【習作】イイ日旅立ちのメモ帳【的な?】   作:イイ日旅立ち

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フェアリーフェンサーエフをプレイしていてふと、そういえば弄られキャラを描いたことはあったけどマゾ系は無かったなぁと思ってみたり。まぁ。それがこの内容と関係あるかと問われると、そんなことは無いんですが。




何となく書きなぐってみたネタ ~リリカル編

 

 

 

 

 

 

 僕の名前は“錐天里(きりあまり)”。いわゆるところの、【転生者】と呼ばれる存在である。

 

 

 

 

 分からない人はネット検索で『二次創作 転生』でかけてみるといい。多分山ほど出てくるから。

 

 

 

 まぁ日常的に使われる言葉ではないし、“転生”といえば大抵の場合宗教用語で言うところの輪廻転生が殆どなのだが、ここでの転生はちょっと意味合いが異なってくる。

 

 

 本来の意味の場合、転生とは修行を積み重ねた先、魂が今以上に研磨され人間という枠を飛び越えた先に迎える進化の事を指し、僕のように死んだと思ったら赤ん坊になっていたなんていう事は無い。

 

 

 ただし、僕が経験している転生が本来の意味とは異なっているとしても、それが必ずしもマイナーという訳でも無かったりする。

 

 

 世間一般的な目線から言えばマイナーではあるが、ちょっとネットを齧ってかつ趣味傾向が傾いている者同士であれば、“転生”という言葉の持つ意味は普通とは異なっていることが分かるのだ。

 

 

 

 

 ――――――それすなわち『テンプレート』

 

 

 

 

 二次創作ではよくある、原作に対しオリジナルキャラクターを介入させる際に最も手っ取り早い手法の一つとして、広く認知されている物。

 

 

 死んだ人間が何らかの要因で物語の世界に迷い込み、そこを“物語”として認知しているからこそ持ちえた未来知識でより良い方向に物語を進める………これが大体における転生を用いた物語の王道、すなわちテンプレだ。

 

 無論良い方向に向かわせる以外にも悪役としてはっちゃけるような人もいるし、生きてる間に叶わなかった願いを成就させるために形振り構わない人もいる。

 

 

 多かれ少なかれ、転生というイレギュラーによって発生した波形効果(バタフライエフェクト)を利用した二次創作に欠かせないファクターが転生者であり、その存在を定義するとしたら以下のような物になる。

 

 

 一つ目、自分に“前世”があることを自覚している者。

 

 元来前世の記憶は輪廻の河で魂が浄化されるために洗い流される事になっていることを考えると、前世の記憶なる余分な物を持ったまま新生することは紛れも無いイレギュラーである。

 

 

 二つ目、前世の知識としてその世界の概要を把握している者。

 

 予知ではない。予め何らかの媒介を通してその世界で起こり得る出来事を“物語のあらすじ”として知っているような存在。余程のイレギュラーでも無ければ、先の事件はおろか物語の登場人物の深層心理など分かる筈も無い。

 

 

 ……それこそ、紙面なりアニメなりの描写を見聞でもしない限りは。

 

 

 そして三つ目。

 

 これはあっても無くても余り変わらない項目であるのだが、転生者(イレギュラー)として物語、すなわち世界を一変し得る事件に干渉するためにただ原作の知識を持っているだけのアドバンテージでは心許無い。

 

 或いは関わるつもりが無ければ必要は無いかもしれないが、物語に関わりたがろうとする者ならばやはり、その事件物語の中で役者を気取れるだけの力量が必要なのだ。

 

 

 従って、転生者が真にイレギュラー足り得ようとするのであれば、まずその関わろうと思う意志を貫く力が必要となってくる。

 

 

 そのため大体の転生者にはその物語に由来するかはてまた全く異なる毛色の力、異能を持って転生する場合が殆ど。すなわち、三つ目の項目とは“登場人物と張り合える力を持つ者”ということになるのである。

 

 

 

 

 

 ――――以上が僕の知る限り、二次創作ジャンルにおける“転生者”の概要である。

 

 

 その設定の容易さから二次創作初心者にも取っ付きやすく、また所謂ところの「ぼくのかんがえたさいきょーしゅじんこう」を極めて簡単に作り上げられることから妄想の捌け口として広い門戸を持っていると言えるだろう。

 

 

 さて、そんな二次創作における転生者であるのだが、現在進行形で僕はその転生者という役柄を持って今の人生を生きている。でなければこんな長々と諄い説明なんて入れない。

 

