The Fantasic Story 〜其は不屈の夢物語〜   作:なっぺ

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第15話 覚醒

 剣士の鋭い視線が敵を射抜く。凄まじい殺気が襲いくる感覚に、吼太の身体は悲鳴をあげる。

 

 だが、吼太に退くという選択肢はない。その背中に守るべきものがあるから、導きたくない未来があるから。吼太は立ち向かう。

 

 剣士――ザンクが、切っ先を吼太に向ける。

 

 「一対一だ。いざ尋常に勝負」

 

 「面白ぇ! リーム、トゥード、ありす! お前達は手を出――――」

 

 「貴様は阿呆か」

 

 何故か、リーム達の介入を阻止して一対一に持ち込もうと考えた吼太を否定するザンク。

 

 「どこに精霊を使わない精霊魔法使いがいる。使えるものは全て使え。……真剣勝負で己が全力を尽くさない奴と闘う気はない」

 

 「……そういうもんか?」

 

 今だ魔法使いの常識が理解出来ない吼太は、首を傾げる。

 

 一般的な魔法使いにしてみれば、精霊は自身の魔法を強くする道具に近い。剣士が剣を、ガンマンが銃を使うように、魔法使いは精霊を使うべき、という考えが浸透している。

 

 だが、吼太からすればリームやトゥード達は大切な仲間であり、道具などではない。頭数に入る立派な戦力だと考えている吼太に、ザンクら魔法使い側の人間の考えは、理解し難いものだった。

 

 「……まさか私の全力に、全力で応じないつもりか? 男の風上にもおけんな」

 

 「……言うじゃねぇかサムライヤロー。いいぜ、なら今回は、お前らのやり方でやってやるよ! リームッ!」

 

『我、汝に力与えん』

 

 吼太の身体にリームが合体し、その力が背中にマントという形で顕れる。リームとの合体形態、ユニオンフォームだ。

 

 その手に吼太最強の武器であるエクスドリルを装備し、油断なく構える。

 

 「さぁ、始めようか」

 

 「あぁ」

 

 二人が武器を構え、互いに牽制し合う。

 

 その脇では、ありすが少し悲しそうに「私、また見てるだけなのかな……?」と呟いていた。

 

 

 

 

 ザンク(サムライヤロー)の構えた刀の、軌道が見える。これから先に、その刀が動くであろう道筋が見える。

 

 コイツはきっと、オレが以前よりずっと強くなったから。それ以上に、ザンクの奴が"見せている"から。

 

 威嚇のつもりか、はたまたただの酔狂か。いずれにしろ、これだけ見えていれば対策は練りやすい。

 

 まず、ザンクの正面。刺突される軌道があるから突っ込むのは危険。背後、回り込む前に斬られるだろう。両脇、やはり奴の剣の範囲内だ。

 

 唯一空いているのは、直上。ならば、行くべきは――

 

 「こっちだッ!!」

 

 地面を強く蹴り出し、一気に加速する。それを見ていたザンクの顔に、僅かながら驚きが浮かぶ。

 

 何故ならオレは、ザンクの直上目掛けて加速したのではなく、真っすぐザンクに――ザンクの正面に向かって走り出していたのだから。

 

 何故直上ではなく正面なのか。その理由は、オレには見えていたからだ。一見隙だらけの直上に、うっすらと光る必殺の軌道が。間違いなく、直上からいけばオレは死んでいた。ならどこから仕掛けるか。そこでオレは、ドリルが最大限に力を発揮する正面が最も有効と判断した。

 

 高速で回転するドリルの切っ先が、ザンクに迫る。だが、ザンクは冷静にそれを見切る。

 

 ドリルをかい潜る位置から、ザンクの剣がオレに向かって突き出される。だが、オレの前にはドリルがあった。

 

 今や空間を歪めるエクスドリルだ。空間を歪めたまま走ることだって不可能じゃない。そして、いかに強力な刀であろうとも、空間を歪められては、本来の目標には辿り着けない。

 

