。」
「なん…だと…?」
逃げる体制をとったときには、既に奴は背後に現れていた。
「ち、違うんだよ白井。これは不可抗力でな…」
「自分の意思でこんなところに来るのに不可抗力も何もありませんわ。さ、支部に向かいますわよ。書類が溜まっているのに勝手に抜け出して…」
そういって俺の手を掴み、テレポートしようとする黒子に、おれは一計を案じた。
ドル箱から玉を一掴み取り出し、足元に転がす。そして黒子の足元にたどり着いたところで、『遠隔で』能力を起動させる。
「飛びますわよ。心の準備をぅわぁ!?」
足元にパチンコ玉をぶつけ、よろけたところで手を振りほどく。組みかけた計算式を崩すと、テレポート系の能力者はあらぬ場所に飛んでしまう危険性がある。仕方なくそのまま支部に飛ぶのを見送ると、携帯の電源を切り全力でダッシュ!
「許しませんことよぉぉぉ…!」
「さらばだ白井!仕事は代わりに片付けといてくれ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「フゥ、フゥ、フゥ、なんとか、うぇ、撒いたか。おじさんにはきついぜ…」
時間的には深夜に近いか。走り回ったことで小腹もすいたし、とりあえず手近のファミレスに入店する。
「へぇー、珍しいメニューだな。ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニアか…これにしようかな、「お嬢ちゃーん!そんなに無視されると俺らも傷ついちまうよー!」っと?」
平和なファミレスに似つかわしくない、耳障りな声。そちらを見ると、明らかに風体の良くない輩が中学生くらいの女の子に絡んでいた。不思議なのは、絡まれている女の子は恐怖するでもなく、「邪魔なものがある」程度の認識しか持ってないような顔をしていることだ。だが、現場を見てしまったからには働くしかない。
「おい、その辺に…」
「その辺にしとけよお前ら、な?悪いことは言わねーから。」
俺が声をかける前に、ウニみたいな頭をした男が先に間に入っていた。
「なに、テメェ?こいつのツレかなんか?」
「いや、ツレっつーかなんつーか、知り合いではあるけどみたいな…」
「ハッ。オンナノコ助けて正義のヒーロー気取りですかぁ?ムカついちゃったなーオレ。」
「おいおい、いくら猿並み脳みそでも、こんなところで騒ぎ起こすほどじゃないだろ?人数も二、三人しかいないんだし…」
「おーなに?やってる?何やってんの?」
ゾロゾロと、トイレから同じような服装をした少年たちが現れた。ひーふーみー、結構いるな。
「あ、あれ?集団トイレは女の子の特権じゃ…」
「ずいぶん舐めた口きいてくれたなテメェ。この人数に勝てるともってんの?」
「……ハァーア。不幸だ。」
「何いってやが「バカじゃねーのか三下ども!俺に勝ちたきゃ後三十人は連れてこいよヘタレ!」んだとコラァ!?」
ウニ少年は一方的に啖呵を切ると、踵を返してファミレスから走り去る。頭に血が上った連中は少年を追い、後には忘れ去られた少女が残っているのみ。
「ふーん、あんまり出来が良さそうな顔はしてなかったけど、回転はいいらしいな。大丈夫?」
「誰よアンタ?あたし、あいつを追わなきゃいけないから急いでるんだけど。」
「あそう。もしかして能力者?どうでもいいけど、今追ったらまたあの不良どもに絡まれるぜ。」
「関係ないわ。あたし強いもの。」
「強いのか、ソイツは結構。だが強いからといって、あの少年たちに実力行使したりしないよな?」
「何アンタさっきから、一体何の権利があってそんなこと言ってるわけ?」
「風紀委員だ。ここは俺に任せてくれ。」
話してわかったが、この少女かなり気が強い。それに自分の能力に自信を持っているようだ。こういうのが一番危ない。
「じゃ、そういうことで。」
「チッ。」
舌打ちをして、俺を見ている。恐らく俺がいなくなってから追うつもりだろう。まあそれは関係ない。俺が彼らを片付けた後なら、危険も何もない、勝手にすればいい。
「行くか、『絶対等速』」
ポケットのパチンコ玉を斜めに投げ、
「ヒャーーーーッホッーーーーウ!」