 

 

 今現在、僕が生きている元となった作品の名を『魔法少女リリカルなのは』という。

 

 

 元の作品を直接見た訳じゃないので二次創作ジャンルでよく使われている物の一つ、そんな認識と知識しかないため詳しく語れはしないのだがにわか知識でこの作品を表現するなら、“魔法という名のSFバトルを展開する大きいお友達向け作品”が多分正しいんじゃないかと思う。多分、きっと、めいびぃ。

 

 

 僕がこの事実に気が付いたのは、小学校三年生になりクラス替えをした際に隣の席にいたのがその作品の主人公と全く同じ名前の少女だったから。

 

 むしろそれまでに気付けよ普通と思わなくもなかったけど、世界観設定とか知らないんだから主要人物を直に見るまでまさか自分が本当に作品世界に転生したとか思わない。というか思いたくなかった。

 

 精々阿呆みたいな力とテンプレよろしくな生い立ちを背負って、それでも特に何かに思い当たるような出来事もなく安心しきっていたのでなまじその少女との邂逅は印象的であり、自分が魔法という名の極太レーザーやらが飛び交うような世界に、その舞台となるであろう街に住んでいたという事実は中々にクるものがあった。

 

 

 

 ……具体的には物語以前に、この世界に存在している僕以外の“同輩”に関わりたくないという意味で。

 

 

 

 別に転生している人間が僕だけならば問題は無かった。

 

 

 僕自身、見目はパッとしないものであるし身長も同年代より低く、また常日頃から趣味が高じて休み時間の度に少女漫画を描いていたため周囲から割と遠目に置かれる存在だから自分が粗相を仕出かさない限り、真っ当な感性を持つであろうクラスメイト達から避けられる自信があった。

 

 そこで話しかけてきそうなのが絵に描いたような善人、もとい良い子である我らが主人公にして無敵ヒロイン高町なのは嬢であるが、そんな彼女には双子で聡明な姉がいたため僕に関わらせないように極めて常識的な対応を取ってくれているため問題は無い。

 

 

 そう、例えその双子の姉が原作には登場しない、僕と同じく転生している同輩であっても、僕さえ関わらなければどうでもいいことだ。

 

 

 他にも明らかに日本人離れした銀髪と異色虹彩(オッドアイ)を携えた美貌の源氏名っぽい人や、「こんなの漫画にしかいねーよ」ってぐらいぱーぺきな爽やか系のイケメン。とても小学生とは思えない頭脳と立ち振る舞いの美少女とかもいたりするがそれも極めてどーでもいい。

 

 

 明らかに見た目からして同輩の匂いを漂わせているそんな方々は率先して物語に関わりたがろうとしていることは傍から見ていればよく分かるし、恐らくは原作開始が近いのだろう最近はそわそわしている気配を見せている。

 

 

 そこにどんな目論見が含まれているのか僕にはさっぱりだけど、例えばここで二次創作の王道(テンプレ)に則った展開を予想してみるとしよう。

 

 

 このように周囲に自分以外の転生者がいる場合、大抵取られる方針は二つに絞られる。

 

 一つは他の存在など知らず、あくまでも自分の意志を貫くために干渉の方法は数あれど、同輩の存在を真っ向から考えるのが一つ。

 

 もう一つが、我知らずと原作も同輩の存在も遠巻きにして自分は平凡な日常に埋没するのだと日和見を決め込むのが二つ目。

 

 

 多分僕の思考が最も近いのは後者だ。

 

 だってわざわざトンでも魔法バトルに自ら関わっていきたくないし、そもそも僕が持っている力は魔法から一番遠いものである。

 

 よって僕自身の要因から物語に介入することは一切無く、また他の転生者のように見目からして目立っている訳でも無い根暗なクラスに一人はいるような地味男が、クラスはおろか学年単位でアイドル的な注目を集めているような存在と関わり合う切欠なんてほとんどない。

 

 

 ……が、物事には例外が付き物で、特に日常を希求する系の主人公とかだとよく陥るパターンが存在している。

 

 

 だって本気で日常系になってしまったら世界観を魔法と少女と友情と、若干の百合要素を絡めたような世界に態々転生させる必要は無いし、戦ってナンボな以上日常系を書きたかったら相応の世界に転生させる筈………あくまでも作者視点で見たらの話だが。

 

 例えば本人が何気ないと思っていた行為が意外なフラグとして立ってしまい、それが原因で後々原作キャラと絡んでいく……こんな展開がまぁテンプレだろうか。

 

