君の隣に、私の傍に   作:UWAIS

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13.守りたかった物と守ってくれた者

「どうして大和がそんなことを知ってるんデスカ?」

 

言葉は丁寧だが金剛の口調には平静ならざるものがあった。

 

「え、それは、博士からお聞きしたんですけど・・・」

 

彼女の口調に違和感を感じながらも大和は正直に話した。次第に金剛の表情が暗くなっていく。

 

 

「テートク・・・・・本当デスカ?」

 

金剛の瞳が語っている感情ーーーーそれは怒りではなく、悲しみだ。彼には彼女の気持ちが言葉を介さずとも伝わってくる。

 

 

「ああ、大和の言う通りだ」

 

今の彼にはそれだけ言うのがやっとだった。

 

 

ーーーーカシャ

 

「お、お姉様」

 

ティーカップを置くと金剛はおもむろに立ち上がり、比叡の静止も聞かずそのままその場を離れようとする。

 

「金剛っ!」

「金剛、さん?」

「お姉様っ!」

 

立ち上がりかけた彼と比叡を手で制すと

 

「少し、一人にして下サイ」

 

それだけ言って金剛はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

残された三人はそのままティータイムを続けられるような雰囲気ではなく、誰が言うともなしに片付けに入っていた。

 

「司令、昔のウチの艦隊のこと、彼女に話したんですか?」

 

比叡は大和を一瞥すると再び彼に向き直る。比叡の問いへの答えは半分YESで半分NOだ。

 

大和には色々話したが、肝心の部分については話してこなかった。これが舞鶴行きを知ってから彼が懸念していたことの一つだった。いつか話さなければと思っていたのに、大和を失望させないために三年前の悲劇について話すことができなかったのだ。そのせいで結果的に大和に無神経な発言をさせてしまったことが、わかっていながら止められなかったことが、より情けなく感じる。

 

「話した、と言えば話した・・・」

 

こんな風にお茶を濁す自分にも腹が立つ。今更そんな言い逃れをしてまで自分を守ろうというのか。歯噛みしながらテーブルの一点を見つめていたがこのままでは何も解決しない。だからこそーー

 

 

「金剛を探してくる。比叡、すまないが大和を連れて本棟のほうに戻っていてくれないか」

 

「え、でもお姉様は」

「は、博士、今はやめたほうが」

 

二人は止めたが、それでもやはり金剛のことが心配だ。彼は持っていたティーセットを比叡に渡し金剛が去っていったほうへ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

「ここから見る海は、変わらないな」

 

「テートク、一人にして欲しいって言ったじゃないデスカ」

 

舞鶴の海を一望できる小高い丘の上に金剛はいた。おおよそ見当はついていたから迷わなかったが息は乱れている。それはきっとここに来るまでに走ってきたからだけではないだろう。

 

「金剛・・・」

 

何と言えば良いのかがわからない。ただ彼女の気分を害したことを謝って終わるようなことではない。金剛には金剛の、大和には大和の、そして彼には彼の思いがある。それをどうにかしてわかってもらいたかった。

 

「金剛、私は、」

「テートク、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テートク・・・テートクは私達の日常を、もう、戻らないあの生活を、他人にペラペラ喋ってたんデスカ?」

 

金剛の剣幕に一番驚いていたのは大和、次に比叡だった。彼は金剛がこの話を聞けばこうなると薄々感じていたからさほど驚きはしなかった。

 

 

「金剛、それは」

「ここで過ごした日々は私達の宝物デス。今いる娘も、あの時に沈んでしまった娘も含めて舞鶴艦隊の皆の物。それをっ、他人に・・・」

 

静まり返った場には金剛の嗚咽だけが響く。比叡も大和もどうしたら良いのかとオロオロしているが彼にはどうすることも出来ないとわかっていた。

 

「金剛、私は別にあの日々を軽んじたつもりはない。ただ、」

 

そこから先は言葉が続かなかった。どうすれば金剛にわかってもらえるのだろう?すぐ目の前にいるのに、心はかなり離れてしまっている気がする。

 

 

「あ、あのお姉様、落ち着い下さい」

 

「比叡、ワタシが落ち着いてないって言いたいんデスカ?」

 

金剛の言葉はどこまでも丁寧だが次第に声音に怒りが含まれていく。

 

「あ、あのっ、えっと・・・その、・・・・」

 

大和は自分の発言で場の空気が悪くなったと思い狼狽している。もともと事情を知らないヤマトにとって何が起こっているのかさっぱりつかめていない。

 

「金剛・・・」

 

「ワタシが今も舞鶴に残っているのは、他の残った娘達が心配だから、と言う理由と、もう一つ、ワタシ達がこの舞鶴で戦ってきたんだってことを誰かが覚えておいて風化させないためナンデース」

 

 

手元のティーカップに視線を落としながら金剛は淡々と話し始めた。

 

「ここで過ごした時間、ここにいた皆、そう言った記憶を守るために、残ろうと決めたんデス。でも、それらはワタシ達舞鶴艦隊の物であって、他の人にずけずけと踏み込まれて気持ちの良い物じゃナイネ」

 

「っ!」

 

さすがに今の金剛の言葉は応えたらしい。大和の体がが小刻みに震えるのがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞鶴行きを決めてから、こんなことになるんじゃないかと薄々と感じてはいた。だが、いざ現実になると・・・

 

 

 

 

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