問題児たちと不死身の少年が異世界から来るそうですよ? 作:桐原聖
「ジン坊ちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
その言葉に、階段に座っていた少年が顔を上げた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はいな、こちらの四人が――」
言いながら黒ウサギはクルリと振り返った。その顔が固まった。
「・・・え、あれ?もう二人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から″俺問題児!″ってオーラを放っている殿方と、白い髪の、全身から″死にたい″ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君と小林君の事?十六夜君なら、″ちょっと世界の果てを見てくるぜ!″と言って駆け出して行ったわ。小林君はそれについて行ったわ」
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「″止めてくれるなよ″と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「″黒ウサギには言うなよ″と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
黒ウサギの身体がガクリ、と前のめりに倒れる。新たな人材に胸を躍らせていた自分が妬ましい。
「く、黒ウサギ、″世界の果て″には」
「あら。″世界の果てに何か居るの?」
「YES。″世界の果て″付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・・斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
「黒ウサギ・・・」
「ええ、分かっています。問題児様方を捕まえに参ります。事のついでに―――″箱庭の貴族″と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
黒ウサギの髪が淡い緋色に染まった。そして弾丸のように跳んで行った。
一方その頃――
小林は、蛇神に話しかけた。
「おい、お前」
『ぬ?』
「お前、強いのか?」
『ほう?この神格保持者である我に向かって『強いのか?』とは、面白い言葉だな』
「いいから答えろ。お前は強いのか?」
『ほう。ならば我に″ギフトゲーム″を挑むか?』
「強ければな」
『よかろう。ならば我と力の勝負だ!』
瞬間、水柱が三本巻きあがった。水柱が三本同時に小林を襲う。
「何だ、これ」
だが水柱が小林に当たる瞬間、″謎の靄″が小林を守るように展開し、水柱が霧散する。
『何だと!?』
「何だ、この程度か」
小林の身体から″謎の靄″が展開し、蛇神を襲う。
『ガハアッ!』
水神の腹に″謎の靄″が炸裂する。虚を突かれた蛇神はそのまま真後ろに倒れ、大きな沈柱が巻き上がった。
「おう、こりゃ凄えな」
小林が振り返ると、後ろに十六夜が立っていた。
「十六夜か。何の用だ」
「世界の果てを見に来たんだよ。そうしたら誰かが蛇と戦ってたから、どんな奴か手合わせ願おうと思ったら小林じゃねえか。お前、こいつをどうやって倒したんだ?」
「別に僕は何もしていない。ただ勝手にコイツがやられただけだ」
「へえ、そうかよ」
十六夜が不敵に笑った時、目の前に黒ウサギが現れた。
「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」
その一言で、黒ウサギの怒りが爆発した。
「もう、一体何処まで来ているんですか!?」
「″世界の果て″まで来ているんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ」
「おい、そろそろアイツが起きるぞ」
小林の言葉に、黒ウサギが首を傾げた。
「アイツ、とは?」
その瞬間、蛇神が起き上がった。
『まだ・・・まだ試練は終わっていないぞ、小僧ォ‼』
黒ウサギが驚きの声を上げた。
「蛇神・・・・・!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」
「俺じゃねえよ。小林だ」
「向こうが勝手に『勝負だ』とか言って攻撃してきただけだ。僕は悪くない」
『付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか‼』
蛇神の牙と瞳が光る。巻き上がる嵐が水柱を上げて立ち昇る。
「小林さん、十六夜さん、下がって!」
黒ウサギは二人を庇おうとするも、二人はそれを拒んだ。
「嫌だ。お前が下がれ」
「小林の言う通りだ。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺らが売って、奴が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」
『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』
「お前じゃ弱すぎて僕は死ねない。十六夜、お前に任せた」
「了解。おい蛇、寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」
その挑発的な台詞に、蛇神がブチ切れた。
『フン――その戯言が貴様らの最後だ!』
水柱が巻き起こり、十六夜と小林を襲う。
だが――
「その一撃で死ねたらいいんだけどな」
「――ハッ――しゃらくせえ‼」
十六夜は腕の一振りで、小林に至っては何もせずに、嵐を薙ぎ払った。
「嘘!?」
『馬鹿な!?』
驚いた蛇神の胸元に、十六夜が飛び込んだ。
「ま、中々だったぜオマエ」
十六夜の蹴りは蛇神の胴体を打ち、蛇神の巨躯は空中高く打ち上げられて川に落下した。その衝撃で川が氾濫し、小林以外の全員に水が降りかかる。
「くそ、今日はよく濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな黒ウサギ」
「おい、何か食う物無いか?腹減った」
黒ウサギは、平然と話す二人を見て唖然としていた。
(人間が・・・神格を倒した!?)
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