 

 早々人生が上手く思い通りに運ぶことなんて無いのだからそういった不測の事態が起こるのは分かるし、やっぱり何だかんだで避けていたものと向き合っていく過程は書き手の技量さえ伴っていれば引き込まれる設定だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――故に、僕はこう思うのだ。

 

 

 こんな傍から見れば使い古された設定を感じさせずにはいられない僕の人生も、傍から見ている誰かのテキトーな暇潰しにでもなればなーと。そうでも現実逃避しなきゃ、色々とやってらんない事態が目の前にあったりするものだから、切実に。

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁ」

 

「な、何よ溜息なんて吐いちゃって……そんなに私と一緒にいるのが嫌だって言うつもりっ!?」

 

「お゛うっ!? ……バニングスさん、痛い」

 

「うっさいうっさいうっさーい! いいから黙って日誌書く! アンタが書き終わらないと私も帰れないんだからねっ!」

 

「あの、僕これで三回目なんだけど……」

 

「あ゛?」

 

「っ、い、いや、だからね? 僕が書いたのをバニングスさんが添削するから、時間がかかっちゃうんじゃないかなって、態々添削なんかしなくても、学級日誌にそこまで完成度を求めなくてもいいんじゃないかなーって…………あ、ぁぅ」

 

 

 ひたすら怖い。前世から考えれば年齢差が軽く親子ほどはある筈の少女にマジビビりする少年。というか僕。

 

 

 時間帯は放課後。

 

 既に教室の中に生徒は誰も残っておらず、夕日が射し込み中を橙に照らす中残っているのは二人だけ。

 

 

 一人は萎縮して縮こまりつつも指摘された部分を訂正し、前世の高校入試の小論問題以上の緊張を強いられている僕こと錐天理。

 

 

 そしてもう一人が、この世界におけるメインキャストの一人、アリサ・バニングスさん。

 

 

 直接深い部分で物語に関わる訳じゃないが、魔法という非日常ではなく日常側の象徴として、主人公の親友という立場にいる彼女はヒロイン物の物語らしくその見目は外国の血を引いていることを差し引いて考えても整った部類であり、間違いなく“美少女”と称されるべき容姿だ。

 

 その上実家はバニングスグループという世界でも有数の資産を持つ企業トップで、本人も到底小学生とは思えない覇気と才能を持つ才媛。

 

 

 ぶっちゃけかつて高校生だった僕なんぞよりも遥かに現時点で有能過ぎて劣等感を刺されまくりだったりするけど、底辺人生には慣れてるからそこは然程問題じゃない。

 

 

 問題なのは、今この時点で僕がそのバニングスさんと一緒に日直なんかをやっているという事と、もう一つ。

 

 別に鈍感を気取る訳でも無いし、人間観察という根暗な人間であれば誰もが趣味と聞かれて内心でこう答えるであろう特技を有する僕にとって、見過ごせない最大のポイント。それは……

 

 

 

「何よ、私がせっかく、せっっっっっかく! アンタのだらしない文章をまともにしようと放課後の時間を削ってまで見てあげてるっていうのに、何? アンタは不服なワケ?」

 

「そ、そういうつもりじゃなくて、あの、バニングスさんってほら、習い物とかいっぱいやってるって聞くし、それに高町さん達と居た方が楽しかったりするだろうし……そ、それにね! 後はもう僕が日誌を提出するだけで終わるんだから、何もバニングスさんが僕に付き合う必要なんて無い、と、思うんですけど……」

 

「はぁ? 私も一緒に提出しないとサボったって思われるじゃない」

 

「バニングスさんは、クラスの委員長もしてるし、塾とか家の用事があるから先に帰ったって言えば、先生は何も言わないよ?」

 

 

 彼女が態々僕に付き合って居残る必要は無い。これはれっきとした事実であり、普段の取り仕切りっぷりを知っている担任なら日直を途中で帰ったぐらいじゃ信頼は揺るがない。

 

 むしろ日頃漫画ばかり描いていて注意されている僕が迷惑をかけていると軽く説教すらかまされるであろう確信すら抱いているので、彼女が抜けたところで何ら問題は発生しない。というかいない方が説教されないので嬉しいぐらいだ。

 

 

 だというのに、それでも彼女がわざわざ恩着せがましい普段ではまず使わないであろう言葉を使ってまで居残ろうとする理由。これが自惚れであったらどんだけ気楽だったことかと思わなくも無い。

 

 

「………………の」

 

「…はい?」

 