 オレはエクスドリルを回転させながら突撃することで、周囲の空間を歪め、防御壁代わりにしたのだ。

 

 ぎりぎりまで近づき、エクスドリルを突き立てようとする。が、伸ばした腕は意識が及ぶ前に弾かれていた。ザンクの剣の"柄"が、ドリルを弾いていたのだ。

 

 「ぐっ!」

 

 弾かれた勢いを逆に利用し、回し蹴りを浴びせる。しかしザンクはオレの脚を片手で防ぎ、さらには掴んでくる。

 

 そのまま大きく振りかぶり、ザンクはオレを投げ飛ばした。刹那、背中に感じる地面の感覚。それだけでは終わらず、勢いはそのままにオレの身体は地面をごろごろと転がっていく。

 

 ようやく止まった時には、オレとザンクとの距離は、随分離れてしまっていた。

 

『コータ、今の状態でアイツに接近戦を挑むのは危険だよ!』

 

 「あぁ! ならこれだ!」

 

 エクスドリルを逆に回転させ、エネルギーを集束する。

 

 「その技か。ならこちらも……!」

 

 ザンクが剣を、下段に構える。

 

 そして、二人の一撃が放たれる。

 

 「エクスドリルッ、タイフーンッッッ!!!」

 

 「刹月封禍(せつげつふうか)!!!」

 

 オレのドリルから放たれる竜巻状のエネルギーが、ザンクの剣から放たれる竜巻状の闘気が、ぶつかり合って辺りに撒き散らされる。

 

 「……チッ、互角か!?」

 

 「それはどうだろうな」

 

 ザンクが言った瞬間、オレはリームに頼んで魔法防御を発動してもらおうとした。が、間に合わない!

 

 せめてもと、軌道を読んで回避行動に入る。次の瞬間、オレの身体は何かに切り裂かれた。

 

 「マスター、お気をつけ下さい。あの技、竜巻状の闘気と真空の刃、二段構えの技になっております」

 

 離れた場所で観察していたらしいトゥードが近寄ってきて言う。

 

『んぐ……ちょっとトゥード交代頼んでいい? エクスドリルって体力をかなり消費するから……』

 

 「了解しました、リーム様。いきましょう、マスター」

 

 リームがオレから離れる。代わりにトゥードが近づき、先程とは違う戦闘形態にオレを変える。

 

 「アームドオン!!」

 

『我、汝に力与えん』

 

 赤い鎧がオレの身体を包み、さらにオレの身長が成人男性並まで大きくなる。もう一つの戦闘形態、アーマーフォームだ。身長が大きくなることと魔力によるブーストで、出せる力はリームとの合体であるユニオンフォームよりも大きくなる。反面、今だ機動性や瞬間的な火力ならユニオンフォームに軍配が上がるのだが。

 

 「ドラゴンソニック・カリバー! アグニ! ルドラ!」

 

 両腕に双刃、双銃を持つ。ツワモノスラスターやファイアスカルアーマー、イノセントセイバーも正常に稼動している。大丈夫だ、いける!

 

 「突撃!」

 

 カリバーを前方に突き出した状態で突っ込む。イノセントセイバーが物理法則を歪めているため、重い鎧を装備しているとは思えないだろう速度で移動しているが、鎧の質量は変わらない。真っ向から受け止めたら間違いなく吹っ飛ぶはずだ。

 

 「フッ、単調過ぎる攻撃だな」

 

 ザンクが刀をオレに向けて、ギリギリまで引き付けたかと思えば、刀をオレの鎧に擦りつけるようにしながら回避した。刀と鎧が激しい音をたて、大量の火花が散る。

 

 「さぁて、どうかな!」

 

 オレは、その瞬間にツワモノスラスターを反転させる。受けるGは全てイノセントセイバーに無効化させ、瞬時にザンクの背後に背中から激突する。

 

 「があっ!?」

 

 背中から突き飛ばされ、壁にぶつかりようやく止まるザンク。

 

『使ってとーさま』

 

『妾の能力にかかれば、こんなことも可能なのだ!』

 

