そのせいかまたもや一本書けてしまったので、折角だから投下します。最初から『短編』って銘打ってる分話に一発ネタだろうが次話の整合性とか考えなくても良いからすげぇ気が楽で良いですね。まぁだから何だと言われれば、それだけの話ではあるんですが。
それでは本編はこの下からです。どぞ~。
……あ、後よかったら感想とかもくれると嬉しいです。はい、それだけですでは。
『織斑一夏』という少年がいる。
本人は何処にでもいる普通の少年だと嘯いているが、そんな事はあり得ない。
というか、あり得ねぇ。
織斑一夏のせいで、主に二人の少年が犠牲になってきた事実は、本人の知らぬところでしかしながら確実に、そこにある。
その少年達の名は蒲原春臣と五反田弾。
僕、蒲原春臣は一夏とは小さい頃から家族同然の付き合いのある所謂幼馴染で、ある日突然両親が蒸発し姉と二人だけになった織斑家にうちは家族ぐるみで関わりを持つようになった。
弾は小学校高学年から、同じクラスになったのを契機に友人となり以来気の合う友人として一夏と懇意になり、僕とは同類の共感から親友ならぬ心友として友情を育む間柄だ。
そしてこの問題となる一夏なのだが、本人の思いの外重たい家庭環境に普通ならもっと卑屈になったりしても良いところだろうに、コイツときたら爽やかを擬人化させたかのように好青年だったりするのだ。
やる事成す事がとにかく様になり、元の見目と相まってやたら格好良く映える。
曲がった事が大嫌いで、困っている人間には誰彼構わず手を差し伸べる。
また物語の主人公のようにトラブルメイカーというか厄介事を吸引してしまう星の下に生まれているらしく、一夏と街を歩くと不良に絡まれてる女の子とかともガチ接敵してしまう。
当然一夏は放っておくという選択肢はおろか通報するという考えすら持たずに吶喊するため、友人として放置しておく事の出来なかった僕達も自然と不良との喧嘩の回数が軒並み増え、今となっては街の治安維持に一役買ってると交番勤務の警官に言われるまである。
しかしながら、僕も弾も別に喧嘩が強くなりたかった訳じゃなかった。
弾は一夏について行けるようになるためについに格闘技を習うようになり、木刀片手に不良を成敗する一夏の背中を与るようにファイティングポーズを取る姿は今じゃ街の最強コンビとして不良に恐れられるようになった。
僕の場合は二人のように体も然程大きくも無ければ体力的にも劣っていたため、戦い方というよりは道具の使い方の方を覚えるようになり、改造エアガンにて二人のサポートをする形で応戦するようになったり、我流ながらに所謂ガン=カタまで出来るようになってしまったのも、僕にとっても弾にとっても、欲しくて得た強さでは無かった。
というか、僕も弾も出来れば喧嘩とかノーサンキューでいたいタイプの人種である。
普通に八割平穏二割スリルな学生生活をエンジョイしていられればそれでいいと言うのが僕の本音であり、弾も彼女を作って青春したいと思春期として至極真っ当な感情を持っている。
………が、ここに織斑一夏を投下すると途端に僕達の望みは大きく遠のく事になる。
先にも言ったが、織斑一夏という少年は同性から見ても非常に粋というか、格好いいというかでそれはもう、羨望したくなっても仕方ない物を何個も持っている。
生い立ちに負けない芯の強さや明るさ、素の見た目の良さに人畜無害を地で行く純朴さにさらに加えて運動神経や勉強まで出来るとあれば最早完璧超人の名を送って差し上げたい。お前は何処のサンシャインマンなのかと。あれ、彼って確か悪魔超……まぁいいや。
これだけ揃っていれば誰もが思う事だろう。
“コイツ、きっとモテるんだろうなぁ………”と。
そう思った諸君。その考えは決して間違ってないが、まず間違いなくその考えの斜め上を織斑一夏は行っている。
小中通して潜在ファンは余裕で三桁を超え、バレンタインやクリスマスといったイベントでは暴動なんて当たり前。
修学旅行なんて一夏の取り合いだけで女子同士であわやバトロワが繰り広げられる寸前だった上に、一夏の写真一枚だけで一喜一憂する女子は傍から見るとアイドルに恋い焦がれるファンにしか見えなかった。
しかもこれの性質の悪いところは一夏がアイドルではなく、同じ学校に居てしかも話しかければ笑顔を返してくれるとくれば、それはもうモテた。学校中の女子が全員と言っても過言では無いほどに、モテていた。
……そして、そんなラブコメ野郎の桃色ハッピーライフの陰に隠れて、僕と弾は地獄を見た。
それもこれも暴徒寸前の女子勢から一夏を守るため。
弾は一夏に想いを寄せる妹の蘭ちゃんのため、僕は初恋の相手でもあった鈴を応援するため。
片や恋に破れ、片やシスコン気味な兄による半ば血涙を流しながらの説得でかろうじて暴走しかけていた女子を抑える事は出来ていたが、一夏はそんな苦労を知る事も無く僕達の精神がただただ擦り減るだけだった。
でも、それでも別に良かったのだ。
自分の好きだった人が、大切な妹が、それぞれどちらを選ぶにせよちゃんと恋に決着が着けられるように。
あわよくば、幸せになって欲しいと思う僕達の切なる男心と、後はどんなに理不尽なぐらいにモテ男であっても嫌いになどなれなかった親友への友情。
僕達は共に涙を飲みながら、せめて高校は一夏とは違う場所に行って一緒に青春しようぜ!と励まし合いながら耐えた。耐えたのだ。だというのに……ッ。
――――織斑一夏は、何処までいってもラブコメ野郎だった。
ラブコメ系の漫画でもライトノベルでも何でもいい。
この手の物語で主人公に求められる物とは何か?