「~~~っ! だからっ! 私が一緒に居たいから残るっていうのじゃダメなのって言ってんのよ! ていうか察しろ! このバカ! アホ! 前髪枠!」

 

「ひうっ!? ご、ごごごごめんなさああああああぁぁぁぁい!」

 

「大体、こういう時でもなきゃ会話する隙なんて無いじゃない! 普段から『話しかけるなオーラ』発してクラス中から距離を置いて話しかけたら負けみたいな空気作ってるとか何なの!? 馬鹿なの死ぬの!?」

 

 

 

 ………ただ、彼女のこういうところは、正直すんげく困っている。

 

 

 

 彼女、アリサ・バニングスは紛れも無く天才である。

 

 

 まだ十にも満たない年齢にも関わらず、その才気煥発っぷりは前世というアドバンテージをフル活用して天才の名を欲しいままにしている同輩を論破し、その視線の圧だけで怯えさせるほどの覇気。

 

 人の上に立つ人間とは小さい頃からある程度完成されるものらしいと他人事のように思えれば良かったのだろうが、彼女にはそうした完璧さ故に、かなり困った性質が備わってしまった。

 

 

 アリサ・バニングス。彼女はあまりにも完璧過ぎた。

 

 

 凡そ同い年で彼女に勝る存在などおらず、それこそ暴力や異能といった条理以外の要素が関与しない限り彼女は多分生涯無敗でいられる。何というか、前世の漫画で見た某生徒会長とかと同じなのだ彼女は。

 

 

 その漫画の生徒会長はとある出会いを経て『上から性善説』なるものを唱えるに至ったが、バニングスさんの場合は違った。

 

 

「日直が重なりでもしないと、こうして二人っきりになれないでしょ! アンタに近づこうとするとほのかが煩いし! 色ボケ男がアンタを目の敵にしてちょっかいをかけようとするし! 誰にも文句を言わせないでアンタにも迷惑がかからないようにするには、こうでもしないと一緒にいられないのよその辺分かってんの!?」

 

「イ、イェス、マム!」

 

「………全く、本当にダメよねアンタって。勉強も出来ないし、運動だってまるでダメ。かといって普段描いてる漫画? あれだって全然つまらないし。本当、ダメダメよアンタって。そのクセして私さえ遠ざけようとしてるとことか、生意気」

 

「う、ぐぅ」

 

 

 肩を竦めながら盛大にディスってくるバニングスさんに、しかし言い返すことの出来ない僕。

 

 言われていることの大半が事実だけにぐぅの音も出ず、実年齢換算にして十歳以上歳の離れた相手に言い負かされる屈辱に思わず目に涙が浮かぶ。

 

 

 そんな僕を見て、バニングスさんが浮かべる表情―――――――それはどこか恍惚にも似て、彼女が完璧過ぎた故に抱えた歪みがその瞳には浮かんでいるように見えた。

 

 それに先の気性を荒げたようなポーズも身を潜め、恐らくは誰にも見せていないであろう本性を静かに覗かせながら彼女は口を開いた。

 

 

 

「……本当に、ダメな奴。私がいないとなーんにも出来ないんだから。バーカ」

 

 

 

 何度も言うが、彼女はその年齢に似つかわしくないほどに早熟した天才である。

 

 だからこそ彼女にとって自身と並ぶ者などおらず、常に何もかもを見下してしまう悪癖を本人が自覚しながらも拭えないでいた。

 

 それは親友という、自身の能力以外の分野において対等となる存在が現れた事により払拭されたかのように見えたが、実はそうでは無かったらしい。

 

 

 他の誰よりも優れていた彼女にとって、前世がありながらそのアドバンテージがまるでなく、同輩どころか本来遥かに年下のクラスメイト達に劣る僕は路傍の石ですらない存在である筈だった。

 

 

 しかしバニングスさんは何をトチ狂ってしまったのか、その完璧過ぎる能力が性格を歪めてしまったのか正しいところは分かっていないが、ただ二つ、二つだけ彼女に関して分かっていることがある。

 

 

「本当にアンタってダメよねー。大抵の事が出来る私じゃなくても、アンタを見てる人間はそう思っているわよ?」

 

「うっ」

 

「アンタみたいな奴は私の短い人生の中でも初めてだし、きっと今後もアンタ以上にダメダメな奴なんて見ることも無いんでしょうね」

 

「はうっ」

 