 カンナの声が聞こえると同時に、胸部にあるX型の装甲板が外れ、オレの手に収まる。

 

『じゃあ私も~』

 

 キサラも反応し、イノセントセイバーのパーツの一部――正面装甲が外れ、組み合わさり、V字型に変わる。

 

 「これは……ブーメランか! なら!」

 

 胸部装甲板とイノセントセイバー・ブーメランを投げ放ち、さらに両肩のツワモノスラスターもブーメラン形態にして投げつける。

 

 ランページ・デュアル・ブーメランの上位互換。名付けて、ランページ・クアッド・ブーメランだ。

 

 旋転する四つのブーメランが、ザンクに迫る。

 

 「面白い。ならば、こちらも相応の技を見せよう! 輪持疾飛(りんじしっぴ)!!!」

 

 ザンクが刀を振ると、刃から放たれた闘気が、綺麗に並んだ、四つの回転するエネルギー刃に変わる。エネルギー刃はそのまま真っすぐ進むと、四つのブーメランとぶつかり、互いの威力を相殺しあう。

 

 「転威武法(てんいむほう)!!」

 

 「アグニ、ルドラ!!!」

 

 アグニとルドラを構え、何回も引き金を引く。放たれた無数の弾丸は、自在にその軌道を変化させながらザンクに向かう。

 

 だが、ザンクのどこか不可思議な、掴み所のない動きは、相手を確実に捉えるはずのアグニとルドラの弾丸を、たやすく避けてしまう。まるで、暖簾に腕押しをしているような、そんな感覚。

 

 ザンクはそのままオレの元まで来ると、先程までの動きを維持したまま、幾度となくオレを斬りつける。

 

 「があぁあぁっ!?」

 

 トゥードの鎧を纏って尚、凄まじいダメージに、意識が飛びかける。その威力は、トゥードとの合体が解除されかけたほどだ。合体が解除されなかったのは奇跡に近い。

 

 技がそれだけ強いのか? いや、それにしても――――

 

 「不思議そうだな少年。さては、我が血鬼の威力に驚いたか」

 

 ザンクがずばり言い当てたことは、まさにオレの疑問の核心を突いていた。

 

 「驚くのも無理はない。血鬼も数多の武人(もののふ)の血を啜ってきたとはいえ、所詮はただの刀。ましてや、先程の転威武法は、虚ろな動きで敵に捉えられにくい分、単発の威力は低い技だ。……では、何故あれだけの威力が出たか――」

 

 そう言うとザンクは、自身の刀である血鬼を取り出し、その刀身を優しく撫でる。

 

 「我心鞘鍛(がしんしょうたん)。相手の攻撃を刀で受け流しつつ、その攻撃で刀身を磨きあげ、更なる力を手にする技だ」

 

 攻撃を、受け流す……。まさか!

 

 「さっきの、ドラゴンソニックを使った突進の時か!?」

 

 「そうだ」

 

 ザンクが言う。

 

 くそっ、迂闊には攻撃できねぇってことかよ。

 

 「臆したか。まぁいい。終わりにしよう」

 

 そう言うとザンクは、刀を鞘に仕舞い、そして刀に手をかけたまま腰を落とす。そう、その姿勢はまさに居合斬りそのもの。

 

 直感が告げる。次の一撃は、間違いなく"ヤバイ"と。

 

 「奥義――」

 

 ザンクの肩から先が消え――

 

 

 

 

 「――――血晃業逸《ちこうごういつ》・一閃」

 

 瞬間、鎧を真っ二つに裂かれ、トゥードとの合体が解除される。

 

 口から叫びが漏れだしたのは、合体解除されたトゥード達が、地面にたたき付けられてからだった。

 

 「ぐ………ああぁぁぁ……!!」

 

 肩から大きく斬り裂かれ、血がじわじわと抜けていく。痛みが頭の全てを支配し、あらゆる考えを吹き飛ばしてしまう。

 

 「――見事。実に見事だ、少年」

 

 刀を下ろしたザンクが言う。

 

 「無意識であろうが、斬撃が当たる瞬間に、僅かながら身体を捻り直撃を避けた。おかげで即死だけは免れたようだな」

 

 「はぁ……はぁ……ぐ……」

 

 身体がほとんど動かない。血が想像以上に抜けているようだ。あの血鬼とかいう刀、血を啜ってきたって、文字通りの意味だったってことか……?