例えば容姿。
魅力的な美少女が売りのラブコメにおいて、そんな女子とある程度釣り合いが取れるように整った容姿を持つ事が主人公には求められ、平凡と言いながらも作中結構な男前に描かれるのが通例である。
例えば設定。
同情でも何でもいい。とにかく相手の意識を引き込めるだけの強烈な個性、もとい設定。
一夏はむしろ美少年寄りの美形であるし、見た目に関しては一切問題無い。設定の点で言っても、両親のいないという辛さを感じさせる過去持ちでさらに姉は世界的超有名人。
もうお前何処の主人公だよとこちらが嫉妬でマスクを被りたくなるほどに色々持っている一夏であるが、彼はラブコメ主人公体質らしくもう一つ、ラブコメ主人公には欠かすことが出来ない物であり、現実だと死ぬほどウザい特質まで持っていたのだ。
その名は『鈍感』。
メロメロが効かないというのも強ち間違ってはいないが、野郎はとにかく、自分に向けられる好意に鈍い。
いっそ神経の有無さえ疑うレベルで一夏は寄せられる女子からの好意に気付いている様子を見せず、普段どれだけ蘭ちゃんや鈴から周囲から見れば明け透けなアプローチを受けていたとしても、本人にはそれらが兄同然に甘えてくれているだの、親友で幼馴染だのというニュアンスでしか受け取りやがらない。
そのお蔭で一夏は小中どこまでもモテ野郎だったにも関わらず、一切女子と付き合いを持つ事をしなかった。
これに憤ったのは蘭ちゃんでも鈴でも無く、僕と弾である。
人がどれだけお膳立てをしてもまるで意に介さずにスルーしまくり、あまつさえ僕達の目の届かないところで勝手にフラグを建てては圧し折り被害者を無意識に増やし、そのせいで増え続ける一方の
さらには弾は蘭ちゃんから、僕は鈴から一夏に対する愚痴を聞かされる訳だが考えてもみてほしい。
こちとら初恋の相手から親友に振り向いてもらえないという愚痴を聞かされ、心友の方も大事な妹が友人に懸想している話を延々と聞かされどうにかしろと言われる事を。
僕達が涙を飲んで友人としての、或いは兄としての仮面を被り続けた事は言うまでも無く、この間あまりのストレスに一時奇行に奔った事もあるがあれは僕達にとっての黒歴史だ。
いっそ本気で嫌いになって離れてしまえればいいのに、そうさせてくれないのは織斑一夏という存在の罪なんじゃなかろうか。
朴念仁っぷりやら鈍感スキルの尋常ならざる高さには軽く殺意すら抱く事もある僕達なれど、それでも決して一夏の友人を辞めたいと思わない辺り、或いは思わせてくれない辺り奴には魔性でもあるんじゃなかろうか。だから女子からあんなにモテているとか。あれ、何かこれマジっぽい……?
――――ま、まぁ何はともあれ、僕と弾はある決意をした。
どれだけ僕達がフォローをしても一切効果の表れなかった一夏の事を、もう高校に任せてしまおうと。
僕達は一夏と違う高校に行くから、アイツならきっと高校でも僕達のような
もう決意でも何でも無かった。
単に何もかも投げ出したくなったというのが本音であり、鈴が中国に行ってしまう直前に一夏にプロポーズすると相談された時には既に僕の脳裏には黒歴史もっぺんやるかと自暴自棄な自分がいて、そんな鈴に負けじと同じくプロポーズをすると決意したらしい妹から相談された弾とその日の内に連絡を取り合い、満場一致で『一夏の事は諦めよう』と共に決めた。
……だってもうしんどいんだもん! 何アイツ! どんだけ鈍いんだよあり得ねぇんだよあんだけ好き好きオーラ浴びてて何で平然としていられんだよ畜生羨ましいんだよこのモテ男がああああああああ!!!