「………まぁ、でも? そんな社会に出たら明らかに淘汰されて呑み込まれて塵みたいになっちゃうであろう未来が確定しているアンタを、そうと知っていて放置しておくことなんて出来ないわよね? 他の奴なら或いはアンタに頑張れって言うのかもしれないけど、私には分かるわ。どんなに努力してもアンタは報われることなんて無い。それを知っていて社会の荒波にアンタを放り出すなんて、これはもう殺人罪に問われても文句が言えないわ」

 

「あ、あう」

 

 

 

 ……まず一つ、アリサ・バニングスにとって錐天理は史上稀に見るダメ人間として見なされているということ。

 

 彼女にとって僕は人類史にも名を残すほどのダメダメらしく、例え周囲がどんなに綺麗事を並べ立ててもそれに意味など無く、僕は何をするにも絶対に成功などしない人間だと見なされているらしい。

 

 何か存在を根本からボロックソに貶されてしまっている訳だが、かといって彼女が僕を見下しているとかそういう訳ではない。

 

 

 何故なら彼女にとって自分より優れている存在がいないのだから、自分より下に他者を置くのは当然の理。

 

 

 その中でなお、最下級に僕を置いているのは、彼女にとっての“特別扱い”に他ならない。

 

 

 

「――――だから、アンタは私が見てないと。アンタの未来がお先真っ暗って知ってるのは私だけなんだから。私だけがアンタの将来を助けてあげられる。だってアンタが出来ない全部を私が出来るんだから、出来ない部分を彼女が補ってあげるのは当たり前でしょ?」

 

「あ、あの……」

 

「何?」

 

「あ、あの、ですね。僕は別に、バニングスさんとその、特別付き合いがある訳じゃ無い、ような……ひぃっ!?」

 

「ん? 何々言ってみなさいよ? え? 誰と、誰が、特別な付き合いが無いって? 人類史上最底辺であろうアンタにつり合うような人間なんてこの世どころか三千世界を探したところでいる訳無いじゃない。どう足掻いたってつり合いが取れる相手はいないんだから、アンタには対極(わたし)しかいないでしょ?」

 

 

 

 当然。或いは自然。

 

 

 それが世界の真実であると疑うことなく断言したかつて様々な理を発見してきた偉人のように、バニングスさんは言うのだ。

 

 

 

 

 “錐天理(さいてい)”には“アリサ・バニングス(さいこう)”しかいない。

 

 

 

 

 この世の誰よりダメな人間と一緒に居ようと思う存在なんて、自分以外に誰もいない。

 

 

 何故なら自分こそが何もかもが欠けているダメ人間を唯一支えることが出来る、何もかもを持っている自分だけが何も持っていない人間に与えることが出来ると、バニングスさんはそう言って僕に告白した。

 

 

 それは最早告白とかそういう可愛らしくも甘酸っぱい響きとかほろ苦さを感じさせるようなものではなく、一方的に人をこき下ろしつつもバニングスさんからしたら間違いなくそれは、僕を伴侶と認めた告白だった。

 

 

 自分だけが僕をそういう存在として見ることが出来る。それ以外にはどう足掻いてもただのダメ人間としか映らない人間だから、自分だけが僕を拾い上げることが出来るのだと、何かボランティアみたいな感じで告白された当時の僕の気持ちを果たして誰が共感してくれるだろうか。

 

 

 正直今でも自分が好かれているのではなく、完璧過ぎて頭のネジがどこか緩んでしまった彼女の戯れだと信じたいし、だからこそ頑なにクラスでも一人で根暗キャラを貫いている。

 

 素でもあるため別段変えようという気も無く、さらにはそのキャラを演じていればバニングスさんは彼女のコミュニティによって僕に近寄ることが出来なくなるため普段は助かっているのだが、彼女の持つ委員長という特権、そして僕というクラスからの爪弾き者。

 

 

 良心を働かせてクラスの中に溶け込ませるべく打ち出した提案が、こうして僕が日直になる場合、クラスで僕を嫌がらないバニングスさんが必ずペアになる仕組みが、彼女の意図的なものであることを知っている者はいない。

 

 

 外から見たら優等生がクラスメイトに手を差し伸べる構図で青春ものや少女漫画にはありがちな展開であろう。

 

 

 でもその内にあるのは、割と歪んだ好意(デレ)を見せる時間を確保するための、僕からしてみれば胃痛極まりない時間帯。

 

 

「いい加減認めなさい。私は錐天理の彼女で、恋人で、この地球上はおろか平行世界全部含めてアンタの隣を人生の選択肢として唯一選べるのは私だけ。なら、アンタに拒否権なんて無いでしょう?」