 

 「実に美味い血だと血鬼も言っている。良き戦いに感謝しよう」

 

 ザンクがゆっくり、こちらに近づいてくる。

 

 「マスター……ぐ……」

 

 トゥードが吼太を守るべく、立ち上がろうとするが、ダメージが酷いのか立ち上がれずに身体が地面に落ちる。

 

 ――――まさか、もう……?

 

 トゥードの脳裏に浮かぶ言葉。その表情は驚愕というよりは、「いつか来るだろうことが、ようやく来た」といったものだった。

 

 ザンクは、一歩、また一歩と吼太に近づく。吼太には、やはり逃げるだけの体力はない。

 

 「コータ!」

 

 ありすとリームがザンクの前に立ち塞がる。

 

 「下がれ。これは己の誇りをかけた決闘。部外者の介入は赦されぬ。どうしても邪魔立てするというのなら……」

 

 ザンクの凶刃が、ありすとリームの鮮血を啜るべく、ゆっくりと、ゆっくりと近づいていく。

 

 「止めろ二人とも……! そんなことしたら、二人まで……」

 

 しかし、ありすとリームは、こちらを見て笑顔を浮かべ、再び毅然とした態度でザンクを見据える。

 

 「コータはやらせない! 僕に名前を、想いをくれたコータは、絶対に!」

 

 「私を絶望から救ってくれたのはコータだから! だから今度は私が助けるの!」

 

 ありすもリームも、身体を恐怖で震わせながら、しかしそこから退こうとはしない。

 

 

 

 ――くそっ! 結局オレは、彼女達に頼ってるだけじゃねぇかよ。

 

 何が強くなる、だ。何がオレみたいな気持ちをもう誰一人として味わわせない、だ。

 

 オレの力じゃ、何も出来ていやしねぇのに。

 

 オレのやってきたことは何だ。何も出来ていやしない。何も、何一つでさえ。

 

 オレ一人の力じゃ、何も。

 

 笑わせる。オレが一番の足手まといじゃねぇか。

 

 でも、決めたんだ。

 

 もう、誰も悲しませたくない。

 

 理不尽な悲しみなんて、誰にも味わわせたくない。

 

 だから。

 

 ――強く、なりたい。

 

 

 

 

 

 「……なんだ?」

 

 ザンクの視線が、ありすとリームの後ろに注がれる。

 

 そこから、突然大量の光の粒子が噴き出す。

 

 「何!?」

 

 「何が起きてるの……?」

 

 一同が、その光を、光の中心にいる存在を、吼太を見つめる。

 

 舞う光は、魔力粒子とは似て非なる存在。魔力粒子をエネルギーとするならば、それはそのエネルギーに指向性を与える信号。

 

 超物理因子。またの名を、SP因子。

 

 「あれは……」

 

 ダメージから回復したトゥードが、吼太の様子を見て何かに気付く。

 

 ――あれは、あの時と同じ……。

 

 トゥードは思った。自分は、何か思い違いをしていたのではないかと。

 

 吼太は時折、大量の魔力粒子を集めていることがあった。魔力粒子の存在を感じられない吼太には魔力粒子に干渉することは事実上不可能であるはずなのに、だ。

 

 しかし、もしそれが間違いだとしたら。

 

 吼太には、魔力粒子を見る才能がないだけであり、魔力粒子の操作に必要である、SP因子の生成は可能なのだとしたら。

 

 だがそれでも、SP因子は単なる信号だ。それそのものに力はないはず。ならば、吼太が起こそうとしていることはなんなのか。

 

 「コール・アームズ……グングニル、天羽々斬」

 

