【習作】イイ日旅立ちのメモ帳【的な?】   作:イイ日旅立ち

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今回はいつもの書き殴りシリーズではなく、以前連載し志半ばで潰えたIS二次の番外も番外。

ある方とやり取りする中でふと思いつき、設定も考えて下さったので思わず書いてしまいました。

詳しい設定は後書きに載せますけど、恐らくきっと絶対に初見殺しな内容になるかと思われますので、それについては当方責任を負いかねます。それでも構わない方は、どうぞー。



超番外編 ~十五年後の君へ……的な

 

 

 

 

 

 

 

 私には両親がいる。まぁ、当然の事なんだけど、それでも世間一般的な見地及び常識的観点から見ると、やはり別途で語る必要があると思う。

 

 

 

 

「はるちゃーん。もう朝ご飯出来たから起きてきてねー」

 

「……ふわぁい」

 

「んもー。女の子が寝癖付けたまま起きてきちゃダメでしょ? ほらほら、梳いてあげるから座って座って」

 

「…おねがいしまぁすぅ…」

 

 

 

 あまり朝の強くない私にとって、毎朝親に髪を梳いてもらう事は日課。

 

 

 けどこれもしばらくはお預けになると思うと少しだけ寂しい気がしてしまうのは、私がまだ親離れしきれていないからなんだろうか。

 

 

 

「今日からはるちゃんもIS学園の生徒になるんだねぇ……寂しくなるなぁ。メールとか週一でも良いから送るんだよ? 向こうで虐めとかあるかも分からないけど、はるちゃんならそんな心配要らないと思うけど何時でも頼ってくれていいからね?」

 

 

 

 私の事が心配で堪らないと、私よりやや低い身長のせいか天然で上目遣いになる姿はどう見ても人の親には見えない。

 

 

 もっと言うと、私の記憶にある限りまるで加齢しているように見えない若々しさを持つこの人を、一体誰が四十路間近な“男性”だと思うだろう。ちなみに、今まで一発で見抜かれた事は無い。

 

 

 それが私の父親。湊お父さん。

 

 今のお母さんと結婚する前は色々あったそうで、その時に出来た伝手がこうして主夫で収まっている人物のそれとは到底思えないパイプを持っていてかなり不思議な人。

 

 大学生に見間違えられる容姿も然ることながら、以前私と買い物に出かけた時に絡んできた性質の悪い不良を相手にさながら特撮のような動きで全員をKOしたお父さんは生身でかなり強いのである。

 

 

 けれど、普段のお父さんは優しくてぽわぽわした雰囲気を纏っていて、私の事を一番に考えてくれている。

 

 偶に行き過ぎかなと思う事はあるけど、本人もそれを自覚して謝ってくれるので私も強く怒る事はない。

 

 

 

 ……ただ、それでお母さんに嫉妬させちゃう辺り、うちの両親の仲は相も変わらず良好だと言える。

 

 

 

「湊、お前心配し過ぎだ。お前の学生時代じゃあるまいし、悠に限って早々問題は起こって堪るか」

 

「來蓮……で、でもっ」

 

「でももストも無い。お前は自分の娘を信じてやれないのか?」

 

「そ、そういう訳じゃ………無いけど。それでもやっぱり、心配なものは心配だよ」

 

「その気は分からなくもないんだけどな。全く、娘よりも先にお前が子離れすべきだろ」

 

「うぅぅ……」

 

 

 普通に男女逆転しているような光景なんだけど、我が崩上家ではいつもの事。

 

 

 柳崎來蓮改め、崩上來蓮。

 

 モデルのような高身長で、同性の私から見ても羨ましいスタイルを保持し続けているお父さんと同じく年齢に比例しない若さを持っている私の女としての理想でもある人。

 

 

 ……そういえば私の周囲の大人の皆さんは実年齢よりもずっと若く見えるのって、やっぱり類は友を呼ぶっていうのかな? やっぱり女としては羨ましい。

 

 