 

「な、何で、そんなにバニングスさんは……いつも言ってるけど、僕を選ぶことなんて、そんな必要なんて無いんでしょ? 例え僕がバニングスさんの言う通りの存在だとしても、バニングスさんが僕を選ばないといけない理由なんて……」

 

「そりゃそうよ。アンタを選んだ時点で私の人生で掴めるであろう栄光やら成功の九割九分は台無し確定。多分パパには滅茶苦茶怒られちゃうんでしょうね」

 

「だ、だったら!」

 

「でもそんなの知ったこっちゃないのよ。というか、アンタに私の選択に口を挟めるとでも思ってんの? アンタは私に選ばれた時点で如何こう言える立場に無いの。大人しく私に愛されなさい」

 

 

 普段のクラスに居る時とはまるで違うこの姿こそ、“アリサ・バニングス”という少女の本性なのかもしれない。

 

 

 僕を見下し、嘲笑し、それでいて真摯に愛を囁く歪な在り方。

 

 

 何かもう、これがバタフライエフェクトのせいだとしたら自殺でもして責任を取らなきゃいけなくなるのか思わず包丁とか握ってしまいそうになるのだが、これ僕が悪いの? 僕だけのせいなの?

 

 少なくとも僕が知る限り始めからバニングスさんはこうだったし、僕が何した訳でも無く日直制度が彼女によって整えられたその日に告白されて以来、このよく形容できない関係が続いている。

 

 

 多分彼氏彼女という関係では無いと思う。彼女が本当に愛情を持っているのか信用なんて出来る訳も無いし、そもそも僕は彼女が怖くて愛だの恋愛感情だの抱く余裕をもっていない。

 

 

 

「(というか普段とキャラがこうも変わるってどんだけ……本当どうなってるのこの世界…)」

 

 

 

 これ以上何もあって欲しくはない。今だって許容量オーバー気味なのに、バニングスさん以上のキャラは僕なんかじゃ対応しきれない。もしいたとしても、他の同輩にお任せしたい。痛切に、そう願う。

 

 

 




ちょいとキャラ解説

錐天里(きり あまり)

転生者。原作知識は二次創作が大半であり、かなり偏った知識しか無いために既に原作知識のアドバンテージを失いつつある。

能力的には転生者らしく本来は高校生レベルは備えているが、他の転生者達によるバタフライエフェクトなどで軒並み高レベルがデフォとなっているため落ちこぼれ気味。ある意味において聖祥で最も小学生らしい学力という涙目な環境で、アリサ嬢に目を付けられた事で変に運命が捩じれてしまうことに。

特典は『フィジカルリアクター』。
“トップをねらえ!2”にてバスターマシンに搭載されている主な機構で、周囲に存在している物質の構成を再変換して自身の武器として揮ったり、バスタービームの精錬や防御力場の精製果てはブラックホールの再現などの機能も備えている。普段は痣として肩にナノマシンレベルで融合しており、発動時は原作のようにレンズ状の物質として現れる。


アリサ・バニングス

転生バタフライエフェクトにより一番の改変を受けたキャラ。

主な改変内容は“基礎スペックの向上”とそれ故の“精神性の変質”。小学三年の現時点で既に有名私立高校のトップクラスの頭脳を誇り、その他の才能も特別なデザインを施されている転生者を抜いてトップに位置するほど。

その圧倒的過ぎる才能故に生まれながらに自身が孤独、孤高の存在であると定義しており本来備わっていたかもしれない子供らしさや幼さ、寂寥感といったものが失われ歪んでいる。

そして天性故の歪みから自身とは正反対の落ちこぼれである天里に目をかけるようになり、彼に歪んだ愛情を覚えるようになった。その際の経緯は………特に考えてる訳じゃありません。


ちなみ余談になりますけど、このアリサ嬢には二次よろしく魔法の才能も備わっていたりします。魔力容量ははやての一歩及ばないまでも個人レベルではなのはやフェイトを凌ぎ、魔力変換資質『煉獄』と呼ばれる、自身の魔法による残滓を炎に変換し延焼範囲を広げることによる広域殲滅、及びそれに伴う自身の強化とシグナムの炎熱の上位互換なレアスキルまで持っている。まさにバーニング。


テンプレよろしくなオリ主に踏み台、TS転生者や傍観系などよくある群像転生者ものを考えたらこうなりました。というか、どうしてアリサ嬢をこんなにしてしまった自分ェ……
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