 吼太が、何かに取り憑かれたかのように、ユビキタスサークルから武器を取り出す。すると、周りに溢れていたSP因子が、瞬く間にグングニルと天羽々斬を、そして吼太自身を覆い尽くした。

 

 間もなく、SP因子がその役目を終えて散らばる。そこにあったのは、傷口が完全に塞がった吼太と、誰もが見たことのない、薙刀のような武器。

 

 「…………ん? あれ? 傷口が塞がってる!? つーかこの武器なんだ!? 刃の部分が天羽々斬っぽいけど……」

 

 意識が戻ったらしい吼太が慌てた様子で言う。先程までの行動はどうやら、無意識の内の行動だったらしい。

 

 吼太が、ありすとリームを退かし、前に出る。

 

 「大丈夫なのコータ?」

 

 ありすが心配そうに聞くが、吼太は笑顔で無事を伝える。

 

 「あぁ! 流石に完璧とは言えないけど、身体は動く……なら、やるだけだろ!」

 

 グングニルと天羽々斬の複合薙刀を構える吼太。

 

 「この土壇場に来て、己を進化させたか。面白いな少年。ならば、その進化いかほどか、見極めさせてもらおう!」

 

 ザンクが刀を構えて突進してくる。吼太は、薙刀を回すように振るい、ザンクの刀を弾く。その威力に、振るった吼太が驚く。

 

 「凄い威力だ。何だか分からないが……もしかして、マジで天羽々斬が何かと合体してんのか? エクスドリルみたいに。……なら!」

 

 吼太がさらに、腰のユビキタスサークルに手をかける。

 

 「コール・アームズ、イチイの弓!」

 

 呼び出したのは、イチイの木から作られた弓。吼太はそこに、先程の複合薙刀をつがえる。

 

 「さぁ……合体だ!」

 

 すると、再びSP因子が複合薙刀を、そしてイチイの弓をも巻き込んで包み込み、その形を変異させる。

 

 現れたのは、鋭い刃が付いた弓と矢。弓の弦を引き、矢を放つ準備を整える。

 

 「いかなる攻撃であろうと!」

 

 ザンクが、転威武法による回避の態勢に入る。

 

 「無駄だ!」

 

 吼太が矢を放った。複合武器の矢は空気を切り裂き、ぐんぐんザンクの元に進んでいく。

 

 そこで、ザンクの姿が消える。転威武法で、その場から移動したのだ。

 

 しかし、その瞬間だった。

 

 再び現れたザンクの腕に、突き刺さる複合武器矢。完全に避けたはずの矢が、ザンクに命中していたのだ。

 

 「ぐあっ! 何だと!?」

 

 「グングニルは絶対必中の槍! それが合体したこの矢も、その性質は変わらないみたいだぜ!!」

 

 吼太が言う。

 

 「小癪な真似を……!」

 

 ザンクが、腕に刺さった矢を引き抜き、投げ捨てる。

 

 「次はこれだ! コール・アームズ! エクスカリバー! デュランダル! 布都御魂!」

 

 吼太は複合武器を送還すると、また別の武器をユビキタスサークルから取り出す。いずれも、名の知れた名剣ばかりだ。

 

 「んでもって合体だ!」

 

 三種の武器がSP因子に包まれ、巨大な剣へと変わる。

 

 「でりゃあああぁぁぁぁ!!!」

 

 複合大剣を振りかぶり、そして鋭く振り抜く吼太。その剣から放たれた衝撃波は、ザンクを大きく後退させてしまうほどの威力を持っていた。

 

 「コータ……凄い……」

 

 「あれがコータの力……」

 

 呆気に取られるありすとリーム。その後ろで、ダメージから回復したトゥードが、何やら合点のいった態度で吼太を見つめる。

 

 「あの武器は……そういうことですか」

 

 「トゥード、分かるの?」

 

 ありすが聞くと、トゥードが頷いて応える。

 

 「ただ単純に物品同士を物理的に接続したのでは、マスターの腕力では振るえませんし、ましてやあれだけの威力も出はしません。つまり、そこにマスターの能力のヒントがあります」

 