「はぁ。まぁコイツの事なら悠も気にしなくていいからな? お前はお前で、頑張ってこい」

 

「うん。お母さんも、私がいない間はお父さんを独占できるもんね」

 

「……あまり親をからかうものじゃない」

 

「あうっ」

 

 

 口調や仕草がさばさばしていて下手な男の人より、少なくともお父さんよりずっと『格好いい』という言葉が似合うお母さんだけど、こうして顔を紅くして照れる姿は何時見ても可愛い。

 

 だからついからかってしまうけど、加減を間違えると今みたく拳骨が来るので要注意。お母さんの拳骨はコツがあるのか、以前雑誌越しで受けた時に防御無視で衝撃だけが内側に来るので硬度とか関係無くて困る。どうしたって防げないから。

 

 

「……」

 

「? どうした悠、急に暗い顔して」

 

「っ!?」

 

「お前は黙って朝食の準備してろ」

 

「……はぁーい」

 

 

 やだお父さん可愛い……ではなく、顔に出てしまっていたのか。

 

 

 私が抱えているコンプレックス。

 

 

 それなりに勉強が出来て、成績の事でも先生や二人からも褒められる事があって一応自信という程でも無いけど、自分がどの程度出来るのかという自覚は持っているつもりだ。

 

 けれどどうしても、勉強とは違って運動だけはずっとからっきしダメダメだった。

 

 体力は人並みにある……とは思う。

 

 なのにいざ運動するとなると体が知識のように動いてくれなくて、ソフトボールやサッカーをする度に恥ずかしい思いをしてしまう。

 

 

 友達からは『それがいい!』とか『ギャップ萌え!』ってよく分からない言葉で激励されるけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

 

 それも、お父さんなんて目を瞑ってでも延々とリフティングし続けられて、お母さんも古武術の師範代で生身でIS装備者を叩き伏せる程の運動神経の持ち主とあれば、尚の事私のコンプレックスは刺激される一方で。

 

 どうして私には二人のような運動神経が無いのだろう……それに、ゆぅ君にも全然勝てないし、むぅ。

 

 

「……うら」

 

「あみゅぅ。お、お母さん……何するの」

 

「いや、お前が下らない事を考えていそうだったからな。思わず」

 

「思わずって酷いよお母さぁん…」

 

 

 ぐりぐりと頭を撫でつけられる。

 

 私よりもずっと上からの攻撃に為す術無く、折角お父さんに整えてもらった髪がまたぐしゃぐしゃになってしまう。でもすかさず櫛を持ってくるあたり、お父さんが本当に男性なのか実の娘なのに疑ってしまう。IPS細胞とかいうオチじゃない事は子供の時に一緒にお風呂に入った事があるから分かっているけど、この人が男だと偶に私の女としてのプライドまで揺らぎそうになるのだ。

 

 

 恐るべし、お父さん。きっと、全世界女性から羨ましがられるに違いない。そーじゃなくて。

 

 

「別に、お前はお前だろう? 何を気にする必要があるもんか」

 

「……お母さん」

 

「悠。お前は間違いなく、私と湊の子供だ。しかも、私達よりよっぽどしっかりしているしな。そうだろ湊」

 

「そうだねぇ、僕なんて十年以上來蓮待たせた前科があるし、はるちゃんと同じぐらいの時は女装強要されてばっかりだったし」

 

「「………あー」」

 

「その納得した頷き顔ムカつくね!? あぁもうそうだよ未だに髭どころか男らしさが芽生えないアラフォーだよどちくしょー!」

 

 

 滂沱の涙を流すお父さんには悪いけど、その台詞は私を含めた全女性を敵に回すと思う。この人は、どうしてこうも無駄に罪作りなのか。未だにうちに遊びにくる束さんを知ってるだけに、余計にそう思う。

 

 

 

「――――まっ。不安があるなら空井少年にでも頼ればいいんじゃないか?」

 

「ぶふっ」

 

「あー………そういや一夏君と僕以来になるんだっけか。うー、でもまぁ、あの子なら変な事はしないだろうし…………うぅぅぅ」

 