この飛ぶときの感覚が俺は好きだ。すべてを忘れて吹き飛ばしてくれる気がする。暫し堪能した後、町を見下ろしてあの少年を探す。いたいた、ゴミ箱を蹴飛ばしながら走り続けている。ちょうど真下辺りだったので、能力を解除し、急速に落下する。そして地面につく直前、近くのビルを指定する。俺のからだは動かないビルと同等の速度、つまりゼロに戻る。
「うわっ!?」
いきなり真上から人が降ってきたことで不良たちの動きが一瞬止まる。もしかしたら、人とも認識できていないかもしれないが。呆然としている目の前の不良に足払いをかけ浮かせると、頭を手のひらで軽く押す。それだけであれは緩やかに、しかし速度を失わず壁に張り付き、そのまま押し付け続けられる。
「なんっ」
次に後ろの不良は腹に蹴りを入れてやる。すると漫画のような体をくの字にした状態で吹っ飛び、後ろの者たちを巻き込む。
「な、何だテメェ!」
「おいおい、訳のわからない事に遭遇したときの言葉はお前らの辞書にそれ一種類しかないのか?もうちょい頭使えよIQ80。それとも、ましな言葉を話せるように教育してやろうか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぅ、くそ、やっと撒いた。」
上条当麻は不幸な男だ。level5に絡む迂闊な少年たちを助けようとして、その少年たちに追いかけ回されるくらいには。その結果、ファミレスからかなり遠くの橋の方まで来てしまった。
「ようウニ頭、大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろ?本当、やっとの思いで撒いたんだ。このまま倒れこみたい…って、アンタ誰だ?」
「俺か?見てわからねぇかよ。」
「生憎、知り合いに分厚いコート着込んで無精髭生やしてる奴はいなくてね。」
「ひでぇ言い草だな。せっかく不良どもを片付けてやったってのに。」
「アンタが?」
「おう。何せ俺、風紀委員だからな。」
「風紀委員?」
良く見れば、コートの上から風紀委員特有の腕章が巻かれている。しかし、風紀委員は各学校から選出されるもの。と言うことはこのオッサンは『自称風紀委員の危ない人』ということになる。
「アッフウキイインノカタダッタンデスネーヨカッタータスカッター。じゃあ私いくところがあるのでこれで失礼しま…」
「おい待て。お前俺が自称風紀委員の痛い人だと思ってるだろ。違うぞ。」
「あー、いたいた。全くどこまでいったかと思ったわよ。」
振りかえると、ビリビリ中学生。学園都市に7人しかいないlevel5の超能力者であり、なぜか突っかかってくる謎の女。しかし今日の俺は冴えている。この場には二人の他にも他人が一人。客観的な視点からの批判があれば、彼女もこの無為な行為をやめるだろう。
「今日という今日こそ生ゴミみたいにしてあげるから覚悟なさい!」
「いや、お前一回でも俺に勝ったことあったか?もうやめようぜこんな不毛なこと。アンタもそう思っていねぇ!?」
近くにいる、と思っていたらいつのまにか消えていた。これでは上条はこの場にいない人物に話しかける痛々しい人物になってしまう。
「え、えーと、違うんですよこれは、さっきまではここに人がね?いたんですけどって何そのかわいそうなものを見る目!?ああもう、不幸だああああああああ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ま、積極的に面倒に関わっていく必要は無いからな。恨むなよウニ頭。」
少女の姿を遠目に確認した俺は、少年の気が逸れた隙に飛び、遠くのビルの屋上まで避難していた。
少年少女のロマンスを邪魔する趣味は俺にはないのだ。まあ、どちらかというとラブというよりバイオレンスの方が近いかもしれないが。
「うぉー、スゲー!あんだけ強い電流を放てるってのは、中々いねぇよ。それこそlevel5並みだな。ウニの方はどういう能力なんだ?弾いてるっつーか、吸収してるっつーか、何だあの能力。」
観察する者。それをさらに観察する者。学園都市の目はすべてを見透かす。彼の異常性も。彼の異様さも。
かなり作中時間が飛びました。次はその説明と、最後の思わせ振りなあれの説明も。