 トゥードは一呼吸おき、確信と共に告げる。

 

 「マスターに目覚めた能力。それは、複数の存在同士を掛け合わせ、新たな存在を創り出す能力。相乗効果で更なる高みに至るそれは、素材となったいずれよりも遥かに強い。言わば――」

 

 ――――相乗掛合(クロスオーバー)

 

 

 「相乗掛合(クロスオーバー)、か。いいじゃねぇか! 気に入ったぜ!」

 

 吼太が複合大剣を送還しながら言う。

 

 「ぐ……成る程、相乗掛合か。面白い能力だ。だが、私も負けられん! 負けられぬ理由があるのだ!」

 

 

 

 

 

 我が主、ブレラ様は聡明で、魔法の才能にも優れ、そして人一倍の強い心を持っていた。

 

 私達を、"私を閉じ込めていた何か"から救い出した時も、無理矢理忠誠を誓わせようとはせず、「したいようにすればいい」と言って、私とホルクスを家に置いて下さった。

 

 その時の私は、失礼ながら主のことを"うつけ者"だと考えていた。見ず知らずの存在を家に入れるなど、愚の極みとしか思えなかったのだ。

 

 朝になったならば、出ていこう。そう決めていた。

 

 しかし、主の住む町に、朝は来なかった。

 

 万物に等しく恵みを与える太陽。それが一瞬の内に消え去った――――いや、破壊されたのだ。"帝国"によって。

 

 帝国の軍勢が攻めてきたのは、それから間もなくだ。

 

 奴らは強すぎた。一般兵の質もさることながら、その王と四人の妃。彼等は強すぎた。四色覇王と謳われた我が主も、水魔法に秀でた我が盟友ホルクスも、そして我が剣も、奴らに痛手を被らせることは出来なかった。

 

 私達は敗走した。奴らに背を向け逃げるときの、我が主の苦渋の表情は今も忘れられない。

 

 その時決めたのだ。私を拾い、恩情をかけてくれた男の故郷を私は守れなかった。ならば、それを取り戻すのが、我が"騎士道"。

 

 その後、私はホルクスと共に、主ブレラに忠義を捧げた。

 

 

 

 

 

 「負けられぬ! 負けられぬのだ! ナギナミオカの力を手にし、帝国を駆逐する、その日まで!」

 

 ザンクから溢れる闘気が、辺りを消し飛ばす勢いで放たれる。並の生物ならばその闘気に圧倒され、身動き一つ取れなくなっていたことだろう。

 

 だがしかし。

 

 「しゃらくせぇぇぇーーーッッッ!!」

 

 吼太が、まるで濁流のように押し寄せる闘気を、気合だけで弾き返す。

 

 「ナギナミオカ? 帝国? んなこたぁ知ったことかよ!! どんな理由があるにしろ、それで誰かに理不尽な悲しみを味わわせていい理由には、絶対ならねぇんだよッ!」

 

 「黙れ! 帝国の力も世の中も知らぬ小童が! 貴様に何が分かる!」

 

 「分かるか! 分かってたまるかよ! 他人を苦しめてまで、誰かを傷つけようとしている奴なんかにィッ!!!」

 

 吼太が再び、ユビキタスサークルから武器を取り出す。

 

 「コール・アームズ、グラム! ウコンバサラ! ブリューナク! 相乗掛合《クロスオーバー》!!」

 

 吼太は、創り出した、稲妻を纏う光の剣を強く握り締める。

 

 「貴様……貴様は何だと言うんだ!」

 

 「聞きてぇか! なら教えてやっから、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!! オレは吉谷吼太!! チート魔導師だッ!!!」

 

 互いに、示し合わせたかのように走り出す二人。ザンクの血鬼が、吼太の複合雷剣が、相手に喰らいつかんと刃を鳴らす。

 

 「奥義、血晃業逸《ちこうごういつ》・一閃ッ!!!」

 

 「喰らえぇぇぇぇッッッ!!!」

 

 刃と刃が、火花を散らした。

 