「いい加減子煩悩も程ほどにな………………その半分でももう少しぐらい私に構ってくれたって」

 

「ん? 來蓮? それなら今度一緒に旅行にでも行く? 町内会のお誘いがあってさ、三ヶ国漫遊ツアーやってるんだけど。久しぶりに夫婦水入らずってことなら丁度よくない?」

 

「……………………………うん、行く」

 

 

 

 お母さん。不意打ちしたクセに急に乙女に戻らないで欲しい。私が反論を挟む余地が無くなってしまったではないか。

 

 

「お、お母さんっ! べ、別にゆぅ君とはその、何も無いんだよ?」

 

「……その、な、湊。旅行に行くなら、服も新調したいんだけど……今日、一緒にどう、かな?」

 

「うん、全然良いよー。ついでに旅行鞄とかも買っちゃおうか、久しぶりのデートだねー」

 

「で、デート言うなっ!」

 

「…………」

 

 

 おのれお母さんめ。娘の前で母から女に戻ってしまった。お父さんも素で口説くの止めて欲しい。それにハマって未だに抜け出せない被害者が、私の知る限り二人もいるので。

 

 

「……先にご飯食べてるよー」

 

 

 イチャイチャしてる二人に悪いので、先に朝食をいただいておくとしよう。お父さん手製の食事ともしばしのお別れだから、じっくり味わって食べよう。

 

 

「(……それにしても、お母さんもお父さんも、私とゆぅ君はその、別にそういう関係ってわけじゃ……っ!)」

 

 

 い、いけない。考えるだけで顔が熱い。お母さんが変な事を言うからいけないんだ。

 

 

 今日から私が通う事になるIS学園。

 

 そこに、史上“二人目”の男子生徒として入学する、私の………幼馴染。

 

 

 昔からずっと一緒に居たのに、いつの間にか距離が出来てしまった、私とさいしょの友達。

 

 

 いつも言動や外見で誤解されて、周囲から勝手に不良扱いされて、それを甘んじて受けてしまうぐらいに慣れてしまった人。

 

 何度も直して欲しいとお願いしても、性分だからって直してくれなくて、こんな自分が近くにいるとお前も誤解されるからと距離を置いて、呼び方も苗字だけになって………。

 

 

 

「(―――でも、今日また、ゆぅ君に会えるんだ)」

 

 

 

 嫌われていないだろうか? 私に変な評判がつくのが嫌だからと彼は離れてしまったけど、それは本当は言い訳で、私の事が嫌いになったから離れたんじゃ……そんな風に考えると、どうしようもなく体が震えそうになる。

 

 

 だから今日、彼に会って確かめる。

 

 

 私が嫌いになったから離れたのか、そうじゃないのか。

 

 評判がどうかなんて、私は一切気にしない。

 

 

 お母さんも言ってくれたじゃないか。私は私なのだ。他の誰かに指図をされて在り方を委ねるような事は、したくない。

 

 

 それはいつも振り回されて結婚後も大変だったというお父さんの苦労話を知っているからというのも大きいけど、やっぱり自分の事は自分で決めたい。お父さんが最終的にお母さん一筋に生きる事を決めたように、私も、私の道は自分で決める。

 

 

 

 

 

 ………だから、ゆぅ君。覚悟しててね? 私は、諦めないから―――――――

 

 

 

 

 

「――――青春だなぁ」

 

「はるちゃんももうそんな歳に……嬉しいような、哀しいような」

 

「喜べ父親」

 

「…うん、そうだね。でも、学園にいる二人はどうしようか?」

 

「………そこは、ほれ。若い二人に任せて私達年寄りは、な?」

 

「そうだね、ここは若い力に任せようか。僕達なんだかんだでもう四十路だもんね。アラフォーだもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 =======

 

 

「――――いっきしっ。あ゛~、変なタイミングでくしゃみでた」

 

「お兄ちゃん……妹を置いて行っちゃうんだね。女の園に、行っちゃうんだね……」

 