――――まぁ、こんな事内心か弾の前でしか言えないんだけどさ。互いに不器用過ぎるぐらい、人に気を遣ってしまう性質らしいので。
しかし、それも中学で終わりだ。
高校に入ったら今度こそ、僕達は自分の青春を謳歌するのだ。
一夏は僕達も同じ高校に入ろうと誘ってくれたが、奴が入学を希望していたのは「藍越学園」という就職に有利な進学校。
そのレベルは当然高く、僕も弾も一夏ほど勉強に熱意を見出していなかったので受ける気も受かる気も無かった。
それに、弾は通っていたジムで本格的に格闘技を教わりプロを目指す道も考えていたらしく、勉強一辺倒になってしまう進学校よりも時間を多く取れる地元の高校を最初から志望しており、僕は僕でエアガンなどの改造をしているうちに機械的な物に興味が湧き、隣町の工業科高校を志望していた。
三人共バラバラだから別に寂しくはないだろうと一夏を説得し、三年の終わりになると遊ぶ機会も少なくなって三人共試験勉強に励むようになっていった。
まぁ、僕と弾に関しては一夏とは聊かモチベーションの持ち方が異なっていたかもしれないが、三人皆志望した高校に受かればいいなと互いに励まし合いながら、僕達はついに運命のあの日を、受験当日を迎えたのだ。
さぁ待っていろよ、一夏に翻弄される事の無い平穏で適度なスリルが待っているであろう高校生活。今から存分に貴様を味わい尽くしてくれる………!
―――――――――そう思っていた時期が、僕にもありました。
「「……どうしてこうなった」」
「ハル! それに弾!
「それは……」
「良かったな……」
「「………はぁ」」
「? 二人とも見ない間にだいぶやつれてないか? あっ、高校が馴染まなかったとかか?」
んなぁこたぁ無い。
少なくとも、高校に入っての一ヶ月は本当に楽しかったと断言できる。
一夏による無自覚フラグ乱立による女生徒の暴動も無ければ、失恋の痛みを引き摺る相手からの惚気や愚痴を聞かされることも無い。
好きなだけ好きな事に没頭出来て、部活見学の時にお世話になった先輩の人柄に淡い想いを抱きかけていた矢先に、“ソレ”は起きた。
それは、織斑一夏がやらかしてしまったとある事故に由来したとばっちり。
本来女性にしか動かせなかった空飛ぶ廃スペック破廉恥メカっ娘パワードスーツである通称IS、正式名称<インフィニット・ストラトス>を男の一夏が何故か動かしてしまい、“藍越”学園から“IS”学園に入学するというウルトラCを決めたのが一か月前の話。
一夏の事を誰よりも知っている僕と弾としては、女子しかいない学園で一体どれだけの女子が一夏に堕とされるのかと戦々恐々していたのだが、どうせ対岸の火事だと互いに放置しながらそれぞれの学園生活を満喫していた筈だった。
が、しかし、一夏がISを動かした事は僕達が思っていた以上に大事として国のお偉方は捉えていたらしかった。
登場から十年以上経ち、技術革新すら起こしたISであるがその全容は未だに解析出来ておらず、開発者である知人のお姉さんは世界規模の指名手配を受けているにも関わらず未だに尻尾すら掴ませていない。
なのでISの深淵に近づくための何かに飢えていたというのも大きいのだろう。一夏という世界に類を見ない人材を発見出来た国は、他にもいるかもしれないと一夏の身辺を調べ上げ彼と関わりを持っていた同世代の僕達までISの適性検査を受ける羽目になった。
……そしてその結果が、ご覧の有様である。
僕も弾もISを起動させてしまい、当然のように身柄を国に預ける羽目になり高校は中退。
一夏と同様にIS学園にて貴重な男性のIS起動データを取るために編入させられ、現在笑顔の一夏に迎え入れられている中僕と弾の目は等しく濁っていた。何なら釣り上げて三日経った魚の方がまだ生気を感じさせるレベルであろう。きっと。
「僕、さ。最近やっと同じ部活の先輩と話せるようになってさ、部活や勉強以外の話題とか考えるのが楽しくて、多分あの人の事好きになりそうだったと思うんだよね」
「俺もなー、ジム通ってるって話したら同級生の子なんだけど、その子がすっげぇ筋肉フェチだったみたいでさー。腹筋とか見せたらやたら気に入られて、そんなに悪い気してなかったんだよなー」
「あー、分かる分かる。僕も自分で考えた設計図とか改造したエアガンとか先輩に見せた時に褒められて嬉しかったし。アレだよね、初めて培ってきた物が他人に認められたっていうの? あれヤバいぐらい嬉しいんだよねぇ……」
