問題児たちと不死身の少年が異世界から来るそうですよ? 作:桐原聖
六人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀達は一礼した。
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」
「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。・・・・・ところで」
白夜叉はスッと真剣な顔で黒ウサギ達を見る。
「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために″魔王″と戦わなければならんことも?」
「聞いてるわよ」
「・・・・・では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「″カッコいい″で済む話ではないのだがの・・・・全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが・・・・そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
言い返そうとした二人は、白夜叉の威圧感に黙り込んだ。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧達はともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」
「おい白夜叉。僕はどうなんだ?」
小林が割って入る。
「おんしの恩恵はまだ詳しくは分からんが、残念ながら並大抵な魔王では死ねない事は確かだ。まあ詳しくは明日調べるから今日はもう帰れ」
「そうか。じゃあな、白夜叉」
「ああ。また明日」
白夜叉とのゲームを終え、噴水広場を超えて五人は半刻ほど歩いた後、″ノーネーム″の居住区域の門前に着いた。
「この中が我々のコミュニティでございます。しかし本拠の館は入口から更に歩かなければならないので御容赦ください。この近辺はまだ戦いの名残がありますので・・・・」
「そんな事はどうでもいい。早く行くぞ」
黒ウサギの言葉を遮って、小林は門を開けた。すると門の向こうから乾ききった風が吹き抜けた。だが小林は気にせずにさっさと歩いて行った。しばらくすると本拠らしき物と、ジンの姿が見えた。小林はジンの姿を見ると、「おい」と声を掛けた。
「あ、小林さんお帰りなさい。他の皆さんは?」
「もう少ししたら来るだろ。おい、屋上って空いてるか?」
「あ、はい。空いてますけど・・・どうしてですか?」
「僕は疲れたからもう寝たい。けど室内で寝ると大変な事になるから、屋上で寝たい」
「わ、分かりました。案内します」
そう言ってジンは小林を屋上まで案内した。小林は屋上に寝転がると、すぐに眠りに落ちた。
・・・どうでもいい話だが、ノーネームの掲げる目標が、″打倒魔王″から″打倒全ての魔王とその関係者″になったらしい。小林にとっては死ねる可能性が高まるので願ったりかなったりだった。
―――そして、翌日。
小林は、″サウザンドアイズ″の前に居た。
「来たか。小林」
「ああ。・・・・僕は死ねるんだろうな?」
小林が聞くと、白夜叉はギフトカードで口元を隠しながら笑った。
「さて、どうだかな。まあ、多分死ねると思うぞ」
「そうか。じゃあさっさと始めてくれ」
「よかろう」
白夜叉は着物の裾からギフトカードを取り出すと、昨日と同じゲーム盤を呼び出した。
「では行くぞ、小林。″白き夜の魔王″、白夜叉。いざ尋常に、勝負!!」
「ああ。来い」
一方その頃、黒ウサギ達は――
「あら、小林君はどこに行ったのかしら?」
「おいおいお嬢様。小林なら今日白夜叉と対等な勝負をするって、昨日約束してたじゃねえか」
「じゃあ彼は今日のギフトゲームに参加しないのね。残念だわ」
「ま、まあまあ。次がありますから。ってちょっと待ってください。白夜叉様と対等な決闘?じょ、冗談じゃないのですよ!?」
「そうか?小林なら大丈夫だと思うが」
「さすがの小林さんでも、白夜叉様が相手では勝ち目がありません!十六夜さん、黒ウサギは審判で抜ける事が出来ないので、代わりに行って止めてきていただけませんか?」
「嫌だね」
「でも!」
「おい、黒ウサギ。あの喧嘩は小林が売って、白夜叉が買った。それを止めるのは無粋って奴だ。行きたいなら審判が終わってからでも行けるだろ。それに、小林があの程度でやられるわけねえだろ」
その気迫に、黒ウサギは黙り込んだ。
「てい!」
白夜叉の全力の一撃を、小林の″謎の靄″が弾き飛ばす。
決闘を始めてから一時間。小林の身体には傷一つなく、代わりに白夜叉の着物のあちこちが破れていた。小林の″謎の靄″が白夜叉を危険だと認識して攻撃した証拠だ。白夜叉の顔には大量の汗が流れており、今にも倒れそうだ。
「小林、おんし、一体どんなギフトを持っているのだ?」
「さあな。僕もよくわからない」
白夜叉は一瞬、小林を″サウザンドアイズ″に引き抜こうかと思った。白夜叉の攻撃を無効化し、反撃までできるのだ。三桁は間違いない。少なくとも、″名無し″に居ていい人材ではない。だがその時、白夜叉の頭に黒ウサギの顔が浮かんだ。もし白夜叉が小林を引き抜けば、黒ウサギが悲しむ。それだけは避けたい。
「済まないな、小林。私にはおんしを殺す事は出来ん」
「無理なのか?」
「ああ、済まないな。だが誇っていいぞ。おんしは東側最強の白夜叉に勝ったのだ。その事を覚えておいてくれ。そうでもなければ私の顔が立たん」
「分かった。覚えておこう」
「ではこの勝負、私の負けという事で終わりにしようかの」
言いながら白夜叉はゲーム盤をギフトカードにしまった。その時、白夜叉の脳裏にひらめくものがあった。
「小林」
「何だ、白夜叉」
「おんし、自分のギフトネームを知っているか?」
「知らない」
「実はおんしのギフトネームは″名称不明″という、名前の無いギフトなのだ。よって、この白夜叉が、特別に名前を付けてやろう!」
「そうか。じゃあ頼む」
「そうだな。実は先ほど思いついたのだが、おんしのギフトには冗談かと思いたくなるような可能性が秘められておる。よって、″TRICKSTAR″というのはどうだろうか」
「トリックスター?何だそれ」
「おんしのギフトネームだ。どうだ、カッコいいだろう?」
「そうだな。じゃあそれでいいか。じゃあ僕はもう帰っていいか?」
「ああ。おんしを殺せるクラスのギフトゲームがあったら招待するからな。それがこの戦いに勝ったおんしの報酬だ」
「そうか。悪いな」
「何、気にするな。私も遊び相手には飢えておる。いつでも遊びに来い」
「そうか。じゃあな」
去っていく小林の後ろ姿を見ながら、白夜叉は呟いた。
「ラプ子」
「はい、何でしょう?」
ラプ子と呼ばれた者が返事をした。
「彼は、何者だ?」
「全体像は分かりかねます。断片的になら」
「断片的でいい。教えてくれ」
「・・・・実は、彼と類似する存在があります」
「なんだ?神仏か、それとも魔王か?」
「どちらかと言えば魔王です」
「はっきりしないな。一体何なのだ?」
「″退廃の風″。こういえばわかりますか?」
「何だと!?」
「しかもあの霊格。黒の″退廃の風″以上、いえ、黒の″退廃の風″とは比べものになりません。おそらく、彼を殺せるものはこの箱庭には居ないでしょう」
「そんな・・・・・」
白夜叉は背筋が寒くなるのを感じた。
次回、レティシア奪還編パート1です!