「すげぇ人聞きが悪くなる言い方止めれ」

 

「まぁでもあそこには悠さんもいるって言うしね! お兄ちゃんがハニトラとか美人局に嵌る可能性なんて無いもんねっ!」

 

「ぶふっ?! お、オイコラ! お、お、お前は何トチ狂った話をしてやがる!」

 

「将来のお姉さん、いや義姉さんの話?」

 

「よぉし、お前にはIS学園に行く前に最後の説教をくれてやる」

 

「や、優しくしてよね……?」

 

「妙なしな作るんじゃねー!」

 

 

 =======

 

 

「……ふぅ、今日から新年度かぁ。そーいや、悠ちゃんが入学してくるんだっけ? 正月に遊びに行った時以来になるなぁ」

 

「やほやっほー! いっくんいるー? 白式のメンテナンス終わったから持ってきたよー」

 

「ありがとうございます束さん。あと、お帰り白式」

 

『はい、マスター。それよりも今日は何やら嬉しそうですね?』

 

「あぁ、知り合いの娘さんが入学してくるんだ。今日はその子と久しぶりに会えるから、つい、な」

 

「はるちゃんの事だよね! うんうん、私も自分の娘のように可愛がってた子が来てくれると思うと、こう込み上げてくるものがあるよねっ」

 

「……束さん。あんたまだそんなこと言ってんですか」

 

「未だ箒ちゃんを始めとする各国代表にマジアプローチ受けてるのにくっつかないイン○疑いのあるいっくんに言われたくはありませんなっ」

 

「やかましい!? それならせめて日常的に人の貞操を狙うアイツらの態度を改めさせてから言ってください! 毎回命と貞操の危機を抱えながら顔合わせするたびに俺の寿命が縮むんですからね!?」

 

「私だってそろそろヤバいよ! 具体的には女としてそろそろ拙い時期に来てるんだよ! 最近やっとこさ一夫多妻の制度がこの国でも認められたから、はるちゃんのいないうちにちょっと薬持参でみっちゃんのとこに遊びに行くつもりでっす!」

 

「あんたも自重しろやああああああああああああああああ!!」

 

『……おいたわしや、マスター。ですが、私もお姉様の薫陶を受けた身。たま姉様に倣い、全身全霊でマスターを支えていく所存です!』

 

 

 =======

 

 

 

 

 

「はっくしゅっ………んー?」

 

 

 

 

 

 なんだろう、今、私の知らないところで色々な歯車が動き出したような……?

 

 

 

「……まぁ、気のせいだよね」

 

 

 

 新人類じゃないんだから私にそんな、超人じみた勘なんて無いんだし。それより、ご飯ご飯。

 

 

 




・人物紹介

崩上悠(ほうがみ はるか)

以前連載をしていたIS二次における主人公“崩上湊(ほうがみ みなと)”と“柳崎來蓮(りゅうざき らいれん)”との間に生まれた娘。

普段の素行はクールを地で行くが、ツッコミでテンションの乱高下激しい父を見てきたからから周囲を冷静に見ているため自然とそのような対応が身に付いてしまった。見目も優れているため特に同性からの人気が高いが、中身はお姉様というよりは仮面優等生に近い。ただし無自覚であるため、公私のギャップ萌えが友人間で好評を博している。

類稀な運動能力を持つ二人とは打って変わり本人は頭脳派の人間であり、学業においてほぼ完璧な成績を誇るが運動になると神経が切れたように動きが悪くなる。その事をコンプレックスとして抱えており、本人としては何とかしたいと考えているが今のところ改善の兆しは見えない。



あちらでの連載のIFエンドで、オリヒロと結ばれた十五年後設定でこんな感じに。もう一家のやり取りしか書けなかったですけど、個人的には久しぶりに湊君を動かせて満足できました。

ちなみに作中にも何度か出てきていますが、既にヒロインとくっつく予定のキャラも考えてもらっていてちょい役のような形になってしまいましたが何とか出す事が出来ました。Kyo様、このような形で申し訳無い……!
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