「だなー。それで、もうここには好感度泥棒はいない訳だし、これなら俺にもチャンスあるんじゃね? そう思っても不思議じゃないよな、俺達」
「当然。何なら僕なんてもう一週間ぐらい様子見したらデートに誘いたいまであったもの」
「俺なんて来週の休日にはもうジムに遊びに来る約束とかしてもらってたんだぜ? どうだすげぇだろ」
「いーなーうらやましーなー」
「ははっ、だろ? まぁ、」
「「もう何の意味も無いんだけどな! あっはっはっはっはっはっは!!」」
さようなら、僕達が希求し焦がれた青春の日々。
そしてこんにちわ、一夏の事が大好きなラブコメの神様が常駐しているカオスな日々。
僕達は女子だらけという一夏の被害者しかいなさそうなこの学園で待ち受けているだろう日々に暗雲しか見えず、もう涙目で明日どころか前も見えない気持ちだった。畜生、何で動かせたんだよう。
「ど、どうしたってんだよ二人とも! 何か様子がおかしいぞ!?」
「うるせぇぇえええ! お前には分からないだろうさ! 俺達の胸に渦巻くこの思いがッ!」
「またしてもあの胃痛とかSAN値に厳しい日々が待ち受けていると思うだけで僕達はもう涙で何も見えないんだよ! 何なら今だって一夏の顔がぼやけて見えるぐらいだよ! それでもイケメンとかもう何ふざけてんの神様は平等じゃなかったの!? 何が天の上にだ天上人は目の前に居たよドチクショウッ!!」
――――結局。
自己紹介一発目のHRで精神崩壊を起こた僕達は担任だった織斑先生に気絶させられるまで暴走を続け、クラスメイト達に『何か可哀想な人達』というレッテルを早速張られる事になった。とりあえず、棺があったら入りたい気持ちってこんなんなだろうな。きっと。どっかに無いかな、棺。
ちょっぴり人物紹介
・蒲原春臣(かんばら はるおみ)
造形はTOSRのエミルの髪が赤茶色で、ついでに眼鏡をかけた感じのイメージ。
織斑家のお隣さんであり、両親が蒸発して子供二人だけとなった事情を見過ごせぬと家族ぐるみでの付き合いを持つようになり織斑一夏とは親友と呼び合える程度の仲を構築している。
何かとせっかちかつ奔放な一夏と、そんな一夏しか目に入っていない篠ノ之箒という放っておくと何処までも行ってしまいそうな二人と共に幼少期を過ごしたせいか同世代では抜きん出たオカン気質を有し、お節介を焼く一夏以上に彼の事で一喜一憂している様は心配性の兄のようだと言われる事もあったり。
また、一夏のフラグメイカー体質の被害者同士として五反田弾とは親友ならぬ心友として互いに信頼し合っており、一夏を嫌いになれないとぼやきながらも結局何だかんだで一夏の味方をしてしまうため、彼の義侠心に煽られる形で二人とも無駄に戦闘スキルが高まってしまった。
彼の場合、身体的には二人よりも細見だった事もあり格闘技や剣術ではなく道具による護身術を覚えるようになり、主に改造エアガンや暗器として袖に伸縮式のトンファーを武器に一夏達と同等の戦闘力を有している。ちなみに三人の中で道具を使っているにも関わらず強さが変わらない事実に理不尽を覚えている。
初恋の相手は彼の中国娘こと凰鈴音。ただし一夏にフラグを持っていかれたためその想いは遂げられる事無く、一応告白はしているがしっかりフラれている。が、彼女からは一夏に関する相談事を持ちかけられるなど一定の信頼はされており、心で涙を流しつつ友人二人の幸せのためにアシストし、それを一切スルーしてしまう一夏の事は高校の時点で投げるつもりだった。なのにどうしてこうなった。
どうせならオリ主以外にもキャラ突っ込んでみようぜ!と思い立ち弾君を足し、二人で織斑一夏被害者の会とか開きながらも結局一夏の世話を焼いてしまう。
つまり二人とも根っからのギャルゲにおける親友ポジであり、報われる事はそんなに無いという仕様じみた運命を背負っている。
原作的にのほほん姉と弾のフラグは建ちそうですけど、基本一夏に好意を寄せてる子達のベクトルを変える気は無かったりするので主人公に関してはフラグはありません。えぇ、ありませんとも。
偶にはヒロインのいない主人公もどうかなーと妄想して何となく書いてみました。他のヒロインをフォローする形で、お手軽に好感度とか好きなアイテムの事を教えてくれるキャラを自分で考えてみたらこんな感じに。相当モテていたであろう小中時代通して友人だった弾とか他の友人キャラは称えられていいレベルだと思います。てか、ラブコメ主人公の友人一同全員に対して同じような事を考えている私ではあるんですが。