 発生した衝撃波が戦いの舞台のみならず、彼等がいる天導山自体を震わせる。

 

 「凄い……」

 

 「もしかしたら、勝てちゃう?」

 

 「いえ、そう簡単ではないでしょう」

 

 リームの期待を、トゥードが否定する。

 

 「今のマスターに、体力はほとんど残っていないでしょう。それを示すように、マスターの持つ武器にヒビが入ってきています」

 

 トゥードが指差す先、吼太が持つ複合雷剣には、確かにヒビが入り始めていた。慣れない能力である上、傷が塞がったとはいえ一度血液を大量に失っている今、吼太の体力は間もなく尽きようとしている。そのために、相乗掛合《クロスオーバー》の能力が弱まっていた。

 

 しかし、それはザンクも同じ。喰らったダメージは元より、吼太の"魔法使いらしからぬ戦い方"は、ザンクの身体に予想以上の疲労を強いられていた。このままではいつ、些細な、しかし決定的なミスを犯してもおかしくはなかった。

 

 複合雷剣から稲妻が走り、だがそれを血鬼が切り裂く。血鬼が複合雷剣を少しずつ切り裂いていく。

 

 「これで……終わりだッ!!」

 

 ザンクの剣が、複合雷剣を真っ二つに切り裂いた。

 

 複合雷剣が砕け散り、エネルギーが爆発して辺りを包む。

 

 ――――勝った。

 

 ザンクの頭が、勝利に染まった。

 

 それ故だ。反応が遅れたのは。

 

 

 

 

 ――お前がその"角"を嫌っているのは分かっている。だからオレも、お前には使わせたくはなかった。

 

 爆発を振り払い、吼太が飛び出す。

 

 ――でも、今は。今だけは。

 

 その手には、腰から取り外したユビキタスサークルのバックル部分。ユビキタスサークルのターミナルユニットともいえるそれを、拳に装備していた。

 

 ――お前の角を、貸してくれ。

 

 全力で剣を振り抜いていたザンクに、避けることは叶わなかった。

 

 吼太の拳が、ユビキタスサークルがザンクの腹部に突き刺さる。

 

 「――コール・クリーチャー!!

 

  アァァーーーモォォォーーーンッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 「密接した状態での召喚か……効いたぞ、少年」

 

 「そうかよ。あとオレは少年じゃねぇ……吉谷吼太だっつったろ」

 

 「……そう、だったな。吉谷吼太」

 

 アーモンに寄り掛かるようにして立つ吼太と、完全に身体を投げ出して倒れたザンク。勝利の女神は、吼太に微笑んだ。

 

 役目を終えたアーモンを送還し、地面にへたり込む吼太。

 

 「「コータぁ!」」

 

 ありすとリームが、感極まったのか吼太に抱き着いた。よろけながらも受け止める吼太。

 

 「わっ、たっ、痛! 痛たたた!!」

 

 傷口に響くらしく、表情を歪める吼太。

 

 「マスター、じゃれるのは後にしてください」

 

 「オレからやってんじゃねーよ!?」

 

 回復魔法を掛けられながらトゥードに突っ込む吼太。間もなく動けるようになり、立ち上がって調子を確認している。

 

 その時だった。天導山が再び、震えたのは。

 

 「何だ!」

 

 「膨大な魔力反応……まさか!」

 

 「――違う」

 

 トゥードの、これから言わんとしていた言葉を否定するザンク。ザンクは立ち上がり、言う。

 

 「この魔力は、我が主のものではない。これは――――」

 

 

 

 

 

 「フフッ……フハハ……アーッハッハッハッハッ! さぁ、パーティーを始めようじゃないぃか!!」

 

 卑しく嗤うホルクスが、血に塗れた細剣を、そして身動き一つしないブレラを持って現れた。

 

 吼太は悟った。倒すべき相手を。

 

 「ありす、リーム、トゥード……セン達も。みんな、もう少しだけ力を貸してくれ。奴は、必ずオレがぶっ飛ばすッ!!!」




もうそろそろコラボ書きますよー
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